FC2ブログ
ブログマガジン エアフォース
ブログで興味深い記事を公開していきます。
著書紹介

民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

最近の記事

カテゴリ

プロフィール

プールマン

Author:プールマン

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク

QRコード

QR

FC2カウンター

多摩湖寿会事件 第107回
説得力を欠いた判断

 東京地裁は、朝木、矢野、天目石、清水による各表現行為の「公益性」に関する判断を示したあと、天目石ブログの、

「Y元市議を何回か見かけたことがあります。『めちゃくちゃケバいなあ。』と感じました。でも、あの厚化粧の下にはこんな秘密があったんですね。もっとも彼女のスキャンダルはこれだけではないですが」

との記載に対して山川が「侮辱」であると主張している点について判断している。東京地裁はこの点について次のように述べた。



(「侮辱」に関する判断)

「被告天目石の番号13の記事(筆者注=上記の記事)における表現の一部には、原告に対する侮辱的表現があったといいうるとしても、一般的な読者は、番号12の記事と一体となったものとして捉えるものと考えられ、これが独立した不法行為であるとまではいえない。」



 判決がいう「番号12の記事」とは平成28年8月26日付のものであり、問題の「番号13の記事」がアップされたのは同年11月30日である。2つの記事の間には3カ月ものブランクがあることがわかる。にもかかわらず、後の記事(番号13の記事)を読んだ一般読者がどうして3カ月前に同じテーマの記事があることを知ることができようか。したがって、一般読者がこの2つの記事が一体のものであると認識できる道理はないとみるべきであり、「一体として捉える」から「これが独立した不法行為であるとまではいえない」とする東京地裁の認定は無理があるというべきではあるまいか。

 また仮に、前の記事の存在を知る読者がいて、2つの記事を一体のものと捉えたとしても、上記の侮辱的表現がなくなるわけでも薄まるわけでもなかろう。むしろこの一般読者が「山川は寿会の金を横領した」と理解すれば、問題の侮辱的表現をより現実味をもって受け取る可能性が高いというべきではないかと思う。東京地裁の「侮辱」に関する判断は、その根拠がきわめて希薄というほかなく、説得力に欠けるように思えてならない。

「真実性」「相当性」

 いずれにしても、こうして東京地裁は朝木、矢野の『東村山市民新聞』と天目石のブログ、清水澄江の新年会案内における表現行為について「公共性」と「公益性」を認定した。すると、上記の各表現について、被告らが提出した証拠から上記の表現行為には真実性あるいは真実と信じるに足りる相当の理由があったと判断する場合には違法性が阻却されることになる。

 なお、上記の各表現について被告らが立証すべき対象として東京地裁が認定した内容は次のとおりである。



(東京地裁が認定した立証対象)

「原告の行為によって、その財政的基盤が危うくされたことにつき、これが原告による犯罪行為(横領又は詐欺)による可能性があったとの事実を摘示し、又は、当該行為を行った原告の資質に問題があったとの事実を摘示するか、各事実に関する意見ないし論評を表明するものである。」



 上記の内容について、朝木や清水が真実性、相当性を立証したものと判断すれば、上記の各表現行為については違法性が阻却されることになる。

 上記の各表現について東京地裁は、清水と山川が提出した書証および尋問での供述「によれば」として、次のような事実を認定した。



(東京地裁の認定した「事実」)

ア レシートと領収書の二重計上


 1件の支出に対して、レシートと領収書を使って二重支出した事例があり、他にも複数回行われている。

※(山川は横領、着服の事実を否定しており、山川が横領したとの確かな証拠は被告側から提出されていない)

イ 幟の購入代金の二重計上

 平成26年8月15日の幟の購入を平成26年度の会計帳簿に計上し、領収書を添付したが、平成27年8月15日にも同一の支出を計上し、上記平成26年の領収書控えを根拠資料として添付した。寿会が幟を購入したのは1回である。しかし、同一の領収書を根拠とした支出が2回行われたことになり、支出が二重計上された。

※(山川は、前会長が2年にわたって領収書を持ってきたので支出の手続きをしただけと主張し、着服を否定している。二重計上された代金を山川が着服したとの確かな証拠は被告側から提出されていない)

ウ サークル活動費用の個別の支出

 寿会内の各サークルについては、寿会から毎年度定額の補助金を受領することになっているが、この補助金とは別に各サークルに対して個別の支出を相当数行った記録が会計帳簿に記入されており、二重支出となっており、相当の部分が根拠のない支出であったと認められる。

※(サークル活動費の支出に二重支出があったこと、それが不適切な処理であったことは山川も認めている。しかし、山川は二重支出になった金額は寿会50周年記念事業のために保管していたと説明し、横領、着服を否定している。また被告側からも山川がその額を横領したとの確かな証拠は提出されていない)

エ 寄付金の入金未記入

 寄付金については会計帳簿に入金の記載がなされていないが、実際には各自治会等から寿会に寄付があった。

※(山川は寄付金の記入漏れがあったことは認めているが、着服を否定している。また被告側からも、山川が寄付金を着服したとの確かな証拠は提出されていない)



 ここまでの事実認定をみる限り、いずれも不適切な会計処理であることには違いない。しかし、それをもって「山川が横領した」と断定する根拠とはなり得ないのではあるまいか。

 また上記の不適切な会計処理については、山川と清水ら新役員の間で「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」とする誓約書を締結する以前に清水が指摘していた事項である。つまり、清水に限っていえば、いずれも誓約書の締結によってすべて解決済みなのであり、上記の問題点を取り上げて「山川は寿会の金を横領した」と主張することは問題の蒸し返しにすぎず、清水の主張はそれ自体が違法あるいは少なくとも不適切なものといえるのではあるまいか。

 ここでも東京地裁は、誓約書の存在とその意義について一言も言及していない。

(つづく)
TOP
多摩湖寿会事件 第106回
不十分な認定

 朝木・矢野による『東村山市民新聞』による表現行為、天目石のブログにおける表現行為、清水澄江の「新年会案内」における表現行為の各行為について、東京地裁は次のように認定した。



(朝木・矢野の『東村山市民新聞』における表現行為に対して)

「被告朝木らの行為は、東村山市議会における本件寿会への東村山市の公金支出を公の問題として取り挙げるとの市議会議員としての活動の一環の行為又は当該行為から派生した行為」である。

(天目石の表現行為に対して)

「被告天目石の行為は、当該被告朝木らの行為を自らの意見を交えて公に紹介し、支援する意図のもとでされているものと捉えることができ(る)」

(清水の表現行為に対して)

「被告清水の行為は、本件寿会の会長として、本件寿会全体に関わる問題について会員に向けて問題提起を行ってきたものと捉えることができ(この点、被告清水において、本件誓約書作成後も、原告が横領を認めて謝罪をする一文を得たいと考えていたことは認められるものの、個人的に一文を得たいというものではなく、本件寿会の運営を念頭においていたものと捉えることができ、また、前会長の加藤の責任追及が含まれているかは、本件における目的の認定を左右するものではない。)



 このうち、『東村山市民新聞』と天目石のブログに対する認定内容は、この記載のかぎりでは具体的にいかなる理由で「公益性」を認定すると判示しているのか不明というほかない。朝木の議会発言については議員としての発言ということで一応の「公益性」が認められるとしても、同一人が発行に関わるビラだからといって、それはあくまで個人的なビラであり、ただちに「公益性」が認められるという理由にはなるまい。「公益性」を認定するのなら、ビラ独自の理由が必要なのではあるまいか。理由が不十分であるといわざるを得ない。

 同様に、天目石のブログに関する認定においても、「朝木の意見を支援する目的と捉えることができる」から「公益性がある」というのも、ブログ自体の「公益性」について具体的に判示しているものとはいえないのではあるまいか。朝木の議会発言に「公益性」が認められるとしても、天目石のブログは私的なものにすぎず、「議員の発言を支援する目的」だったからといって、それをもってただちに「公益性」が認定できるということはなかろう。ここでもやはり、「公益性」を認定するのなら、あくまでブログの内容自体を検討した結果でなければならないのではあるまいか。

 朝木・矢野による『東村山市民新聞』と天目石ブログに対する「公益性」の認定理由については、上記のとおり、きわめて不十分なものであると思えてならない。

誓約書をスルーした認定

 清水澄江の行為に対する「公益性」判断の対象は、

「前会計山川昌子氏の会計会費の不正使用・着服につきましても、説明しご理解を賜りたく、より多くの参加を切にお願いし、お待ち申し上げます。」

 とする平成29年1月の新年会案内における記載である。この表現は「山川は寿会の金を着服した」と断定しているから、「本件寿会全体に関わる問題について会員に向けて問題提起を行ってきたものと捉えることができ(る)」とする東京地裁の認定は不可解に思える。

「本件寿会全体に関わる問題について会員に向けた」ものであるという点においては「公益性」があるとみることはできるだろう。しかしそうだったとしても、新年会の案内で「問題提起」するのなら「会計問題」とすれば足りるのであり、「山川昌子の不正使用・着服」との文言を使用する必要はあるまい。したがって、東京地裁が清水の文言を「問題提起」であると認定したことは理解できない。

 まして寿会における会計問題は、平成28年8月17日に山川昌子および前会長の加藤幸雄と清水澄江会長ら新役員との間で誓約書を交わしたことによって終結している。誓約書は、同年7月1日に山川が寿会に対して清水が請求した金額を返還したことを前提として、清水の要求に従って山川が務めている複数の団体の役員の職を辞任すること、および双方が「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」とする項目からなり、双方が署名捺印している。

 裁判上の和解ではないが、当事者同士の契約としての和解であり、「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」との文言は、「今後、当事者間に債権債務はない」とする確認にほかならない。この点については、当事者である清水自身が尋問で「そのように認識していた」と供述している。つまり、山川の不適切な会計問題については形式的にも実質的にも決着がついていたということであり、「今後は一切の申し立てをしない」という契約が成立していたということなのである。しかも、誓約書には「山川は横領、着服を認めて謝罪する」趣旨の文言も存在しない。

 上記のとおりの誓約書の趣旨から清水が寿会会員に配布した新年会案内の文言をみた場合、「山川昌子の不正使用・着服」と断定する内容に「公益性」があるといえるのかどうか。いまだ未解決の問題について「問題提起」するというのなら話はわかるが、誓約書によって終結した問題について、しかも「山川昌子の不正使用・着服」と断定することは、解決した問題の蒸し返しにほかならないのではあるまいか。

 東京地裁は清水の表現行為の「公益性」について検討するにあたり、なぜ誓約書の意義について触れなかったのかという点も含め、そのような蒸し返しに「公益性」があるとする東京地裁の認定には疑問を持たざるを得ない。

(つづく)
TOP
多摩湖寿会事件 第105回
「公共性」と「公益性」

「会計に関わった原告の行為によって、その財政的基盤が危うくされたことにつき、これが原告による犯罪行為(横領又は詐欺)による可能性があったとの事実を摘示し、又は、当該行為を行った原告の資質に問題があったとの事実を摘示するか、各事実に関する意見ないし論評を表明するもの」

 これが、朝木の議会質問(および関連する議員としての行為)以外の朝木らの表現行為に不法行為責任があるか否かを判断する上で前提となる認定である。

事実摘示や論評による名誉毀損は、公共性、公益性があり、真実であることの証明があったとき、または真実であると信じたことに相当の理由があると認められるときには違法性は阻却される。東京地裁はこの最高裁判例に基づき双方の主張を検討している。

 まず「公共性」と「公益性」について、東京地裁は次のように述べて朝木らの各表現について認定した。



(朝木・矢野の主な表現行為)

「元公明市議が横領! 老人クラブから」

「山川・元公明市議の横領」

「横領事件を引き起こした山川・元公明市議」

(天目石の主な表現行為)

「東村山市での元市議会副議長(公明党)による老人会費着服事件」

「元公明市議が横領」などと記載した『東村山市民新聞』を転載した行為

「Y元市議を何回か見かけたことがあります。『めちゃくちゃケバいなあ。』と感じました。でも、あの厚化粧の下にはこんな秘密があったんですね。もっとも彼女のスキャンダルはこれだけではないですが」

(清水澄江の表現行為)

「前会計山川昌子氏の会計会費の不正使用・着服」



(「公共性」と「公益性」に関する東京地裁の認定)

「原告は元市議会議員の立場にあったのみならず、市の監査委員を務めた経歴を有する者で、かつ、複数の公益団体の要職にあった者であるから、上記各事実の摘示又は意見等の内容は、その資質等に関わり、広く公の正当な関心を集めるものと認められる。そうすると、本件各表現行為は、各行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合であるといえ、その各表現内容からしても、表明に係る内容が人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものとは認められない。」



 東村山市から補助金を受けている団体における出来事なので、「公共性」が認定されるのは当然である。

原告の主張に対する判断

 ただ、「公益性」については、山川は、

①寿会の過去の会計問題を追及するにあたり、朝木らは前会長である加藤幸雄に対してはなんらの追及もせず、ことさら山川を標的にして積極的かつ執拗に「原告は寿会の金を横領した」と主張したこと

②「山川は寿会の金を横領した」とする主張が、いずれも、山川と清水ら寿会役員との間で「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」との誓約書を交わしたあとになされたものであること

--などを理由に「公益性はない」と主張していた。

「公益性はない」としていた山川の主張に対して、東京地裁は朝木ら、天目石、清水の各表現行為についてそれぞれ次のように判示した。



(山川の主張に対する判断――「公益性」)

(朝木・矢野の『東村山市民新聞』における表現行為に対して)
 
「被告朝木らの行為は、東村山市議会における本件寿会への東村山市の公金支出を公の問題として取り挙げるとの市議会議員としての活動の一環の行為又は当該行為から派生した行為」である。

(天目石の表現行為に対して)

「被告天目石の行為は、当該被告朝木らの行為を自らの意見を交えて公に紹介し、支援する意図のもとでされているものと捉えることができ(る)」

(清水の表現行為に対して)

「被告清水の行為は、本件寿会の会長として、本件寿会全体に関わる問題について会員に向けて問題提起を行ってきたものと捉えることができ(この点、被告清水において、本件誓約書作成後も、原告が横領を認めて謝罪をする一文を得たいと考えていたことは認められるものの、個人的に一文を得たいというものではなく、本件寿会の運営を念頭においていたものと捉えることができ、また、前会長の加藤の責任追及が含まれているかは、本件における目的の認定を左右するものではない。)



 各被告の表現行為について東京地裁はこう述べた上で、「各被告らにおいて、原告個人に対する個人的な感情が併存していたことはうかがわれるとしても、本件各表現行為の摘示又は意見等の内容が、公共の利益に関する事実に係るものであることは既に述べたとおりであって」として、上各表現に「公益目的が存在していたものあることが推認できる」とした。

 また、天目石の「Y元市議を何回か見かけたことがあります。『めちゃくちゃケバいなあ。』と感じました。でも、あの厚化粧の下にはこんな秘密があったんですね。もっとも彼女のスキャンダルはこれだけではないですが」とのブログにおける記載に対して、山川が「侮辱」であると主張していた点についてはどうか。



(天目石ブログにおける「侮辱」的記載について)

「被告天目石の番号13の記事(筆者注=天目石のブログにおける上記記載)における表現の一部には、原告に対する侮辱的表現があったといいうるとしても、一般的な読者は、番号12の記事と一体となったものとして捉えるものと考えられ、これが独立した不法行為であるとまではいえない。」

 東京地裁はこう述べて、天目石の不法行為も否定した。

(つづく)
TOP
多摩湖寿会事件 第104回
名誉毀損性に関する判断

 東京地裁が名誉毀損の不法行為が成立するか否かを検討したのは、以下に示す朝木、矢野、天目石、清水による各表現行為である。



(朝木、矢野による表現行為=『東村山市民新聞』第188号)

①1面


「元公明市議が横領! 老人クラブから」との横書きの白抜きでの見出し、及び「市議四期、市議会副議長、監査委員を担当した人物が」「創価・元市議が四年間にわたり」「一部返金するも『これは横領ではなく積立金だ』と開き直り」との各見出しをつけて、

「山川昌子・元公明市議が、同町の老人クラブ『多摩湖寿会』の会計を担当した2012年度から2016年度の4年間に、……会予算の2割以上を横領していた。」

「事件発覚後事態を重く見た『多摩湖寿会』側が、横領金の一部約42万円を返還すること、……求めたところ、……横領金の一部42万円を『多摩湖寿会』側に山川昌子元市議は返還したという。」

「被害を受けた『多摩湖寿会』側は、『許せない、横領金はあらゆる方法を使って全部返してもらう』と怒りを露にしている。」

「矢野・朝木、両議員は10月はじめ、山川昌子元市議が横領した金員のうち公金に当たる部分の返還を求めるよう、東村山市長に監査請求を行った。」

 との各本文を記載。

②2面(矢野の署名記事

「政権末期」「創価学会信者が多すぎる市役所・社会福祉協議会事務局」「パワハラ横行の渡部市政」との各見出しをつけて、

「山川・元公明市議による横領事件について」

「山川・元公明市議の横領」

「横領事件を引き起こした山川・元公明市議」

 との各本文を記載。

③3面

「公明を擁護」「土方市議ら横領事件を擁護!」との見出しをつけて、

「老人クラブ(『多摩湖寿会』)を舞台に山川昌子・公明党元市議が前代未聞の横領事件を引き起こしたが、本人は未だに、これを否定するかのような態度を見せている。」

 との本文を記載。

④4面(朝木の署名記事)

「横領をした元公明党議員は元市議会副議長だけでなく」「こんな人物が市監査委員を!」との各見出しをつけて、

「研修旅行先で会員20人が入浴したとして入浴料1万円が研修費(公費)として計上されていることにも驚きますが、調査の結果、入浴したとされているその入浴施設は改修工事中で、『入浴の事実自体があり得ない』ことも明らかになっています。」

「会員から集めた『福祉募金』も行方不明になっているなど、山川昌子元市議が返金した42万4500円の他にもかなりの不正会計があることは明らかです。」

「会計帳簿に添付された領収書には、……山川元市議の私的な飲食費と思われる経費が多く見られます。」

 との各本文を記載。



 朝木と矢野が『東村山市民新聞』で行った問題とされる表現は以上である。朝木と矢野が「山川は横領した」と断定していることは疑問の余地がないように思われるが、どうだろうか。

 東京地裁が次に検討しているのが武蔵村山市議、天目石のブログにおける以下の記載である。



(天目石のブログにおける記載)

①平成28年8月26日付ブログに記事を掲載し、朝木の一般質問通告書をリンクした行為

(記事)


「公明党市議が老人会費を横領か? 東村山」とのタイトルをつけ、

「元東村山市議会議員Y(公明党)による老人会費の横領疑惑が発覚しました。9月7日の東村山市議会一般質問で朝木直子議員が追及することになっています。東村山市議会のホームページで質問の通告文を見ることができます。」

 と記載した上、番号1の通告書(筆者注=朝木が平成28年8月24日に提出した一般質問通告書)が掲載されているホームページのアドレスを貼りつけてリンクした。

筆者注=朝木の一般質問通告書には「多摩湖寿会で発生した、元市議会議員による業務上横領疑惑について」とのタイトルおよび列挙された質問項目には、

「多摩湖寿会において、平成24年度から平成27年度にかけて、会計業務についていた元市議会議員によって行われた、業務上横領が強く疑われる行為」

「横領と思われる不正行為」

「横領が強く疑われる不正」

「行政や社協の『隠ぺい』ともとれる対応」

「元市議が寿会会計から抜いたことを認め賠償した42万4500円」

「この元市議は42万4500円を会計から抜いたことを認めている」

「会計の不正処理を行った元市議会議員」
「寿会会計から抜いた」

 などの文言が含まれている。)

②平成28年8月26日付ブログの天目石自身の記事

「Y元市議を何回か見かけたことがあります。『めちゃくちゃケバいなあ。』と感じました。でも、あの厚化粧の下にはこんな秘密があったんですね。もっとも彼女のスキャンダルはこれだけではないですが」

③平成28年11月30日付ブログに上記『東村山市民新聞』第188号を転載した行為

「公明党山川昌子元市議会議長による老人会費着服」(筆者注=ブログ原文ママ)と題する記事を掲載し、本文において、

「東村山市での元市議会副議長(公明党)による老人会費着服事件」

「東村山市民新聞で、山川昌子と実名で報道されました。被害者の老人会の皆さんは、山川昌子を告訴する準備を進めているそうです。」

「警察も、公明党の偉い先生たちにゴマをするためにうやむやにしたら本当に信頼をなくします!」

 と記載した上、同記事に上記『東村山市民新聞』第188号を転載した。



 天目石に関する検討対象は以上である。

 清水澄江に関する検討対象は平成29年1月に多摩湖町内に配布した「新年会開催のご案内」に記載された文言についてである。



(清水澄江による表現行為)

「新年会開催のご案内」に記載された以下の文言

「前会計山川昌子氏の会計会費の不正使用・着服につきましても、説明しご理解を賜りたく、より多くの参加を切にお願いし、お待ち申し上げます。」



東京地裁の認定

 東京地裁は名誉毀損の有無を検討する前提として、「事実摘示」か「論評か」、また上記の表現がどのような内容を主張しているかについて次のように認定した。



(朝木らの各表現行為に対する東京地裁の認定)

「……各表現行為は、いずれも……会計に関わった原告の行為によって、その財政的基盤が危うくされたことにつき、これが原告による犯罪行為(横領又は詐欺)による可能性があったとの事実を摘示し、又は、当該行為を行った原告の資質に問題があったとの事実を摘示するか、各事実に関する意見ないし論評を表明するものである。」

 上記の認定が本件裁判において、名誉毀損の不法行為の有無を検討する前提になっていると理解できた。

(つづく)
TOP
多摩湖寿会事件 第103回
国家賠償法1条1項の規定

 朝木の議会発言について、東京地裁立川支部は、国家賠償法1条1項の規定(=「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」)を根拠に朝木、矢野には不法行為に基づく賠償義務が生じることはないと認定した。その行為が公務員としての職務執行の外形を備えていれば、その公務員個人が損害賠償責任を負うことはないとの規定である。

 しかし、議員がその職務とはかかわりなく違法または不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別な事情がある場合には、国家賠償法1条1項が規定する国または公共団体の損害賠償責任が認められることになるとする判例もある。「議員が付与された権限の趣旨」とは、国民の利益に資するために議員には議会内での発言については最大限の自由が与えられるべきであるという趣旨にほかならない。

 だから、議員が最大限の発言の自由が与えられている趣旨に反する発言をしたということになれば、国家賠償法1条1項が規定する損害賠償の責任が国または公共団体に対して課される可能性があるということになろうか。国または公共団体が損害賠償金を支払った場合、国または公共団体はその原因となった議員に対して求償権を持つことになる。

 国家賠償法1条1項の規定によれば、仮に朝木の議会発言が「議員が付与された権限の趣旨」を逸脱するものだったとしても、朝木個人に損害賠償を請求することはできないことになる。したがって、東京地裁は朝木の議会発言が「議員が付与された権限の趣旨」を逸脱するものだったかどうかには触れず、朝木の議会発言や一般質問通告書の記載、ひがしむらやま市議会だよりにおける記載が「公務員としての職務執行の外形を備えていたかどうか」について判断している。

「公務員としての職務執行の外形」とは何かという根本的な問題もあろうが、東京地裁はあくまで外形は単純な意味での外形と解したようである。その上で東京地裁は、朝木の議会発言等の表現行為について「発言・記載内容にかかわらず、職務を行うについてされたものと評価するのが相当」と述べ、「各個人に対する不法行為が成立するものとはいえない」と結論付けた。

事実摘示と論評

 東京地裁は朝木と矢野の議会発言等の表現行為以外の、朝木と矢野が発行する『東村山市民新聞』および天目石のブログにおける表現と清水が町内に配布した新年会案内状における表現については、通常の名誉毀損裁判と同様の道筋で検討している。その前提として、東京地裁はまず以下の最高裁判例を引用して判断基準を示している。



(最高裁が示した名誉毀損の判断基準)

(「事実摘示」)


「事実を摘示しての名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには、上記行為には違法性がなく、仮に上記事実が真実であることの証明がないときにも、行為者において上記事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意または過失は否定される(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決)。」

(「意見ないし論評」)

「また、特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損について、その行為が公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあって、表明に係る内容が人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない場合に、上記意見等の前提としている事実の重要な部分が真実であることの証明があったときには、上記行為は違法性を欠き(最高裁昭和62年4月24日第二小法廷判決)、また、行為者において当該事実の重要な部分を真実と信ずるにつき相当の理由があるときは、その故意または過失は否定されると解するのが相当である(最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決)。」



 最高裁はその表現が「事実摘示」であると判断される場合には、「摘示される事実の重要な部分について真実の証明があったとき」「または真実と信ずるについて相当の理由があったとき」には名誉毀損が否定され、「意見ないし論評」と判断される場合には「人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでなく、上記意見等の前提としている事実の重要な部分が真実であることの証明があったとき、または行為者において当該事実の重要な部分を真実と信ずるにつき相当の理由があるとき」には名誉毀損が否定されるとしている。

 上記をみるかぎり、「論評」の場合には「人身攻撃に及ぶなど論評を逸脱したかどうか」が問題になるものの、立証の範囲については「事実摘示」であろうと「論評」であろうと現実的に大きな違いはないように思える。

 するとやはり最も問題となるのは、当該名誉毀損裁判において立証対象が何であると裁判所が判断したのか――ではあるまいか。立証対象となるのは、裁判所が認定した事実摘示の内容、あるいは論評が主張していると認定するその具体的内容である。

 裁判所は、自らが認定した事実摘示の内容あるいは論評が主張する具体的内容を前提に、真実性あるいは真実と信じるに足りる相当の理由があったかどうかを検討する。本件ではその認定内容が判決に影響を及ぼしたように思えた。

(つづく)
TOP
多摩湖寿会事件 第102回
議会発言の公益性

 山川が多摩湖寿会会長の清水澄江、東村山市議会議員の朝木直子、矢野穂積(いずれも「草の根市民クラブ」)らに対して損害賠償を請求していたことに対し、平成30年10月25日、東京地裁立川支部は山川の請求をいずれも棄却する判決を言い渡した。清水や朝木が、山川の不適切な会計処理に関して犯罪行為である「横領」「着服」と断定していたことについて、東京地裁は過失はないと判断したことになる。東京地裁はどんな理由でこのような結論を導いたのだろうか。

 朝木と清水の発言(表現行為)のうち、朝木の議会における発言とそれ以外の発言、表現行為を分けて見ていこうと思う。国会議員の国会における発言の自由は憲法で保障されており、地方議員についてもその発言は市民の代表として最大限尊重されるべきものとされているからである。

 しかし山川は、地方議員の発言が最大限に尊重されるべきものだったとしても、公益性はないと主張していた。その理由は以下のとおりである。



(山川が朝木の議会発言の公益性を否定している理由)

朝木の発言は根拠に欠けており、また山川に対していっさい確認しないままなされたものであること。

朝木が東村山市議会に対して質問通告書を提出した時期および一般質問を行なった時期はいずれも山川が清水ら寿会役員らとの間で「今後金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」とする誓約書を交わしたあとのことであること。

誓約書の成立は民法上の和解にほかならず、寿会が山川に対して行った金銭返還請求などの紛争は誓約書によって終結したものとみなされるべきであること。

にもかかわらず、誓約書の成立後、朝木は清水と2人で相談し、「山川は横領を認めて謝罪する」旨の文言が記載された示談書を作成し、山川に署名捺印させようとしたこと。山川は上記の文言に気がついて署名を拒否したが、誓約書の当事者である山川や前会長の加藤幸雄ら清水以外の役員らは内容を知らされておらず、このこと自体、山川に対して不意打ち的に「横領」を認めさせようとしたものにほかならない。示談書の作成は誓約書を一方的に反故にするものであり、朝木と清水の独断専行によって進められたものであることを物語っている。

示談書の作成は、山川に署名捺印させることによって、議会において「山川は横領を認めて謝罪した」と堂々と発言する目的だったのは明らかであること。



 山川は東村山市議会における朝木の発言が山川の不適切な会計行為を「横領」と断定している上、朝木は「山川は横領を認めて謝罪した」と議会で発言する目的をもって示談書を作成したのであり、それが朝木の一連の議会発言が山川を誹謗する目的でなされたものであることは明らかであり、公益性はないと主張していた。

最高裁判決を引用

 これに対して東京地裁は地方議員の発言についてまず次のように最高裁判決を引用している。



(議会発言に関する最高裁判例)

⑴公権力の行為に当たる公務員が、その職を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を与えた場合には、国家賠償法1条1項に基づき国または公共団体が賠償の責めに任じ、公務員個人は、被害者に対しその責任を負わない(最高裁昭和30年4月19日第三小法廷判決、最高裁昭和53年10月20日第二小法廷判決)。そして、同項の「その職務を行うについて」とは、客観的に職務執行の外形を備える行為をした場合をいうと解すべきであるから(最高裁昭和31年11月30日第二小法廷判決)、市議会議員が議会内における一般質問の際に行った発言は、その発言内容にかかわらず、職務を行うについてなされたものと認められる。



 東京地裁は一般論をこう述べた上で、朝木の東村山市議会における一連の発言について次のように結論付けた。



(朝木らの議会における発言に対する判断)

⑵被告朝木の東村山市議会における……(筆者注=具体的発言内容)発言はもちろん、これに準ずる被告朝木の……(筆者注=具体的記載内容)並びに被告矢野の……(筆者注=同)各一般質問通告書の提出についても、発言・記載内容にかかわらず、職務を行うについてされたものであると評価するのが相当であって、各個人に対する不法行為が成立するものとはいえない。

 また、……ひがしむらやま市議会だよりの記事掲載は、上記議会質問を要約したものを掲載したものであり、……(筆者注=上記の)各発言に準ずるものということができ、これについても職を行うについてされたものであると評価するのが相当であるから、上記と同様、各個人に対する不法行為が成立するものとはいえない。

⑶したがって、被告朝木の……(筆者注=具体的発言等)の各行為及び被告矢野の……(筆者注=具体的記載)行為については、地方議会議員が個人として責任を負う対象であるとはいえず、これらを個人の不法行為の対象とする原告の主張は理由がない。



 東京地裁は国家賠償法1条の規定と最高裁判例に基づき、朝木らの議会における発言等は最高裁が規定する「公務員の職務」にあたり、公務員の職務については議員個人が責任を負うものではないから、山川の請求には理由がないと結論付けたものと理解できた。朝木の議会における発言等が「客観的に職務執行の外形を備える行為」であることは否定できない。その限りにおいては、東京地裁が上記のように判断したのもやむを得ないと思われた。

(つづく)
TOP
多摩湖寿会事件 第101回
偽造された証拠

 清水が「『入浴料』のレシートは存在しなかった」と主張し、それを裏付ける証拠として提出した「入浴料」に関わる領収書綴り(コピー)の出金伝票はいったん剥ぎ取られたあとに再び貼り戻したものであることが明らかだった。山川はいったんレシートの上に貼り付けた出金伝票を剥がしたことはないと証言している。

 山川が剥ぎ取ったものでないとすれば、誰が出金伝票を剥ぎ取ったのか。山川が出金伝票を剥ぎ取っていないとすれば、山川が平成28年5月に清水に引き継いだ時点では、山川が領収書綴りに記入した整理番号「№44」の右端が切断されてはいないことになる。

「入浴料」の出金伝票が領収書綴りから剥ぎ取られたことが明らかになったのは平成28年10月7日に清水が市老連に領収書綴りを提出した後である。清水が提出した領収書綴りには出金伝票が貼られてはおらず、出金伝票だけがまとめられていた。領収書綴りに出金伝票が貼られていないことを知った山川が東村山市健康福祉部の担当者に確認すると、「こちらではいっさい加工しておりません」との回答が返ってきた。

 したがって、領収書綴りから出金伝票を剥ぎ取ったのは清水以外にはいないと山川は判断していた。清水が市老連に提出した時点で領収書綴りから出金伝票が剥ぎ取られていたのだから、それから9カ月後の平成29年7月11日に清水が「『入浴料』のレシートは存在しなかった」ことの証拠として裁判所に提出した領収書綴りに出金伝票が貼られていたということは、市老連に提出した後、清水が剥ぎ取った出金伝票を再び領収書綴りの元の位置に貼り戻したとみるのが合理的なようにも思われた。

 平成28年6月26日の時点で清水が市老連に上記の領収書綴りを提出した当時、まだ裁判は起こされていなかった。ところが山川から提訴され、「入浴料」が争点の1つとなった。清水は山川から領収書綴りを引き継いだ時点で「『入浴料』のレシートは存在しなかった」と主張した。

 その主張を立証するには、出金伝票を剥ぎ取る以前の領収書綴りを提出する必要がある。このため清水は、あたかもそれが出金伝票を剥ぎ取る前の状態であるかのように出金伝票を貼り戻し、証拠として提出した――こういうことではなかったのだろうか。貼り戻した出金伝票が、左右については5ミリほどのズレはあるものの、上下についてはほぼ現状に近い位置に貼られているところをみると、清水はそれが貼り戻したものであることを悟られまいと一応の努力をしたものと推察することができた。

認めなかった清水

 山川は「入浴料」のレシートの整理について、まず領収書綴りにレシートを貼り付けた後、その上に出金伝票を貼り付けたと説明している。この説明が事実とすれば、上に貼られた出金伝票が剥がされない状態でレシートだけが脱落する可能性はないと考えるのが常識的な判断だろう。

 しかし、出金伝票が剥ぎ取られたとなれば状況は一変する。下に貼られていたレシートが出金伝票と一緒に脱落する可能性さえ生じるのである。

 清水が領収書綴りを市老連に提出した時点で出金伝票は領収書綴りから剥ぎ取られており、東村山市健康福祉部は「いっさい加工していない」すなわち、清水が提出した時点で出金伝票が剥ぎ取られていたと証言している。これらの事実からみると、領収書綴りから出金伝票を剥ぎ取ったのが清水であることは確かな事実であるように思われた。山川は、清水が出金伝票を剥ぎ取った際に「『入浴料』のレシートが脱落し、清水がそのことに気付かなかったためになくなってしまったのだ」と主張していた。

 清水は領収書綴りから出金伝票を剥ぎ取った事実を認めてはいない。山川は清水が出金伝票を剥ぎ取ったため、「入浴料」のレシートが脱落しなくなった可能性があることを立証する目的で、尋問の際に清水に次のように聞いた。

山川  出金伝票は、あなたが剥がしたのではありませんか。

 清水は山川の質問に対してこう答えた。

清水  最初から領収書はございませんでした。

 清水が、出金伝票を剥がしたかどうかについては答えをはぐらかし、レシートがなかったことだけを主張したことがわかろう。山川はすでに、清水が出金伝票を剥ぎ取り、その際にその際にレシートを紛失したと主張していた。清水は自分が出金伝票を剥がしたことを認めれば、山川の上記主張を利することになると考えた、あるいは弁護士からそう指導されてもいたのだろう。

出金伝票を剥ぎ取る動機


 清水は領収書綴りから出金伝票を剥ぎ取ったことを認めてはいない。しかし清水には出金伝票を剥ぎ取るだけの十分な理由があった。

 清水が出金伝票を剥ぎ取った領収書綴りを市老連に提出したのは平成28年10月7日だが、そのきっかけとなったのが同年9月21日に行われた朝木による決算委員会における発言だった。朝木は決算委員会で、山川が会計を務めていた当時の領収書を1枚1枚すべて確認するよう要求したのである。

 領収書綴りには領収書の上に出金伝票が貼られている。そのままでは領収書の確認がしにくいと清水が考えたとしても不思議はない。清水は担当者に領収書のすべてを効率的に確認してもらうために出金伝票を剥ぎ取って、ひとまとめにして提出したものと推測できる。その際に「入浴料」のレシートが剥がれ落ち、なくなった可能性は否定できないと考える余地は十分にあるというべきだろう。

 清水は出金伝票を剥ぎ取ったあとでレシートないことに気がつき、「山川は入浴の事実がないのに入浴したものとして入浴料を着服した」と主張した。しかし山川の反論にあったため、山川から引き継いだ時点でレシートはなかったと主張するため、急遽、剥ぎ取った出金伝票を領収書綴りに貼り戻して証拠提出したということではないのだろうか。

 しかし、清水は原状回復を試みたものの、山川の記入した整理番号が出金伝票にかかっていたことに気付かなかった。左端に整理番号の欠片をつけた出金伝票は、清水がいったん剥ぎ取ったものを貼り戻したことをうかがわせ、その行為自体が「山川は入浴料を着服した」と主張の根拠が希薄であることを示しているように思われた。

 山川は最終準備書面で、上記の出金伝票だけが貼られた領収書綴りのコピーは偽造されたもので、「山川は入浴料を着服した」とする清水の主張には根拠がないと主張した。

(つづく)
TOP
多摩湖寿会事件 第100回
「平成27年作成」の理由

 平成28年10月7日に清水が市老連に会計資料を提出した際、領収書綴りから出金伝票だけが剥ぎ取られ一まとめにされていた。このことは東村山市健康福祉部の証言から明らかである。すると、山川が提訴した平成29年1月30日の時点で「入浴料」の出金伝票は領収書綴りから剥ぎ取られてなくなっていることになる。

 清水は山川から会計帳簿を引き継いだ直後の平成28年6月の時点で「入浴料」のレシートがないことに気がついていたと主張している。その後、山川に対して「返金を求める」として送付した請求書の中に「入浴料」は含まれてはいなかった。

 清水が「入浴料」のレシートが最初から存在しなかったことを証明するには、出金伝票を剥ぎ取る前の領収書綴りを提出することが必要であるのは明らかだろう。出金伝票を剥ぎ取った後では、その際に、出金伝票の下に貼ってあったレシートもその際に脱落した可能性を疑われるからである。それに何より、貼っていた出金伝票がなくなった領収書綴りを提出すれば、かえって領収書綴りの改ざんが疑われることになろう。

 清水は平成28年10月7日に領収書綴りのコピーを市老連に提出した際、すでに領収書綴りから出金伝票を剥ぎ取っていた。すると清水は、出金伝票を剥ぎ取る前の「入浴料」のレシートに関わる領収書綴りのコピーを確保していたのだろうか。

 清水は「『入浴料』のレシートが最初から存在しなかった」ことを証明するものとして、出金伝票のみが貼られた領収書綴りのコピーを提出した。その作成期日は「平成27年」となっていた。それが真正のものであると仮定すれば、山川がその領収書綴りの当該ページを作成したのは平成25年のはずである。清水が作成期日を「平成27年」としたのは、山川から領収書綴りを引き継いだ時点で「入浴料」のレシートは存在しなかったことが証明できればそれでいいと考えたということなのだろうか。

コピーの作成期日は不明

 通常なら、清水は領収書綴りを平成28年以降にしかコピーできなかったのだから、上記証拠の作成期日が「平成27年」となっていたとしても許容の範囲といえるのかもしれない。しかし、本件の場合には、山川が提訴した時点で領収書綴りから出金伝票が剥ぎ取られていたことが明らかである。

 したがって、領収書綴りがいつまで原状維持されていたのかわからない。つまり清水が「平成27年」作成のものとして提出した領収書綴りは、清水が出金伝票を剥ぎ取る前のものなのか、清水がいったん剥ぎ取った出金伝票を貼り戻し、あたかも現状のものとして提出したものなのかはわからないということなのではあるまいか。

 清水が主張するように、上記領収書綴りが本当に「平成27年」時点のものであるのならいいが、いったん剥ぎ取った出金伝票を貼り戻したものであるということになれば、出金伝票を剥ぎ取った際にレシートも脱落した可能性が疑われる事態が生じよう。清水が提出した領収書綴りの真正性を判断する必要があると判断すれば、裁判所はそのコピーの作成時期を確定しなければならない。

 清水が提出した領収書綴りのコピーには多くの付箋が貼られていた。尋問で山川が清水に確認すると、その付箋は清水が付けたものであることをあっさり認めた。この時点で、領収書綴りのコピーが作成されたのは少なくとも清水が山川から引き継いだ後であることが明らかになった。

出金伝票に付いた影の謎

 清水が領収書綴りのコピーを作成したのが山川から引き継いだ後だったとしても、それが出金伝票を剥ぎ取る以前の状態をコピーしたものであれば、確かに最初から「入浴料」のレシートはなかったということが裏付けられたといえるだろう。しかし、清水が出金伝票を剥ぎ取った後で再び貼り戻したものだったとすれば、「最初から『入浴料』のレシートはなかった」とする清水の主張は一気に信用性を失うことになる。

 清水が領収書綴りのコピーを作成した時期はいつなのか。それが出金伝票をいったん剥ぎ取った後で貼り戻したことをうかがわせる痕跡が残っていた。

 山川によれば、レシートを領収書綴りに整理する際、まずレシートを貼り、その上に同じ金額を手書きで記載した出金伝票を貼り付けた後で、当該支出の通し番号を記入していた。その通し番号は会計帳簿の番号と共通しており、会計帳簿の支出金額をレシートで確認できるようになっているのである。番号の記入に使用していたのは黒のサインペンだった。

 では、「出金伝票をいったん剥ぎ取った後で貼り戻したことをうかがわせる痕跡」とはどういうことなのか。

 清水は「入浴料」のレシートが存在せず、おくたま路での入浴の事実がなかったことの証拠として、出金伝票だけが貼られ、レシートが貼られていない領収書綴りのコピーを証拠として提出した。清水はそれが「平成27年」時点のものであると主張していた。

 実は、その領収書綴りに貼られた出金伝票には、その左上端に2カ所、1ミリほどの汚れのような影があった。その影の5ミリ左側には「入浴料」の整理番号「№44」の数字が書き込まれている。

 出金伝票にある「汚れ」はどうやってついたものなのか。たんなる汚れにすぎないのかどうか。念のために整理番号「№44」と出金伝票の影の部分を拡大してみた。すると、それまで考えていなかった事実がわかった。「№44」の右の「4」の右端が縦方向に切断されたように欠けており、その切断面と、出金伝票の側の「汚れ」と思っていた影の左端の切断面がぴったり合致したのである。

 この事実が示しているのは、「入浴料」に関わる領収書綴りを作成するにあたり、山川は最初にレシートを貼り、その上に出金伝票を貼り付けた後で整理番号「№44」を書き込んだが、その際、「№44」の右側の「4」の右端が出金伝票の左端にかかっていたのだということである。当然、その時点で「4」の右端部分が欠けていることはない。

 では、清水が提出した領収書綴りの「№44」の右端部分が欠け、5ミリ右に貼られた出金伝票の左端に「4」の欠けた部分があるのはなぜなのか。何者かが「入浴料」の出金伝票を剥がし、その後に再び貼り戻した――こう理解する以外になかった。

(つづく)
TOP
多摩湖寿会事件 第99回
 元東村山市議の山川昌子が、名誉を毀損されたとして東村山市議の朝木直子、矢野穂積、多摩湖寿会会長の清水澄江らを提訴していた裁判で、一審の東京地裁立川支部は平成30年10月25日、山川の請求を棄却する判決を言い渡した。これに対して山川は、一審判決を不服として同年11月7日、控訴した。

山川は貼り付けたと主張

 さて、山川が一審で提出した最終準備書面の紹介を続けよう。「入浴料」のレシートに関する主張である。

 平成28年6月26日の時点で「入浴料」のレシートがないことを認識していたとする平成29年7月11日付清水準備書面の記載と清水が山川に送付した「入浴料」の項目がない請求書の関係をどう理解すべきだろうか。請求書の日付が平成28年6月26日で、一方、上記準備書面の日付が平成29年7月11日であることに間違いはない。

 請求書と上記準備書面の日付からみると、清水は上記準備書面で平成28年6月26日の時点で「入浴料」のレシートがないことに気付いていたと主張しているものの、実際にはその時点ではレシートがないとは認識しておらず、だから請求書に記載しなかったのではないのかという疑問が浮上する。朝木が「入浴料のレシート」がないとして、「山川は入浴料の1万円を着服した」と議会で初めて発言したのが平成28年12月議会(同年11月30日の一般質問)であることも、清水はそれまで「入浴料」のレシートがないとは思っていなかったのではないかとの仮説に信憑性を与えよう。

 清水は、山川に対して平成28年6月26日に請求書を送付するに際して、「平成28年6月24日から26日にかけて、被告清水ら寿会現役員において原告の会計在任期間4年度分の会計簿と領収書綴をチェックし」とまで記載している。ここまで入念にチェックしたにもかかわらず「入浴料」のレシートがないことに気が付かなかったというのも考えにくい。

 したがって、むしろ上記の準備書面の記載は、「山川から領収書綴りを引き継いだ時点ですでに『入浴料』のレシートは存在しなかったのだ」と主張するためのものだったように思える。清水は上記請求書との矛盾には気がついていなかったのではあるまいか。 

決算報告を認めていた清水

 清水が請求書の趣旨説明で「決算報告書で確認致しました」と述べる「決算報告書」とは、毎年5月に開催される総会で会員に配布される資料に綴られた報告書である。決算報告書には「おくたま路」における「入浴料1万円」の支出を含む「見学研修費」の決算額が記載されている。清水は請求書に「決算報告書にも収入報告有」と記載する一方、上記の決算額にはまったく異議を唱えていない。清水は決算報告書におけるこの記載も確認し、「入浴料1万円」の支出についても問題がないと認めていることになる。

 清水は領収書綴りに「入浴料」のレシートがないことを理由に、「入浴の事実はなかった」と主張している。しかし、決算報告書の記載内容を認めているということは、清水ら寿会役員が会計資料を精査し、山川に請求書を送付した平成28年6月26日の時点で、「入浴料」のレシートは領収書綴りの中に存在していたということにほかならない。

 当時、会計帳簿と領収書綴りを整理した山川は、「入浴料」のレシートは領収書綴りに貼り付け、その上に同じ内容を手書きした出金伝票を貼り付けていたと証言している。山川の主張と請求書の記載内容および請求書を送付する際の状況を記載した清水の準備書面の内容からみると、山川が清水に会計帳簿類を引き継いだ時点では、「レシート」は存在していたと理解するのが合理的というべきではなかろうか。

 ところが清水は平成29年7月11日付準備書面でさらに、平成28年6月26日の時点で「『おくたま路』入浴料の件などを把握し」、「原告から引き継がれた領収書綴を確認したところ、平成25年7月1日の『おくたま路』入浴料として……1万円を支払ったとの原告作成の出金伝票はあるものの、これに係る領収証の添付がなかった」とまで主張している。この主張をどう理解すべきだろうか。

 清水からすれば、事実はともかく、山川から会計帳簿類を引き継いだ時点で「入浴料」のレシートはなかったということでなければならない。引き継いだ後になくなった(紛失した)などということは断じてあってはならないのである。平成25年7月1日に行われた「おくたま路」での研修において入浴はしていないのだから、入浴料を支払った事実は存在しない。したがって、最初から「入浴料」のレシートは領収書綴りには存在しない――と。

 しかし、清水が領収書綴りに「入浴料」のレシートがないことに気付いたのが、山川に請求書を送付した平成28年6月26日の時点でないことは、清水自身が提出した準備書面や上記の証拠などから明らかだった。清水が山川から引き継いだ時点で領収書綴りにレシートが存在したとすれば、その後、いずれかの時期に清水が紛失してしまったということになりかねない。

 だから清水は、平成28年6月26日付請求書と請求書で決算報告書の内容を認めていた事実をあえて無視し、その後に作成した平成29年7月11日付準備書面で「山川から引き継いだ時点でレシートはなかった」と主張するしかなかったとみるのが自然である。こうして、「入浴料」を請求しない請求書との間に説明不能の矛盾が生じたのだろう。

剥ぎ取られた出金伝票

清水が「入浴料」のレシートがないと主張し始めた時点(正確には平成28年11月30日、同年12月議会で朝木が発言した時点)で、すでにレシートが領収書綴りからなくなっていたことだけは間違いない。山川が「入浴料」に関わる領収書綴りを作成した際に当該レシートを貼り付けていたとすれば、「入浴料」のレシートはいつなくなり、そのことに清水はいつ気づいたのか。

 平成28年10月7日、清水は会計帳簿の再調査のため、市老連に帳簿類のコピーを提出した。その際、山川が領収書綴りに貼り付けていたレシートと出金伝票は、出金伝票だけが領収書綴りから剥ぎ取られ、別の書類としてまとめられていた。

 山川が作成した際、出金伝票はレシートの上に貼り付けていたのだから、市老連に提出された出金伝票の束は、清水が領収書綴りから引き剥がした上でまとめたものにほかならない。領収書綴りの「入浴料」のレシートが貼られていた箇所は、出金伝票が剥がされてまったく何も貼られていない空白の状態になっていた。この状態だけをみれば、確かに「入浴料」のレシートが存在しないことは明らかだった。

 山川は領収書綴りにレシートを整理する際、まずレシートを貼り付け、その上にかぶせるかたちで出金伝票を貼り付けていた。したがって、出金伝票が貼ってある状態のままレシートだけがなくなる可能性はない。

 しかし、領収書綴りから出金伝票が剥ぎ取られたということになると状況は変わってくる。山川がレシートを整理した際、出金伝票の下に「入浴料」のレシートを貼り付けていたと仮定すれば、上に貼り付けていた出金伝票が剥ぎ取られれば、「入浴料」のレシートが剥がれ落ちる可能性が生じることは否定できないといえるのではあるまいか。

(つづく)
TOP
多摩湖寿会事件一審判決(速報)
 元東村山市議会議員の山川昌子が、「多摩湖寿会の金を横領した」などと宣伝されたことによって名誉を毀損されたとして多摩湖寿会会長の清水澄江、東村山市議の朝木直子、矢野穂積らを提訴していた裁判で、東京地裁立川支部は平成30年10月25日、山川の請求を棄却する判決を言い渡した。東京地裁は「同事実を真実と信ずるについて相当の理由があったというべきである」などと述べた。

 詳細は改めて報告したい。

 なお、原告の山川は控訴を検討している。

TOP