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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

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『聖教新聞』事件 第65回
創価学会に対する名誉毀損と認定

『聖教新聞』事件は、たんに東村山市議の矢野穂積と朝木直子らが同紙の記事をめぐって提訴したというものではない。元をたどると、朝木直子の母親で、当時東村山市議だった朝木明代が万引きを苦に自殺、ところが万引き事件でアリバイ工作を共謀した矢野と長女の朝木らが『週刊現代』の取材に対して「明代は創価学会に殺された」などと主張した内容がそのまま同誌の記事となって掲載されたことに始まっている。

 これに対し『聖教新聞』は、警視庁東村山署千葉副署長のコメントなどに基づき、同記事および同誌にコメントした朝木父娘らに対する創価学会秋谷会長の反論を掲載した。本件は、矢野らがこの『聖教新聞』記事が矢野らの名誉を毀損したとして『聖教新聞』や創価学会を提訴したものである。この裁判で矢野らは、『聖教新聞』だけでなく、その主張の根拠となる主張を行った(明代による)万引き被害者と、万引き事件で明代を書類送検し、明代の転落死を「自殺」として処理した警視庁および捜査を指揮した千葉副署長も提訴した。

 矢野らは訴状で「朝木父娘は『週刊現代』の取材を受けておらず、同誌に掲載されたようなコメントはいっさいしていない」とした上、「朝木明代が万引きをした事実はなく、『万引きを苦に自殺』したものではない」と主張していた。『聖教新聞』の記事は朝木父娘が『週刊現代』の取材に応じて同誌に上記のようなコメントをしたことを前提にしたものだから、その主張が認められれば『聖教新聞』の記事はその前提を欠くことになり、矢野らの請求が認められる可能性もないとはいえなかった。

 しかし平成12年6月26日、東京地裁は『週刊現代』裁判の判決と同様に『週刊現代』において朝木父娘は〈(『週刊現代』の記者に対して)朝木ら発言をしたものと認めるのが相当〉と認定。その上で、

〈原告ら(筆者注=矢野と朝木ら)は、被告創価学会が本件各事件(筆者注=朝木直子のポケベルに「4444」の数字が打ち込まれるなど、「創価学会が関与している」と矢野らが主張した様々な事件)に関与したと認められるような客観的な証拠もなく、被告創価学会に対し、さきに判示したとおりの名誉毀損行為をしたものである〉

 と述べ、〈原告朝木ら発言を中心にした原告らによる被告創価学会に対する名誉毀損行為に対する反論という目的に必要な範囲でなされたものと評価することができる〉などとして、『聖教新聞』紙上における創価学会の反論が正当なものだったと認定し、創価学会に対する矢野らの請求を退けた。

矢野のアリバイ工作も確認

 万引き被害者に対する請求についても、万引き犯が明代ではないと知りながら被害届を提出したなどという証拠は存在しないなどとして、矢野らの請求を退けた。東村山署が捜査を尽くした結果、明代を万引き犯と認定し、東京地検八王子支部に書類送検したことからも、被害者の申告内容が真実だったことが裏付けられていよう。

 矢野と朝木はこの裁判で明代の万引きが「冤罪」であると主張しようとしたが、逆にあらためて明代の万引きの事実が認定されたことになろうか。言い換えると、明代の万引きを隠蔽することを目的に矢野が明代と共謀したアリバイ工作の事実も確認されたということになろう。

取り調べに応じなかった朝木

 さて、矢野と朝木が創価学会や万引き被害者を提訴したことはともかく、捜査を指揮した東村山署副署長、千葉英司をも被告に加えたことにはやや違和感がないではない。2つの理由がある。

 1つは、原告である朝木直子は、明代が自殺を遂げた際、東村山署が事情を聴くために再三にわたって来署を求めたが、ついに1度も聴取に応じなかったことである。転落死の直後であり、当然、まだ警視庁は結論を出していなかった。「他殺」を主張するなら、自殺の動機がないことについて、警察に対して遺族として真摯に説明すべきだろう。

 東村山署は朝木の弟を聴取した際、直子にも来てくれるよう伝言を依頼した。それでも朝木は出頭しなかったのである。その朝木が、明代の万引きと自殺に関する千葉の広報内容について民事で訴えるというのは理解しにくい話というほかなかった。

取調室で混乱した矢野

 2つ目の理由は、もう1人の原告である矢野は明代の万引き事件でアリバイを主張しているが、万引き事件の時間帯には東村山市内のレストランで食事をしていたというアリバイは、東村山署の取調室において矢野自らがすでに放棄していたからである。明代だけでなく矢野もまたそれまで、「午後2時12分過ぎにレストランに行った」と何度も何度も供述していた。ところが、彼らがいたと主張する時間帯よりも2時間も前(12時台)にそのメニュー(「日替わりランチ」)が売り切れていた事実を突きつけられると、矢野は「そんなに早く行ったのかなあ」と動揺をみせた。

「午後2時12分過ぎに行った」というのが事実なら、どんな証拠を突きつけられようとこれほど時間にブレが生じるはずがない。つまり当初の主張が虚偽であることを自白したに等しかった。

 そもそも矢野と朝木は当日、「午後12時過ぎまで議会の委員会室にいて、その後、午後2時ごろまで議員控室で打ち合わせをしていた」と説明していた。その矢野が、12時台にレストランに行っていることはあり得ないのである。取り調べでアリバイが成立しないことを説明された矢野が、前後の時系列も無視し、議会にいたはずの時間帯にレストランに行っていたなどと口走ってしまうほどの取り乱したことがよくわかる場面だった。

 朝木明代の自殺によって、万引きによる窃盗容疑は不起訴となった。しかし東京地検は、東村山署に対する通知の中で「明代の万引きの事実は認定する」との付言を加えていた。

潰されたプライド

 矢野と明代は、明代が書類送検されたあと、東京地検に上申書を提出した。その上申書で彼らは、東村山署の取調室で破綻したアリバイのメニューを「レギュラーランチ」から「日替わりランチ」へと変更したのだった。東村山署が裏付け調査を行うと、「日替わり」は12時台で売り切れていた。その証拠を突きつけられた矢野が、あわてふためいたのが上記の取調室の場面である。

 もはや矢野は、少なくとも明代のアリバイ主張に関してただの「証人」ではなく、りっぱな当事者であることがこの場面からも明らかだった。矢野は明代の死後も、アリバイ工作の当事者としてあらゆる手段を尽くして捜査機関を騙し、丸め込もうとしていた。そのたくらみは、東村山署の丁寧な裏付け調査によってすべて潰された。

 東村山署は当然、この取り調べの状況も東京地検に報告している。東京地検は東村山署による矢野の取り調べ状況も含めて、「明代の万引きの事実は認定する」という判断を示したということだった。

 矢野の面目もプライドも、完膚なきまでに潰されたということでもあったと思う。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第24回
「詐欺事件への関与」を全面的に否定

 さて、一応記事の「公共性」「公益性」を認めた上で、東京地裁は真実性および真実と信じるに足りる相当の理由があったかどうかについて検討している。東京地裁がその前提として事実認定した事実を要約すると以下のとおりだった。



(真実性・相当性判断の前提事実)

①「原告が平成10年頃、マッサージ師をしていたMと客として知り合ったこと」
②「被害者Tが友人の紹介でMと知り合ったこと」
③「MがS(筆者注=Tから多額の借金をした中心人物)をTに引き合わせたこと」
④「Sが平成21年頃、Tから次々と合計約2140万円を借りたこと」
⑤「Sが借金の返済をしないため、Tが平成22年、原告に相談したこと」
⑥「原告がT弁護士を紹介するなどして支援したこと」
⑦「TがSらに対し貸金返還訴訟を提起したこと」
⑧「上記訴訟で、Sが分割で返済する内容の和解が成立したこと」
⑨「Sが借金のうち1860万円を返済していないこと」
(※○囲み数字は筆者)



 東京地裁によるこの認定事実において最も注目すべきは、上記認定のすべてが原告の陳述書と原告が提出した被害者Tの陳述書の内容に依拠している点である(①⑤⑥⑦⑧⑨が原告の陳述、②③④がTの陳述書の記載内容)。少なくとも基本的な事実関係について裁判官が本件事件および、その後のTに対する支援活動の当事者であるTと原告の陳述内容を信用したということだろう。裁判官が判断の前提として示した事実関係になんら誤りは見当たらない。 

 矢野らは本件記事の冒頭で〈(被害者Tは)山川昌子・元公明市議の紹介で……Mというマッサージ師と知り合い……〉と記載し、裁判でも「『詐欺グループの一員』であるMをTに紹介したのは原告」であると主張していた。しかし上記②のとおり、東京地裁はMをTに紹介したのは山川ではなく「Tの友人」であると認定している。

 また矢野らは裁判で、「山川がMに対し『Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね』と話したことが本件詐欺事件の端緒となった。このことは本件詐欺行為を仲介したものである」などと主張し、本件記事の真実性を主張していた。

 しかし東京地裁は山川がMに対してTの近況を話したことについて、違法性判断の前提とする事実の中で一言も触れていない。裁判官は山川がMに対してTの近況を話したことは、SがTから多額の借金をするに至ったこととは無関係であると判断したということと理解できた。「山川がMに対し『Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね』と話したことが本件詐欺事件の端緒となった」、すなわちそれが「関与」の根拠とする矢野らの主張は排斥されたということである。

 最終準備書面になると、矢野らは「詐欺事件に関与した根拠」どころか、「『原告がMに対しTが一人暮らしになったという個人情報を報せたことが詐欺事件になった』ということが本件訴えの争点事実」とまで主張したものだった。ところが、裁判官は矢野らが「本件訴えの争点事実」と主張した事実に一言も触れていない。これは、判断の対象とさえ認定しなかったということのようでもあった。

すべて否定された記事内容

 上記認定事実に基づき、東京地裁は真実性・相当性について次のように述べた。

〈原告がMをTに紹介したことについては、これを認めるに足りる証拠がなく、被告らが原告がMをTに紹介したと信じたことに相当の理由があることを認めるに足りる証拠もない。〉

 矢野らは最初にMをTに紹介したのは山川であると主張し、これに対して山川は「MからTを紹介された」と主張しており、双方の主張が対立していたという経緯はあった。矢野らはことさらそのことをもって、山川が詐欺事件に関与した根拠であると主張したわけではなかった。矢野らは、山川がMに対して「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と報せたことが関与の根拠であると主張していたのである。

 しかし東京地裁は、TにMを紹介したのが山川だったのか否かを重視したようだった。山川は矢野らの主張を否認し、Tは陳述書で〈私の友人の紹介でMさんと知り合いました〉と述べていた。東京地裁は山川の主張およびTの陳述書の記載から、TにMを紹介したのが山川であるとは認定せず、また矢野らがそう信じたことに相当の理由は認められないとした。

 その上で、本件記事の違法性について次のように結論付けた。

〈そうすると、本件記事のうち、原告がMをTに紹介したとの事実を摘示して、原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、上記行為について、仲介のような役割を果たしており、上記貸金が返済されないことについて、知らん顔をしているあきれた人だと述べる部分については、事実を摘示して原告の名誉を毀損する行為であるというべきである。〉

 東京地裁はこう述べて本件記事の違法性を認定し、〈原告が上記記事によって相当の精神的苦痛を被ったことは、上記記事の内容から容易に推知できる〉と述べた。こうして東京地裁は、矢野らに15万円の支払いを命じる判決を言い渡したのである。

 本件記事の評価に関して、原告の主張(「原告が詐欺事件に関与した」)と裁判官の認識には温度差があったようである。しかし上記の認定によれば、本件記事のうち、山川が詐欺犯側の人間だったと思わせるような部分についてはすべて否定されたものと理解できる。少なくとも山川に関して本件記事の真実性は否定されたという結果に変わりはないということになる。これではもはや、記事としての体をなさないのではあるまいか。

 本件記事が掲載された『東村山市民新聞』第186号(平成27年7月31日付)が発行、配布されたのはちょうど1年前である。それ以後、山川は記事について聞かれるたびに、それが虚偽であることを説明しなければならないなど、本来なら必要のない多大な労力を割かざるを得なかった。しかし、今回の判決は山川に関する部分を否定するものだった。少なくともその意味で、提訴したことには大きな意義があったといえるのではあるまいか。

矢野と朝木が控訴 

 なお、矢野と朝木が一審判決を不服として平成28年7月29日までに控訴したことがわかった。

(つづく――「控訴審」開始後に再開)
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元市議名誉毀損事件 第23回
東京地裁の認定

 双方の主張に対して、東京地裁立川支部はどんな理由によって主文のような判決を言い渡すに至ったのか。判断の基準となるのは、裁判官が本件記事の内容をどういうものと判断したかである。

 その意味内容がどういうもので、それが原告の社会的評価を低下させ、名誉を毀損するものであるかどうか。名誉を毀損しているとすれば、記事に公共性・公益性があるかどうか、また真実性あるいは真実と信じるに足りる相当の理由があるかどうか――である。

 記事の内容が人の名誉を毀損するかどうかは一般読者の普通の注意と読み方を基準に判断すべきとされている。東京地裁は一般読者が普通の注意に基づいて本件記事を読んだ場合の読み方について、次のような判断を示した。

〈本件記事は、……S(筆者注=被害者Tから直接貸金をした人物)が被害者女性から約2140万円を借り、うち1860万円を返しておらず、この行為が詐欺まがいの行為であり、市議会議員である原告がM(筆者注=矢野らが「詐欺グループの一員」と主張している人物)を被害者女性に紹介し、Mが妹のSを被害者女性に仲介したことにつき、原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、上記行為について、仲介のような役割を果たしており、上記貸金が返済されないことについて、知らん顔をしているあきれた人だと述べていると読むことができる。〉

 本件記事には〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉〈創価、元市議らが仲介して〉との見出しが付いている。東京地裁は、本件記事について普通の読者は、原告が〈お金を巻き上げる連中の口ききであり、上記行為について、仲介のような役割を果たし〉〈上記貸金が返済されないことについて、知らん顔をしているあきれた人だ〉と読むものと認定したが、原告が主張するように「山川が詐欺事件に関与した」と読むとまでは認定しなかったことがうかがえた。

 一般的な認識としては、詐欺に「口きき」や「仲介」をしたといえば「関与した」と受け取られても仕方がないようにも思える。しかし本件記事における「口きき」や「仲介」については、「詐欺の仲介」ではなく「紹介」に近いものと裁判官は認定したということなのだろう。

 見出しには〈元公明市議らが関与〉の文言がある。しかし本文の記載内容を合わせて読んだ場合、本件記事の「普通の読者の読み方」という点において、裁判官は「山川が詐欺事件に関与したとする記事である」とする原告の主張を採用しなかったということになろう。

 しかしそれでも、上記のとおり認定した本件記事の名誉毀損性について東京地裁は次のように認定した。

〈本件記事が上記のように読めることからすれば、本件記事は原告の社会的評価を低下させるものというべきである。〉

 本件記事は直接的に「山川が詐欺に関与した」とまでは読めないとしても、「お金を巻き上げる連中の口きき」をし、「紹介」したにもかかわらず、被害者が多額の貸金が返済されない状況になっても「知らん顔」をしているというのは、やはり原告の社会的評価を低下させる内容であると認定したということのようだった。

単純な事実誤認

 記事に名誉毀損が認定された場合でも、記事が公共の利害に関わるものであり、公益を図る目的を持ち、かつ真実性あるいは真実と信じるに相当の理由があったと認められる場合には違法性が阻却される。

 東京地裁はまず公共性・公益性について検討している。東京地裁はまずこう述べた。

〈本件記事は、本件新聞発行時において市議会議員であった原告が詐欺行為に関係したか否かについてのものであるから、一応公共の利害に関する事実に係わるものであり、そうであれば本件記事の掲載は一応公益を図る目的でなされたものと推認される〉

 したがって、東京地裁は本件記事の公共性・公益性を認定する判断を示している。

 しかし、上記判断の前提事実には明らかな事実誤認があった。本件記事の発行時において原告山川は東村山市議会議員ではなく、一般市民にすぎない。裁判官は本件貸金および、原告が被害者から相談を受けて弁護士を紹介するなどの支援をした時期に山川が市議会議員だった事実と混同したもののようだった。

 東京地裁は〈本件新聞発行時において市議会議員であった原告が詐欺行為に関係したか否かについてのものである〉との理由によって、一応、本件記事の公共性を認めている。すると、この論理構成によれば、本件記事は一般市民にすぎない原告が詐欺行為に関係したか否かについての記事ということになるから、記事の公共性には疑問符がつく可能性がある。

 続いて公益性について、東京地裁は上記に記載した「公共性」の判断に基づき、次のように述べている。

〈そうであれば本件記事の掲載は一応公益を図る目的でなされたものと推認される〉

 東京地裁は、本件記事には公共性があるから、一応、公益目的性が推認できると述べる。だから本件記事は、「公共性」「公益性」に関しては違法性が阻却されるというのだが、単純な事実誤認に基づく「公共性」認定に疑問があるということになれば、公益性についての判断を導いた上記の論理も危うくなるのではあるまいか。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第22回
『東村山市民新聞』第186号(平成27年7月31日付)に掲載された記事によって名誉を毀損されたとして、元東村山市議の山川昌子が東村山市議の矢野穂積と朝木直子(いずれも「草の根市民クラブ」)を提訴していた裁判の判決が平成28年7月13日、東京地裁立川支部(渡邉左千夫裁判官)で言い渡された。

 原告の山川は出廷したが、被告の矢野と朝木、および代理人の田中弁護士はいずれも姿をみせなかった。その代わりかどうか、前回の口頭弁論で田中弁護士に矢野らの準備書面を届けた武蔵村山市議他1名の計2名が判決を聞きに来ていた。内容をどこまで理解しているかはともかく、なにかしらの関心があったのだろう。なおこの武蔵村山市議と親しい関係にあり、またかつて矢野、朝木と共闘関係にあった「行動する保守」Aはもう来なかった。

 判決主文は以下のとおりだった。



(判決主文)

1.被告らは、連帯して、原告に対し、15万円及びこれに対する、被告矢野穂積については平成27年10月30日から、被告朝木直子については同年11月1日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2.原告のその余の請求を棄却する。

3.訴訟費用は、これを20分し、その1を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

4.この判決の第1項は仮に執行することができる。



 ネトウヨAの知り合い2名も、矢野と朝木が負けたということだけはわかったのではあるまいか。

原告側の主張

 矢野と朝木は彼らの政治宣伝紙『東村山市民新聞』第186号(平成27年7月31日付)1面において、〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉〈創価、元市議らが仲介して〉〈言葉巧みに、一般市民から、借りて1860万円も返さず〉との見出しの下、〈山川元公明市議は口では被害者の女性の味方になってお金を取り戻すそぶりをしていたが、結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかった。〉などと記載。

 2面では、〈本山破門『ご本尊』放棄の政治集団化の先は、『詐欺師集団?』〉などの見出しの下、〈元議員の立場で、貸金の仲介者のような役割を果たしながら、山川元市議は「知らん顔」、あきれた人たちです。〉と記載した。

 これらの記事について山川は、「本件記事は『山川が詐欺事件に関与した』と断定するもので、原告の名誉を毀損した」と主張し、300万円の損害賠償の支払いを求めていた。

変遷を重ねた矢野らの主張

 これに対し被告の矢野と朝木は次のように違法性を否定する主張を行った。矢野らの主張は以下のとおりだった。



(矢野と朝木の主張)

①もともと、TにMを紹介したのは山川である。

②原告山川が、被害者Tが一人暮らしをしているという個人情報を詐欺グループの一員であるMに漏洩したため、SがTから2140万円を詐取し、そのうち1860万円が返金されていない。よって、原告山川が詐欺事件を仲介し、関与したことは明らかであって、〈結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかった。〉〈元議員の立場で、貸金の仲介者のような役割を果たしながら、山川元市議は「知らん顔」〉との記載は客観的真実と一致する。

③本件記事は原告山川が詐欺を働いたという記載ではなく、「結局は口ききでしかなかった」という記載内容である。「私が、『Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね』とMさんにしゃべったことがありました」と原告山川自身が自白しているとおりである。よって、記事には信じるに足る相当な理由がある。

④記事は「結果的に口ききとしての役割を果たしたに過ぎない」と批評しているのであって、原告山川が直接的に詐欺を働いたと読み取れる箇所はない。(以上、被告ら準備書面2)

⑤原告が、詐欺グループの一員であるMに対し、「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことが、本件詐欺行為の端緒となったのみならず、詐欺に荷担したことは事件の経過から見て間違いない。(被告ら準備書面3)

⑥本件訴えの争点事実は、原告山川がMにTが独居になったという個人情報を報せたことが詐欺事件の引き金になった、というものである。

⑦原告山川が、詐欺被害を発生させるに至る第一級の個人情報(筆者注=Tが一人暮らしになったこと)を詐欺グループに漏洩したことによって本件詐欺事件が発生したことが真実であることは明らかである。(⑥⑦=被告ら準備書面4)



 矢野らの主張には、上記②では〈原告山川が詐欺事件を仲介し、関与したことは明らか〉として「原告山川は詐欺事件に関与した」といいながら、④では〈口ききとしての役割を果たしたに過ぎない」と批評しているのであって、原告山川が直接的に詐欺を働いたと読み取れる箇所はない〉と主張するなど、それ自体に齟齬もみられた。しかし最終的に、矢野らは〈原告が、詐欺グループの一員であるMに対し、「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことが、本件詐欺行為の端緒となったのみならず、詐欺に荷担したことは間違いない〉と主張するに至った。

 原告がMに対して「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことは、原告自身が陳述書で認めている。よって、「本件記事には確かな根拠があり、違法性が阻却されるから、本件請求は棄却されるべきである」(趣旨)と被告らは主張していた。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件判決(速報)
 元東村山市議、山川昌子が『東村山市民新聞』第186号(平成27年7月31日付)の記事によって名誉を毀損されたとして、同紙を発行する現職東村山市議の矢野穂積と朝木直子(いずれも「草の根市民クラブ」)を提訴していた裁判で、東京地裁立川支部は平成28年7月13日、矢野らに対し連帯して15万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 矢野らは同紙1面で〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉〈創価、元市議らが仲介して〉などとするタイトルのもと、

〈山川元公明市議は口では被害者女性の味方になってお金を取り戻すそぶりをしていたが、結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかった。〉

 などと記載。また2面では〈……政治集団化の先は、「詐欺師集団?」〉〈新興宗教の衣を脱ぎ捨てた集団〉とのタイトルのもと、

〈少なくとも仲介のような役割を果たした山川もと公明党市議も1860万円を返そうとしていないことについて、知らん顔をしています。〉

〈元議員の立場で、貸金の仲介者のような役割を果たしながら、山川元市議は「知らん顔」、あきれた人たちです。〉

 などと記載した。これに対し原告の山川は、「記事は山川が詐欺事件に関与したと断定するもの」と主張していた。

名誉毀損を認定

 判決で東京地裁立川支部は、〈原告がM(筆者注=被告らが詐欺グループの一員と主張する人物)をT(筆者注=被害者)に紹介したことについては、これを認めるに足りる証拠がなく、被告らが原告がMをTに紹介したと信じたことに相当の理由があることを認めるに足りる証拠もない。〉と指摘した上で、

〈そうすると、本件記事のうち、原告がMをTに紹介したとの事実を摘示して、原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、上記行為について、仲介のような役割を果たしており、上記貸金が返済されないことについて、知らん顔をしているあきれた人だと述べる部分については、事実を摘示して原告の名誉を毀損する内容である〉

 などと述べ、〈原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料を支払う義務がある。〉と断じた。

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元市議名誉毀損事件 第21回
Tの陳述書を持っていた可能性

 最終準備書面に至り、矢野らが「山川は詐欺事件に関与した」というものから「山川がMに対して『Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね』と話したことが詐欺事件の引き金となった」というものへと主張を変遷させたのはなぜなのだろう。

 矢野らが「詐欺事件の引き金となった」と主張するようになる直前に、原告は矢野らが「提出する必要はない」と強弁していた被害者Tの陳述書を提出した。陳述書には、TがSと知り合い、最終的に2600万円を貸してしまうまでのいきさつと経過が詳細かつ具体的に記載されている。その一方、山川の名前はいっさい記載されておらず、もちろん山川の関与をうかがわせるような記載もなかった。そのことを矢野らが初めて知ったわけではあるまい。

 矢野らは第3回口頭弁論(平成28年2月10日)において、被害者TがSに返金を求めた裁判で和解調書のほか、「原告山川がTの個人情報を報せた」と主張するMから借金で迷惑をかけられたとする複数の市民による陳述書も提出していた。これらの陳述書はTの貸金問題とは別件の事案に関するものである。すると、矢野らはどうやって別の市民の陳述書の存在を知り、または入手し得たのだろうか。

 上記陳述書を提出したのが2月だったというタイミングから推測すると、山川から提訴されたあと、矢野らは被害者TにSを提訴、告訴した際の資料の提供を依頼したのだろう。Tは関連資料一式をそっくり手渡した。その中に、Mから借金で迷惑を被ったという市民の陳述書が含まれていたということではあるまいか。

 その資料の中に、Sに大金を貸してしまったいきさつや経緯を詳細に記載したT自身の陳述書だけが含まれていなかったと想定するのはかなり無理があろう。この陳述書は被害者Tが貸金被害を訴える基礎事実を記載した最も重要な資料である。したがって、Tが矢野らに渡した資料の中にはTの陳述書が含まれていたと推測する方がよほど自然だろう。

 矢野らは山川から300万円の損害賠償を求めて提訴されているわけだから、当然、Tから提供された資料を精査しただろう。その結果、「山川が詐欺事件に関与した」とする事実を裏付ける資料を発見することはできなかった。

 それどころか、Tは陳述書でSに大金を貸してしまった背景事情とともに、Tが最終的に精神的にも追い込まれた状態だったことまで告白しており、「貸さなければ返してもらえないのではないか」との思いからさらに貸金を重ねてしまった経緯を詳細に記載している。その一方で、山川の関与をうかがわせる記述はいっさい存在しなかった。Tが陳述書で記載したSへの貸金の経過の中に多少の記憶の混乱があったとしても、山川の名前さえいっさい出てこないということは、この件について山川がいっさい関与していないことを裏付けていると判断できた。

 貸金に関する記憶の問題なら、矢野としてもまだつけ込む余地があったかもしれない。しかし、名前がいっさい出てこないということになると、もはやTの記憶の問題でさえない。だから矢野らは、Tの陳述書を提出するのは得策ではないと判断した――矢野らがTの陳述書を「不要」などとして提出しなかったのはこういうことではなかっただろうか。

変遷を重ねた事情

 終結が予定されている口頭弁論の前にそのTの陳述書が、本来は被告側が提出すべきであるはずのTの陳述書が原告側から提出された。被告側からすれば、どうみても、あってはならない事態だったのではあるまいか。立場上、Tは矢野側の人間のはずだからである。原告山川がTの陳述書を提出したことを確認した矢野らが、これで「山川が詐欺事件に関与した」とする主張を押し通すのはますます難しくなったと考えたとしてもなんら不思議はなかった。

 そこで思いついたのが、「山川がMに対して『Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね』と話したことが詐欺事件の引き金となった」という主張だったのではあるまいか。「詐欺事件の引き金となった」というだけなら、事実関係としては「詐欺事件」が発生する前の話であり、まったく別個の出来事ということになる。

「山川がSとの間に意思疎通があった」と書いていなければ、「引き金」となるかならないかは結果論にすぎず、「山川が詐欺事件に関与した」ということにはならない。「詐欺事件」そのものではなく、「詐欺事件の引き金となった」とする記事だということにすれば、「山川は詐欺事件に関与した」とする事実とは関係がないから、「山川は詐欺事件に関与した」とする事実について立証する必要はないということになるのである。

 だから、矢野らは準備書面4でこうも主張している。

〈(被害者Tの陳述書)と同様に、(Oの陳述書等)を含め、原告山川がMに被害者女性(T)が……独居となったという個人情報を報せたことが詐欺事件の引き金となった、という本件訴えの争点事実とは全く無関係な内容である。〉

 したがって、いかにTが陳述書で山川にいっさい触れていなかったとしても、そのことは「争点事実」とは無関係だから、原告がTの陳述書を提出したことには意味がないと主張しているのだった。この裁判にTの陳述書を提出する意味がないということになれば、矢野らが提出しなかったことも正当化されるという理屈だろう。

尋問申請を却下した背景

 問題は、「山川がMに対して『Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね』と話したことが詐欺事件の引き金となった」とする事実が「争点事実」であるとする矢野らの主張を裁判官がどう判断するかである。変遷を重ねた主張である上に、新たな争点のすり替えのようにみえる。

 本来、矢野らが上記の主張をするのなら、和解調書を提出した第3回口頭弁論で主張していても不思議はなかった。矢野らは第3回口頭弁論で、山川がMに「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話したとする内容を記載した山川の陳述書を提出していたからである。しかし矢野らはこのとき「山川が詐欺事件の引き金となった」とは主張せず、「結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかった。」とする記載が「摘示事実」であるなどと主張したのである(=被告ら準備書面2)。

 結局、矢野らは平成28年4月に提出した準備書面3でも「山川が詐欺事件の引き金となった」とは主張せず、原告が被害者Tの陳述書を提出した時点で初めてこう主張したのである。

 双方の主張の流れをみると、原告が「詐欺事件に関与した事実はない」と一貫して主張しているのに対し、矢野らは口頭弁論のたびに主張を変遷させている。「山川が詐欺事件の引き金となった」とする最後の主張にしても、原告がTの陳述書を出したために新たな主張をせざるを得なかったようにみえる。

 裁判官がこの流れをどう捉えているかは定かではないが、朝木直子に対する尋問申立をめぐり、「不要」であるとする原告の主張を容れ、申立を却下したところに、裁判官の心証の一端がうかがえるように思えた。

(「判決後」につづく)
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元市議名誉毀損事件 第20回
またしても立証対象をすり替え

 被告の矢野らは「原告山川が詐欺事件に関与した」とする事実に対する立証をいっさいせず、「原告がMに対して『Tが一人暮らしになったこと』を報せたことが詐欺事件の引き金となった」という事実が〈本件訴えの争点事実〉などと主張している。本来の立証対象である「原告が詐欺事件に関与した」という摘示事実に触れようとしない矢野らの主張をどう理解すべきだろうか。

 矢野らがここで用いた〈本件訴えの争点事実〉なる文言が「摘示事実」に替わるものであるなら、きわめて違和感のあるこの主張も理解できるのかもしれない。〈本件訴えの争点事実〉なる文言を「摘示事実」に入れ替えれば、「原告がMに対して『Tが一人暮らしになったこと』を報せたことが詐欺事件の引き金となった」という事実が摘示事実であるということになるのである。

 そうなれば、本件の立証対象は「原告が詐欺事件に関与した」ではなく、「原告がMに対して『Tが一人暮らしになったこと』を報せたことが詐欺事件の引き金となった」という事実であることになる。またしても矢野らは、争点をすり替えたとしか理解できなかった。

 立証対象が「山川が詐欺事件に関与した」という事実だとなんらの関連性も示せない。しかし、「原告がMに対して『Tが一人暮らしになったこと』を報せたことが詐欺事件の引き金となった」という事実なら関連性だけは主張できる、と。原告がMに対して「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことは原告自身が認めている事実なのだから。

 原告がMに対して「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話した事実は、それが「詐欺事件の引き金になった」とする事実が真実であることを証明するものではない。しかし原告がMに対してそのことを話したのは事実だから、それが「詐欺事件の引き金となった」と矢野らが信じたことにはまったく根拠がなかったわけではないと(それでも相当性が認められるのは難しいと思うが)。

 また、仮に「原告がMに対して『Tが一人暮らしになったこと』を報せたことが詐欺事件の引き金となった」とする事実が「本件訴えの争点事実」であるとする矢野らの主張が認められるとすれば、原告が提出した被害者T自身の陳述書の重要性は大きく後退することになる。Tが陳述書で述べているSに対する貸金の具体的経過は、あくまで事後の出来事ということになるからである。

 矢野らが「原告がMに対して『Tが一人暮らしになったこと』を報せたことが詐欺事件の引き金となった」とする事実が「本件訴えの争点事実」であると主張を変えたのは、TとOの陳述書は証拠価値がないものにしようとする意図もあったのではあるまいか。原告からTの陳述書を提出されたことは、矢野らにとってかなり痛手だったということなのかもしれなかった。

毎回のように主張が変遷

「本件記事は『原告山川が詐欺事件に関与した』と主張するものである」とする原告の主張に対し、矢野らの主張は次のように変遷してきた。



(本件における矢野らの主張の変遷)

「事実は本件記事のとおりである。」(答弁書)

「原告山川がMに、高額な資産を有する一人暮らしのTの情報を漏洩したことは、Sの詐欺行為を仲介したものである。」(のちに、上記の記載のうち「高額な資産を有する」の部分を削除)(準備書面1)(筆者注=ここまでは一応、摘示事実は「原告山川は詐欺事件に関与した」というものであることを前提にした主張である)

「摘示事実は『結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかった。』『元議員の立場で、貸金の仲介者のような役割を果たしながら、山川元市議は『知らん顔』』との記載である。原告山川はMに対して『Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね』と話しており、山川が本件事件を仲介し関与したことは明らかである。よって、上記の記載は客観的事実と一致する。」(筆者注=本件記事は、「山川は『口ききをしただけ』と記載したにすぎない」とする主張へと変遷=最初の摘示事実のすり替え=準備書面2)

「原告山川はMに対して『Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね』と詐欺犯人にとって耳寄りな情報を提供し、本件詐取のきっかけを提供したものであるから、原告が本件詐欺に関与したことは間違いない。」(準備書面3)(筆者注=原告がMにTの話をした事実に基づき「原告山川は詐欺事件に関与した」とする主張に戻った)

「原告山川がMに対して『Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね』と話したことが詐欺事件の引き金となった、というのが本件訴えの争点事実であり、その事実は山川自身が認めている。原告山川による上記情報漏洩によって本件詐欺事件が発生したことが真実であることは明らかである。」(=最後の準備書面における主張。前回の「原告山川は詐欺事件に関与した」とする主張から「山川がMにTの話をしたことが詐欺事件の引き金となった」とする主張へと変遷)



 矢野らの主張の変遷をみると、③で不可解な主張をしたものの、④においては「山川が詐欺事件に関与した」とする主張に戻っている。この時点から、山川がMに対して「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話した事実を根拠に据えて主張を組み立てようとする方向性が明確になった。

 ところが最後の⑤になると、山川がMに対して「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことが「詐欺事件の引き金となった」、山川がMに対して「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことによって「本件詐欺事件が発生した」となり、〈「原告山川を詐欺の共犯であるとする主張」は存在しない〉とまで言い切っている。上記④では「原告が本件詐欺に関与したことは間違いない」と断定しているが、これは「詐欺の共犯」という意味ではないのだろうか。

 いずれにしても、最終準備書面に至り、矢野らの主張が「山川は詐欺事件に関与した」というものから「山川がMに対して『Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね』と話したことが詐欺事件の引き金となった」というものへと変遷したことは明らかなようである。「詐欺事件に関与」ではなく「詐欺事件の引き金となった」とは、これまでにない主張だった。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第19回
準備書面における原告の主張

 原告は被害者Tの陳述書とTに事情を聞いたOの陳述書とともに、準備書面5を提出している。口頭弁論1週間前の平成28年5月16日である。1週間前に提出すれば、被告側にも反論を用意する時間があるだろうという趣旨もあった。

 準備書面5で、原告はまず被害者T自身の陳述書に基づいて次のように主張している。

〈被告らは原告がM(筆者注=原文は実名。被害者Tから多額の金を借りたSの姉、以下同)に対して「Tさん(筆者注=実名、以下同)が一人になっちゃったのよね」と話したことが「本件詐欺の端緒となった」と主張しているが、Tの陳述書には、TがS(筆者注=実名、以下同)に対して最終的に2600万円を貸してしまう経過や心理状態が詳細に記載されている。とりわけ同陳述書……には、「そのような申し入れは断れば良かったのですが」と前置きした上で、……「……Sらにいろいろと世話になったこと」で借金の申し込みを断れなかったと当時の胸中を具体的に述べている。すなわち、TはSらに世話になっていなければ借金の申し入れを断っていたと述べているのであり、この点からもTがSに多額の貸金をしたことと「一人暮らし」であることとは全く無関係だったことが明らかである。〉

 また原告は、Tの陳述書には、多額の金を貸してしまったTが最後には「貸さなければこれまでの金を返してもらえないのではないか」と不安になり、さらに求められるままに金を貸してしまうに至った心理状態が記載されている一方、原告にはいっさいの言及もない点を指摘。これらの点からも、原告がMに対して「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことと本件「詐欺事件」にはなんらの因果関係もないと主張していた。

 矢野らは原告がMに対して「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことが「詐欺事件に関与した」とする根拠であると主張している。この点について原告は、刑法上の観点からも反論している。

「詐欺事件に関与した」とは「詐欺の共犯」であるとの趣旨である。「共犯」であるとは、原告がMに対して「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話した際、原告がMと同様に被害者Tから金を詐取するとの犯意を持っていたと被告らは主張しているということになる。

 原告はMに対して「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話したこと自体を否定していない。ところが被告らは、原告がMに対して「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことが「詐欺事件の端緒となった」と主張するのみで、原告がSと同じ「犯意」を持っていたとする立証はもちろんのこと、主張すらしていない。このような被告らの主張について原告は次のように主張している。

〈詐欺の犯意がない原告を詐欺の共犯であるとする主張は、刑法の「共犯理論」を無視した独自の主張であり、本件記事の真実相当性を主張することは許されない。〉

 裁判所としても、原告がMに対して「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話した事実のみをもって「詐欺事件に関与した」と認定するのは難しいのではあるまいか。

 以上が、「山川は詐欺事件に関与した」とする本件記事の本論に関して原告が準備書面5で行った主張だった。

奇怪な反論

 原告が最後の準備書面5を送付してから3日後、被告らは準備書面5に対する反論を記載した準備書面4を送付してきた。原告が提出した準備書面5のうち最も重要な、被害者Tの陳述書に基づく主張に対して矢野らはどう反論するのか――。これが原告の最大の関心事だった。矢野らは準備書面4でこう主張していた。

〈被害者Tの陳述書に、Sによる貸金名目の詐欺に際し、原告の口利きによって詐欺された旨の記載がないとしても、原告山川が……犯人グループのMに被害者の個人情報を報せたことが、本件詐欺事件の引き金になったという被告等主張の事実が否定される訳がない。〉

 被告らはこう主張し、さらに〈(Oの陳述書)を含め、原告山川がMに被害者女性(T)が……独居となったという個人情報を報せたことが詐欺事件の引き金となった、という本件訴えの争点事実〉と主張し、「原告がMに対して『Tが一人暮らしになったこと』を報せたことが詐欺事件の引き金となった」とする事実が、あたかも本件ですでに認定済みの「本件訴えの争点事実」であるかのように主張していた。

 矢野らがここで用いた「本件訴えの争点事実」という聞き慣れない文言が厳密に何を意味するのかは定かでない。しかし、「争点」という以上は「重要な争点」であり「摘示事実」という意味のようにも聞こえる。

 しかし矢野らがそう主張しているのだとしても、原告が問題にしている本件記事は「原告が詐欺事件に関与した」というものである(記載内容は〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉〈創価、元市議らが仲介して〉など)。したがって、本件の争点は「原告が詐欺事件に関与した」する記事に真実性・相当性があるか否かである。

 すると矢野らは、原告がMに対して「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことが「詐欺事件に関与した」証拠であることを立証しなければならないことになる。つまり「共犯」としての「犯意」、あるいは山川が当初からTから金を詐取する目的でMやSと通牒関係にあったことを立証しなければならない。言い換えれば、それが立証できて初めて、原告がMに対して「Tさんが一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことが重要な意味を持つことになるのである。

 矢野らは本件の立証対象について、「『原告山川が詐欺事件に関与した』とする事実」ではなく、「『原告山川がMに対してTの話をしたことが詐欺事件の引き金になった』とする事実」であると主張しようとしていたのだろうか。問題となっている『東村山市民新聞』第186号にはそのような記載は存在しない。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第18回
貸金が重荷に

 被害者Tの陳述書によれば、Sからの本格的な借金申し込みが始まったのは、10万円を貸したのに対して12万円を返してきた翌月(平成21年6月)のことである。Sは「知り合いの魚屋が資金を必要としている。年内には返すから300万円を貸してほしい」というのだった。

 Tは躊躇したが、Sは「2人の娘が保証人になるから」というので貸すことにした。Tは陳述書で、「病院についてきてもらったり、ホテルで食事をご馳走になったりしたこともあり」、断りきれず、Sに金を貸してしまったと述べている。Sがそこまで計算していたのかどうかは定かではない。しかし、多額の借金を申し込んだタイミングとその後の状況をみれば、Tからみて過剰とも思えるSの「親切」ぶりは、Tにできるだけ恩を売ろうとしていた可能性を否定できないのではあるまいか。

 いずれにしても現実に、その300万円を手始めにSはいろいろな理由を付けて同年7月に300万円、8月ごろには400万円と立て続けに借金を申し込むようになった。「貸付先」はいずれもS以外の事業主で、名目は「事業資金」だった。だから、それぞれの事業に応じた、それらしい「見返り」があるとも説明された。金の受け取りは必ず現金で、いずれもSが「仲介」するといって受領し、「事業主」は姿を見せなかった。

 Tはこのころから、貸した金をすべて早く返してもらってSとの貸借関係をすべて清算したいと思うようになっていた。その時点で、誰かに相談することも考えた。しかし、そうなれば貸金のすべてを打ち明けなければならないし、また人に相談したことがSの耳に入れば、金を返してもらえなくなるのではないか--。Tはこのような出口の見えない不安にさいなまれるようになっていたという。

返してもらえない不安

 そんなとき、Sはさらに米屋の事業資金名目で借金を申し込んできた。Tは「もう遠慮したい」というそぶりをみせたのだろう。するとSはこう畳みかけた。「これを貸してくれれば、前に借りた分も全部返してしまうから」と。まるでTの心中を見透かしているようだった。

 これを聞いたTは「今度貸すことで今までの金が全部戻ってくるのなら、誰にも知られずにすむ」と考えてしまう。通常なら、Tは金を貸している立場で、金を返してもらうことについて相手に遠慮する必要はない。ところが、それどころか相手は「金をもっと貸してくれなければ金を返せない」などと身勝手な要求をしているのだった。Tにとって、すでに1000万円を超える金を相手に渡してしまっていることが、むしろ弱みになってしまっていたのである。

 借金をカタにした無言の脅しといってもよかろう。Tはそこまで追い込まれた状況にあったということである。こうしてTはさらにSに金を貸してしまった。

 それから間もなくSは「米屋さんからのお礼」といって米30キロを持ってきた。資金を必要としていた米屋の気持ちということで、Tを安心させようとしたのだろう。その時点でTに法的手段にでも出られては元も子もないということだったかもしれなかった。 

「返済のためには金が必要」

 とうとう最後には、Sはあからさまにこういって借金を申し込んできた。「今まで借りた金を返すだけの金が入る予定があるが、そのためには急いで500万円が必要だ」と。Tはまたしても、「金を返してもらえるのなら」との思いから、さらに500万円を貸してしまった。

 こうしている間に平成21年10月、最初の返済期限が訪れた。しかし返済はなく、それどころか、Sは貸してくれないと返せないような口ぶりで重ねて借金を申し込んできた。Tは「返してもらえないと困る」という気持ちが先に出て、仕方なくさらに2回にわたって計300万円を貸してしまった。

 こうして最終的にTは、Sに2600万円を貸してしまう。なおSは借金の際には「銀行には振り込まないで」と、いずれもSが「仲介」するといってベンツに乗って手土産持参で受け取りに来たという。「事業主」は姿を見せなかった。直接取りに来たのは証拠を残さないためだったものとみられる。

 しかし、やはり期限が来てもSから返金はなかった。「警察に相談するしかない」といったところ、やっと一部が返金されたが、TがSらに対して返金訴訟を提起するまでに、2000万円以上が未返済の状態となったのだった。

Tの述懐

 Tの具体的資産額を知ったSは、Tを病院に連れて行くなど世話を焼いて人間関係を築いた。最初の300万円を借りることに成功すると、Sは「むげには断れない」というTの心理を見透かし、あるいはTにそれなりの見返りをぶら下げて期待感を刺激しつつ借金を重ね、しまいには「貸さなければ返してもらえないのではないか」という恐怖を植え付け、断れない状況に追い込んでいった――。TがSに多額の金を貸してしまった経過は以上のように要約できる。

 仮にTがSに金を貸した経過の中で、ほんのわずかでも山川が顔を出した事実があれば、Tはそのことを記載しただろう。しかしTの陳述書の中に、原告山川の名前すら発見することはできない。矢野と朝木は、山川がM(Sの姉)に「Tさんが独り暮らしになっちゃったのよね」と話したことが「本件詐欺事件の端緒となった」と主張しているが、陳述書の中にそのような記載もいっさい存在しなかった。

 それどころか、Tは陳述書で、Sから最初に多額の借金の申し込みがあったときの心境についてこうも述べていた。

「そのような申し入れは断ればよかったのですが、SやMにいろいろとお世話になっていたこともあり、断りきれず……」(趣旨)

 TはSに最初に金を貸してしまった理由を明確にこう述べている。「山川がM(Sの姉)に『Tさんが独り暮らしになっちゃったのよね』と話したことが本件詐欺事件の端緒となった」とする矢野らの主張とはかなりの開きがある。陳述書全体を見渡しても、「独り暮らし」であることが原因で大金を貸してしまったとする記載はいっさいない。つまりTは、「山川がM(Sの姉)に『Tさんが独り暮らしになっちゃったのよね』と話したことが本件詐欺事件の端緒となった」などとはまったく考えていないということにほかならなかった。

 陳述書に山川の名前がいっさい出てこないことに加え、Sに大金を貸してしまった理由についてのTの認識から判断すれば、「山川が詐欺事件に関与した」などという事実は存在しないとみるのが常識的な結論だろう。だから矢野は、Tの陳述書を入手していたにもかかわらず提出しなかったということではあるまいか。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第17回
直筆の署名と捺印

 第5回口頭弁論までに原告が提出していたもう1つの重要な証拠は、被害者T自身の陳述書(=「証言」)である。この陳述書は第4回口頭弁論(平成28年4月11日)以後に作成されたものではなく、平成22年にTがS(金を貸した相手)に対して返金を求めて提訴した際に作成されたもので、T本人の直筆の署名と捺印がある。

 陳述書の日付は「平成23年」となっており、以後の「○月○日」の欄の日付は空白になっているが、重要なのは「平成23年に被害者T自身がSに対する貸金状況について証言した」ということである。当時の貸金返還訴訟に提出することになれば日付を記入しなければならない。しかし、日付が記載されていなくても「Sに対する貸金状況に関する被害者T自身の証言」という本質は署名・捺印によって保証されている。

 TがSに最後に金を貸したのは平成21年の11月で、平成22年3月に提訴、和解成立が平成23年6月である。陳述書の頭書にはその裁判の事件番号が記載されてもいるから、この陳述書が返金請求訴訟の最中に作成したものであることは疑いなかった。被告らが提出した被害者Tの告訴状が平成24年11月5日付だから、告訴の1年以上前に作成されたものということになる。

 山川は当時、被害者Tから「貸金を返してもらえなくて困っている」との相談を受け、東村山署に相談に行き、アドバイスに従って弁護士を紹介するなどTを支援するために奔走した。そのおかげで、Tは提訴することができた。「金を詐取した連中の仲間」だと思っている人物に対して、通常、貸金を取り返す相談をもちかける者はいない。

「必要ない」と言い張った被告ら

 なお、朝木直子が陳述書を提出した際、原告が「伝聞にすぎない朝木の陳述書ではなく、被害者Tの陳述書を提出すべきだ」と反論したのに対し、被告らは「(被害者Tが警視庁に提出したSらに対する告訴状)を提出している以上、重ねてTの陳述書を提出する必要がないと判断しているためである」と主張していた。

 被告らは告訴状だけでなく、Tが陳述書を作成した裁判の和解調書、さらにその裁判に提出したMと関わりのあった市民の陳述書を2通提出していた。被告らが提出したこれらの書類をみる限り、被告らはTから本件貸金に関わる書類一式を預かっているとみるのが自然ではあるまいか。当然、その中には、今回原告が証拠として提出したT自身の陳述書も含まれているだろう。しかし被告らは、T自身の陳述書に限っては「提出する必要がない」と主張していたわけである。

 被告の矢野と朝木は、最近の準備書面で「山川がMに対して『Tさんが独り暮らしになっちゃったのよね』と話したことが、本件詐欺事件の端緒となった」、すなわち「『Tさんが独り暮らしになっちゃったのよね』と話すことによって山川は詐欺事件に関与した」と主張している。被害者Tの陳述書を評価するにあたり、まず注目されるのは、陳述書の中に、矢野と朝木が主張する「山川が詐欺に関与した」と疑われるような記載があったのかどうかである。

親切すぎる対応

 Tの陳述書はSに貸した2600万円の返還を求めるものだから、Tがいかなる経緯でそのような大金をSに金を貸すことになってしまったのかが詳細に記載されていた。陳述書ではまず、被害者Tが直接金を貸した相手Sの実の姉であるMとの関わりについて述べている。

 それによると、Mはマッサージをしている間、身内に経営者がいるとか、妹が毎年海外旅行に連れて行ってくれたり、よくブランド品をくれるなどと自慢話をしていた。平成21年の5月上旬、Mがしばらくぶりにやってきたときのこと、Mは「妹が孫の月謝の支払いに困っているので10万円を貸してもらいたい。すぐ返すので」といってきた。Tは高級婦人服を個人で商っており、「10万円ぐらいなら」と思ったのだろうか。Tはその場で10万円をMに手渡した。

 その後しばらくして、Mの妹であるSが「お礼に伺いたい」といってMとともにやって来て、その日を境にSはT宅を頻繁に訪問するようになった。ある日、Tが夫婦関係がもめていることを話すと、Sは弁護士を紹介するといって、事務所まで同行した。

 和解成立後に被害者Tが警視庁に提出した告訴状によれば、弁護士との面談にはSも同席した。Tは弁護士に対して親から相当の金融資産を相続した旨を具体的な金額で説明をした。当然、Sもその話を聞いていた。もちろんTは、弁護士に話した自分の資産がまさかのちにSに狙われることになるとは思いもしなかった。

 また、Tが持病を持っていることを知ると、Sは「知り合いの先生がいる」と病院を紹介し、その病院まで連れて行ってくれるなどした。その際にもSは診察室までついてきた。その後、通院は毎月1回続いたが、10月頃までSは毎月のように診察に同行した。Tはそのたびに固辞したが、Sは同行するのをやめなかった。

払拭された不安

 ただ、Sはこうして通常では考えられないくらい親切にしてくれたものの、「すぐに返す」といっていた10万円は5月下旬になっても返すそぶりをいっこうにみせなかった。いつ返してくれるのだろうかとTは不安に思うようになっていた。親切にかこつけて、借金を返さないつもりではないか、と。

 ところが、Tのそんな不安を一気にかき消してしまう出来事が起きた。5月末、SがMといっしょにやって来て、「12万円をお返しします」というのだった。「それは多すぎます」とTは2万円を返そうとした。しかしSは「この2万円はお礼です」といって引かなかった。Tは仕方なくその2万円を受け取ることにした。

 ――ここまでが、TがSに多額の金を貸してしまうまでのプロローグだった。Sが10万円の借金をきっかけにTと知り合い、Tの具体的な資産状況を知り、さらに関係を深めていった様子がうかがえる。この間に、原告山川の名前はいっさい出てこない。

(つづく)
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