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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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りんごっこ保育園民改費過請求事件 第1回
 認可保育園、りんごっこ保育園(高野博子園長)の保育士不足問題をめぐり東村山市保健福祉部が平成20年5月1日付通知を送付したのとちょうど同じ時期(りんごっこ保育園保育士虚偽申告事件第2回参照)、東村山市とりんごっこ保育園の間では普通の認可保育園では考えられないもう1つの不毛だが緊迫したやり取りが続けられていた。(宇留嶋瑞郎)

平均勤続年数を引き上げていたベテラン職員

 平成18年6月19日、会計検査院が東村山市に対して行った会計検査で、りんごっこ保育園が平成16年度分として国に請求していた補助金のうち、83万9800円の過請求があったことが判明した。この補助金とは「民間施設給与等改善費(=民改費)」といい、名目上は民間保育所の職員の給与等の待遇改善を目的としたものである。

 この補助金の支弁対象は「常勤職員」あるいは「非常勤であっても1日6時間以上かつ月20日以上就労し、社会保険等に加入している等雇用形態が常勤と同様の職員」で、職員の平均勤続年数によって支弁額が加算される(簡単にいえば、勤続年数の長い職員が多ければ民改費の支弁額は多くなる)。民改費の加算率は上から12%(平均勤続年数10年以上)、10%(同7年以上10年未満)、8%(同4年以上7年未満)、4%(4年未満)となっている。

 会計検査院の指摘によれば、高野は常勤職員を15名としてその平均勤続年数を「4年3カ月」と算出して民改費を請求。この場合の加算率は8%で補助金額は167万9300円だった。ところが、高野が申請した常勤職員のうち継続勤務年数27年のベテラン職員が常勤とはみなされない勤務形態にあり、民改費請求の対象とはならないことが判明した(この職員の月勤務日数は16~18日にすぎなかった)。

 したがって、このベテラン職員を除いて平均勤続年数を算出すると「2年7カ月」で、加算率は4%となり、補助金額は83万9500円となる。当時、りんごっこ保育園の常勤職員の勤続年数は他に8年、4年、7年、7年、5年で、残りの8名の職員は0年だったから、このベテラン非常勤職員が全体の平均勤続年数をかなり引き上げていたことがわかる。

 なお、民改費の請求にあたっては「申請書記載上の注意」があり、「(算定対象職員は)常勤である者。非常勤であっても1日6時間以上かつ月20日以上で、社会保険等に加入している等雇用形態が常勤と同様な職員も対象とする」と明記されている。経営者である高野は職員の給与計算もしているのだから、高野がこのベテラン職員の勤務実態を把握していなかったことはあり得ない。にもかかわらず、なぜこのような過請求が起きたのか。その原因は明らかになっていない。

 もちろん民改費の請求については、申請者は申請書を所管に提出(りんごっこ保育園の場合は東村山市)し、所管を経由して国に請求する。したがって過請求の原因がすべて高野にあるとは言い切れないが、通常、所管は保育園側の請求内容を信用して事務処理をしているようである。東村山市は過請求が明らかになった当時、会計検査院に対し「(故意ではなく)保育園側の単純ミス」と説明した。

高野は返還に応じる姿勢

 当時、東村山市保健福祉部は高野にその旨を説明し、返還してもらうことになると伝えた。これに対して、高野は応諾したという。誰にでも誤りはあるし、誰かを責めているわけでもない。誤りは素直に認め、返還すればそれですむ話で、所管もそれ以上の労力を割く必要もない。

 会計検査院の指摘に基づき東村山市は平成19年2月27日、過請求分83万9800円のうち国と都に対し国・都負担分の計62万円余をそれぞれ返還した。その段階で東村山市は、高野に対して東村山市の負担分を含む過請求分83万9800円全額の返還を要請することとした。

 ただし、いったんは返還に応じる姿勢をみせたとはいえ、すでに継続中の保育士不足問題や食中毒騒動の際の高野の対応からすると話がこじれる可能性もなくはないと東村山市はみていたらしい。東村山市は市の顧問弁護士に相談した上で平成20年4月28日、高野に対して「平成16年度東村山市民間保育所支弁交付額の返還請求のお願い」と題する文書を送付、同年5月8日までに回答してほしい旨要請した。文書の内容は以下のとおりである。



平成16年度東村山市民間保育所支弁交付額の返還請求のお願い

 平成16年度東村山市民間保育所運営費支弁については、平成18年6月19日に会計検査院第二局厚生労働検査第一課にて実施された会計検査により、誤りが確認され、交付額が2730万3166円(注・「民改費」を含むりんごっこ保育園に対する全体の交付補助額)となりました。したがって、下記差額分を返還されるようお願いします。
 なお、返還日を定めて平成20年5月8日までにご返答下さい。


1 交付額  2730万3166円
2 差額分  83万9800円
3 経過  別紙のとおり



 文書の交付から回答期限までには10日以上ある。誤って補助金を規定よりも多く受け取ってしまった場合、通常の認可保育園設置者ならただちに返還の意思表示をするところだろう。疑問があればその旨回答すればよい。ところが回答期限を過ぎても、高野からはなんらの回答もなかった。


(その2へつづく)


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りんごっこ保育園民改費過請求事件 第2回
会計士に依頼した不思議

 東村山市保健福祉部が高野に民改費の過請求分の返還を求めた時期(4月28日送付、5月8日回答期限)は、保育士不足問題をめぐり改善報告を求めた時期と重なっている(5月1日送付、5月16日回答期限)。いずれも回答に時間を要するようなものでもなさそうに思えるが、当事者としては2つの回答時期が重なったために期限までに回答できなかったのだろうか。

 その高野が東村山市保健福祉部児童課に訪れたのは期限から4日後の5月12日午後のことである。担当は高野にこう聞いた。

「回答期限を過ぎましたが、どうでしょうか?」

 高野はこう応えた。

「現在、会計士に内容をみてもらっている最中です」

 わざわざ来庁しなくても電話ですむ内容である。それはともかく今回の過請求は、高野が民改費請求の対象とした1人の職員が要件を満たしていたかどうかの問題で、あとは会計検査院が行った正しい民改費の計算に誤りがないかどうかの確認だけだと思うが、高野は会計士にみてもらう必要があると考えたらしい。

 確かに返還額(83万9800円)は返還する側からみれば少ない額ではない。それでなくても高野は、園舎建設費と土地購入代金として多摩中央信金から借り入れた(自己資産・自己資金はほぼゼロ)1億3500万円を補助金(公金)の中から年間100万円以上返済しなくてはならない。この借金を補助金(一部自分の給料)から返済すれば、借金で手に入れた土地・建物はすべて高野のものになるという無から有を生じる鮮やかな、かつおそらく前例をみない公金による個人資産形成の手法である。

 過請求分を返済資金に返還するということは当然、経営に影響を及ぼすこととなり、ひいてはその年の返済計画に狂いが生じるということにもなろう。高野がいったん受け取った83万円もの返済要請には簡単に応じられないと考えたとしてもなんら不思議はない。

「多忙」な会計士

 5月15日、高野は保育士不足問題で東村山市保健福祉部に対して改善計画を示さず逆に質問書を送付。しかし、民改費の返還についてはいまだ回答がなかった。5月19日午後、高野は再び児童課を訪れた。

「返還請求の件について対応いただいていますでしょうか?」

担当がこう聞くと、高野はこう答えた。

「現在も会計士にみていただいていますが、決算期なので忙しい様子です。平成16年度のものなのでそのあたりも考えながら、支払いをする場合、5月末までに完了したいので、来週の初めには回答したいと思います」

 このやり取りは平成20年に行われたものである。するとこの高野の発言の中の「平成16年度のものなので」とは時効のことを意味しているのだろうか。これだけでは判断できないが、いずれにしても高野は最初の回答期限から丸20日間、一方的に回答を引き延ばしたことになる。

「支払いをする場合、5月末までに完了したいので、来週の初めには回答したいと思います」といっていた高野は5月27日(火曜日)になっても来庁せず、連絡すら寄越さなかった。そこで同日午前、児童課担当者はりんごっこ保育園に電話した。以下はそのやりとりである。

児童課  民改費の返還について、今週の初めまでに回答をいただける予定でしたが。

高野  会計士が現在繁忙期であり、そちらからなかなか回答をいただけない状態です。もう少し時間をいただきたい。

児童課  いつぐらいに回答をいただけるか、会計士に確認いただけますでしょうか。

高野  いつぐらいに回答できるかは、確認してみます。

 誤りであろうと故意であろうと、国民の税金が不当に支払われたという事実は間違いない。この返還請求は税金の不正使用を正すという意味がある。それにしては「会計士が多忙」などというあいまいな回答を受け入れた東村山市の対応も悠長というほかない。


(その3へつづく)

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りんごっこ保育園民改費過請求事件 第3回
露にした対決姿勢

 民改費の一部の返還を求められた高野が会計士に何を確認してもらおうとしていたのかはわからない。しかし児童課が電話して1週間後の6月3日午前、高野は児童課を訪れ、初めて具体的な回答を持ってきた。高野はこう述べた。

「会計士と弁護士と相談した。具体的に根拠となる法律や条文を示してほしい」

 要するに高野は、「会計検査院が指摘しただけでは返還はできない」といっているのである。さすがに矢野と同居している(できる)だけのことはある。道理にかかわらず、自分を不利にするもの、自分を相手よりも劣位に立たせるものに対しては手段を尽くして闘うのが矢野のやり方である。多かれ少なかれ、自分の立場を悪くしたくないのが人情だとしても矢野の場合は、自分の立場を守るためには無実の人間を警察に突き出すことも厭わない。この特異性は、矢野の判断基準が道理や良識といったごく普通の社会的規範以外のところにあるからだろうか。

 さて、「根拠となる法律等はメモレベルのものでもかまわないか」と児童課が聞くと、高野は「それでけっこうです」と答えた。しかし高野が児童課を退出して5分後、高野から電話がかかってきた。

「弁護士に確認したところ、別紙でかまわないので部長名で正式な文書でほしい」

 メモでは誰が作成したものかも特定できず、裁判になったときには役に立たない。弁護士からそういわれた高野は急いで児童課に電話してきたということだろう。

 さらに6月6日午後、高野は児童課にやってきた。児童課は高野に対し「返還請求についてはやはり、当初送付した文書の内容で検討してほしい」と要請した。児童課としては、請求に誤りがあっただけだから、単純にその分を返還すればすむ話であるという理解だったのだろう。常識的にはそれだけのことだと思うが、高野にとってはそうではないようだった。高野は児童課の要請に対してこう答えた。

「最初の文書だけでは、根拠の法令がないと会計士と弁護士が判断できない。この状態では返還はできない」
 高野や矢野の常識では、いかなる不当な理由によるものだろうと、1度自分の懐に入れたものを返すについては法律的な根拠が必要だということなのか。あるいは彼らの中ではすでに、「民改費請求の誤り」という問題とはまったく別の問題となっていたのだろうか。だとすれば、高野のこれまでの対応を常識で理解するのは無理というほかない。

2度目の返還請求

 東村山市は誤りがあったことを認めて国と東京都に過請求分を返還したが、高野の判断基準は「法的根拠」以外にはないようだった。この段階で、東村山市は法的手段に訴える方法もあっただろう。しかし東村山市はなお高野の要求に応じる判断をし、高野に対し6月16日付で、改めて「『平成16年度東村山市民間保育所支弁交付額の返還請求のお願い』にかかる根拠について」と題する以下の内容の文書を保健福祉部長名で送付した。2度目の返還請求である。



「平成16年度東村山市民間保育所支弁交付額の返還請求のお願い」にかかる根拠について

 標記の件につきまして、平成20年4月28日付20東保児発第36号にて返還のお願いをさせていただいております。根拠等につきましては、下記のとおりとなりますのでご確認方よろしくお願いいたします。



 貴園に支払われるべき費用は、「児童福祉法第24条第1項に規定する児童の保育の実施に関する委託契約」(16東保児契委第1号)第5条及び東村山市民間保育所運営費支弁規則第6条第1号により、「児童福祉法による保育所運営費国庫負担金について(昭和51年16日厚生省発児第59号の2)に規定する運営費」と規定されており、先の通知のとおり、貴園に支払った費用に超過支払いが認められるため、当該超過支払い分につき返還をお願いしたい。なお、支払期限についての回答は平成20年6月30日までにご返答ください。



 保育士の人数さえまともに明らかにしようとしない認可保育園の園長に対する対応としてはきわめて生ぬるいとも思うが、一歩も引かない姿勢は評価できよう。法律的な内容としてもこれで十分と思われる。

 では、「根拠の法令がないと会計士と弁護士が判断できない」として法律的根拠の提示を求めた高野は、2度目の返還請求に対してどんな回答をしたのか。ところが、回答期限の6月30日を過ぎても高野からは何の返答もなかった。会計士も弁護士もいまだ「繁忙期」にあったのだろうか。今度は、高野からはその言い訳すらないまま、一月が過ぎようとしていた。


(その4へつづく)



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りんごっこ保育園民改費過請求事件 第4回
対決姿勢を鮮明にした東村山市

 これまで東村山市が高野に対して民改費の返還を求めて送付した文書は、事実上の返還請求ではあるものの、文書に対する回答期限を設けていたという意味で一方的に返還を請求するものではなく、穏当な話し合い解決を目指したものであると理解できよう。

 高野がいかに特異な保育園設置者であるとはいえ、りんごっこ保育園は一応国基準を満たした認可保育園であり、東村山市が大事な市民の子供の保育を委託している保育園である。いまさらどうかという気もするが、東村山市としてはたんに補助金を交付し交付される関係ではなく、本来信頼関係で結ばれるべき保育園と無用の争いはしたくないという思いがあったのだろう。

 しかし、「弁護士と会計士が判断できないから」という要求に応じて法律的根拠を示した文書を再送付したにもかかわらず、高野からなんらの回答もないことに対して、よくいえば鷹揚な、悪くいえばどこか腰の引けた東村山市もさすがに決断をしなければならないと考えたようである。7月14日、東村山市はこれまでの保健福祉部長名ではなく渡部尚市長名で「民間保育所運営費支弁額返還請求書」と題する以下のような文書を配達記録郵便で送付した。



民間保育所運営費支弁額返還請求書

 貴園に対し、平成16年度に交付した標記支弁額に関して、誤りのあったことが判明しました。つきましては、差額分を指定された期限までに返還してください。



1 平成16年度民間保育所運営費支弁額
(修正前)2814万2966円
(修正後)2730万3166円

2 返還金額  83万9800円

3 請求理由
 民間施設給与等改善費(以下「民改費」という)の算定に誤りがあり、加算率を8%から4%に修正したことによって民改費加算分が減額となり、この分が児童福祉法による保育所運営費国庫負担金について(昭和51年16日厚生省発児第59号の2)に規定する運営費を超えているため。

4 返還期限  平成20年7月28日



 それまでの文書と異なり、この請求書がすでに高野の意見や回答を聞くものではなく、有無をいわせず返還を求めるものであることがわかる。配達記録で送付したということは提訴を視野に入れたものであることを意味しよう。すでに遅いぐらいだが、渡部市長自ら高野の引き延ばしにずるずる付き合わない決断をしたことは評価できる。

最後通告

 しかし、高野は返還期限が過ぎても返還せず、返還請求に対するなんらかの回答もなかった。無視したという状況である。東村山市はナメられているというべきだろうか。普通の認可保育園設置者は所管に対してこのようなナメた対応はしない。

 東村山市には、この期に及んでなお、高野がたった1度の請求で素直に返還に応じるかもしれないというかすかな期待を持っていたのだろう。保育という公共事業のパートナーを最後まで信用しようとする姿勢はけっして悪いことではない。

 しかし、そのような性善主義がまったく意味をなさない相手が世の中には存在するということもまた動かしがたい事実なのである。東村山市は、(何度目かは知らないが)あらためて高野に対して常識を判断基準にすることはできないことを再確認したのではあるまいか。

 東村山市は当初の返還期限から一月後の8月27日、渡部市長名で「民間保育所運営費支弁額の返還について(最後通告)」と題する次のような文書を配達証明郵便で送付した。



民間保育所運営費支弁額の返還について(最後通告)

 このことについて、平成20年7月14日付、20東保児発第87号民間保育所運営費支弁学返還請求書を送付させていただいたところですが、返還期限の平成20年7月28日を過ぎても、下記金額が未だに返還されておりません。

 つきましては、直ちに同金額について返還をお願いいたします。

 なお、平成20年9月10日(水)までに全額返還されない場合は、法的対応をさせていただきますのでご承知置きください。



返還金額  83万9800円



 本来ならこの書面は返還期限(7月28日)を過ぎてからただちに送付していてもおかしくない。東村山市は1回目の返還請求を送付した時点ですでに「最後通告」までの流れを想定し、いつでも「最後通告」を送付できるように準備していたと思う。にもかかわらず、「最後通告」の送付が一月後だったのは盆休みを挟んだためだったか。

 ちなみに、高野がどう受け取ったかは別にして、東村山市が設定した返還期限がちょうど東京都指導監査部によるりんごっこ保育園に対する監査の日と重なったのはたまたまだろう。


(その5へつづく)


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りんごっこ保育園民改費過請求事件 第5回(最終回)
                           ★第1回から読みたい人はこちら


 さて、東村山市が送付した「最後通告」を受け取った高野が9月10日までに過請求分83万9800円を返還したのかといえば、高野はまたも返還しなかった。高野はこのまま返還に応じず、東村山市が返還請求訴訟を提起するのを待つのか。仮にこのまま法廷に持ち込まれれば高野に勝算はないように思えた。東村山市も負ける要素がないと踏んだゆえに「最後通告」を突きつけたのである。

質問に答えなかった矢野

 返還期限から1週間が過ぎた9月17日、東村山市議会の委員会室で市議会決算委員会が開かれていた。傍聴席の1つ隣の席に、高野の同居人であり、りんごっこ保育園の運営委員でもある市会議員の矢野穂積が座っていた。またとない機会なので、私は矢野にこう聞いた。

「矢野先生、民改費は返したんですか?」

 矢野は「税金も払っていないやつに答える必要はない」といった気がするが、残念ながら記憶が定かではない。高野が返したか、返さないのか、同居人である矢野が知らないことはあり得ない。しかしいずれにしても、高野が民改費を返還したかどうかについて、矢野はいっさい答えなかった。

 質問の仕方や状況にもよるが、回答しないのも1つの回答とみなすことができる場合がある。私の矢野に対する取材の経験からいえば、矢野が私の質問に答えないときは、そのほとんどが都合が悪くて答えられないのだろうと推測できるケースである。では、今日の矢野の反応をどう理解すべきかと私は考えた。

 そもそも今回の誤請求は規定以外の職員を対象として計算したことによるもので、故意はなく単純な過失だったとしても高野が過請求分を受け取ることのできる法的根拠はない。つまり、過請求分は不当利得と解釈することができよう。

 すると、常識的に判断すれば、高野が過請求分を返還しないというのは社会的に容認されることではあるまい。当然、高野が最後まで返還しなければ東村山市は法的手段に訴えることとなり、記者会見も行われ、マスコミで報道されることになろう。高野の立場がますます悪くなるのは目に見えている。したがって高野が「返還しない」のなら、矢野にとって好ましい状況とはいえず、私の質問に答えないことも理解できる。

 一方、高野がすでに返還していたとすれば、高野は過請求の事実を認めたことになる。ただ、返還の要請があった時点ですぐに返還に応じていたのなら、誰からも非難されることはない。誰にでも過誤はある。むしろ東村山市の事務処理も最小限度ですむから、すみやかに返還に応じたことを評価されるかもしれない。(認可申請以来の行政に対する高野と矢野の異常な敵対姿勢を知る者からすれば、すみやかに非を認めたという点において間違いなく評価しよう)。

 しかし、仮に返還したとしても、4月下旬の返還要請に対して不誠実きわまる言い訳を重ねた事実、自分の「誤請求」に起因するにもかかわらず、いったんは「法的根拠を示さなければ返還できない」などと、あわよくば過請求の責任を東村山市(すなわち東村山市民)になすりつけ、過請求をまんまとせしめようとした事実を消すことはできない(高野が返還しなければ、東村山市民は二重の被害を受けることになる)。

 高野が返還したとすれば、それは高野が返還に応じたという事実だけでなく、高野の不遜かつ狡猾なたくらみが東村山市の毅然とした姿勢の前に不調に終わったことをも意味する。平たくいえば、(高野の背後にアドバイザーがいたとすれば、その人物も含めて)高野の負けである。

 すると、この間の普通では考えられない異常な経緯をふまえれば、高野が返還していたとしても矢野にとってすでにその事実も堂々と明らかにできる状況にあるとはいえないことになろう。つまり矢野は、高野が返還しようが返還していなかろうが、私の質問に対して正面から答えたくない状況にあったと理解できるのではあるまいか。

観念した高野博子

 はたして高野は返還するのかしないのか。その答は私が矢野に質問してからほどなくして明らかになった。東村山市保健福祉部によれば、高野は9月16日、保健福祉部を訪れ、担当職員の指示のもと返還手続きをすませたという。返還期限の9月10日を6日も過ぎていたことは、東村山市がすぐに提訴することはないとみたのだろう。なかなかのふてぶてしさだが、私が矢野に質問した日の前日、高野はすでに過請求分を返還していたことになる。もちろんその事実を矢野が知らなかったことはあり得ない。

「草の根市民クラブ」は故朝木明代(万引きを苦に自殺)をはじめ、矢野もまた東村山市の公金使用のあり方について、その内容とやり方はともかくとして、きわめて厳しい立場をとってきた。その矢野が、認可保育園の補助金の過請求についてなんら議会で発言することもなく、過請求分を返還したかどうかさえ自ら明らかにしないとは不可解というよりない。この矢野の態度は、高野との同居人としての私的関係、さらにはりんごっこ保育園運営委員としての個人的立場を市議会議員としての公的立場よりも優先したものといわれても仕方あるまい。

 高野が過請求分を返還したのは、裁判になれば勝算はないと判断したということだろう。食中毒騒動事件をはじめ平成20年2月に発覚した保育士不足問題などにおける高野の対応をみれば、東村山市が法的手段を取ると言明しなければこれほど早く返還が実現したとは思えない。

 それでも、東村山市保健福祉部は通常の相手なら1回の説明で解決できる問題、それも本来の業務以外の問題を解決するために半年もの時間を費やしたという事実は軽くない。高野という特異な認可保育園経営者1人のために延べ何人の職員が、どれだけの時間とエネルギーを割いたか。半年という時間をかけて東村山市が得たものは何もない。財政上のマイナス分がゼロに戻っただけであり、そのために職員が費やした労力と時間は完全にマイナスのままなのである。

(了)

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