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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

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「朝木宅襲撃事件」 第1回
 平成18年2月5日午前6時半ごろに発生した「朝木宅襲撃事件」(東村山市議、矢野穂積と朝木直子が主張)をめぐり、東村山市議の矢野穂積と朝木直子が私と月刊タイムスを提訴していた裁判で、東京高裁は平成22年6月17日、矢野らの請求を棄却した一審判決を変更し、被告らに対して総額20万円の支払いを命じる判決を言い渡した。控訴審第1回口頭弁論のあと、裁判長の見解を聞いた矢野は私に対して「おまえ、逆転敗訴だな」といったが、主文のかぎりでは矢野のいったとおりになったことになる。

「朝木宅襲撃事件」とは何か

 彼らが運営するウェブサイトによれば、矢野と朝木が主張する「朝木宅襲撃事件」とは以下のようなものである。



暴漢が朝木直子議員宅を襲う事件発生!

暴漢、朝木直子議員を日曜早朝に襲う!
やっぱり!これではっきりした11年前の朝木明代議員殺害事件の真相

酔っ払いを装い、朝木直子議員を狙い大胆不敵な犯行。調査進み、殺人未遂事件で刑事告訴へ


 2月5日午前6時半ころ、東村山市諏訪町の朝木直子議員宅敷地内に、暴漢が侵入、「このやろう出て来い、ぶっ殺してやる」と叫びながら1階窓ガラスを蹴破って朝木直子議員を襲おうとしました。

 が、母親の朝木明代議員が自宅から拉致され何者かに東村山駅前ビル裏側上層階から落とされて殺された事件が発生するなどしており、防犯上、窓ガラスは、簡単には割れない「強化ガラス」を入れていたのです。

 焦った犯人は、家が震動するほど何度も思いっきり足蹴りしましたが、近隣や朝木直子議員の110番通報で警察官の到着が間に合い、犯人は取り押さえられ、朝木議員は危うく難を逃れました。

 駆けつけ、犯人を現認した矢野議員の話では「全く酔っ払ってはなかった」ということです。

その襲撃犯はパトカー内にいた!
私(矢野)は朝木議員殺害を狙った犯人を見た


 朝木直子議員殺人未遂事件ですが、その時、私は朝木直子議員から切迫した携帯電話を受け、萩山町の自宅から車で朝木議員宅に急行しました。

▼ 途中で、携帯電話が切れるなどしたため、非常に心配しましたが、110番通報で警察官が現場に到着した直後に私も着き、ちょうど襲撃犯が取り押さえられてパトカーの中に収容されたところでした。

▼ パトカーの中に首を突っ込んで、犯人の顔をしっかり記憶にとどめました。

▼ 本人は警察での調べでしきりと午前3時まで酒をスナックで飲んでいたとかいいわけして酔っ払いのフリをしようとしました。

▼ が、私はパトカー内の犯人の表情や様子をみましたが、「このやろう、ぶっ殺してやる」と何度も叫んでガラスを蹴破って押し入ろうとした、そのメガネをかけた40才前後の男は暴れるでもなく、顔をみられるのを嫌がっていて、おとなしく神妙にしている様子は、とても酔っ払いには見えませんでした。

▼ この取り押さえられた襲撃犯は、警察で住所と氏名を告げていますが、本紙の調査では、この犯人には不審な点が多く、週刊誌でも直後に報道されましたが警察によるその後の捜査が注目されています。

(ウェブ版「東村山市民新聞」)



危うく殺害される寸前でした!

犯人は拘束されましたが・・・。


2月5日午前6時半ころ、市内諏訪町の朝木直子議員宅敷地内に、暴漢が侵入、

「このやろう出て来い、ぶっ殺してやる」

と叫びながら、1階窓ガラスを蹴破って、朝木直子議員を襲おうとしました。
 
 が、母親の朝木明代議員が自宅から拉致され、何者かに東村山駅前ビル裏側上層階から落とされて殺された事件が発生するなどしており、防犯上、窓ガラスは、簡単には割れない「強化ガラス」を入れていました。

 焦った犯人は家が震動するほど、何度も「ガラス」を、思いっきり足蹴りしましたが、近隣や朝木直子議員の110番通報で、警察官の到着が間に合い、犯人は取り押さえられたため、朝木議員は危うく難を逃れました。
 
 駆けつけ、犯人を現認した矢野議員の話では、「全く酔っ払ってるなどしてはなかった」ということです。
 
(「創価問題新聞」)



「矢野ほづみ議員のページ」にも「東村山市民新聞」と同じ記事が掲示されている。なお、「東村山市民新聞」の記事は掲載から3年以上が経過するが、「調査進み、殺人未遂事件で刑事告訴へ」といいながら朝木はまだ「殺人未遂事件」での刑事告訴はしていないようである。

 さて、問題となった月刊タイムス記事のタイトルは〈「朝木宅襲撃事件」は「草の根」得意の自作自演〉。記事の趣旨は、「矢野と朝木の主張する『朝木宅襲撃事件』とは実際にはたんなる『酔っ払い侵入事件』にすぎないにもかかわらず、矢野と朝木はあたかもそれが『襲撃事件』であると誇大に宣伝し、朝木が『襲撃事件』の被害者を演じることで、朝木明代の万引きを苦にした自殺も『他殺』だったかのように印象操作しようとしている」とするものである。

 したがって、私の理解の範囲では、この裁判の主要な争点は記事に真実性・相当性があるか、すなわち「『朝木宅襲撃事件』は事実だったのかどうか」という点にあり、真実性・相当性が認められれば記事掲載の目的は達成されると考えていた。ところがどういうわけか矢野と朝木は、一応は「襲撃事件は事実である」と主張したものの、当初から〈「朝木宅襲撃事件」は「草の根」得意の自作自演〉というタイトルは「矢野と朝木が酔っ払いを装った男を侵入させた上で、その被害者を演じている」という意味だから名誉毀損であると主張し、この点も争点の1つとなった。

その場を離れた矢野

 東京高裁が一審判決を変更し、私と月刊タイムス社に対して20万円の支払いを命じる判決を言い渡した判決から数日後、矢野と朝木はウェブ版「東村山市民新聞」において次のような記事を掲載した。



 裁判所で「創価御用ライター」といわれても仕方がない旨認定された人物、またも、東京高裁で逆転敗訴! 草の根・矢野、朝木議員が勝訴、賠償金獲得へ。(2010年6月17日)



 これだけでは何の裁判の話なのかまったくわからないものの、矢野と朝木が勝訴したことだけは強調したかったものとみえた。矢野が私にいったとおり、逆転勝訴したのだからことのほか気分もよかったのだろうと思われる。

 判決から10日後の平成22年6月28日、東村山市議の薄井政美が矢野と朝木を提訴している裁判の控訴審第1回口頭弁論が東京高裁で開かれた。開廷の15分ほど前に法廷に行くと、矢野が1人で法廷の予定表を見ていたので挨拶させていただいた。私は矢野にこう声をかけた。

「いい判決が出てよかったですねえ」

 当然、逆転勝訴した矢野は「早く賠償金を払えよ」とでも勝ち誇るだろうと思っていた。ところが矢野の反応はそうでもなかった。矢野は特に嬉しそうでもなく、なにか口の中で「レッテル」がどうとか、およそ裁判とは無関係の不明瞭な言葉を発しながら、そそくさと私のそばから離れていったのである。

 どうしたのだろうか。

(つづく)

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「朝木宅襲撃事件」 第2回
「ニュースワイド多摩」の「スクープ」

 平成18年2月10日午後1時過ぎ、「多摩レイクサイドFM」の「ニュースワイド多摩」という番組のトップで、1本の重大なニュースが流された。「多摩レイクサイドFM」とは、総務省の認可を受けて東村山市議の矢野穂積と朝木直子が運営するミニFM放送局である。その電波は東村山を中心に立川、国分寺、小平、清瀬、東大和、所沢あたりまで届いているらしい。まずは、そのトップニュースを聞こう。

 放送はまず毎回通しの、女性による次の録音ナレーションから始まる。

〈リスナーのみなさん、「ニュースワイド多摩」の時間です。最後までお楽しみください。〉

 録音のナレーションが終わると、「ニュースワイド多摩」の「パーソナリティ」(進行役兼絶対権力者的解説役)である矢野穂積が番組へ案内する。



矢野  はい。今日の担当は、パーソナリティの矢野穂積と。

加藤  アシスタントパーソナリティの加藤恵子と。

横山  アシスタントパーソナリティの横山ゆうなと。

清水  アシスタントパーソナリティの清水あやと。

中島  アシスタントパーソナリティの中島久美子でお送りします。



 ちなみに矢野はこの日、4名もの「アシスタントパーソナリティ」を従えている。たいした華やかさだが、いずれもアナウンサーの訓練などまったく受けていないようである上に、素人であることを差し引いてもなお、その原稿を読む能力はおよそ平均以下である。おおかた学生のアルバイトか「ボランティア」なのだろう。それはそれで「手作り感」があり、人によっては逆に好感を持つこともあるのかもしれない。彼女たちは何本かのニュースを交代で読み上げるのだが、4人が必要とも思えない。

 聴取者にとってはどうでもいい4人のパーソナリティの自己紹介が終わり、番組は本編に入る。この日のトップニュースは、地元で起きた「衝撃的な」ニュースだった。



矢野  はい。それでは、ああーっと、今日はニュースからですね。行ってみましょう。

加藤  はい。2月5日午前6時半ごろ、東村山市諏訪町の東村山市議会現職の朝木直子議員宅に酔っ払いを装った男が敷地内に侵入、「出てこい、この野郎。ぶっ殺してやる」などと叫びながら、窓ガラスを蹴破って室内に入ろうと、建物全体が揺れるほど、約20分間にわたって何度も繰り返しガラスを足蹴りしました。

 朝木直子議員や近隣の110番通報で駆けつけた東村山警察署員がこの男を取り押さえました。

 10年前に朝木直子議員の母親の朝木明代議員が、この自宅から拉致されて、東村山駅ビル、駅前ビル上層階から何者かに落とされて殺害されており、関係者は「また事件が起きた」と語っています。

 犯人は40歳前後の男で、朝木議員の話では酒に酔っている雰囲気ではなかったようです。ガラスは強化ガラスだったことと、警察官の到着が間に合ったことで、朝木議員、朝木直子議員は危うく難を逃れました。



 アシスタントが原稿を読み上げたのを受けて、矢野が次のように解説した。



矢野  はい。ええーっと、どうもですねえ、ええー、この、おー、事件というのは、えー10年前の事件を思い出させるような、ええー、事件ですが、警察官がですねえ、110番で間に合ったからよかったんですが、ええー、雰囲気として、えー、とにかく、えー、何が起こるかわからないというか、生命の危険が予想できるようなですね、そういう事態だったようですねえ。えー、警察、東村山警察の捜査を見守っていきたいと思います。はい。



「ニュースワイド多摩」は録音放送で1日6回放送される。おおむね数日置きに新しいものに入れ替わるが、たとえばある日の放送分が5日間繰り返されることもあり、その場合には、同一内容の放送が30回繰り返されることになる。

準当事者であることを伏せた理由

 さて、私が確認したかぎり、これが「事件」に関する初めての「報道」である。「事件」発生からまだ5日しかたっていないということで、「警察の捜査を見守っていきたい」と矢野がまとめたのは理解できる。ただ、矢野が事件そのものに触れるよりもまず先に「10年前の事件を思い出させるような」といったのが少し気になった。「朝木直子が襲われた」、だから明代の転落死も「事件だった」といいたいように聞こえたのである。

 また、この時点では明らかになっていないが、ウェブ版「東村山市民新聞」によれば、「事件」発生直後に矢野は現場に駆けつけ、「犯人」の顔を現認しているという。それにしては、この日の矢野の解説は著しく臨場感に欠けるような気がしてならない。現場に駆けつけたのなら正直にそういえばいいと思うが、矢野はそのことを明らかにしていない。

 総務省認可の公共の電波を使う放送局という立場上、準当事者である矢野が自ら「ニュース」を作り、自分の番組で放送したのでは客観性が担保できないとでも考えたのだろうか。しかし「事件」が事実とすれば、事態は東村山市議会議員たる朝木直子の政治活動を妨害、抹殺しようとするものである可能性もある。「事件」の重大さを考えれば、矢野はむしろ自分が準当事者であることを明らかにした上で、堂々と民主主義に対する挑戦という事件の重大さを訴えるべきではなかったか。客観性の担保は事実が証明してくれよう。明代の転落死事件に関連づけるのはそれからでも遅くはあるまい。

 ところが矢野は、自分が現場に駆けつけたことを明らかにしなかった。それとも何か矢野には、客観性の担保(=事実の証明)に関して不安な部分でもあったのだろうか。

説得力を欠いた解説

 明代の転落死に事件性がうかがえないことは捜査機関の結論からも明らかで、当時すでに多くの民事裁判で矢野と朝木が主張した「他殺の根拠」なるもの(万引きの冤罪性、司法解剖鑑定書に記載された上腕内側部の皮下出血の痕など)もことごとく否定されている。すると、今回の「事件」を明代の転落死と結びつけることには論理的整合性がなく、むしろ矢野が「10年前の事件を思い出させるような」といった時点で逆に「襲撃事件」があったとする矢野と朝木の主張もまた疑ってかかるべきと判断するほかなかった。

 明代の転落死を「他殺」と主張し、そのために万引き事件も「冤罪」と主張していること、明代が命を狙われていたと印象づけるために見ず知らずの少年を暴行犯に仕立て上げたこと、女性を待っていただけの運転手が明代の転落死に関与していたかのように騒ぎ立てたこと、明代が警察に通報しておきながら消火をしなかったというきわめて不可解な「朝木宅放火事件」など、矢野と朝木がそれまでの11年間の間に明代の転落死と関係があると騒いだ事件は多い。しかし、何一つ実証されたものはなく、その存在自体に疑問符をつけた判決もある。矢野と朝木の前歴からしても、「朝木が襲われた」という彼らの主張を真に受けることは難しかったのである。

 もちろんだからといって、矢野と朝木の主張する「襲撃事件」が嘘だと断定するには根拠がなかった。私は自ら情報収集を進めるとともに、今後矢野がどのような「続報」を伝えるのか、推移を見守ることにした。

(つづく)

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「朝木宅襲撃事件」 第3回
「ハハハ」と笑った記者

 第1回目の放送で「朝木宅襲撃事件」を初めて知った私は、放送終了後、知り合いの東村山市議に連絡を取った。あるいは2月5日に朝木宅で起きた出来事について知っているかもしれないと思ったのである。するとその市議は事件について聞いたことがないといったものの、東村山署に知り合いがいるから、確認してくれるとのことだった。

 翌朝、その市議から連絡があった。市議が東村山署に確認したところによれば、「酔っ払いが騒いだだけだったようだよ」とのことだった。ただ、それが朝木直子に対して危害を加えようとしたものだったのか、そうではなかったのかまではわからなかった。

 事件が仮に「襲撃」を目的とするものだったとすれば、それは朝木の政治活動や思想・信条を暴力によって圧殺しようとするもので、全国紙、少なくとも全国紙多摩版に掲載されていてもおかしくない重大事件である。しかし、2月10日の時点でそのようなニュースが掲載された事実はなかった。各紙立川支局の記者たちは「事件」の存在を知らないのだろうか。

 私は知り合いの記者に電話して聞いてみることにした。「朝木宅で暴漢事件があったという話をご存じですか」と聞くと、「知ってますよ。東村山署に取材しました」という答えが返ってきた。「記事にはされたんですか」と聞くと、記者は「ハハハ」と笑いながら「記事にはしませんでした」と答えた。記事にしなかったのはなぜなのだろう。

「矢野がラジオでいっているように、実際に市議会議員に対する襲撃事件だったとすれば、見過ごしにできない重大な事件ですよね」。私がさらに聞くと、記者は「はあー、そうですけどね」と言葉を濁した。そこで私は「ただの酔っ払いだったという話ですが……」と踏み込んだ。すると、記者は具体的には答えなかったものの、私の話を否定もしなかった。業務として行った取材について話せるのはこれが限界だろうと私は理解し、もうそれ以上は聞かなかった。

「ニュースワイド多摩」が放送した「事件」が実際に市議会議員が狙われた事件であるとすれば、新聞としても十分な報道価値があるだろう。しかし、記者が記事にせず、事件について聞かれて「ハハハ」と笑ったということは、事件は矢野のいうような「襲撃事件」ではなく「たんなる酔っ払い」という市議会議員の情報の方が事実なのではないか。少なくとも記者の回答は「たんなる酔っ払い」という情報と矛盾しないと、私はこの時点の判断としてそう考えた。

具体的に答えなかった朝木
 
 この段階で私は、2月5日に朝木宅で起きた出来事について矢野と朝木が「襲撃事件」と主張し、その一方で「ただの酔っ払い騒動」にすぎないという評価があることを知った。しかしもちろん、東村山市議と記者への取材はしょせんは伝聞で、直接取材のための事前調査にすぎない。

 私は新聞記者から話を聞いた翌日の2月14日、今度は警視庁広報課に取材を申し込んだ。東村山署の取材ができれば、これは一般に直接取材とみなされ、記事化することも可能になる。もちろんその場合は、東村山署の捜査状況、事件に対する判断と矢野・朝木の主張を比較することになる。しかし、その日のうちに私の目論見はあっさり崩れた。警視庁から取材には応じない旨の連絡がきたのである。よくあることだが、伝聞情報だけでは事件に対する最終的な判断をすることはできないし、記事化することも難しい。

 残る直接取材の相手として考えられるのは当事者である矢野・朝木か「犯人」本人だが、「犯人」に会えたとして「酔っていた」という以外の回答を得る可能性は少ないと判断できた。したがって、「事件」の真相を明らかにするには水面下の情報(「酔っ払い騒動」)とは異なる主張をしている矢野と朝木に聞くのが最も手っとり早い方法だった。

 そのチャンスは意外に早くやってきた。警視庁に取材を断られた3日後、私は東京地裁八王子支部で矢野・朝木に会った。当時、私は彼らとの間で裁判を争っていたのである。裁判は非公開の弁論準備手続きという方法で行われていて、裁判官の準備ができた時点で書記官室の前から法廷に移動するのが常だった。その移動の間に私は朝木に聞いた。

「襲撃事件があったそうだけど、事実はどうだったんですか?」

 すると朝木は一言だけこう答えた。

朝木  もう調べはついてるんでしょ。

 それは買い被りだが、この一言をどう理解すべきか。朝木は私が彼らに対して取材していないことを知っているのだから、朝木のいう「調べ」とは朝木以外のところに対する「調べ」すなわち東村山署が把握している内容のことを指していると推測できた。もちろん朝木は東村山署の調べの内容をすべて把握しているはずである。「調べ」の内容が朝木の体験した事実と異なるのなら、私に対して「殺されそうになった」と答えればいいはずである。したがって私は、ここで朝木がそう答えなかったのは、そのような事実はなかったということではないかと判断した。

 もちろん、この日の朝木の反応は「ただの酔っ払い騒動にすぎなかったのではないか」という心証の1つにすぎない。私は引き続き推移を見守ることにした。

思わせぶりな「解説」

「ニュースワイド多摩」における「朝木宅襲撃事件」に関するニュースを私が次に確認したのは2月28日である。私が確認したかぎりでは、2月10日の放送が2月27日まで流されていたことになる。

 矢野はこの日も3名のアシスタントを従えていた。そのうちの1人が2月10日の放送でアシスタントが読み上げたのと同じ基本情報を読み上げたあと、矢野は次のように「解説」した。



矢野  はい。えーっと、この犯人が、えー、警察に、ここが自分の住所ですよっていうふうに、えー、しゃべったですね、住所には、この人が犯人が住んでないってことがわかってるんですねえ。えー、奇怪な事情でして、えー、この事件の、おー、なりゆきもですねえ、えー、行方が注目されるところになりましたね。はい。



 矢野はまだ自分が準当事者であることを聴取者には明かさないが、事件から23日がたち、この放送では「犯人」に関する新しい具体的な情報が明らかにされていることが注目される。ただ、「犯人」の住所に関する事情が「事件」とどう関係しているのか、矢野は明らかにしない。なにか「犯人」が「不審」であると印象付けようとしているだけのようにも聞こえる。

 矢野によれば、矢野が「犯人」の住所を知ったのは「犯人」が「警察でしゃべった」からである。つまり、現場で取り押さえられた「犯人」は東村山署に連行されて取り調べを受けた。当然、東村山署は被害者である朝木からも事情を聞いただろうから、朝木も東村山署に行ったはずである。ケースバイケースだが、警察が被害者に「犯人」の住所を教える場合もある(矢野が見ず知らずの少年を「暴行犯」として突き出したときのように、「被害者」である矢野に少年の住所・氏名を教えなかったケースもある=「少年冤罪事件」)。したがって、矢野が朝木を通じて「犯人」の住所を知り得たとしても不思議はない。

 しかしこの時点で、通常の被害者の関心事は「犯人」の住所よりも、取り調べの結果、東村山署が「犯人」をどう取り扱うのかということである。朝木は事情聴取の際、東村山署が「犯人」をどう取り扱うかについて何も聞かなかったのだろうか。たとえば留置して取り調べを継続するのか釈放するのか、刑事責任を問うのか問わないのか。警察は被害者に対してその程度の方針ぐらいは教えるはずである。まして事件から23日がたった時点で、少なくとも「犯人」の取り扱いについて当事者である朝木が何も知らないことの方が不自然なのだった。

 被害者である朝木が東村山署の「犯人」の取り扱いについて何も知らないはずがなく、矢野が「犯人」の扱いを何も知らないはずはない。矢野はなぜそれにはいっさい触れず、「事件」とは直接関係のない「犯人」の住所についてのみ述べるのか。

 私がそれまでに得た情報(ただの「酔っ払い騒動」)および被害者である朝木本人の反応を重ね合わせると、矢野のこの日の放送には、「犯人」の処分に関するなんらかの事実を知りながら、しかしそれを明らかにしたくない事情が隠れているように思われた。

(つづく)

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「朝木宅襲撃事件」 第4回
東村山市議会で明らかになった「重大な」展開

「ニュースワイド多摩」の「朝木宅襲撃事件」に関する放送内容が入れ替わったのは2回目の放送から数日後の3月2日である。この日も第1回目と同じ基礎情報をアシスタントに読み上げさせたあと、矢野が一言付け加えた。



矢野  はい。えー、というわけで、事件がその後、経過がえー、注目されるんですが、この件に関して続報が入りましたらまたお伝えしたいと思います。



 この日は新たな続報は何もなかった。ちなみにこの時期は、東村山市議会3月定例会の一般質問のスケジュールと重なっていたということも、あるいはなにかしら関係していたのかもしれない。

 ところが翌日、「事件」は重大な展開を迎えることになる。その「事実」は「ニュースワイド多摩」ではなく東村山市議会本会議場内で明らかにされた。平成18年3月3日、矢野は一般質問でなにやら議会事務局に不正があったかのような質問をしたあと唐突に「朝木宅襲撃事件」に触れ、次のように述べたのである。



矢野  ところで、本年の2月5日未明に、諏訪町の朝木直子議員自宅敷地内に暴漢が侵入し、      (筆者注=削除されたらしく、議事録は一部がブランクになっている)ぶっ殺してやるなどと叫びながら、ガラスを蹴破って押し入ろうとする殺人未遂事件が起きたのでありますが、ガラスが強化ガラスで容易に割れなかったことで、この男は警察官に取り押さえられたのであります。現行犯であります。やはり、10年目にして予想どおり事件が起きた。しかも、強化ガラスということを知らないで、まんまとはまったと言わざるを得ないのであります。この人物が、具体的にはっきりしておりますから、今後、どういう展開になるかは非常に興味深いところでありますが、このことをもってしても、朝木明代議員の事件に犯人がいることは明らかになったと言わざるを得ないのであります。



 矢野はそれまで「ニュースワイド多摩」において、「『犯人』が『この野郎、ぶっ殺してやる』と叫んでいたこと」「関係者が『また事件が起きた』と語っていること」「『犯人』が住民票上の住所に住んでおらず不審であること」などを挙げ、朝木明代の転落死事件との関連性を匂わせるにとどまっていた。しかし3月3日の一般質問では、それまでの放送にはなかった確定的な文言が使用されていることに読者も気づこう。「殺人未遂事件が起きた」という文言である。

 この一連の発言が市議会本会議場における一般質問の内容としてふさわしいかどうかについては議論があろうが、東村山市議である朝木直子が暴漢に命を狙われたということになればことは重大であり、議長としても無視できまい。いずれにしても、それまで「事件のなりゆきが注目される」としていた矢野が「殺人未遂事件」と断言したことは重大である。矢野の発言の流れからすれば、東村山署はこの「事件」を「殺人未遂事件」と認定したと理解するほかない。

 すると、矢野がいった「どういう展開になるかは非常に興味深いところであります」とは、「犯人」が「殺人未遂」で逮捕され、立件されるのは当然のこと、「犯人」の動機が何だったのかがいずれ明らかになるという趣旨でもあろうか。あるいは、「このことをもってしても、朝木明代議員の事件に犯人がいることは明らかになったと言わざるを得ないのであります。」との最後の発言から察すると、「明代の転落死事件の『真相』も明らかになる可能性がある」ということのようでもある。

 ただ矢野はなぜ、「どういう展開になるかは非常に興味深いところであります」となにか他人事のようにいい、「このことをもってしても、朝木明代議員の事件に犯人がいることは明らかになったと言わざるを得ないのであります。」と結論付けるにとどまったのだろうか。明代の転落死事件との「関係」はともかく、現時点で重要なのは矢野の身内ともいえる「朝木直子の命が狙われた」という事実だろう。「朝木宅襲撃事件」が「殺人未遂事件」だったとすれば、矢野はまず朝木の身の安全の確保を訴えるべきなのである。

「殺人未遂事件」というのが事実なら、朝木は今後も命を狙われる可能性がないとはいえない。矢野は議長に対して、議会として民主主義を脅かす暴力に対する警戒態勢を取るなどの対応を求めるべきだったのではあるまいか。しかしその後、矢野から議長に対してそのような申し入れがなされたという話は聞かない。

「朝木門外ウンコ事件」

 さて、「朝木宅襲撃事件」は3月3日、東村山市議会一般質問において矢野の口から「殺人未遂事件」だったことが明らかにされるという重大な展開があった。しかし多摩レイクサイドFM「ニュースワイド多摩」では同日も2日と同じ放送が流され、この「重大な展開」については一言も触れられていない。

 私が次に「ニュースワイド多摩」を確認したのは3月8日である。矢野が市議会で「重大な展開」を明らかにしてから5日がたっている。「ニュースワイド多摩」では矢野が市議会で明らかにした「事実」からさらに続報があったのだろうか。矢野が議場で「殺人未遂事件」と発言して以後も、不思議なことに一般紙で「犯人」が「殺人未遂」で再逮捕されたという報道がなされた事実はない。「ニュースワイド多摩」では「殺人未遂罪で犯人逮捕」のニュースが報じられるのだろうか。矢野の「解説」を聞こう。



矢野  はい。えーっと、この事件が終わったあとですねえ、つい最近のまあ続報なんですが、えー、この朝木直子議員の、おー住んでる自宅はちょっと袋小路に入ってるんですが、通りからね、えー奥まったところに入ってるんですが、そのおー、何軒かある、うー、まあ袋小路に面して何軒かのお宅があるんですが、その、おー、朝木直子議員の、おー、門の、おー、門と、おー、隣のお宅の間ぐらいのところにですね、なんとですねえ、大人のおっきい、ウンチがですね、その、してあったんですよ、この前の日曜日に。あ、早朝ですがね。隣のあのー、方がびっくりして、110番したという事件が起こってましてですねえ、まあ、なんと、とんでもない事情になってますねえ。まあ、そういったことで、えー今後、まあ警察も捜査はしてると思いますが、今の事件に関してもですねえ、えー、2月5日の事件に関しても、早いことですねえ、えー解決するようにですねえ、えー東村山警察にはお願いしたいと思いますよね。はい。



「この前の日曜日」とは平成18年3月5日である。したがって、この放送が3月3日の一般質問以後に録音されたものであることが明らかだが、矢野は「朝木宅襲撃事件」が「殺人未遂事件」だったとする事実についてはなぜか一言も触れなかった。その代わりに報じられたのがこの「朝木門外ウンコ事件」だった。これはこれで「重要な展開」というべきなのだろうか。

「襲撃事件」に続いて起きた「事件」で、朝木直子に対して危害が加えられる恐れは今も続いているといいたいようにも聞こえる。ただ今回の「朝木門外ウンコ事件」が、それが人間のものであるかどうか、人間のものであるとすればそれは誰のものなのか、朝木に対する威迫や嫌がらせを意図したものなのかどうかも含め、事実関係や背景等はいっこうに明らかにはされていないことに注意を要する(明らかにしなければ、現場に最も近い者の仕業である可能性を誰も否定できない)。

 むしろ3月3日の段階で「殺人未遂事件」と断定した矢野の発言からすれば、そのことにはまったく触れず、「襲撃事件」と関係があるのかどうかも定かではない「朝木門外ウンコ事件」を取り上げること自体、不自然な気がしてならなかった。

(つづく)

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「朝木宅襲撃事件」 第5回
「犯人グループ」の存在が浮上

 翌3月9日、「ニュースワイド多摩」で「朝木宅襲撃事件」と「朝木門外ウンコ事件」の続報が報じられた。


 
矢野  はい。この件に関してはですねえ、警察が取り押さえた、あー犯人の男は、警察に伝えた住所には、実際は住んでいなかったということをこれまでにもお伝えしましたが、その後、事件がまた起こりましてですねえ、えー、この前の、おー、日曜日の朝だったと思いますが、えー、この朝木議員の自宅のです、と隣の家の、おー、ある、うー、袋小路になってるんですね、大きい通りから入ったところなんですが、その袋小路のですね、ちょうど朝木議員の、おー、えー入り口のところの近くに、えー隣の家との間になりますが、その路地のところにですねえ、なんとですね、ちょっと食事中の方は申し訳ないんですが、えー、とにかく大人の大型のウンチがですねえ、こー、そこでやってたというね、もうあきれた事件がまた起こりましてですね、で、これは朝木議員じゃなくて隣の、おー、方が、えーその、びっくりしてですねえ、110番通報して、警察の方をまた呼んだらしいんですが、ま、こういったことが続くことからみてもですねえ、10年前の事件がどういう意味だったのかも含めてですねえ、とんでもない、なんか犯人、または犯人グループがですねえ、いろんなことを考えてるということをね、教えてくれる事件ですね。東村山警察もがんばってほしいと思います。はい。



 依然として矢野は「朝木宅襲撃事件」が「自殺未遂事件」であること、また「朝木門外ウンコ事件」と「襲撃事件」が具体的にどう関連しているのか明らかにしないが、「こういったことが続くことからみてもですねえ、10年前の事件がどういう意味だったのかも含めて」「犯人、または犯人グループがですねえ、いろんなことを考えてるということをね、教えてくれる事件」であると矢野はいう。すると、「朝木門外ウンコ事件」は明代の転落死事件にまで続くきわめて根の深い事件の一部をなす重要な事件の1つということになる(それにしては、ウェブ版「東村山市民新聞」の「事件の概要」に「朝木門外ウンコ事件」に関する記載が1行もないのはきわめて不可解というほかない)。

 また、この日の放送では前日の「解説」にはなかった新たな「犯人像」が唐突に登場していることに気づこう。これまで矢野が説明してきた「朝木宅襲撃事件」は単独犯によるものだった。ところがこの日の矢野の「解説」によれば、「襲撃事件」から「朝木門外ウンコ事件」へと続く一連の事件は「犯人グループ」によるものである可能性もあるらしいのである。

 どうやら矢野は「朝木宅襲撃事件」と「朝木門外ウンコ事件」は別人の犯行とみているようだが、証拠を保存して鑑定にでも出したのだろうか。いずれにしても、両事件の事件性の有無とその存在そのもの、および矢野が主張する根拠ははなはだ定かではないものの、「朝木宅襲撃事件」と「朝木門外ウンコ事件」の狙いは共通しており、したがってこれは同じ「犯行グループ」によるものだと矢野は述べている。

「犯行グループ」イコール「組織」である。それがどのような、あるいは何という組織なのかは明言しないが(明言すれば大変なことになることを矢野は経験的によく知っている)、矢野にとって聴取者がそう受け止めてくれればよかったのだろう。「組織とはどこなのか」と想像をめぐらせてくればなおいい。

 そのときには「ニュースワイド多摩」における〈10年前に朝木直子議員の母親の朝木明代議員が、この自宅から拉致されて、東村山駅ビル、駅前ビル上層階から何者かに落とされて殺害されており、関係者は「また事件が起きた」と語っています。〉という一節と「10年前」のデマ宣伝が生きてくる――。「朝木宅襲撃事件」が「犯人グループ」によるものとする根拠を明らかにしない以上、矢野はそう考えたのではないかと推測する以外になかった。

「本末転倒」の常套手段

「朝木門外ウンコ事件」――「犯人グループ」とたたみかけられると、基礎事件である「朝木宅襲撃事件」が自明の事件であるように思えてくる。しかし、「朝木宅襲撃事件」が客観的にどこまで事実で、警察の捜査がどう進展しているかについてはこの時点ではまったく明らかにされておらず、客観的にはなんらの事実関係も確定されていない。

 朝木明代の転落死事件の際、矢野と朝木は「他殺」を主張しながら、その根拠を実証することはできなかった。その代わりに彼らの「周辺」で次々と「発生」したのが、「朝木宅放火事件」、彼らに対する「脅迫文郵送事件」、朝木のポケベルに「444……」という数字が打ち込まれた事件、矢野が車で「ひき殺されそうになった」と主張する事件、矢野に対する「暴行事件」(有名な「少年冤罪事件」)などである。矢野はこれらの「周辺」の「事件」を理由に「明代は殺されたのだ」と主張したが、裁判所はいずれもその関連性を認定せず、その存在自体に対して疑問を投げかけたものもある(『聖教新聞』裁判)。今回の「朝木宅襲撃事件」の「続報」とその流れも、かつての矢野の宣伝の手法と酷似しているように私には思われた。

重大な「結論」の、不当に軽い扱い

 さて、矢野の「ニュースワイド多摩」における「解説」によれば、「朝木宅襲撃事件」は続く「朝木門外ウンコ事件」と、根拠は明らかではないものの、とにかく「犯行グループ」の存在が浮上したことでなにやらきわめて不穏な言論・思想弾圧事件の様相を帯びてきた。しかしその一方で、「犯人」が現行犯逮捕され、なおかつ矢野自身が議場で「殺人未遂事件」と断定したにもかかわらず、「ニュースワイド多摩」ではいまだその「結論」を明らかにしないという不自然さもあった。

「ニュースワイド多摩」において「朝木宅襲撃事件」の大きな進展があったのは翌3月10日のことである。その日も矢野は、前日と同じように「朝木宅襲撃事件」の基礎情報を流したあと、矢野が「解説」を加えた。その内容は大要、「襲撃事件、ウンチ事件が続くということは、朝木明代議員が殺された事件となんらかの関係があるということを示している」というもので、前日同様「襲撃犯が個人ではなく、『犯人グループ』の一員であるかのような「解説」を加えるにとどまった。

 その後矢野はアシスタントに全国紙多摩版を読ませていたが、番組も終わりに近づいた13:57分ごろから東京・町田で起きた女子高生殺人事件を取り上げた。当初、矢野はこの事件についてなにやら「解説」していたが、何の関係があるのか矢野は突然話題を「議員宅襲撃事件」に切り替え、こう述べたのである。



矢野  朝木議員の自宅が暴漢に襲われた事件もですね、犯人は『ぶっ殺してやる』といっているんですから、殺人未遂と同じようなものだと思います。東村山警察もはっきりした態度を示してほしいですね。清瀬の警察官殺害事件も未解決のままですからね、早く治安のよい町を取り戻してほしい、ということを最後にお伝えしたいと思います。(要旨)



「朝木宅襲撃事件」について矢野が「ニュースワイド多摩」で具体的な罪名に言及するのはこれが初めてである。しかしそれならなぜ矢野は、基礎情報を伝えた本編のニュースでは述べず、他の事件に紛れ込ませるように触れたのだろうか。「殺人未遂と同じようなもの」というのはきわめて重要な見解であり、結論ともいえる。それが事実なら本編でも触れ、番組の最後でもう1度触れてもいいぐらいの重さがあると思える。この扱いの軽さはなぜなのか。

 内容的にも、議場では明確に「殺人未遂事件」と述べているにもかかわらず、「ニュースワイド多摩」では「殺人未遂と同じようなもの」と微妙に後退していることに気づこう。また「東村山警察もはっきりした態度を示してほしいですね」と、「犯人」を現行犯逮捕した「事件」の発生から1カ月以上たっても警察が結論を出していないことを示唆しているところをみると、「朝木宅襲撃事件」について捜査機関は必ずしも「殺人未遂事件」とは結論付けていないということであると理解できた。同じ人間が1つの事実を説明するのに、短期間にこれほど変遷するとは不可解だった。

(つづく)

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「朝木宅襲撃事件」 第6回
「朝木宅襲撃事件」第5回より続く)

「殺害未遂事件」と断定

 平成18年3月31日付「東村山市民新聞」第144号1面に、トップ記事に並ぶ扱いで(しかしトップ記事ではない)次のような見出しが躍った。

〈殺人未遂事件〉〈暴漢、朝木直子議員を日曜早朝に襲う!〉

〈やっぱり! これではっきりした11年前の朝木明代議員殺害事件の真相〉

〈酔っ払いを装い、朝木直子議員を狙い大胆不敵な犯行。調査進み、殺人未遂事件で刑事告訴へ〉

筆者注=「東村山市民新聞」第144号は「2005年3月31日」発行となっているが、「2006年3月31日」の誤りである。)

「『暴漢』が朝木直子議員を襲った」と称する事件が起きたのは平成18年2月5日午前6時30分ころのこと。私の知るかぎり、矢野と朝木は「事件」について同年2月10日以降、それが酔っ払いを装ったもので、朝木直子襲撃を目的に侵入したものであるなどと繰り返し「報道」および主張をしてきた。その経過と内容の変遷をまとめると以下のとおりである。

①2月10日  多摩レイクサイドFM「ニュースワイド多摩」
②2月28日  多摩レイクサイドFM「ニュースワイド多摩」
③3月2日   多摩レイクサイドFM「ニュースワイド多摩」
④3月3日   多摩レイクサイドFM「ニュースワイド多摩」


筆者注=多摩レイクサイドFM「ニュースワイド多摩」は新しい日付の日に、放送内容が改変されている。前の放送から次の日付の日までは同一内容のまま1日に6回繰り返し流された。めったにみられない放送局である。)

 ここまでの放送における基礎情報は同一録音のもので、その趣旨は「『暴漢』は朝木直子に危害を加える目的で朝木宅敷地内に侵入してきた。この事件が起きたことで朝木明代の転落死が『殺人事件』だったことが明らかになった」というものだった。なおこの時点で、矢野が主張する「暴漢侵入事件」と朝木明代の転落死との因果関係について具体的な説明はない。

⑤3月3日   東村山市議会本会議において矢野が「『暴漢侵入事件』は『殺人未遂事件』である」と発言

 平成18年3月3日に行われた東村山市議会本会議の一般質問で矢野は大げさに声を張り上げ、講談を思わせる語り調子で次のように「暴漢侵入事件」に言及した。

矢野  ところで本年の2月5日未明に、諏訪町の朝木直子議員自宅敷地内に暴漢が侵入し、……ぶっ殺してやるなどと叫びながら、ガラスを蹴破って押し入ろうとする殺人未遂事件が起きたのであります……。……今後、どういう展開になるかは非常に興味深いところでありますが、このことをもってしても、朝木明代議員の事件に犯人がいることは明らかになったといわざるを得ないのであります。

 矢野が「暴漢侵入事件」に関して「殺人未遂事件」という文言を使用したのはこれが初めてである。「住居侵入」と「殺人未遂」では罪の重さがだいぶ異なろうが、前日の「ニュースワイド多摩」の放送で矢野は基礎情報のあと、〈事件がその後、経過が注目されるんですが、この件に関して続報が入りましたらまたお伝えしたいと思います〉と述べるにとどまっており、同日放送の「ニュースワイド多摩」でも同じ録音が流されている。

 3日の「ニュースワイド多摩」が2日放送分と同じ内容であるのは録音を更新する時間がなかった可能性があるとしても、前日の放送から一般質問までの間に矢野は「暴漢侵入事件」を「殺人未遂事件」と断定するだけの「続報」を入手したのだろうか。その点に加え、一般質問の時点で「暴漢侵入事件」と明代の事件にいかなる具体的な因果関係があったのかに関する説明もいっさいない。

⑥3月8日   多摩レイクサイドFM「ニュースワイド多摩」

※基礎情報はこれまでの放送と同一だが、この日に至ってもまだ矢野が本会議場で「殺人未遂事件」と断定したことに関する具体的情報は示されず、3月8日の放送では朝木宅の門近くに人間のものとおぼしき半固体排泄物が置かれていたとし、「暴漢侵入事件」との関連を匂わせるにとどまった。もちろんこの半固体排泄物を置いたのが誰かは、あれから7年が経過した現在もいっこうに明らかになっていない。


⑦3月9日   多摩レイクサイドFM「ニュースワイド多摩」
⑧3月10日  多摩レイクサイドFM「ニュースワイド多摩」

※基礎情報はこれまでの放送と同一。矢野は3月8日に続いて翌9日にも「ニュースワイド多摩」の録音を更新した。しかし、前日の放送で取り上げた半固体排泄物についてこの日も「暴漢侵入事件」の真相に深く関係しているかのように解説したが、その具体的な根拠は示されない。しかし同日の放送で矢野は「犯行グループ」という文言を初めて使用し、「暴漢侵入事件」が組織的な犯行であることを匂わせた。ただしなぜ「犯行グループ」といえるのか、その根拠は示されない。

 3月10日もここまでは同じ内容だったが、別のニュースの中で唐突に事件に触れ、「『ぶっ殺してやる』といっていたので、殺人未遂と同じようなもの」と発言。「ニュースワイド多摩」で初めて「殺人未遂」の文言が使われた。この日の矢野の主張によれば、「『ぶっ殺すぞ』といった」ことが「殺人未遂」である根拠ということらしい。

 これはどこの国の法律だろうか。朝木直子が事件の被害者であること自体を否定するつもりはない。しかし憶測や誇張を交えて被害を過大に訴えることは、かえってどこまで本当なのかと不信感を持たれかねないし、加害者に対して存在しない罪を被せることになるのだった。

(つづく)
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「朝木宅襲撃事件」 第7回
「酔っ払いには見えなかった」という主観

 平成18年3月31日付「東村山市民新聞」第144号の「暴漢侵入事件」の記事は、矢野によるFMラジオや議会における質問を利用した宣伝を経て掲載されたものだった。さらに3面の「やの議員の頁」には〈殺害未遂事件〉〈私は朝木議員殺害を狙った犯人を見た〉と題して矢野の「目撃談」なるものが掲載されている(「目撃談」はのちにウェブ版「東村山市民新聞」「矢野ほづみ議員のページ」に掲載されたものと同じ内容である)。

 このタイトルからすれば、犯人はたんなる「住居侵入犯」ではなく「殺人未遂犯」であると多くの読者は受け取るのではあるまいか。しかしこの「目撃談」とは、パトカーに乗せられた「犯人」の顔を見たというものにすぎず、犯行現場を目撃したというものではない。その上で記事は「おとなしく神妙にしている様子は、とても酔っ払いには見えませんでした。」と、矢野の主観で締めくくっている。

 記事には犯人が「住居侵入犯」ではなく「殺人未遂犯」であるという客観的な根拠は何も示されていなかった。つまりこの記事は、矢野の主観を並べることで読者に対して事件が「殺人未遂事件」だったかのように印象付けることが目的だったのではないかという見方ができよう。それをよりうかがわせたのが、矢野の「目撃記事」の隣に朝木明代の自殺を「殺害事件」とする記事が掲載されていたことである。

隣に「殺害事件」と題する記事

 記事は〈殺害事件〉〈最高裁判決は警察捜査結果を否定した!〉と題し、本文には次のように記載していた。

〈昨年5月13日に、朝木明代議員遺族・矢野議員側の勝訴が確定した最高裁判決が、朝木明代議員が自殺したとする東村山警察の捜査結果を、事実上、否定していたことがわかりました。これまで、朝木明代議員の遺体には、加害者と争った証拠とされる上腕内側部に変色痕(アザ)があったことが「司法解剖鑑定書」に書かれてあったことなどから自殺ではない、との判断が判決書には書かれていましたが、さらに加えて、自殺を裏付ける事情があるとする東村山警察の捜査結果では「自殺を推認するに足らず、他に朝木明代が自殺したと認めるに足りる証拠はない」と断定していることがわかりました。

 2月5日の朝木直子議員殺人未遂事件も発生しており、真相がはっきりしたといえます。〉

「昨年5月13日」とは平成17年5月13日である。この日の最高裁判決とは月刊タイムス裁判の最高裁判決を指している。その中で矢野がいう「裁判所が東村山警察の捜査結果を否定していた」箇所とは、東京高裁判決の以下の部分であると類推できる。



……現場の状況、亡明代の死亡直前の言動、死体の状況及び関係者の供述を総合考慮すると、亡明代が自殺したことを裏付ける事情が存在することは確かである。

 しかしながら、他方で、……司法解剖の結果、亡明代の左右上腕内側部に皮膚変色が認められたこと、亡明代の事務所の鍵が、平成7年9月2日夕方になってから、本件マンションの2階踊り場付近で発見されたこと、亡明代の靴がいまだに発見されていないこと、亡明代が同年8月において本件窃盗被疑事件が冤罪であると主張して徹底的に闘う決意を表明していたことが認められ、これらの事実に照らせば、上記亡明代が自殺したと断じるにはなお疑問が残るところであり、上記亡明代が自殺したことを裏付ける事情をもって、自殺を推認するに足らず、他に亡明代が自殺したと認めるに足りる証拠はない。



 東京高裁は明代の自殺に関する東村山警察署の捜査結果について、矢野がいうように〈自殺を推認するに足らず、他に朝木明代が自殺したと認めるに足りる証拠はない。〉と述べた。しかしこれはあくまで、東村山警察署の捜査結果に基づき〈現場の状況、亡明代の死亡直前の言動、死体の状況及び関係者の供述を総合考慮すると、亡明代が自殺したことを裏付ける事情が存在することは確かである。〉と東村山署の「自殺」の結論に同意を示した上での話で、裁判所が自殺を否定したものでも、まして「他殺」であると断定したものでないことは明らかである。

 また矢野は記事で〈これまで、朝木明代議員の遺体には、加害者と争った証拠とされる上腕内側部に変色痕(アザ)があったことが「司法解剖鑑定書」に書かれてあったことなどから自殺ではない、との判断が判決書には書かれて(いた)〉とも主張している。しかし、裁判所が明代の「自殺」(あるいはその可能性)を否定したことは1度もない。

 たとえばタイムス裁判以前の判決としては「潮事件」判決があり、一審の東京地裁は上腕内側部の変色痕などを理由に〈亡明代が自殺したとの事実が真実であると認めるには足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。〉と認定した。しかしこれも東村山署の捜査結果に基づき〈亡明代の死因が自殺であるとみる余地は十分にあるというべきである。〉と認定した上でのことで、自殺を否定したわけでも、まして「他殺」であると断定したものでもない。

 したがって「東村山市民新聞」144号における〈朝木明代議員の遺体には、加害者と争った証拠とされる上腕内側部に変色痕(アザ)があったことが「司法解剖鑑定書」に書かれてあったことなどから自殺ではない、との判断が判決書には書かれていました〉とする矢野の記載は虚偽であるということになる。矢野は上記記事と「暴漢侵入事件」の記事を並べることで相互に信憑性を持たせる効果を狙ったのではないかと私には思われた。

 いずれにしても、平成18年2月10日に多摩レイクサイドFM(「ニュースワイド多摩」)で「事件」の第一報が伝えられて以後、なにやら関連性があるかと思わせる事件の発生(半固体排泄物放置事件)も含めて、事件を伝える矢野の表現内容は徐々に強まり、ついには「殺人未遂事件」となったものの、客観的裏付けが示されることはなかった。私が朝木直子に直接聞いた際には「もう調べはついてるんでしょ」というのみで、朝木の口からはなんらの具体的な説明も聞かれなかった(本連載第3回)。また同年3月上旬、私が矢野にその後の状況を聞くと矢野は、私に対してこういったのである。

「お前も仲間なんじゃないのか」

 もちろん私に身に覚えはなかった。矢野のこの発言からも、矢野が事件について具体的な根拠もなく「暴漢が朝木に危害を加える目的で侵入した」と主張しているのではないかと強く感じた。

(つづく)
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「朝木宅襲撃事件」 第8回
最初に取り上げた『週刊新潮』

 矢野と朝木がいうように、朝木に危害を加えることを目的に暴漢が朝木宅に侵入したのだとすればきわめて重大な事件である。またこの事件が本当に、朝木明代の転落死と関係があるのだとすれば、とりわけかつて「殺された」と騒いだ週刊誌にとっても、取り上げるかどうかは別にしても、より興味深い事件であることは事実だったろう。

 それらの週刊誌の中で真っ先に事件を取り上げたのは、ことのほか創価学会にこだわりを持つとみえる『週刊新潮』だった。『週刊新潮』は東村山事件のデマ報道で創価学会から提訴された際、真実性・相当性を立証する切り札として取材源である矢野と朝木に証言を依頼したが、当初の予定とは異なり、尋問の直前になって証言を断られたようだった。裁判長に対して当惑気味にその旨を伝える代理人の姿からは、矢野と朝木の対応に大きな変化があったことが感じられた。

 平たくいえばハシゴを外されたということだろう。『週刊新潮』もそう感じたのか、結果として『週刊新潮』は200万円の支払いと謝罪広告の掲載を命じられたが控訴せず、判決を受け入れた。平成13年5月18日のことである。

 それから5年がたち、矢野、朝木に対するわだかまりも薄らいだということだろうか。『週刊新潮』(平成18年2月23日付)は独立した記事ではないものの、〈ワイド「50年の50人」〉というワイド特集の中の1本としてこの「事件」を取り上げたのである。タイトルは〈謎の墜落死「東村山市議」宅に今度は「暴漢乱入」〉。かつて朝木明代の自殺に対して「創価学会疑惑」などとしたタイトルに比べればはるかに後退していることがうかがえるが、過去の記事に対するこだわりは捨てきれないらしかった。

不可解なコメント

 記事は朝木の次のコメントから始まっている。

〈「午前6時20分ごろでした。私は自宅の2階で寝ていたのですが、外で何か男性のわめき散らす声が聞こえてきたのです。私の家は入り組んだ路地の奥に建つ一軒家。繁華街から離れているし、何で朝早くからこんな路地に酔っ払いがいるのだろうと思ったのです」〉

 少なくとも朝木は当初、家の外でわめいているのが「酔っ払い」だと思っていた。そのうち男は敷地内に入ってきて窓ガラスを叩きはじめた。朝木は続けて次のように語る。

〈「男はガラスがびくともしないのでイラついて、何度も何度もドンドンと蹴りつけたのです。それこそ、家が揺れるくらいに強く蹴りながら“てめぇ出て来い”“出て来い! この野郎”と何度も叫んだのです」〉

 読者は朝木のコメントの中に重要な文言が含まれていないことに気づこう。多摩レイクサイドFMでも『東村山市民新聞』でも、「暴漢」が侵入した際、「出てこいこの野郎、ぶっ殺してやる」といったことになっている。だからこそ矢野は、この文言を根拠に「殺人未遂事件」とまでいっているのである。ところが『週刊新潮』において朝木は、その「暴漢」は「『出て来い! この野郎』と何度も叫んだ」とは説明しているものの、「『ぶっ殺してやる』と叫んだ」とはいっていない。これは奇妙なことではあるまいか。

『週刊新潮』が取材したのは発行日(2月23日=発売日は1週間前の2月16日)から逆算すると、多摩レイクサイドFMが最初の放送を行ったのと同時期とみられる。するとなぜ『週刊新潮』は「ぶっ殺してやる」という文言を記載しなかったのか。事件の真相に迫るという点においてはもちろん、読者に対するインパクトという点でも無視すべき文言ではなく、『週刊新潮』ともあろうものがこの発言を見逃すはずがない。

「ぶっ殺してやる」という発言が多摩レイクサイドFMでは放送され、『週刊新潮』では記載されなかったことをどう理解すべきなのだろう。朝木は『週刊新潮』の取材に対して「『ぶっ殺してやる』といわれた」とはコメントしなかったと考えるのが自然である。

 一方、「暴漢」が実際に朝木に対して「ぶっ殺してやる」といったとすれば朝木が『週刊新潮』に対してそうコメントしない理由は想定できない。すると『週刊新潮』の朝木のコメントの中に「ぶっ殺してやる」とする発言がなかった理由は、そもそも「ぶっ殺してやる」という発言は最初から存在せず、だから朝木もそうコメントしなかったと考えるのが最も合理的なのではあるまいか。

「伝えた」と主張する朝木

「暴漢」は本当に朝木に対して「ぶっ殺してやる」といったのか。私の代理人が法廷でこの点を朝木に確認した際のやり取りをみてみよう。



代理人  (『週刊新潮』の記事の中で)不思議だったのは、「てめぇ、ぶっ殺してやる」という発言が、記者の方に伝わっていないようなんで、このとき、取材を受けたとき、そういうふうにいわなかったのか、いったけど出なかったのかどうなのか。

朝木  全部犯人のいった言葉は鮮明に覚えてましたので、全部お伝えしてあると思いますが、私は伝えてあります。

代理人  伝えてあるけれども、たまたま載せなかったんじゃないかと。

朝木  これは、私が書いた記事ではありませんから、この記事について私がコメントする立場にはありません。

代理人  さっきいったようなことを記者には伝えたと。

朝木  伝えてあります。



 朝木が確かに伝えていたとすれば、『週刊新潮』は「てめぇ、ぶっ殺してやる」というこの重要な発言を聞き漏らしたか、記載し忘れたということになるのだろうか。しかしタイトルにも使えそうな、メディアにとってこれほどおいしいセリフを無視するとはやはり考えにくい。するとあるいは、朝木のいう「全部伝えた」中に「てめぇ、ぶっ殺してやる」は最初から含まれていなかったということなのか。

(つづく)
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「朝木宅襲撃事件」 第9回
『週刊実話』も同様の記事

 朝木は本当に「暴漢」から「てめぇ、ぶっ殺してやる」と脅され、週刊誌の取材に対してそう伝えたのだろうか。

 そのことを検証する材料としてもう1つ、「事件」を伝えた『週刊実話』(平成18年3月9日付)の記事がある。『週刊実話』もまた明代の自殺に関して疑惑仕立ての記事を掲載した実績がある。

 その『週刊実話』も独立した記事ではなく〈News! 4回転ワイド〉という雑多な記事を集めた特集の中の1本として取り上げた。タイトルは〈謎の自殺から11年 東村山・朝木市議の実娘を襲った怪事件〉。『週刊実話』では「事件」を矢野のいうように「殺人未遂事件」とは表現せず「怪事件」とのみ記載している。『週刊新潮』の〈「暴漢乱入」〉よりも一歩引いた表現といえるのではあるまいか。余談だが、明代の転落死を「自殺」と記載している点は評価できる。

 この記事で朝木は次のようにコメントしている。

「……自宅2階で寝ていたところ、わめき散らす男の声が聞こえてきたんです。なんだろう、酔っぱらいかなと思っていると、その男は私の家の敷地に押し入って来て、『てめぇ、出てこい、このヤロー』などと怒鳴りながら、1階のサンルームのガラスをドンドンと叩き始めました」

「男は激しくガラスを叩いていましたが、……今度は家が揺れるほどの激しい勢いでガラスを蹴りはじめました。『出てこい、このヤロー』と叫びながらの激しい蹴りに、私は蹴破られて侵入されるのかと、強い恐怖を憶えました」

 確かに就寝中に自宅敷地内に不審者が侵入し、いきなり「このヤロウー」などとガラスを蹴られたのでは、確かに身震いするような恐怖を覚えただろうことは察するに余りある。しかし『週刊新潮』同様に、『週刊実話』にも「ぶっ殺してやる」という発言は記載されていなかった。なぜなのだろう。『週刊実話』から取材を受けた状況についても代理人が訊いている。そのやりとりも紹介しよう。



代理人  このとき(『週刊実話』の取材の際)もあなたは、自分の記憶のまま記者の人に話をしたと。

朝木  そうですね、そのとおりです。

代理人  このときもあなたは、男のほうが、出てこい、という話と、てめえ、ぶっ殺してやる、という発言をしたということを、この記者の人にいってましたか。

朝木  発言というか、ありのままをお話ししました。

……略…

代理人  このときに、あなたは「週刊実話」の記者のほうにも、ちゃんと男が、てめえ殺してやる、というふうにいってたということは、伝えてるということですね。

朝木  ありのままをお伝えしてあります。



 私の代理人が重ねて「てめえ、ぶっ殺してやる」といわれたかと訊いたのに対して、朝木は「ありのままを伝えた」と答えている。すると朝木が『週刊実話』に対しても「『ぶっ殺してやる』といわれた」とコメントしたとすれば、同誌もまた偶然にこの発言を聞き漏らしたか、あえて不審者のこの発言を記載しなかったのだろうか。

 普通に考えれば、同じように取材した2つの週刊誌が、2誌とも偶然に同じ発言を聞き漏らしたとも、聞いていながらあえて記載しなかったとも考えにくい。朝木は『週刊新潮』に対しても『週刊実話』に対しても「『ぶっ殺してやる』といわれた」と伝えたと主張するが、実際には朝木はそのようなコメントはしなかった――そう考える方がすんなり腑に落ちるのである。

 朝木が実際に「ぶっ殺してやる」といわれたとすれば、週刊誌に対してそう伝えないはずがない。そう考えると、事実は、不審者はガラスを蹴りながら「出てこい、このヤロー」といったかもしれないが、「ぶっ殺してやる」とはいっていないということではないのだろうか。同じように取材した『週刊新潮』と『週刊実話』が、同じような内容の記事を掲載し、打ち合わせでもしたかのように「出てこい、このヤロー」の発言については記載しているにもかかわらず、「てめぇ、ぶっ殺してやる」との発言は記載していないという点からすると、やはり不審者がそのような発言をした事実はなく、朝木もまた取材に際してそのような発言があったとは答えていないということではないかと私は考えた。

東京地裁の認定

 取材に対して朝木が本当に「『てめぇ、ぶっ殺してやる』といわれた」と話していたとすれば、『週刊新潮』も『週刊実話』も、いずれもきわめて重要な発言を記載していないことに対し不満を持っていても不思議はない。私の代理人の尋問では記事が不本意であるとさえ供述しなかった。朝木の本心はどうなのか。その点について朝木の代理人が聞いてくれているので朝木の本心を聞こう。



矢野・朝木代理人  今、「週刊新潮」、「週刊実話」の記事の話が出てましたけど、これは、おうおうにあることかなとも思いますけれども、要するに、あなたの言ったこと(筆者注=「てめぇ、ぶっ殺してやる」といわれたとする主張)が、当然そのまま記事にはなっていない、そういうことなんですかね。

朝木  そうですね、若干というか、かなり事実と違うところもある記事ですね、両方とも。

代理人  もちろん、発売前にあなたが原稿を確認されるなんてことは当然ないわけでしょう。

朝木 見ておりません。

代理人  そうすると、週刊誌の記事は、あなたの言ったこと、あるいはあなたの思っていることと、ちょっと大分違うんじゃないのという、そういう面もあるということですかね。

朝木  そうですね、ちょっと事実関係がかなりずれているなというところはありましたけれども、読んだときに、ただ、特に抗議をする事件の本筋をゆがめるようなものでもなかったので。



「殺人未遂事件」と主張する朝木が「てめぇ、ぶっ殺してやる」といわれたかどうかは、実際に事件を体験していない第三者に真相を訴える意味できわめて重要な事実だと思うが、朝木は両誌の記事が本筋をゆがめるものではないと考えているようである。

 では、裁判所は朝木の供述をどうみたのか。



(「『ぶっ殺してやる』といわれた」とする主張に対する東京地裁の認定) 

 原告朝木が両誌の記者の取材に応じていたことや両誌の記事は内容がほぼ同じであることからすると、両誌の記事には週刊誌の記事に特有の誇張はあるとしても、原告朝木が取材に応じて語った内容をほぼ忠実に再現しているものとみられる(ところで、原告朝木は、前記のとおり、取材を受けた際、記者には「てめぇ、ぶっ殺してやる」との男の言葉を伝えた旨を供述しているが、原告朝木が記者にそのことを伝えていたというのであれば、この種の記事の性質上、記者があえてこの言葉を記事に書かなかった理由は見出し難いから、原告朝木が男の言葉を記者に伝えていなかったか、あるいは、原告朝木の供述(同原告は、両誌の記者の取材を受けて記憶にあるままを語ったものであって、両誌の記事は本筋をゆがめるものではないと供述している。)に照らすと、原告朝木は当日男からそのような言葉を聞いていなかったとの可能性が考えられる。)。



 東京地裁のこの判断はきわめて常識的であるように思われる。

(つづく)
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「朝木宅襲撃事件」 第10回
ガラスを足で蹴った「暴漢」

『週刊新潮』と『週刊実話』に掲載された朝木のコメントには、「てめぇ、ぶっ殺してやる」とする「暴漢」の発言が含まれていなかったことのほかにも、事件の真相を物語っていると思える朝木自身の認識や警察の認識判断が多く含まれていた。まず当初の「暴漢」に対する認識を朝木は次のように語っている。



(朝木の当初の認識)

「何で朝早くからこんな路地に酔っ払いがいるのだろうと思ったのです」

「酔っ払っているように見えた男」(以上、『週刊新潮』)

「自宅2階で寝ていたところ、わめき散らす男の声が聞こえてきたんです。なんだろう、酔っぱらいかなと思っていると……」(『週刊実話』)



 朝木によれば、男はその後、朝木宅の敷地に侵入してガラスを叩いたりするのだが、少なくとも男の「わめき散らす」声を聞いた時点で朝木は、男を「酔っ払い」と認識していたことがわかる。朝木は路地でわめいている男の声を聞いただけでしらふと「酔っ払い」とを選別したわけだが、それにはよほどはっきりした根拠があったはずである。

 ところで矢野と朝木は、その「暴漢」を朝木直子の命を狙った「殺人未遂犯」だと主張している。しかし朝木を殺そうと考えていたなら、普通は他人にさとられないよう、物音を立てずに侵入しようとするだろう。わざわざ自分の存在を「命を狙っている」相手だけでなく無関係の第三者にも知らせることがあり得るだろうか。

 ごく普通の住宅地に住む人間の命を狙う時間帯も、通常は人が寝静まった夜が適していよう。にもかかわらずこの「暴漢」は朝の6時20分に、朝木によれば朝木宅につながる路地に入ったところで「わめき散らしていた」という。しかもこの早朝の6時20分という時間は「もう外が明るい状態だった」と朝木は尋問で供述している。「暴漢」が本当に朝木の命を狙っていたのなら、もっと早く行くべきだったろう。

 その後この「暴漢」は朝木宅の敷地内に侵入しガラスを蹴ったという。ガラスを蹴れば当然それなりの音がするだろうし、割れればもっと大きな音がする。何かが起きていると周囲に知らせるようなものである。こんなアホな殺し屋がいるだろうか。

 この「暴漢」が「朝木の命を狙った」のなら最初から家への侵入を想定しなければおかしい。とすれば、「暴漢」は侵入のための道具を携帯しているはずではないだろうか。しかし矢野も朝木も「暴漢」が殺人犯らしい道具や凶器を所持していたとはいわず、週刊誌にもそのような記載はいっさいない。

 仮に「暴漢」が道具や凶器を所持していたとなれば、間違いなく別の容疑で逮捕され、ニュースになっていたはずである。しかしそのような報道がなされた事実もない。「犯人」が凶器を所持していたかどうかについては私の代理人が矢野に聞いている。



代理人  特に犯人が凶器を持っていたとか、そういう話もないですね。

矢野  凶器はわかりませんが、ガラス窓をけ破ろうとしたというのは、基本的に意図ははっきりあると思いますけど。

代理人  手に何かバットを持っていたという、包丁を持っていたとか、そんな話は聞いたことがないですね。

矢野  それは確認してませんが、足でガラスをけったら、普通は割れますからね。



 要するに矢野も、「犯人」が凶器を持っていなかったことを知っているということだった。ガラスを割ろうとする意図があったともみえることと、「朝木の命を狙う」という計画性があったことは別の話だろう。

 このように客観的状況を総合考慮すると、家の中にいた朝木の不安は察するに余りあるとは思うが、朝木の当初の直感は正しく、これはやはり悪質な「酔っ払い」だったとみるべきではないのだろうか。

しばしば迷惑をかけている「常習の酔っ払い」

 では警察の判断はどうだったのだろう。



(朝木のコメントからうかがえる警察の認識と判断)

「男の話によると明け方3時まで東村山駅近くで飲んでいて、その後のことは何も覚えていないというんです。警察によれば男は常習の酔っ払いで、あちこちで酒を飲んでは迷惑をかけ、警察の厄介になっているというんです」(『週刊新潮』)

〈東村山署は、……「酔ってこれまでにもしばしばトラブルを起こしている常習者である」などとして、保護した後に釈放する姿勢を見せたという。〉(筆者注=この部分は直接的に朝木のコメントではないが、朝木への取材に基づくものと思われる)

「警察は単なる酔っぱらいのいたずらだから、保護した後に釈放するというのです。」(以上、『週刊実話』)



 両誌に記載された朝木のコメント等によれば、警察の認識、判断は、「男は『常習の酔っ払い』で、男の行為については『酔っ払いのいたずら』」というものだったことがうかがえる。警察が男を「常習の酔っ払い」と認識していたということは、すなわちこの男が東村山署の世話になったのはこれが初めてではないということになろう。その行為が悪質であることは否定しない。しかし、男の行為が「殺人未遂」だったとまで断定するのはかなり無理があるのではあるまいか。

 両誌によれば、東村山署はその男が以前も酔っぱらって他人に迷惑をかけたことがあり、今回も同様に酔っぱらって騒いだものと判断したということと理解していいのではないかと私は考えた。

 なお朝木自身も尋問で、警察から「暴漢」について聞かされた話として次のように供述している。



朝木  警察の方が、本人が酔っ払って、ちょっと暴れちゃっただけだ、みたいなことを、警察の方に言い訳をしてるというのは、警察の方から聞きました。



 朝木のこの供述は、両誌が掲載した朝木のコメントと矛盾しない。

 また両誌の記事が掲載されたのは『週刊新潮』が平成18年2月16日(同23日号)で『週刊実話』が同年3月2日(同9日号)と、ひと月近い開きがある。にもかかわらずその内容は同じで、なんらの進展もない点も「殺人未遂事件」を主張するにしてはやや不可解に思われた。

(つづく)
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