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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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久米川駅東住宅管理費等請求事件
 最近では自己の議員辞職を求めた市民らを名誉毀損で提訴するなど、これまで多くの東村山市民を相次いで提訴してきた東村山市議(草の根市民クラブ)の矢野穂積が、今度は自分の住む久米川駅東住宅の管理組合から管理費等(計76万2000円)の支払いを求めて提訴されていることが明らかになった。

48カ月の間1度も支払いはなし

 久米川駅東住宅管理組合が管理費等の支払いを求めて提訴したのは矢野穂積と、同居する高野博子(認可保育園「りんごっこ保育園」設置者=矢野と高野は1つの部屋の所有権を50%ずつ保有)及び2名の区分所有者。組合によれば、矢野は管理組合が発足した平成15年10月以降平成19年9月までの48カ月間(訴訟での請求範囲)、月額7000円の管理費及び長期修繕積立金1万円の計1万7000円を1度も支払っていない。

 この管理費及び長期修繕積立金の額が議決された管理組合総会が開かれたのは平成15年9月21日。総会は適法に成立し、管理費等も出席者の圧倒的多数で決議されている。なお矢野は、この総会の招集自体が役員らによる一方的なものだとして総会の延期を申し立て、総会には出席しなかった。通常、総会で決議された以上、仮にその議案に賛成しなかったとしても決議に従うのが民主主義のルールであり、現実に336名の区分所有者のうち矢野と高野ら4名を除くすべての住人が滞りなく管理費等を納入している。

 矢野は11月13日開かれた口頭弁論においてこう主張した。

「管理組合は非民主的な運営が行われていて信用できない。管理費等の支払い意思がないわけではなく、管理組合の理事長が交代し、運営が改善されれば支払う意思はある。その証拠に平成15年10月以降、1万3000円を法務局に供託している」

 矢野(高野の分も代表)とともに出廷したもう1人の滞納者も供託しており、この住人は「理事長が交代すればすぐにでも支払う」とし、「このような裁判を起こされること自体、まったく時間と労力の無駄だ」などと主張した(1万7000円の管理費等に対してなぜ矢野が1万3000円しか供託していないのか、その根拠は不明だが)。

「供託」とは、支払いの意思を示しているにもかかわらず、相手方がこれを拒否したり、支払いの相手が不在である、誰に支払ってよいかわからないなどの場合に、一時的にその金を法務局に預かってもらう、という制度である。相手方は一定の手続きをすれば供託金をいつでも受領することができる。ということは、管理組合の側は矢野からの管理費の受領を拒否しているということなのだろうか。

 ところが管理組合の理事に確認すると、実情はそうではなかった。管理組合は管理を委託している公社に矢野らに対する督促を依頼するとともに、管理組合自身も内容証明を送付するなどして支払いを促したが平成15年10月以降現在まで、矢野からももう1人の住人からもただの1度も支払いの意思表示を受けたことはないというのである。事実とすれば、矢野の供託の根拠もあやしいものということになろう。

すでに最高裁が総会決議の適法性を認定

 矢野は管理費を法務局に供託する一方、組合の決議から約2年後の平成17年8月、「総会の成立および決議は無効」などとして管理組合を提訴していた(つまり、この提訴理由が管理費不払いの理由に共通するものとみられる)。矢野は総会の無効などを争ったその裁判で、組合側は総会の開催通知を団地外居住者に送付していないとか、委任状に不正があるとか、あるいは出席集計が捏造であるとか、また管理費および長期修繕積立金の額には根拠がなく、管理委託会社の選定にあたっても理事長と利害関係のある会社を選んだ上、勝手に高額の契約を結び、住民の管理費を浪費しているなどと主張していた。

 しかし東京地裁八王子支部は、総会の成立を認め、総会での決議事項についても適法に議決されたものと認定して矢野の主張をことごとく排斥している(東京高裁、最高裁もこの判断を追認)。したがって、提訴された矢野が管理費等の支払いをあくまで拒んだとしても矢野の主張が容認される可能性はきわめて低く、話し合いによる和解にせよ判決にせよ、最終的に矢野がこれまでの供託金と不足分を加えた正規の管理費等を納めさせられることになるのは時間の問題だろう。ただ、4年間にわたり管理費等を支払わず、総会の決議をめぐって自ら裁判を起こし、敗訴してもなお自ら支払おうとはせず、ついには裁判という最終手段によらなければ管理費等の回収ができないこと自体、きわめて異様というほかない。

管理組合相手に4年で9件の争訟

 矢野穂積はこれまで多くの東村山市民を提訴し、法廷に引きずり出してきた。その件数は50件を超えるが、ここ久米川駅東住宅も例外ではなかった。今回の取材の過程で、前述の管理費等の決議が無効として提訴した裁判を含め、矢野が東住宅に入居した平成15年以来平成19年にかけての4年間に、管理組合を相手に9件もの争訟を起こしていたことがわかった(うち民事調停が3件)。このうち6件の裁判ではすべて矢野の主張が退けられているが、その中には、有線テレビ(JCOM)の導入によって受信障害が発生したから原状回復せよなどと請求、ところが管理組合とともに訴えられた会社側が調査を申し入れたところ矢野はこれを拒否したという不可解な事件もあった。

冒頭荒れた管理組合総会

 平成15年の管理組合発足以来、4年間で9件もの争訟を起こしてきた矢野は、団地の維持・管理についてもまったく協力していない。たとえば排水管清掃は全戸が参加しなければ意味がないが、矢野だけは清掃をさせず、共用部であるベランダの防水工事もさせなかったと聞く。そんな矢野が、理事長が交代したからといって延滞している管理費等をすんなり払うのかどうか。

 その新理事長の承認などを行う管理組合総会はさる11月25日に開かれ、矢野も今回は出席した。しかし総会は冒頭、荒れたものとなった。矢野がいきなり「質問がある」などとして議長の資格について異議を唱えたのである。1人の理事が「あなたに発言は許されていない」と一喝してその場は収まったが、今度はもう1人の滞納者が議長のマイクを奪い、理事の制止も聞かず裁判批判を始めたため、やむなく理事の1人が引きずり出し、ようやく自席にもどった。この間矢野は自席からしきりに野次を飛ばしていたというが、矢野に対してはこんな罵声も浴びせられた。

「文句があるなら管理費を払ってからにしろ」

 通常の総会ではめったに見られない光景だろう。その混乱の原因を作った側の1人が市会議員の矢野であることは明らかだった。しかし総会は、途中、矢野の長い質問があったものの、無事新理事長は承認され、昼前に終了した。

 裁判で矢野は「運営が民主的なものになれば支払う」などと主張しているが、管理組合に対して4年間に9件もの争訟を起こし、受信障害があるといいながら調査を拒み、まったく無関係の少年を警察に突き出すような人物の総会出席を拒まず、質問さえ許した管理組合の姿勢こそきわめて寛容かつ民主的というべきだろう。新理事長が選任されたことで矢野は滞納した管理費等をすんなり払うのだろうか。12月12日に予定されている弁論準備手続の行方が注目される。

(宇留嶋瑞郎)


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久米川駅東住宅管理費等不払い事件判決(速報)
 久米川駅東住宅に住む東村山市議、矢野穂積と認可保育園りんごっこ保育園の園長高野博子(同居)ら3世帯の住人が管理費(月7000円)と長期修繕積立金(同1万円)の不払いを続けているとして同住宅管理組合が矢野・高野らを提訴していた裁判で、東京地裁八王子支部(木下秀樹裁判長)は平成20年9月24日、矢野・高野らに対して不払い分全額の支払いを命じる判決を言い渡した。

 被告らが命じられた金額は、矢野と高野が連帯して76万円余、他の2名がそれぞれ約75万円と約116万円。矢野と高野は管理組合が設立された平成15年10月以降、1度も管理費等を支払っていない。

 管理費は組合の総会で承認されたもので、通常の集合住宅において支払い能力があるのに支払いを拒む例は珍しかろう。実際、東住宅で不払い状態にあるのは336世帯のうちこの3世帯だけで、このうち矢野・高野ともう1人については支払い能力がないわけではないことが裁判で確認されている。

最終的に決裂した和解交渉

 裁判は当初、裁判官が双方に話し合いでの解決(和解交渉)を斡旋する方向で始まった。矢野ともう1人の住人は「管理費等については法務局に供託している」などとして、支払いの意思がないわけではないなどと主張、管理組合自体あるいは管理組合の運営等に対する不平不満から支払いに応じていないかのような説明をしていた。とりわけ矢野は平成19年9月の段階で「この11月に役員改選が行われるから、理事長が交代し、組合の運営が民主的に行われるようになれば支払いに応じる」などとし、役員改選後に「和解案」を提出した。

 矢野の提出した和解案には「管理組合の運営の民主化に努める」、「矢野が供託した金員を受領する」などの条項が記されていた。しかし、「管理組合の運営の民主化に努める」との文言が入れば、それまで管理組合の運営が民主的なものでなかったことになるし、供託自体についても、矢野が供託していたのは月1万3000円にすぎない上、矢野が管理組合に対して支払いの意思表示をしたことは一度もなかったという。

 供託とは支払おうとする相手が受領を拒否したり、相手の居場所がわからないなどの場合、支払いの意思あることを担保するために法務局に預けるものである。すると、そもそも矢野には供託の要件がなかったことになるが、矢野の和解案にある供託金を管理組合が受領することに同意すれば、「支払いの意思表示をしたにもかかわらず管理組合が受領しなかった」という矢野が主張する事実を認めてしまうことになる。言い換えれば、矢野の和解案は自分には非がなく、むしろ不払いの原因を作ったのは管理組合の側にあるという事実を一方的に押しつけるものにほかならない。管理組合側として、矢野の側にのみ都合のいい和解案を飲むわけにいかなかったのは当然である。

 また、矢野・高野以外の2名の住人のうち1人は、口頭弁論の過程で平成20年7月以降、管理費等を支払う手続きをとったが、平成20年6月までの不払い分については素直に支払いの意思を示さず、判決やむなしの状況となり、同日の判決に至った。なお判決にあたり東京地裁八王子支部は、各被告それぞれに対する支払い命令のほかに、確定判決前に強制的に執行(差し押さえ)することのできる仮執行宣言を付した。

 矢野は管理費等の決定そのものについて適法なものではなかったなどとして、総会決議の無効を主張する裁判を起こしていたが、平成19年5月29日、同決議は適法である旨の判決が最高裁で確定している。管理費の支払いを求めた本件裁判はこの最高裁判決を受けてのものだった。今回の提訴にあたり管理組合側がより慎重に対処しようとしていたことがうかがえよう。

(宇留嶋瑞郎)

 

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久米川東住宅管理費等不払い裁判一審判決(第1回)
 平成20年9月24日、久米川駅東住宅に住む東村山市議、矢野穂積と認可保育園りんごっこ保育園の園長高野博子(同居)ら3世帯の住人が管理費(月7000円)と長期修繕積立金(同1万円)の不払いを続けているとして同住宅管理組合が矢野・高野らを提訴していた裁判で、東京地裁八王子支部(木下秀樹裁判長)は矢野・高野らに対して連帯して76万円払い余、他の2名に対してそれぞれ約75万円と約116万円(不払い分全額)の支払いを命じる判決を言い渡した。

 久米川駅東住宅は東京都住宅供給公社が昭和43年に開発した大規模団地で、そのうち336戸は積立分譲方式となっており、平成15年9月21日、区分所有者による管理組合総会が開かれ、管理組合が正式に設立された。その際、管理費(月額7000円)と長期修繕積立金(同1万円)の額が出席者の圧倒的多数で決議されている。

 東村山市議、矢野穂積(草の根市民クラブ)と高野博子は同団地の分譲棟に1室の所有権(それぞれ50%ずつ保有)を持っており、管理組合の組合員である。ところが矢野は、この総会の招集自体が役員らによる一方的なものだとして総会の延期を申し立てて総会には出席せず、管理費等の決議も無効であるなどと主張した。
 
 通常、適法に開かれた総会における決議事項は、仮に総会に出席してその議案に賛成しなかったとしても決議には従うのが民主主義のルールであり、現実に336名の区分所有者のうち矢野と高野ら4名を除くすべての住人が滞りなく管理費等を納入している。しかし矢野と高野は、管理組合が発足した平成15年10月以降平成19年9月までの48カ月間(訴訟での請求範囲=その後も状況は変わらない)、管理費等1万7000円を1度も支払っていなかった。

 このため管理組合が矢野と高野(および他2名の区分所有者)に対して不払いの管理費等の支払いを求めて提訴していたのが今回の裁判である。                                 (宇留嶋瑞郎)

総会決議の適法性は最高裁で確定

 平成19年9月に管理組合が提訴したのにはもう1つのきっかけがあった。矢野は平成15年9月の組合総会から約2年後の平成17年8月、「総会の成立および決議は無効」などとして管理組合を提訴していた(つまり、この提訴理由が管理費不払いの理由に共通するものとみられる)。

 その裁判で矢野は、組合側は総会の開催通知を団地外居住者に送付していないとか、委任状に不正があるとか、あるいは出席集計が捏造であるとか、また管理費および長期修繕積立金の額には根拠がなく、管理委託会社の選定にあたっても理事長と利害関係のある会社を選んだ上、勝手に高額の契約を結び、住民の管理費を浪費しているなどと主張していた。

 矢野の主張に対して東京地裁八王子支部は平成18年7月5日、総会の適法な成立を認め、総会での決議事項についても適法に議決されたものと認定して矢野の主張をことごとく排斥。東京高裁も同年12月26日、矢野の控訴を棄却。平成19年5月29日には最高裁が矢野の上告を棄却している。つまり、この時点で平成15年9月に開かれた管理組合総会の成立および同総会における決議内容についても裁判所のお墨付きが与えられたことになる。管理組合は最高裁の決定を待って矢野・高野ら3名の区分所有者に対して提訴に踏み切ったのである。

 したがって常識的な判断の範囲においては、提訴された矢野が管理費等の支払いをあくまで拒んだとしても矢野の主張が容認される可能性はきわめて低く、話し合いによる和解にせよ判決にせよ、最終的に矢野と高野が4年分の管理費等を納めさせられることになるのは提訴の時点ですでに時間の問題とみられた。運命共同体ともいえる同じ共同住宅の住人でありながら4年間にわたり管理費等を支払わず、総会の決議をめぐって裁判を起こし、敗訴してもなお自ら支払おうとはせず、ついには裁判という最終手段によらなければ管理費等の回収ができないこと自体、常識ではとうてい考えられないことというほかない。

 もちろん、東村山市議会議員である矢野とりんごっこ保育園の園長である高野が月々1万7000円の管理費等を支払えないほど経済的に困窮していたことはあり得ない。総会で決議された管理費等には4000円足りないが、矢野は「管理組合側が受領しない」という理由で毎月1万3000円を法務局に供託していたのである。

 4000円足りないのだから、管理組合としてこれを管理費等であると認めることはできないのは当然だが、矢野の側に支払いの意思があったのなら、わざわざ法務局に供託などせず、管理費等の窓口となっている公社か、矢野の自宅から徒歩1分の管理組合に直接その意思表示をすればよかろう。

 そもそも供託とは、支払いの意思表示をしているのに相手方が受領しないとか、相手方の居場所がわからないなどの理由があってはじめて認められるものである。しかし、管理組合側が矢野の支払い意思を確認していながらあえて受領を拒否する理由もそのような事実もなかった。管理組合は管理を委託している公社に矢野への督促を依頼するとともに、管理組合自身も内容証明を送付するなどして支払いを促したが平成15年10月以降提訴まで、矢野からはただの1度も支払いの意思表示を受けたことはなかったのである。すると、矢野の供託理由も正当なものとはいえなかったということになる。

 ただ矢野が、4000円足りないとはいえ供託していたという事実は、共同住宅で暮らす上で管理費等が必要であること自体については矢野も十分に認識していたことをうかがわせる。しかしなお、矢野にはすんなりと支払いたくない矢野なりの理由があったということらしい。問題は、矢野なりの理由なるものがはたして法律的にあるいは社会通念として容認されるべきものなのかどうかということである。


(その2へつづく)

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久米川東住宅管理費等不払い裁判一審判決(第2回)
自己中心的な「和解案」

 矢野は平成19年11月13日に開かれた第1回口頭弁論においてこう主張した。

「管理組合は非民主的な運営が行われていて信用できない。管理費等の支払い意思がないわけではなく、管理組合の理事長が交代し、運営が改善されれば支払う意思はある。その証拠に平成15年10月以降、毎月1万3000円を法務局に供託している」

 これに対して裁判長は、

「11月25日に開催される管理組合総会で新理事長が決まったのちに被告ら(矢野ら)がどういう対応をするのかを確認してから進行を含めて検討する」

 とした。理事長の交代によって矢野が管理費等をすんなり支払うことを約束すれば和解が成立するが、矢野がなんらかの別の条件を出してくるようなら和解の成立は困難なものとなろう。案の定、11月25日に開かれた管理組合総会で新理事長が承認されたが、矢野はいっこうに管理費等の支払い意思を示さなかった。その代わりに矢野が提出したのが次の和解案である。



和解条項(矢野案)

1 選定当事者矢野は、本年11月25日総会での新理事長による総会、理事会を含めた管理組合の運営の民主化及び経費節減を図るとの発言を評価する。

2 原告(管理組合)は、下記のとおり、管理組合の運営の民主化に努めるとともに、経費節減に努める。
⑴組合員に対して制限なく理事会の傍聴を認める。
⑵非居住者組合員にも平等に役員の被選挙権を認め、次期総会に規約改正を提案する。
⑶総会での組合員の発言を禁止または制限しない。
⑷積立金の費消を中止し、建替え準備金として積み立てる。
⑸次期総会に役員報酬の廃止を提案する。
⑹次期総会に事務員の雇用の中止および事務長の廃止を提案する。
⑺次期総会に、管理費減額を提案する。

3 原告は管理費等につき選定当事者矢野が供託した金員を受領し、選定当事者矢野は平成15年10月以降、原告に支払うべき月数に1万7000円を乗じた金員とに差額がある場合はその合計金員を原告に支払う。

4 当事者双方は、以上をもって、本件訴訟を終了させることを合意し、本件については、他に何ら債権債務のないことを相互に確認する。



 管理組合がこの矢野の和解案を受け入れるとどうなるか。

「管理組合の総会等の運営は民主的ではない」
「管理組合は経費や積立金を浪費している」
「管理費の決定も適正ではない」
「矢野の供託には正当な根拠がある」

 矢野の和解案を受け入れることは、これらの矢野の主張を認めるということにほかならない。矢野は前回の口頭弁論で述べた内容を反故にした上、管理費等の支払いに応じることと引き換えに、これまで矢野が団地内でばらまいてきたビラなどの主張を認めさせようとしていたのである。きわめて虫のいい、身勝手きわまる言い分というほかなかった。

 矢野と高野が組合員である以上、管理費等の支払いはそもそも当然の義務である。当然の義務を果たさせるために矢野の言い分をすべて認めるなどということはできないし、管理組合について矢野が主張しているような事実もない。管理組合が矢野の和解案受け入れを拒否したのは当然だった。

 裁判官としては、当初から団地内部の問題であり、話し合いすなわち和解の方向で解決させたいと考えていたように思える。しかし裁判は、矢野が当初の主張を簡単に覆し、管理組合側がとうてい歩み寄れない内容の和解案を提示したことで話し合いによる解決は難しい状況となっていった。


(その3へつづく)

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久米川東住宅管理費等不払い裁判一審判決(第3回)
 平成19年11月25日に開催された組合総会で新理事長が選出されたが、「理事長が交代すれば支払う用意がある」としていた矢野ともう1人の住人(A)は、それでも支払いの意思を示さず、和解協議でも双方の歩み寄りが期待できる状況とはならなかった。

1人の住人が応訴態度を一変

 平成20年に入ると、原告被告双方が書面を提出して主張をぶつけ合う通常の口頭弁論に移った。その過程で1人の被告住人が応訴姿勢を180度転換するという出来事があった。管理費等の支払いを請求されていた3人の区分所有者(矢野と高野博子は2人で1人分)のうち、Bは平成20年1月31日開かれた口頭弁論では裁判官に対して管理組合側の主張を全面的に認め、反論もないと述べていた。このため管理組合側は、Bについては矢野ともう1人の住人とは分離して話し合いによる解決の方法も検討していたほどだった。

 ところが2月21日に行われた口頭弁論でBは、一転して前回法廷で陳述した内容を翻し(法律用語でいえば「自白の撤回」というらしい)、全面的に争う趣旨の準備書面を提出したのである。Bに何が起きたのか、確かなことはわからない。しかし以後、管理組合が話し合いをしようと訪ねてもBはいっさい会おうともせず、手紙を入れてもなんらの回答もなかった。それがどんな理由によるのかは定かでないが、いずれにしてもBにはなにか重大な心境の変化があったようだった。

 一方矢野は2月21日、準備書面を提出。管理費等の支払いを求めて管理組合が提訴したこと自体について、理事会の議決があったかどうかについての求釈明を申し立てた。第1回口頭弁論において「(次回総会で)理事長が交代すれば支払う用意がある」と述べていた矢野が、なぜ提訴そのものの適法性を問題にするのか理解に苦しむところだった。蒸し返しといえばいいのか、あるいは裁判の遅延を狙ったものだろうか。

1人はその後の支払いについて同意

 平成20年5月27日に行われた口頭弁論で、裁判官は結審を考えていたようである。口頭弁論は11時に始まったが法廷にはまだ被告住人のAしか来ていなかった。裁判官から事情を聞かれたAはこう答えた。

「矢野さんは少し遅れるとのこと。Bさんについては、矢野さんなら事情がわかるかもしれない」

 応訴態度を一変させた住人は矢野といっしょに来るということなのだろうか。矢野とBが出廷するまでの間、裁判官はAに今後の方針について聞いたが、その中でAは意外なことを口にした。Aは、

「さきほど銀行引き落としの手続きをしてきた。7月分ぐらいから引き落としが始まると思う」

 Aは平成20年7月以降の管理費等については銀行引き落としで支払うことにしたと述べたのである。支払いの手続きをしたということは管理組合が決議した管理費等の適法性を認めたということで、すなわちAはA自身に支払い義務があることを認めたということにほかならない。しかし、それから先のAの主張は不可解だった。裁判官が「今後のことはそれでいいですが、これまでの分はどうなりますか」と聞いたのは当然だが、これに対してAはこう述べたのである。

「何より14・6%の遅延損害金が納得できない」

 この発言の前提には管理費等については支払う意思があるということと理解できる。管理費等の支払いを延滞した場合に14・6%の延滞利息が発生することも総会で議決したことである。Aの主張がいかに自分勝手な言い分であるかがわかろう。Aはさらに「遅延損害金だけは納得できない」と繰り返したが、裁判官はもう相手にしなかった。

裁判官の温情を理解できなかった住人

 口頭弁論開始から15分後、Bが入廷し、やや遅れて矢野も入廷してきた。矢野はこの日、新たな準備書面を提出した。裁判官はまず矢野の隣に座ったBに、応訴方針を転換したことについて聞いた。

裁判官  Bさんは当初原告の請求を認めるとしていた答弁を前回の書面で撤回したわけですが、その考えに変わりはありませんか。(前回書面の主張を)変えてもかまわないんですよ。

 原告の請求を認めれば話し合い解決が可能になるが、争うということになれば判決はやむを得ない。勝訴の可能性は限りなく低い上に、判決となれば差し押さえなどの法的強制力も発生する。前言を翻して和解による解決を拒否した矢野やAとは違い、裁判官はBについては話し合いによる解決をさせた方がいいと判断して、助け船を出したのだろう。しかしBには裁判官の心遣いを理解できなかった。Bは一瞬逡巡の表情を見せたものの、「従来どおり主張します」とのみ答えたのである。

 この日裁判官は、矢野については準備書面の提出を認め、その内容については次回検討することとなった。本来なら裁判官はこの日に結審したいと考えていたようである。しかし矢野が準備書面を提出したため、もう1回口頭弁論を開くことにしたようだった。こうして裁判は平成20年7月29日結審となった。


(その4へつづく)

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久米川東住宅管理費等不払い裁判一審判決(第4回)
                             ★第1回から読みたい人はこちら



矢野の主張はすべて排斥

 矢野がこの裁判で主張した内容は、

①管理費等の決議を行った平成15年臨時総会は不適法なものであり、決議は無効である。
②管理費を7000円とする理由はない。
③駐車場使用料収入を1組合員当たりに計算した額を管理費実額から控除し、月額1800円にすべきである。
④本件提訴の時点で管理組合の理事長は次期理事長候補選挙(8月5日)に落選しており、提訴は不適法である。
⑤本件訴えは理事会の決議を経ていないから不適法である。
⑥矢野は平成15年10月以降毎月1万3000円を法務局に供託しているから管理費の支払い義務はない。

――などである。では、これらの矢野の主張に対して東京地裁八王子支部はどう判断したのか。東京地裁の判断をみよう。

①②について 
 矢野は管理費等が決議された平成15年臨時総会の決議無効を主張し、また当時は区分所有者が確定してしなかったなどとして臨時総会の成立そのものの違法性を主張したが、これについて東京地裁はこう述べた。

〈被告矢野は、本件において臨時総会の決議が無効である旨の主張をするが、すでに前訴訟において臨時総会の決議に無効事由がないことが確定しているのであるから、臨時総会の管理費等の決議に基づく原告の管理費等の請求に対し、臨時総会の決議無効を主張して争うことは、前訴訟に抵触して許されないものである。〉

〈前訴訟で主張していなかった決議無効事由であっても、前訴訟で主張することができたのであるから、新たに本件で主張するのは、結局臨時総会の決議の効力の問題を蒸し返すものであって、信義則に反して許されない。〉

〈臨時総会において管理費を月額7000円とする決議が適法にされたことは、上記のとおりであるから、被告矢野の同主張は何ら理由がない。〉

③について
〈臨時総会では管理費とは別に駐車場運用規定等規則が可決されて駐車場使用料が定められたのであって、管理費と駐車場使用料は別であるから、管理費から駐車場使用料を控除すべき理由はない。〉

④⑤について
〈(矢野のいう当該理事長は)役員の任期中に行われた役員候補者を選出する選挙に落選したというにすぎないのである。そして、理事等の役員は、団地総会で選任されるところ、平成19年11月25日に開催された臨時団地総会において正式に新しい役員が選任され(た)。……(中略)…本件訴えが提起された同年9月21日時点では、同人は原告の理事であったのであるから、同人を原告の代表者理事とした本件訴えの提起は適法である。〉

〈平成19年7月7日原告の第Ⅳ期第12回理事会が開催され……(中略)……理事会は、本件訴訟提起について承認したこと、本件訴訟提起後の同年12月8日新たに選任された理事により原告の第Ⅴ期第4回理事会が開催され、新理事会として改めて本件訴訟提起について追認決議をしたこと、以上の事実が認められる。したがって、本件訴えの提起について理事会の決議があったとみられる。〉

⑥について
〈被告矢野が供託しているのは長期修繕積立金月額1万円を含めて月1万3000円であり、支払うべき管理費月額7000円に4000円も不足しているのであるから、同供託は無効である。〉

 矢野の主張と東京地裁の判断を比較してみれば、矢野の主張がほとんどいいがかりにすぎないものであることは明らかで、東京地裁が矢野の主張をすべて排斥したのは当然というべきだろう(他の2名も矢野の主張と同様)。こうして東京地裁八王子支部は平成20年9月24日、管理組合の主張を全面的に認容し、矢野と高野に対して76万円余、ほか他の2名の区分所有者に対しても未払い分の管理費等全額の支払いを命じる判決を言い渡した。

最悪の事態に追い込まれた住人

 なお、いったんは管理組合側の主張を認めて反論もしないと供述した被告Bについて東京地裁はこう述べている。

〈(被告Bは)第1回弁論準備手続(平成20年1月31日)において、原告の主張事実をすべて認めると述べたが、その後自白を撤回し、原告の主張を争い、被告矢野と同趣旨の主張をする。〉

〈被告Bは、その後自白を撤回する旨主張し、原告の主張について争うが、自白の撤回の要件について主張も立証もないので、自白の撤回は認められない。また、その主張内容は、被告矢野の主張内容とほとんど同一であり、仮に自白の撤回が許されるとしても、その主張が認められないのは、被告矢野の主張についての判断と同様である。〉

 当初、管理組合側の主張を認めていた被告Bがなぜ自白を撤回すると主張するに至ったのか。その理由は定かではない。しかし、のちに提出した準備書面の内容のみならず、裁判官が口頭弁論で被告Bの準備書面と矢野の準備書面が酷似していると指摘もしていることを考慮すれば、矢野が被告Bの準備書面を代筆した可能性も類推されよう。

 矢野にとってBが応訴に転じたことは、裁判官の心証はともかく、被告Aと合わせ被告3名の足並みがそろうことになり、主張もしやすくなるという利点があった。Bにしても、あえて自白を撤回して争う方針に転換したのは、矢野と同じ主張をすれば勝てると考えたものと理解できる。確かなのは、当初は話し合い解決の道も残されていた被告Bは判決によって、最悪の場合、住居が差し押さえられることも覚悟しなければならない状況に追い込まれてしまったということである。事態をようやく理解したのか、Bだけは控訴しなかった。

なおも非を認めない特異さ

 この判決によって平成15年に決議された管理費等の適法性が2度にわたり認められたことになる。普通なら非を認めて、すんなり支払いに応じるところだろう。しかし矢野と、延滞利息の支払いを拒否していたもう1名は控訴した。とりわけ矢野は、裁判所で敗訴したという事実だけはなんとしても受け入れがたいようだった。

 控訴後、決して自らの非を認めない矢野の特異性が現れた出来事があった。管理組合に対して2通の供託書が送られてきたというのである。そのうち1通は月額4000円×1年分の供託書。もう1通は、月額1万7000円×3年分の供託書である。矢野が供託していた1万3000円の最初の1年分については管理組合が受領したという事実があった。そのため正規の管理費等に満たない4000円を新たに供託したということ。つまり矢野は、管理費等が1万7000円であることについては東京地裁の判断に従ったということのようだった。

 すると矢野は、いったい何が不服で控訴したのか。そのあたりはまったく理解を超えるものというほかない。現実問題としても、法務局に供託するのなら管理を委託している公社に支払う方が手間が省けると思うが、矢野にとっては手間の問題ではないらしかった。

 管理組合としては手間暇をかけて供託金を受領しなければならない理由はないし、東京地裁の支払い命令は仮執行宣言付きで、すぐにでも不払い分を差し押さえることもできる。東京高裁でも支払い命令が出て、それでもなお矢野が素直に支払いに応じないようなら差し押さえという選択肢もあり得よう。同じ団地に住む住人同士でありながら、どうしても普通の人間同士の話し合いができない相手ということになればそれもやむを得まい。

 管理費等は住人すべてが公平に負担 実に毎年管理費として支出されている。他の住人との公平性の上からも、管理組合がいつまでも矢野の管理費等を不払いのまま放置することはできないだろう。

 管理組合にとっては、控訴に対する対応だけでなく、今回の判決に含まれない管理費等の問題がまだ残されている。今回の判決で支払いが命じられたのは提訴の時点までの不払い分だけで、平成19年10月分から現在までの分は含まれていないのである。常識が通用しない相手でもあり、新たな訴訟提起もあり得ないことではないとみられている。

 なお、控訴した矢野に対しては11月27日までに控訴理由書を提出するよう命じられていたが、同日までに提出はなされていない。

(了)

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久米川駅東住宅管理費等不払い事件控訴審判決(その1)
 東京・東村山市の久米川駅東住宅管理組合が、同住宅に居住する東村山市議の矢野穂積と、矢野と同居する認可保育園・りんごっこ保育園理事長の高野博子らに対して管理費等の支払いを求めていた裁判の控訴審で東京高裁は平成22年1月20日、管理組合の請求を認容した一審の東京地裁(八王子支部)判決を支持、矢野と高野に対して76万円余の支払いを命じる判決を言い渡した。

 管理組合が矢野らに請求していたのは組合員(住民)が毎月収めている長期修繕積立金1万円と管理費7000円(以下、「管理費等」)。矢野と高野は組合が発足した平成15年10月以降、管理費等を1度も支払っていなかった(請求範囲は平成15年10月分から提訴の時点である平成19年9月までの48カ月間)。

 一審で矢野は、管理費等を決定した総会の成立そのものが不適法で、管理費7000円とした決議も無効、管理費は3000円が妥当などと主張。また、平成15年10月以降の管理費等については平成16年3月から毎月1万3000円を法務局に供託しているから支払い義務はないなどと主張したが、平成20年9月24日、東京地裁八王子支部は矢野の主張をすべて退けていた。(宇留嶋瑞郎)

供託はしても支払わない奇怪さ

 一審判決後、矢野は理解しにくい行動に出た。矢野は平成20年10月8日控訴したが、控訴自体はまだわからないではないとしても矢野は同時に月額4000円×1年分と月額1万7000円×3年分の管理費等を法務局に供託したのである。月額4000円とは、管理組合側が矢野の供託金がそもそも不足していると主張し、東京地裁がその主張を認めた金額である。

 つまり矢野は、管理費等が1万7000円であることについては管理組合の主張を認めたようにみえるし、矢野が供託したということは矢野に支払いの意思があるということでもある。とすれば、矢野はなぜ目と鼻の先にある管理組合に直接支払いの意思表示をせず、往復2時間以上かけて東京法務局府中支局まで行き、わざわざ供託の手続をしたのだろう(平成16年以降、矢野は毎月法務局に行き、供託を繰り返していた)。このあたりが矢野の、常人の理解を超えるところである。

 矢野の行動を追跡する過程で、いつまでたっても消えることのない深い靄のようなものに突き当たるのは初めてのことではない。そのたびに私は何度も立ち止まったが、たいていの場合は一定の地点で引き返し、それ以上の追跡と探索を打ち切った。引き返せなくなるのではないかという恐れを感じることもあったが、何より体力的にもたなかった。

 さて、管理費等の供託をめぐる、普通に考えれば合理的理解の難しい矢野の行動は、矢野の思考の中でどう整合していたのか。

 矢野は一審で供託によってすでに管理費等の支払い義務は履行している旨主張していた。一方、管理組合側は、金額も不足しており、矢野が管理組合に対して管理費等の支払いの意思表示をしたこともなく、管理組合が受領を拒否した事実もないとして供託は無効と主張していた。しかし管理組合は、矢野と高野ら3世帯を除くすべての居住者が遅滞なく管理費等を支払っている事実および管理実務上の問題から矢野が供託していた1万3000円の最初の15カ月分19万5000円については受領し、管理費等に充当していた。

 供託が有効とされるのは、自分が支払いの意思を表示しているにもかかわらず相手方が受領を拒否している場合である。支払おうとしている相手方が供託を無効と主張している場合でも、その供託金を受領した場合には供託の有効性を認めたものと判断された判例もないことはない。矢野は控訴理由書で次のように主張している。



 被控訴人(管理組合)は、2005(平成17)年2月21日に、被供託者である被控訴人が供託所に前記供託を受諾する旨の書面を提出した上で「支払うべき額の一部として供託を受諾する」等の条件は一切付すことなく、異議なく前記供託を受諾し還付をうけた。

 前記事実は、被控訴人が「原告は、平成17年2月23日被告矢野が供託した合計19万5000円について支払を受けたので、これを平成15年10月分から平成16年12月分までの各滞納管理費と対等額で相殺すると、……」と自認していることからも明らかであって、この結果、控訴人(選定当事者=矢野)は、仮に本件管理費等を支払う義務があるとしても、適法に弁済供託をし、すでに被控訴人は還付を受けているから、有効な前記弁済供託により(平成15)年10月分から2004(平成16)年12月分までの控訴人の全ての債務は消滅した。



 矢野がここで主張しているのは、「管理組合は供託金の一部受領に際してなんらの条件も付けていないから、当該期間の管理費等について1万3000円と認めた」ということである。管理組合は1万3000円でよいと認めたわけではなく、その間の供託金を「対等額と相殺する」といっているにすぎない。管理費等が組合総会で1万7000円と決定されたことの適法性は一審で認められているのであり、また普通の住民なら管理組合が団地管理のためにやむなく供託金を受領したことにつけ込むような真似はしない。要するに矢野は、管理組合が管理義務を果たそうとしたことを理由として、不足分を踏み倒そうとしていたことになろう。

たぐいまれな自己正当化

 ただ、管理費等の額は1万3000円が正当とする矢野の主張からしても、今度は控訴後に4000円×1年分と月額1万7000円×3年分を供託したことと辻褄が合わなくなるのではないか。この点について矢野は次のように主張している。



 弁済供託が適法になされ、被控訴人も前記期間の本件管理費等の金額が1万3000円であるとして異議なく前記供託を受諾したことから、控訴人は、その後、一貫して本件管理費等の金額は月額1万3000円であるとして、2005(平成17)年10月分から平成19年9月分までの期間、弁済供託を行った。
――略――
 にもかかわらず、原判決は……事実誤認により、法令解釈を誤り、本件管理費等は1戸あたり月額1万7000円であると判示しているので、控訴人は、その差額4000円に、各弁済期から遅れたことによる年5%の遅延損害金1万3084円を付して、7万3084円を弁済供託した。

 この結果、控訴人は、仮に本件管理費等を支払う義務があるとしても、2003(平成15)年10月分から2007(平成19)年9月分の債務につきすでに遅延損害金を含めその全額を適法に弁済供託をしたから、被控訴人が主張する当該期間の控訴人に関する全ての債務は消滅した。



 矢野の主張をまとめると、管理組合は当初1万3000円の供託金を異議なく受諾したから、矢野は管理組合が管理費等は1万3000円でよいと認めたと判断して、以後、管理費等として1万3000円を供託し続けた。すなわち管理組合の受領以後、矢野が管理費等を1万3000円しか供託しなかったのは管理組合が供託を受諾したためである。しかし一審は「事実誤認により、法令解釈を誤り」管理費等は1万7000円であると判示したので、念のため受諾分の不足分として月額4000円と法定利息およびその後の管理費等1万7000円を供託したから、矢野はすでに(余分に)管理費等を支払ったことになる、ということになろう。

 矢野の供託の経緯をみると、矢野が管理組合総会の決議を無視して管理費等を支払わず、管理組合発足から1年も遅れて管理費等に満たない額を法務局に供託したことをもって「支払った」ことにしようとしたにすぎないように思える。ところが矢野の主張によれば、問題の発端は矢野が正規の管理費等を支払わなかったことにあるにもかかわらず、平成17年10月分以降1万3000円しか供託しなかったこともいつの間にか管理組合の責任であるかのようにすり替えられていることがわかる。その上で矢野は、1万3000円しか供託しなかった原因は管理組合にあるが、一応1万7000円を供託したから債務はないと主張しているのである。

 たぐいまれな自己正当化であり自己中心的論理であると思うが、控訴審はその後、矢野が主張する「管理組合による供託の受諾」の存否をめぐり、1年以上の審理が続けられることとなった。

(つづく)
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久米川駅東住宅管理費等不払い事件控訴審判決(その2)
供託の意味と狙い

 管理組合が供託金の一部を受領したことによって、管理費等として矢野が供託していた月額1万3000円を認めたことになると主張している矢野が根拠としたのは次の最高裁判例である。

〈金額に争のある債権につき、金額に対する弁済を供託原因として供託した金額が、債権者の主張する額に足らない場合であっても、債権者が供託書の交付を受けてその供託金を受領したときは、受領の際別段の留保の意思表示をなした等特別の事情のない限り、その債権の金額に対する弁済供託の効力を認めたものと解するのが相当である。〉

 この最高裁判例を示した上で矢野は、

「前記最高裁判例に言う『受領の際別段の留保の意思表示をなした等特別な事情』というのは、供託金の還付を受ける者は、法務局に提出する払渡請求書の『払渡請求事由及び還付取戻の別』欄に『供託受諾』である旨記載し、且つ払渡請求書の『備考』欄には、『支払いを受けるべき額(債権)の一部として供託を受諾する』等の留保の意思表示を明記しなければならないことを言うのであって……」

 とし、管理組合が供託金の一部を受領した際には払渡請求書に留保の意思表示をしていないから、矢野がした供託の効力を認めたことになると主張していた。すると矢野は、組合総会で決定した管理費等1万7000円に4000円足りない1万3000円を供託するに際して、これを管理組合が留保の意思表示をしないまま受領すれば、矢野の供託が有効になることを知っていたということになろう。

 矢野は昭和54年、福島県檜枝岐村で借りていた廃校舎の賃貸契約を村が打ち切ろうとした際、賃料を供託することで契約の有効性を主張したことがある(檜枝岐村事件)。村が供託金を受領すれば矢野の供託の有効性、すなわち契約が継続していることを認めたと矢野は主張することができる。檜枝岐村は供託金を受領しなかった。

 内容はまったく異なるが、供託によって自らの主張を法的に有効なものにしようとしたという点においては東住宅のケースも同じである。供託という行為の意味とその法律的効果について矢野には経験も知識もあったとみるべきだろう。つまり、供託の時点で矢野がそれを狙っていたのかどうかはわからないが、供託の法律的有効性が認められれば矢野は管理費等を他の住人よりも4000円安くすることができるのである。

 供託の有効性が認められれば、管理費等は1万3000円が妥当とする矢野の主張が認められたと宣伝することもできよう。そうなれば、実質的に矢野の勝ちである。控訴審で矢野が供託を争点とした背景には、たんに管理費等を支払うか支払わないかという実務上の問題を超えて、管理組合の決議に異を唱えた自らの主張に対する特異なこだわり、自らの主張を正当化させようとするなにか強固な意思のようなものがあったのではあるまいか。

 いずれにしても、矢野は供託した時点で、管理組合が供託金を何の留保もつけずに受領してくれるのを待っていたものと推測できる。そうなれば、矢野の狙いどおりの流れになるのである。

受領されなかった内容証明

 一方、久米川駅東住宅分譲棟(336世帯)の管理運営を担う管理組合としては、矢野・高野を含む3世帯の住民が管理費等を支払っていないという事実は、公平性の上からも実務上の問題からも見過ごしにできないのは当然である。また、管理費等を1万7000円としたのは総会決議によるものであり、矢野の主張する1万3000円という額を是認できるはずもなかった。

 管理組合が平成15年10月~平成16年12月分として矢野が供託した月額各1万3000円の供託金を受領したのは平成17年2月23日のことである。ただこのとき、法律の専門家でもない管理組合は供託の意味を厳密には知らず、受領の際、払渡請求書にそれが正規の管理費等の一部に充当するものである旨の留保の意思表示をしなければ、供託の有効性を認めることになるという知識もなかった。
 
 この局面だけを見れば、矢野が主張するとおり、管理組合は矢野が主張する管理費等1万3000円を容認したものと判断されてもやむを得ない状況にあったことがわかろう。その後管理組合は供託金の受領をしていないが、これは弁護士のアドバイスによるものだった。弁護士はのちのち問題が複雑化することを懸念したのである。

 ただし管理組合も、供託金の受領に関する細かな法律的知識はなかったものの、供託金の受領以前に矢野に対して1万3000円を是認するものではないとする意思表示をしていなかったわけではなかった。管理組合は供託金の受領前の平成16年7月15日付および平成16年11月11日付で月額1万7000円×滞納月分の支払いを求める督促状を矢野・高野宛に送付。それでも矢野から納付されなかったため、管理組合は供託金受領の20日前、平成17年2月3日付催告書を送付している。この催告書には供託金を受領する旨の記載があるが、矢野の供託額を是認するものではないとする次のような明確な意思表示がなされていた。



 当組合は管理組合規約に則って供託金のすべてを収納することをご通知申し上げるとともに供託の原因たる事実を当組合が承服したことではないことをご確認下さい。



 供託金受領の際の払渡請求書には留保の意思表示はないものの、管理組合が矢野に対して矢野の供託の有効性を認めていたものでないことは明らかだった。しかし、管理組合が送付した3通の内容証明をめぐっては奇妙な事実があった。管理組合が矢野・高野宛に送付した3通の催告書はなぜかいずれも、「受取人不在」を理由に受領されないまま管理組合に返ってきていたのである。

 平成16年7月15日から1週間、平成16年11月11日から1週間、平成17年2月3日から1週間、東村山市議である矢野と認可保育園の施設長である高野はそれぞれの間、たまたま2人そろって自宅に帰っていなかったのだろうか。

(つづく)

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久米川駅東住宅管理費等不払い事件控訴審判決(その3)
留保の意思表示を認定

 管理組合が矢野と高野に対して管理費等の支払いを求めて送付した3通の内容証明はいずれも受領されなかった。では東京高裁は、管理組合が供託金を受領したことによって管理組合は矢野の主張する管理費等1万3000円を容認したことになるとする矢野の主張をどう判断したのか。東京高裁は次のように述べた。

〈被控訴人(管理組合)が、平成17年2月21日控訴人矢野が平成15年10月分から平成16年12月分まで管理費等月額1万3000円として行った供託を受諾して還付を受けたので、1万3000円について債務消滅の効力が生ずることになる。しかし、管理費等は前記のとおり、月額1万7000円であるから、4000円について債務が消滅することはないし、被控訴人は、供託金の還付を受けたことにより管理費を3000円とすることを認めたものということもできない。〉

 矢野は管理組合から送付された内容証明の内容が何であるか、おおよその予想はついていただろう。しかし、矢野が管理組合からの内容証明を受領しなかったからといって、管理組合が矢野に示した意思表示そのものが消えてなくなるわけもない。東京高裁は臨時総会における決議や管理組合の居住者全員に対する立場、さらに矢野が受領しなかった内容証明の内容などを総合判断し、矢野の供託を認めたものではない(留保の意思表示)とする管理組合側の主張を容認したものと思われた。

 管理組合に留保なく供託金を受領させ、内容証明を受け取らないことによって、管理費は1万3000円が妥当とする主張を管理組合が認めたことにしようとした矢野のもくろみは裁判所には通用しなかったということになろう。

供託そのものの有効性も否定

 矢野と高野は東住宅の居住者として管理費等の支払い義務があったにもかかわらず総会決議を論難して支払わず、管理組合が受領を拒否している」という理由で供託したが、その金額は総会で決議した額に満たず、同時に供託した延滞利息も管理規約に規定されている14・6%を無視して勝手に5%の利息を供託した。
 
 矢野と高野の供託にはどこを探しても正当な部分はないように思えた。またそもそも矢野の供託は有効なのか。それらの点について東京高裁は、管理費等を1万7000円とした総会決議の有効性を認めた上で、次のように詳細に認定している。 

〈控訴人矢野は、平成15年10月分から平成16年12月分まで、管理費の未払い分として月額4000円と各月末から供託日まで年5%の割合による遅延損害金を付加して供託したことにより債務全額を供託したことになるから、同債務は消滅したと主張する。そして供託書の「供託の原因たる事実」欄に「被供託者(被控訴人)は供託者からの弁済を受領しない意思表示をしている」と記載しているが、被控訴人が弁済の受領を拒んだ事実を認めるに足りる証拠はなく、かえって、弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、従前から控訴人らが適正金額の管理費等を業務時間中に被控訴人事務所まで持参すれば、いつでも受領することとしており、弁済の受領を拒んだことがないことが認められる。したがって、控訴人矢野がした供託は、供託の有効要件を欠くから、無効である。〉

〈管理規約によれば、遅延損害金の利率は年14・6%であり、その始期は毎月8日なのに、控訴人矢野は、各月末から年5%の割合とする計算で供託しており、従前の1万3000円の供託と併せても債務全額の供託となっていないから、控訴人矢野の供託は、一部供託として無効である。〉

〈控訴人矢野の平成17年1月分から平成19年9月分までの月額1万7000円と各月末から年5%の割合の遅延損害金の供託についても、供託の有効要件である被控訴人が弁済の受領を拒んだ事実を認めるに足りる証拠はなく、遅延損害金についての供託金額が上記のとおり、債務額に比して低額であるから、債務の本旨に沿った適法な供託ということはできないから、無効である。〉

 東京高裁はこう述べて、管理組合が矢野の管理費等の支払いを拒んだ事実はなく、遅延損害金の金利もその計算が間違っているから供託は無効であると認定し、管理組合が供託金を受領していない平成17年1月以降の供託についても同様の理由で無効と認定した。矢野の管理費不払いと供託に関する主張はことごとく排斥されたのである。

居住者全体の損失

 平成16年3月以降、法務局に毎月通って供託をしてきた矢野は、こうして法務局に残った供託金について自分の手で払い戻しを受け、直接管理組合に支払わねばならないことになった。管理組合がわざわざ法務局に出向いて受領の手続をする必要はない。矢野が管理組合に直接支払わなければ差押えという事態もあり得よう。

 ところで、管理組合が裁判で請求したのは平成19年9月分までである。矢野は平成19年10月以降も支払っていないが、それ以降の管理費等はどうなるのか。その点について確認すると、管理組合は平成19年10月以降現在までの管理費等についても追加請求しているので、矢野はそれも含めて直接管理組合に支払わねばならないとのことである。

 こうして管理組合発足から丸6年、矢野と高野らによる管理費不払い問題はようやく片づこうとしている。今回の判決で供託そのものが明確に無効と認定されたことで、矢野も今後は供託をしにくくなろう(普通なら「もう供託はしない」と断言できようが、こと矢野に限っては、そう断定する自信がない)。

 他の住民が問題なく支払っている管理費等を徴収するのに丸6年の月日をかけ、弁護士費用等の費用まで必要とした事態は異常というほかない。管理組合担当者の苦労もひととおりではなかったろう。当然、管理組合が負担した費用は組合員である居住者全体の損失である。

(了)

※なお、矢野と高野だけは2月1日付で上告していたことがわかった。繰り返し「供託は無効」と認定した東京高裁判決は、供託を得意とする矢野にとってよほどプライドを傷つけるものだったのだろうか。もちろん高裁判決後も、矢野は供託を続けている。
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久米川駅東住宅管理費等不払い事件最高裁判決(速報)
 東京・東村山市にある久米川駅東住宅管理組合が、同住宅に住む東村山市議会議員(草の根市民クラブ)の矢野穂積と同居する認可保育園「りんごっこ保育園」園長の高野博子ら4名(3世帯)に対して不払い管理費等の支払いを求めていた裁判で9月上旬、最高裁が矢野と高野の上告を受理しない決定をしていたことがわかった。

 これによって平成22年1月20日、管理組合の請求を認容し、矢野らに対して不払い管理費等全額の支払いを命じた東京高裁判決が確定した。なお、他の2名に対しても請求通りの支払いが命じられているが、このうち1人は控訴しておらず、もう1人は上告しなかった。

 久米川駅東住宅の管理費等は1万7000円(長期修繕積立金1万円と管理費7000円)。矢野と高野が支払っていないのは平成15年10月以降平成22年10月までで、不払いとなっている管理費等は125万円にのぼる。

 矢野はこの間、毎月法務局に通って管理費等相当額を供託していた(平成15年10月から同16年12月までの間については、矢野は「管理費は4000円が相当」と勝手に主張して1万3000円しか供託していない)。わざわざ時間と手間をかけて法務局に通うくらいなら管理組合に振り込んだ方がいいと思うが、矢野という市会議員には彼なりの理由があったらしい。

 裁判で矢野は供託を理由に債務は消滅するなどと主張したが、東京高裁はこの供託を無効と認定している。管理組合が矢野の支払いを拒否する理由はなく、そんな事実もなかった。

 最高裁決定によって矢野の支払い義務が確定した金額は管理費等125万円と遅延損害金54万4040円の計179万4040円。回収にまた手間がかかるかと思われたが9月20日、矢野の方から支払いに応じる旨の文書が届いたという。差押えを避けたかったものとみられる。

 矢野にとって179万円余の支払いは、そのうち125万円は法務局に供託しているのだから、それほど大きな負担とはなるまい。むしろ、供託を自ら引き上げること自体が矢野にとって大きな屈辱なのではないか。不当な主張を正当化するために供託制度を利用するという反社会的手法の敗北と社会秩序からの排除を意味するからである。

(了)

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