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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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「越境通勤市議」事件 第1回
当選の適法性を認めた判決

 東京・東村山市議会議員の矢野穂積と朝木直子(いずれも「草の根市民クラブ」)が平成18年9月以降、「越境通勤市議」「公選法違反」などとする宣伝を繰り返したことによって名誉を毀損されたとして同市議の佐藤真和が提訴していた裁判で、東京地裁立川支部は平成23年1月24日、矢野らの主張に真実性は認められないものの当時、彼らがそう信じたことについては相当の理由があったなどとして佐藤の請求を棄却する判決を言い渡した。

 要するに、佐藤を「越境通勤市議」「公選法違反」などと呼んで批判した矢野らの主張に真実性はなく違法だが、彼らがそう信じたことには理由があったと認められるから違法性は阻却される(=したがって損害賠償を命じることはできない)――ということである。「生活の本拠は一貫して東村山にあり、『越境通勤市議』『公選法違反』などといわれる理由はない」と主張してきた佐藤にとって、損害賠償請求は認容されなかったものの、「佐藤の立候補に違法性はない」と裁判所が認定、判断した点においてきわめて重要な意味があると評価できよう。

 この判決に対して矢野は平成23年1月31日、ウェブサイト『東村山市民新聞』において次のような記事を掲載した。



「越境通勤市議」訴訟で、佐藤まさたか市議(東村山)が敗訴!

 佐藤市議が、自分のことを「越境通勤市議」「公選法違反の疑いがある」と記述した東村山市民新聞等が名誉毀損に当たるとして、矢野、朝木両議員等を提訴していた裁判で、1月24日、東京地裁立川支部は、名誉毀損(不法行為)は成立しないとして、佐藤市議の請求を棄却、佐藤市議敗訴の判決を言い渡した。



 佐藤の請求が棄却されたことを伝えるのみで、たんに損害賠償の支払いを免れただけの判決の具体的内容についてはいっさい触れないところに矢野、朝木の落胆ぶりがうかがえた。今回の判決は「佐藤の立候補及び当選の適法性」を裁判所が認めたものにほかならず、4年以上にわたり「佐藤に市議の資格はない」と宣伝してきた矢野と朝木にしてみれば、相当性を認められたところで、結局は彼らの主張が否定された判決であることをよく理解しているのだろう。

 しかも今回の判決は、客観的事実に基づく論評をめぐる判断であり、矢野と朝木が佐藤を批判した時点での相当性を認めたものにすぎず、ある時点以降の相当性については成立しないことを間接的に説示するものである。したがって、彼らが今後あるいはある時点以降に類似宣伝を行った場合には相当性も否定される可能性がある。判決の実質的内容を明示しないことが彼らの精一杯の宣伝だったのだろう。

日野でもまかれたビラ

 佐藤は平成15年1月17日、職務上の必要などによって東京都日野市から東村山市に転入し、同年4月27日に執行された東村山市議選に立候補、当選して東村山市議となった。矢野と朝木が政治宣伝ビラ「東村山市民新聞」やウェブ版「東村山市民新聞」、矢野が実質的に運営する多摩レイクサイドFMを駆使して、佐藤に対する「越境通勤市議」「公選法違反」「詐欺登録罪の疑惑」などのネガティブキャンペーンを開始したのは、佐藤が当選してから3年半、次期市議選まで約半年という時期である。

 当時、配下の石田敏雄が日野に張り込んで佐藤の家族の洗濯物を撮影するなどし、また朝木はわざわざレンタカーを借り、近くの駐車場と賃貸契約までして張り込み、あるいは東村山の佐藤の自宅を毎日のように見回っていた。ちょうどそのころ佐藤は日野に住む家族がケガをしたため東村山から頻繁に通わねばならない状況にあり、張り込み中の石田や朝木と出くわしたことがあった。

 その時期を境に矢野と朝木は「立候補の時点から現在まで、佐藤の生活の本拠は東村山にはない」とするキャンペーンを始めたのである。彼らは通常の「東村山市民新聞」だけでなくB6版のビラもまいた。



前代未聞の「越境通勤市議」!! 佐藤市議、日野市内で生活
公選法違反・詐欺登録罪の疑惑(B6版)

公選法違反・詐欺登録罪/前代未聞の「越境通勤市議」!
動かぬ証拠だ! 本人が、ゴミ出し 日野のファミリーマンションで(B6版)

前代未聞の「出稼ぎ」市議、今や、こそこそ逃げ隠れの往復
佐藤真和市議家族と日野で生活!(通常版)



 B6版のビラは東村山だけでなく佐藤の家族が住むマンション周辺でもまかれているのが確認されている。矢野と朝木が佐藤の生活の本拠について疑いを持ち、一般市民に関心を持ってもらおうと考えたとしても、日野市民には関係がない。

 矢野と朝木はどんな目的をもって日野でこのビラをまいたのか。このビラを読んだ日野市民が「佐藤という人物は日野に住んでいることを隠して東村山市議をやっているのか」と信じ込む可能性もあろう。その結果、日野で生活している佐藤の家族が周囲からどんな目で見られるか、矢野と朝木には十分想像できただろう。矢野と朝木の狙いは、日野において佐藤の評判を貶めるだけでなく家族に対する嫌がらせをも意図していたと疑われてもやむを得まい。

おそろしい本音

 平成19年4月に執行された東村山市議選で佐藤は2回目の当選を果たした。しかし矢野と朝木はその後、市選管や東京都選管に対して「佐藤は東村山市内に生活実態がなく当選は無効である」と異議を申し立て、それが棄却されるや、東京都選管の裁決取消を求めて東京高裁に提訴するなど、佐藤に対する「当選無効」キャンペーンを継続した。

 当時、矢野と朝木は薄井政美に対して「セクハラ市議」などとする激しい攻撃を行っていたから、2人の市議に対して同時進行で誹謗中傷活動を繰り広げていたわけである。市民の利益のために働くべき市議として、普通は真似のできることではない。

 さて、当選に対する異議申立から裁決取消訴訟に至る流れは、その経過だけを見れば、過去にまったく同じ例があったことに気づこう。平成7年の東村山市議選で当選した朝木直子が落選した矢野を繰り上げ当選させるために虚偽の住民票移動を行った議席譲渡事件である(これこそ本当の「前代未聞」)。

 矢野と朝木は東村山市民(「草の根グループ」の議席の私物化を許さない会)から追及され、最終的に議会を追われた。佐藤の支援者には「許さない会」のメンバーもいた。平成19年に行われた選挙の前、東村山市民から佐藤に対する追及について聞かれた朝木はこう答えたという(趣旨)。

「私たちがやられたことを、やり返しているのよ」

(つづく)

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「越境通勤市議」事件 第2回
裁決取消訴訟における判断

 矢野と朝木はビラによる「越境通勤市議」キャンペーンを展開する一方、平成19年11月11日、東京高裁に対して東京都選管の採決取消を求めて提訴している。提訴に至る経過を振り返っておこう。

 矢野と朝木はまず平成19年3月6日、「選挙人名簿に関する調査及び登録抹消請求書」(同年3月5日付)を東村山市選管に提出。市選管は3日にわたる実態調査および佐藤に対する事情聴取を実施した上で佐藤を選挙人名簿に登録することについて問題なしと結論付けた。

 市選管の結論によっても矢野と朝木は納得しなかった。その後、同年4月22日に執行された東村山市議選で佐藤が当選すると、矢野と朝木は同27日「当選の効力に関する異議の申出書」を提出。同年7月27日、東村山市選管がこれを棄却すると、矢野と朝木はさらに同年8月16日、東京都選管に対して上記棄却決定に対する審査を申し立てた。東京都選管が同年10月10日、これを棄却すると、矢野と朝木は東京都選管の裁決取消を求めて東京高裁に提訴した。

 裁判で矢野と朝木が主張した主な論点は、「佐藤が住民登録した場所は保育所が賃借していたアパートであり、住民登録は許されない」(論点1)、「佐藤には平成15年1月以降、東村山に生活実態はない」(論点2)――というものである。これに対して東京高裁は平成20年4月30日、次のように述べて彼らの請求を棄却した。



論点1

 本件保育所は、……東京都が要綱により独自の基準を定めて制度として設けている認証保育所に該当するものであり、保育終了後の園舎の活用方法について法令で制限されているということはできないし、……そのような制限の有無は平成15年1月17日の本件転入届の時点に佐藤が……住居と定めてそれ以降同室に居住していた行為自体を否定する根拠とはなり得ないものであるから、原告らの主張する事情をもって本件選挙の期日の3カ月以上前から本件選挙の期日まで佐藤の生活の本拠が同室になかったということはできないというべきである。

論点2 

 佐藤の証人尋問における供述や陳述書の記載に証拠を総合すれば、……平成15年1月17日ころ、本件保育所が園舎の一部建替えのため賃借していた2DKのアパート……を佐藤の住居と定めてその日常生活の場とし、……同年(平成19年)5月に自ら賃借人となり、……佐藤は、本件選挙の期日の3カ月以上前から引き続き東村山市内の同室に生活の本拠を有していたというべきである。



 東京高裁は論点1について、認証保育所の使用について保育終了後の活用について東京都は法令で制限していないと正当に判断。論点2については、証拠および佐藤の供述と陳述書から総合判断し、佐藤が「平成15年1月17日ころ」そのアパートを「住居と定めてその日常生活の場」としたと認定している。

 佐藤はこの判決および事実認定を待って平成20年6月4日、矢野と朝木を提訴した。矢野と朝木は上告したものの平成20年12月5日、最高裁はこれを受理しない決定を行い、東京高裁判決が確定している。矢野は最高裁で朝木が譲渡した繰り上げ当選を無効とされたが、佐藤の当選は微動だにしなかったことになる。

きわめて重い事実認定

 佐藤が平成15年1月17日に東村山市に住所を定めた事実は最高裁で確定した。裁決取消申立訴訟で直接の対象となっていたのは平成19年の東村山市議選だが、この判決によれば平成15年における佐藤の当選にもなんら問題はなかったということになろう。

 では、平成15年1月時点での生活の本拠が直接の争点となった本件における裁判所の判断はどうだったのか。「平成15年1月17日」以降、佐藤の住所が東村山にあったことについて東京地裁は、

〈被告らは、平成15年1月17日の本件転入届の時点で、原告の生活の本拠は東村山市内になかったと主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。〉

 とした上で、次のように認定している(事実問題における論点は基本的には裁決取消申立事件と同じなので、同様に整理する)。



論点1

(被告らが)違法に本件保育所が賃借していた……(アパート)に居住したと主張する点は、住所かどうかは客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決せられることであるから、当該場所を個人の住居として使用することが保育所の運営に関する行政法規に適合するかどうかということとは基本的には無関係であり、……この点の被告らの主張も理由がない。

論点2

(被告らの)原告の生活状況に関する主張の主な部分は、いずれも本件転入届から3年以上が経過した平成18年以降のことである上、妻子と別居中の原告が妻子のけがや子供らの関係で必要な際に日野市内の妻子のもとに戻っていることがあったという上記認定に沿うものであり、本件転入届当時、原告の生活の本拠が東村山市内になかったことを積極的に根拠付けるものではない。



 東京地裁は最高裁判決に違背せず、平成15年1月17日以降、佐藤の住所は東村山にあったことを認定したのである。その上で、「越境通勤市議」「公選法違反」「詐欺登録罪」などの表現の真実性について次のように結論づけた。



(真実性)

 本件転入届の際、原告の生活の本拠が東村山市内になかったことは、被告矢野及び被告朝木が表明した意見ないし論評の前提となる事実の重要な部分であるところ、これを認めるに足りる証拠はないから、被告らの行為が違法性を欠くということはできない。



 東京地裁は、「越境通勤市議」という表現の前提である「佐藤の生活の本拠は東村山にはなかった」とする事実を真実と認めるはできないから、「矢野らの表現には違法性がある」と認定したということである。

 平成18年秋以降4年以上にわたる矢野と朝木の主張を真っ向から否定した点で、また裁決取消申立訴訟は直接的には平成19年時点での生活の本拠が争点となったが、今回の判決は転入時点での生活の本拠について「東村山にあった」と認定した点においてきわめて重大な認定と評価できよう。

(つづく)

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「越境通勤市議」事件 第3回
表現の違法性を認定

 東京地裁の「真実性」(生活の本拠の問題)までの事実認定は裁決取消訴訟における最高裁の判断と同じである。しかし、ある表現をめぐる名誉毀損にあっては、表現の自由も尊重されなければならない。本件裁判はあくまで表現に違法性があるかどうかをめぐるものだから、まず表現が原告の名誉を毀損するものであるかどうか、さらに表現に「真実性」及び「相当の理由」があったどうかも違法性判断の基準となる(「真実性」については本連載第2回で記載したとおり)。

 では、平成18年9月以降、矢野と朝木が佐藤に対して行ってきた「越境通勤市議」「公選法違反」などの記事や放送の文言に対する東京地裁の判断をみよう。



(名誉毀損性)

 これらの表現は、原告が、生活の本拠を東村山市内に有しないにもかかわらず、形式上、同市内に住民票を移転して、15年選挙の選挙権及び被選挙権を取得した上、同選挙に立候補して当選するとともに、選挙人として同選挙に投票し、さらには、これらの事実を追及されることを恐れて、逃げ回っているという事実をえん曲ないし間接的に摘示した上で、更に、このような事実が、公選法に規定する詐欺登録罪及び詐欺投票罪に該当するとの意見ないし論評を表明したものというべきであり、単に法的見解を表明したもので、事実を摘示したものではないとはいえない。

 そして、本件記事、本件サイト記事及び本件発言(筆者注=多摩レイクサイドFMにおける矢野の発言)は、その内容に照らしていずれも現職の東村山市議会議員である原告の社会的な評価を低下させるものであることは明らかであり、……被告矢野及び被告朝木は、本件記事、本件サイト記事により、原告の名誉を毀損したものであり、また、本件発言は、本件番組でのことであるから、被告法人の事業の執行についてなされたものである。



 東京地裁はこう述べて、矢野と朝木の個人的なビラとウェブサイトの記載だけでなく、総務省の認可を受けた公共性の高いFM放送における矢野の発言についても名誉毀損を認定している。

一定時期までの相当性を認定

 ただし、表現に名誉毀損性があっても、それが人身攻撃に及ばず、公共性・公益性があり、かつ真実性・相当性が認められれば違法性は阻却される。東京地裁が「真実性」を否定したことはすでに述べた。では、表現の「相当性」についてはどうか。東京地裁は次のように述べた。



(相当性1)

 本件転入届の際、原告の生活の本拠が東村山市内になかったとは認められないことは上述したとおりであるが、本件転入届は、平成15年4月27日に執行された15年選挙の選挙権及び被選挙権を得るための要件である3カ月前から引き続き東村山市内に住居を有している要件を満たすには10日しか余裕がない平成15年1月17日にされたものである上に、転入先はそれまで原告が日野市内から通勤をしていた当時の原告の勤務先である本件保育園の園舎の一部であった○○(アパート名)であり、外形的に明らかなこれらの事実だけからすれば、……被告矢野及び被告朝木において、原告が、15年選挙の被選挙権を得るために東村山市内に居住の実態がないにもかかわらず本件転入届に及んだのではないかという疑念を抱くことには合理的な理由がある。



 そのような「外形的事情があった」と認定する一方、続けて東京地裁は佐藤の側の対応にも触れて次のように述べた。



(相当性2)

 他方、本件転入届当時、○○(アパート名)が原告の生活の本拠たる実体を具備していたことについて、積極的にこれを裏付ける客観的証拠はなく、原告も、……原告のプライバシーに属する問題であったこともあって、19年選挙に関する裁決取消訴訟において平成20年3月21日に行われた本人尋問及びこれに先だって提出された陳述書に至るまでその詳細を明らかにしてこなかったことからすれば、被告らが疑念を抱き続けたことには合理的な理由がある。



 東京地裁は、「外形的事情」(相当性1)に加え、佐藤が「陳述書に至るまで詳細を明らかにしてこなかったこと」を理由に表現の相当性を容認したのである(「相当性1、2」の整理は筆者)。

なくなった「合理的な理由」

 しかしこれは言い換えれば、佐藤が平成20年に陳述書を提出したあと、あるいは遅くとも本人尋問終了後(尋問の法廷には矢野も朝木も出廷していた)に同じ表現行為を行えば、相当性も認められないと述べたに等しかろう。

 佐藤が陳述書を提出する前まで矢野は、どんな調査をしたのか、佐藤が東村山で借りていたアパートは「ワンルーム」と主張していて、裁決取消訴訟においても佐藤に対する尋問の直近に提出した58ページにおよぶ準備書面で、「佐藤が東村山で賃借しているアパートはワンルームで狭いから、日野の家財道具は運び込めない。よって東村山のアパートは生活の本拠とはいえない」(趣旨)と主張するなど、準備書面全体が東村山のアパートが「ワンルーム」であることが前提になっていた。

 当時、佐藤が東村山で借りていたアパートは2DKである。矢野は佐藤の東村山のアパートが単なる「居場所」であるという思い込みからそれが「ワンルーム」だと決めつけたのだろうか。

 いずれにしてもその後、矢野と朝木から「ワンルーム」の主張は消え、本件裁判では佐藤が当初東村山で借りていたアパートが「ワンルーム」だったなどとはいっさい主張しなかった。佐藤が明らかにしたことによって間違いだったと気がついたということだろう。

 この「ワンルーム」をめぐる矢野と朝木の主張の変化は、時期的にも〈19年選挙に関する裁決取消訴訟において平成20年3月21日に行われた本人尋問及びこれに先だって提出された陳述書に至るまでその詳細を明らかにしてこなかったことからすれば、被告らが疑念を抱き続けたことには合理的な理由がある。〉とした東京地裁の判断と一致している。彼らは「合理的な理由」がないと判断したがゆえに「ワンルーム」の主張をあっさり捨てたのである。

 すると佐藤の本人尋問以後、とりわけ、

〈佐藤の証人尋問における供述や陳述書の記載に証拠を総合すれば、……平成15年1月17日ころ、本件保育所が園舎の一部建替えのため賃借していた2DKのアパート……を佐藤の住居と定めてその日常生活の場とし、……同年(平成19年)5月に自ら賃借人となり、……佐藤は、本件選挙の期日の3カ月以上前から引き続き東村山市内の同室に生活の本拠を有していたというべきである。〉

 と認定した平成20年4月30日の東京高裁判決、あるいはどんなに譲歩してもこの東京高裁判決を追認した平成12月5日の最高裁判決後に佐藤を「越境通勤市議」などと呼ぶことについても「ワンルーム」と同様に「合理的な理由」はないということになるのではあるまいか。

 しかも裁決取消事件で東京高裁が佐藤の「平成15年1月時点での生活の本拠」の認定にあたり、その根拠として〈佐藤の証人尋問における供述や陳述書の記載に証拠を総合すれば〉としてまず〈佐藤の証人尋問における供述や陳述書の記載〉を挙げていることは、東京高裁が佐藤の供述を最重要視していたことをうかがわせる。この認定が最高裁で確定したという事実はきわめて重いというべきだろう。
 
 本件における相当性の判断にあたり、東京地裁が〈19年選挙に関する裁決取消訴訟において平成20年3月21日に行われた本人尋問及びこれに先だって提出された陳述書に至るまでその詳細を明らかにしてこなかったことからすれば〉と述べたのも、裁決取消訴訟における事実認定の経過を十分に意識したものと思う。したがって上記説示の趣旨からすれば、本件各表現の相当性が認められるのは陳述書の提出から本人尋問までと理解するのが自然なのではあるまいか。

おそろしい発想

 本件各表現の中には、「本人尋問」以後のものが含まれており、控訴審ではその部分については判決が覆る可能性もあるという判断もあった。しかし佐藤は、「平成15年1月当時、佐藤の生活の本拠は東村山にあった」とする事実認定を評価して控訴せず、平成23年2月9日、判決は確定した。

 朝木によれば、平成18年秋に開始した佐藤に対するネガティブキャンペーンは「やられたことをやり返している」つまり「仕返し」だったとのことである。「仕返し」という発想は、議席譲渡事件について彼らが何の反省もしていないことの表れである。わざわざレンタカーを借り、さらには駐車場まで契約して張り込んだ執念深さはなかなか真似のできないことと思うが、それも復讐の念を反映した一面もあったと考えれば納得もできよう。

 最高裁で繰り上げ当選が無効とされ、矢野が議会を追われたことの屈辱は十分に想像できる。しかしあれほど市政を混乱させたにもかかわらず、反省どころか逆に復讐の炎を燃やし続けていたところに矢野と朝木の本当のおそろしさがある。

(了)

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佐藤ブログ事件控訴審 第1回
 東村山市議、佐藤真和のブログに掲載されたコメントをめぐり同市議の矢野穂積と朝木直子(いずれも「草の根市民クラブ」)が佐藤を提訴していた裁判で東京地裁立川支部は平成23年6月29日、矢野らの請求を棄却する判決を言い渡した。これに対して矢野らは控訴。10月3日、控訴審の第1回口頭弁論が開かれ、平成23年12月21日午後1時に判決が言い渡されることになった。 

思い余ったコメント

 平成19年4月に行われた東村山市議選の翌日、矢野穂積と朝木直子が突然、新人で当選を果たした薄井政美に対する誹謗中傷を開始した。

 矢野と朝木が他の議員を誹謗するのはこれが初めてではない。佐藤真和に対しても市議選の半年前から「越境通勤市議」などと、あたかも佐藤に東村山市議に立候補する資格がないかのような激しいネガティブキャンペーンを繰り返していた。だから矢野と朝木が他人を誹謗中傷すること自体は珍しいことではなかったものの、市民を驚かせ、怒らせたのはその内容だった。

 矢野と朝木による薄井に対する誹謗中傷は前職を問題とするものだった。これに対して市民の間から職業差別だとする批判の声が挙がり、この動きはインターネットを通じて全国に広がった。

 しかし、いかなる非難を浴びても自らをいっさい省みないのが矢野と朝木の顕著な特異性である。彼らは薄井攻撃をいっそう強めるとともに、薄井を擁護する市民らに対してもハンドルネームを名指しし、「法的手段」を匂わせるなどして恫喝を繰り返した。要するに、訴えられたくなければ薄井擁護と彼らに対する批判を止めろという趣旨であると理解できた。

 誹謗中傷の激しさだけでなく、批判をいっさい受け付けず、それどころか彼らを批判する側に対してまで矛先を向けてくる矢野と朝木の特異な体質を初めて経験した市民は驚き、名指しされた本人の中には恐怖におののいたという人もいた。佐藤真和が運営するブログに市民から次のようなコメントが寄せられたのは、そんな騒動のさなかのことだった。



(コメント1)

(矢野と朝木は)自尊心を欠如させたトラウマ=自分の問題と向き合う辛さを避けて、トラウマの原因とは全く関係ない他人を攻撃することで、心の虚無を埋めようとする方々とお見受けしました。心理学では、

「共依存」?
「境界性人格障害」
「攻撃性人格障害」
「パワーゲーム」など

 幾つかの名を付けて分析・対処方法を研究しているはずです。

(コメント2)

 草の根の人たちは、病気なんです。他人を攻撃することで、自己のアイデンティティを保っているんですから。まあ、昔から住んでいる市民なら、みんな知ってることですが。

(コメント3)

 こんにちは! 佐藤さんや薄井さんのブログを愛読している東村山新住民です。矢野・朝木両市議が発行する東村山新聞は、一読しただけで……と判ります。この二人が市議として存在することが東村山の大問題ではないでしょうか。たまこさんが挙げておられる心理学上の分類に「サイコパス」も追加させてください。

筆者注=このコメントについては一部に差別用語が含まれており(……の部分)、佐藤が当該部分を修正した旨を説明した上で掲載した。)



 公人である矢野と朝木の特異性に対してこのような評価があってもなんら不思議はないし、とりわけ直接的な攻撃を受けた市民からすればむしろ自然な感覚だろう。ただ個人的には、不特定多数に対して公表するについてはやや思い余った部分があったような気もする。

 これに対して矢野と朝木は、ブログを運営する佐藤に対して名誉毀損に基づく慰謝料の支払い等を求めて提訴したのである。

「事実を表明するもの」と認定

 東京地裁立川支部は矢野と朝木の請求を棄却したが、彼らが問題とした3つのコメントについてどんな判断をしたのか。東京地裁は前記コメント1、2、3について次のように認定した。



(コメント1について)

(コメント1)は、原告らがパーソナリティ障害等の障害を有するとの事実を表明するものと認められる。

 ……パーソナリティ障害は、精神病ではないとはいえ、精神医学で取り扱われ、治療の対象となっているものであるから、その指摘が名誉毀損となるか否かの観点からは、やはり病気の一種であり、その指摘は事実の表明と認めるべきである。

(コメント2について)

(コメント2はコメント1の)パーソナリティ障害等との指摘に同意し、さらに、「草の根の人たちは、病気なんです。」と付言しているが、……精神医学におけるパーソナリティ障害等の取扱いを考慮すると、上記「病気」の付加は、原告らが病気の一種であるパーソナリティ障害等を有するとの事実を表明したものと認めるべきである。

(コメント3について)

(コメント3はコメント1の)パーソナリティ障害等との指摘に同意し、さらに、「たまこさんが挙げておられる心理学上の分類に「サイコパス」も追加させてください。」と付言しているが、……サイコパスが人格障害とほぼ同義と解されていることからすると、……原告らがパーソナリティ障害等を有するとの事実を表明するものと認められる。



 これらコメントがブログ管理者(佐藤)自身によって記載されたものなら、コメントによって社会的評価が低下したと認定された場合、直接的に真実性・相当性の立証が必要になると思われる。しかし今回のケースは、佐藤のブログに投稿されたコメントをめぐるものであるという違いがあった。

 ブログ掲示板の記載に関わる法律にはプロバイダ責任制限法がある。プロバイダ責任制限法とは、プロバイダが負う損害賠償責任の範囲や情報発信者の情報の開示を請求する権利を定めた法律である。佐藤が同法にいう特定電気通信役務提供者に該当すると判断されれば、今回のコメントは同法の規定に基づいて判断されることになる。

 同法によれば、コメントをめぐって管理責任が問われるケースでは、特定電気通信役務提供者は、あるコメントに真実性及び相当性が存在しないことを知っていたか、知ることができたにもかかわらず当該コメントを放置した場合には損害賠償責任を問われる可能性が高い。

 問題は、本件がプロバイダ責任制限法が適用されるケースであるかどうかである。一般に特定電気通信役務提供者とは、いわゆるプロバイダだけに限らずコメント欄を設置するブログ管理者なども含まれるとされている。この点について東京地裁は次のように述べた。



 プロバイダ責任制限法2条3号にいう特定電気通信役務提供者とは、特定電気通信設備を設置又は所有している者である必要はなく、特定電気通信設備を他人の通信の用に使用させていれば足りると解される。



 東京地裁は佐藤がプロバイダ責任制限法に定める特定電気通信役務提供者であると認め、本件が同法が適用されるケースであるとした。

(つづく)

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佐藤ブログ事件控訴審 第2回
佐藤の削除義務を否定

 東京地裁は佐藤がプロバイダ責任制限法が定める特定電気通信役務提供者であると認定した。この場合、ブログ管理者である佐藤がコメント1、2、3に真実性および相当性が存在しないことを知っていたか、あるいは知ることができたと認めるに足りる相当の理由があった場合には削除等の対応をしなくてはならず、真実性・相当性が存在しないことを知りながらこれを放置したことが立証された場合には、損害賠償責任が生じることもあり得る。

 すると問題となるのは、コメント1、2、3を掲載するにあたり佐藤にプロバイダ責任制限法が定める「権利侵害の事実を知っていた、あるいは知ることができた場合」に該当するような事由があったかどうかである。この点について東京地裁はとう判断したのか。東京地裁は、

〈被告ブログ掲示板の管理者である被告につき、(プロバイダ責任制限法)に該当する事由があったと認めることはできない。〉

 とした上で、次のように述べた。



 かえって、後記イ~オに説示するとおり、原告ら(筆者注=矢野と朝木)にはパーソナリティ障害等であることを疑わせるそれなりの言動及び行動があったものである



 したがって、佐藤にはコメント1、2、3について削除義務が生じることはなく、これらのコメントを掲載したことに違法性はないと認定したのである。

 それにしても、それどころか裁判所が、あろうことか現職の市議会議員をつかまえて〈パーソナリティ障害等であることを疑わせるそれなりの言動及び行動があった〉と認定するとはよほどのことではあるまいか。しかし、東京地裁がこの認定の根拠とした以下の事例をつぶさに見れば、この判断もやむを得ないと読者も十分に納得できるのではあるまいか。

「パーソナリティ障害等を疑わせるそれなりの言動」

 東京地裁は続いて〈原告ら(筆者注=矢野と朝木)にはパーソナリティ障害等であることを疑わせるそれなりの言動及び行動があったものである〉とした根拠を述べる。その根拠として挙げられたのは矢野と朝木が彼らの政治宣伝メディア「東村山市民新聞」「東村山市民新聞インターネット版」「多摩レイクサイドFM」で行ってきた誹謗中傷の例だった。

 もちろんこれらは佐藤が証拠として提出したもので、その内訳は①万引き被害者に対する誹謗中傷(「東村山市民新聞」第84号)②無実の少年に対する暴行事件の捏造と裁判官に対する誹謗(「東村山市民新聞」第118号)③佐藤、薄井に対する常軌を逸した執拗な非難・中傷(「東村山市民新聞」第148号、第152号、第153号、第154号、第155号、第165号、多摩レイクサイドFM平成18年12月6日放送、さらには④東村山市議に向けられた揶揄や雑言の数々(複数のビラ)⑤矢野の特異性に言及した判決(「石井事件」「パラノイア事件」「超党派で作る新聞事件」)――などである(なお、「東村山市民新聞」インターネット版も前記「東村山市民新聞」の内容と重なっている)。

 矢野と朝木の特異性がより顕著に知られるようになったのは平成7年に執行された東村山市議選直後である。この市議選で朝木直子は母親で後に万引きを苦に自殺を遂げる朝木明代とともに当選したものの、矢野は次点で落選した。ところが直子は千葉県松戸市に住民票を移し、自らの当選の無効化をはかり、まんまと矢野を繰り上げ当選させた。有名な議席譲渡事件である。

 2年後、最高裁が矢野の繰り上げ当選を無効とする判決を言い渡し、矢野は東村山市議会を追われた。しかし矢野も直子も市民に対してなんらの謝罪もしておらず、それどころか彼らの暴挙と責任を追及した市民に対して告訴や民事提訴を繰り返した。

 議席譲渡事件発生から2カ月後に起きたのが朝木明代による万引き事件である。最終的に明代は書類送検され、このことが自殺の動機になったのではないかとみられている。トップ当選議員である明代にとって、また社会的批判を浴びた議席譲渡の末に東村山市議となった矢野穂積にとって、明代の万引き発覚は痛手だったにちがいない。矢野と明代は万引き被害者を脅し、あるいはアリバイ工作を共謀するなどして事件の隠蔽をはかった。しかし逆に、これらの工作が悪質と判断され、明代は書類送検されるに至った。

 矢野は明代の自殺後も万引きの事実を認めず、「草の根」の政治宣伝紙「東村山市民新聞」で逆に万引き被害者について「あたかも万引き事件を捏造し、明代を陥れた」かのような宣伝を繰り返した。万引き被害者は平成9年、矢野と朝木直子を提訴したが、彼らはその際「東村山市民新聞」第84号で万引き被害者を次のように揶揄した。



(「東村山市民新聞」第84号=佐藤提出の書証①)

「飛んで火に入る夏の虫?」
「『真犯人の指紋のついたTシャツのビニールカバーを保管もしないで、なぜ物的証拠もなしに朝木議員をTシャツ万引きの犯人扱いしたの』と指摘した本紙を女洋品店主が提訴。本人尋問ができ、逆に手間省け。」



 明代の万引きの事実を誰より知りながら、しかも万引き被害者をどこまでも加害者扱いするとはやはり尋常とはいえない。被害者が矢野と朝木を提訴したこの裁判では、東京高裁が矢野らに100万円の支払いを命じる判決を言い渡している。この事実からも、矢野の記事が事実を隠蔽しようとするものだったことがわかろう。

役に立たない「東村山の闇」判決

 矢野・朝木の共著『東村山の闇』の記載をめぐり当時の捜査責任者、千葉英司から提訴された裁判で東京地裁は〈控訴人ら(筆者注=矢野・朝木)において、本件窃盗被疑事件について明代が犯人でないことをうかがわせる証拠があると信ずるについて相当の理由がなかったとはいえない〉と判示し、千葉の請求を棄却した。矢野は佐藤を提訴したこの裁判で「東村山の闇」判決を理由に、「戸塚に敗訴した判決の判旨が否定された(明代の犯人性が否定された)」(趣旨)などと主張した。これに対して東京地裁は次のように述べて矢野らの主張を排斥している。



 警察の捜査や広報のあり方についての批判が名誉毀損にならないことから直ちに、私人である「被控訴人(万引き被害者)が創価学会や公明党と共謀の上、本件万引き事件を捏造して故明代を罪に陥れようとしたとの事実」を「真実と信ずるについて相当の理由があった」ことにはならないものであるから、上記原告らの主張は理由がない。



 万引き被害者の訴えを捏造呼ばわりするなどした被害者に対する矢野の執拗な嫌がらせの事実を事実上認定したに等しく、東京地裁はこの事実もまた、矢野と朝木が〈パーソナリティ障害等であることを疑わせるそれなりの言動及び行動〉の一つと考えたことがうかがえた。

(つづく)

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佐藤ブログ事件控訴審 第3回
常軌を逸した雑言の数々

 矢野、朝木による他の議員に対する誹謗中傷の例では、最近では佐藤に対する「公選法違反の疑惑」などとする執拗なネガティブキャンペーン、薄井政美に対する「エロキャスター」などの誹謗中傷(佐藤提出書証の③=本連載第2回)が記憶に新しいが、矢野は市議になる以前から朝木明代以外の東村山市議に対してさまざまな揶揄や暴言を繰り返している(佐藤提出書証の④=同)。これらについて東京地裁は次のように認定している。



 その批判に当たり使用された文言及び回数については、例えば「ピーマン議員」「アホキピーマン」「心身症」「失語症」「ハエ男」「足の長さが足りなくて」「常軌を超える偏執」「偏執症」のように、口汚く(一部は、差別的でさえある)、激烈であり、執拗であるとの批判が当てはまるものである。



 これらの文言には議員に対する批判を超えてなんらかの個人的な感情やこだわり、あるいは必要以上に市議たちを見下そうとする矢野特有の優越意識が働いているように思える。少なくともここに挙げられた文言はどうみても政治的批判とは無関係のように思える。

 また矢野と朝木は裁判で、佐藤と薄井に対する非難をめぐる裁判(薄井については一部)では違法性は認められなかったとして、これらについて批判されるいわれはないなどとも主張していた。この主張に対して東京地裁はこう述べた。



 意見ないし論評を表明する自由が民主主義社会において不可欠な表現の自由の根幹を構成するものであり、不法行為法上違法とはならないことと、不法行為法上は違法ではない意見を表明した者が公選の公務員としてふさわしいか否かを判断するために、そのような意見表明がどの程度の根拠を有してされたか、その際の表現方法が過激なものかについて論評することは、別問題である。



 簡単にいえば、その表現行為が不法行為に当たるかどうかということと、その表現内容がまともであるかどうかについて論評することは別問題で、その点について市民が論評することには問題がないということである。その上で東京地裁は佐藤、薄井に対する批判を含めた市議に対する誹謗中傷の点について次のように述べた。



 他者に対する批判につき正当な根拠を有する場合であったとしても、表現方法における口汚さ、過激さ及び執拗さは、公選の公務員としての適格性を判断するに当たって当然考慮されるべき事項であるが、原告らには、表現方法の点で、厳しい批判を受けてもやむを得ない点があったものである。



 東京地裁は佐藤や薄井、さらにはかつての他の議員たちに対する誹謗中傷の事実についても、矢野と朝木の「パーソナリティ障害等であることを疑わせるそれなりの言動」の重要な根拠とみなしたようである。きわめて正当な判断ではあるまいか。

過去にも「特異性」を認定

 ところで、矢野と朝木の特異性が認定されたのはこれが初めてではない。

 明代の自殺後、これを「他殺」と印象づけたかった矢野は「暴漢に襲われた」として見ず知らずの少年を暴行犯に仕立て上げたことがある(=少年冤罪事件)。少年はいったんは東村山署の取り調べを受けたものの即日、嫌疑なしとして釈放されている。ところが矢野は、今度はこの少年に対して民事で損害賠償請求訴訟を提起したのである。裁判は2年に及んだが、東京地裁八王子支部は矢野の請求を棄却する判決を言い渡し、矢野について次のように述べている。

〈仮にも公職にある者(筆者注=矢野)がこの曖昧な記憶に基づき、しかも司法警察職員による捜査……がなされながら刑事訴追の手続きが執られていない被告を名指しで犯人であると断定している点において極めて特異であると言わねばならない。〉(佐藤提出の書証⑤=同)

 この判決に対して矢野が、そもそも裁判官が「中立ではなかった」として非難したのが「東村山市民新聞第118号」(佐藤提出の書証②)の「……95年7月16日夜に、暴漢に襲われて前歯をおるなどの重傷を負った事件で……創価より裁判官はこの事実をわざと無視。」とする記事である。

 この判決の存在について今回の裁判で東京地裁は次のように述べている。



 公選の公務員の適格性を有するか否かを判断するに当たっては、不当な訴訟上の請求の存在は、それが多くの訴訟上の請求の全部ではない場合であっても、当然批判の対象となるものである。



 さらに矢野と朝木による議席譲渡を追及した「『草の根グループ』の議席の私物化を許さない会」(以下=「許さない会」)を矢野と朝木が提訴した裁判でもきわめて的確な判断がなされた。有名な「パラノイア裁判」(佐藤提出の書証⑤=同)である。

 平成9年12月、「許さない会」は議席譲渡事件を追及する『手を結ぶ市民のニュース』で矢野と朝木について次のように記載した。



(「手を結ぶ市民のニュース」の記載)

〈一人の異常とも思える人間(筆者注=矢野を指す)〉

〈矢野氏は物事を自分本位に解釈して、訴訟を計画し、これをもって時には脅し、執拗なまでに実行します。また自分の憶測を理屈づけ、朝木直子さんという媒体を巧みに利用し、多くの市民を味方に惹きつけようとしています。精神分析のリポートによりますと、パラノイア(偏執病・妄想病)の中でも好訴妄想者がこうした傾向を示す場合が多いと云います。〉



 東京地裁はこの文章について、矢野の行動が「パラノイアの中でも好訴妄想者」と同様の傾向を示すものであると論評するもので、矢野の社会的評価を低下させるものと認定したが、東京地裁は次のように判示し、矢野の請求を棄却した。



〈原告矢野は物事を自分本位に解釈する、また、自分の憶測を理屈づけるとの論評及び……一人の異常とも思える人間との論評の前提となる事実は相応の根拠があるということができる。〉

〈原告矢野は訴訟を計画し、これをもって時には脅し、執拗なまでに実行するとの論評の前提となる事実は相応の根拠がある。〉

〈パラノイアに関する論評は、上記各論評を前提にしたものであることからすると、表現自体はやや穏当さを欠くものであるが、当該論評の前提たる事実もまた相応の根拠があると認められる。〉



 矢野は控訴したものの、控訴審第1回口頭弁論当日、なぜか控訴を取り下げて一審判決が確定している。また「超党派で作る新聞」事件では「矢野は訴訟を脅しに利用」などとする記載について東京地裁は「記事の前提には根拠がある」と認定し、確定している。

 これらの判決もまた「パーソナリティ障害等」をうかがわせるコメントの前提として、相当性の根拠として提出され(佐藤提出書証の⑤)、東京地裁はこれらの判決もコメントの相当の根拠と認めた。

 こうして矢野と朝木の請求は棄却されたのである。

矢野と朝木をよく知る構成

 当然、矢野と朝木は控訴し10月3日、控訴審第1回口頭弁論が開かれた。裁判官席を見ると、これまで何度か見たことのある裁判官が並んでいた。薄井が矢野と朝木を提訴した事件を裁いた加藤新太郎裁判長、右陪審は八王子地裁時代に千葉が提訴した事件の裁判官で矢野と朝木の人となりをよく知る加藤見枝子裁判官である。この2人は偶然かどうか、私が浦安の行政書士を提訴していた裁判も担当していた。

 さて矢野と朝木は8月下旬に83ページに及ぶ控訴理由書と分厚い書証を提出しており、控訴審も予断を許さないと私はみていた。加藤裁判長は開口一番、とぼけたセリフを口にした。

裁判長  控訴人も被控訴人も、いずれも議員さんですね。

 念を押したということかもしれないが、2人が市議会議員であることを加藤裁判長が知らないはずがない。特に矢野と朝木には、薄井の裁判で100万円の支払いを命じたばかりである。

 加藤裁判長はこの裁判をどう見ているのか。しかし裁判長はこんな独り言をつぶやいただけだった。

裁判長  (2人とも議員だから)議会で議論すればいいと思うけど、そうもいかないのかな……。

 裁判長は「そうもいかない」理由も薄々承知のはずだが、あえて議論うんぬんを持ち出したのはあてつけだろうか。いずれにしても、これだけでは裁判長の心中を推し量ることは難しい。結局、裁判長は最後まで特に裁判の内容には触れないまま、判決期日を言い渡した。

裁判長  はい、それではこれで結審といたします。判決言い渡しは12月21日午後1時とします。

(「控訴審判決後」につづく)

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佐藤ブログ事件控訴審 第4回
 平成19年6月から7月にかけて、東村山市議、佐藤真和のブログに市民が投稿したこれらのコメントによって名誉を傷つけられたとして、東村山市議の矢野穂積と朝木直子(いずれも「草の根市民クラブ」)が同市議の佐藤真和を提訴していた裁判で平成23年12月21日、東京高裁は一審に続き矢野と朝木の請求を棄却する判決を言い渡した。

そもそもの発端は矢野らによる誹謗中傷

 矢野と朝木が問題としたコメントとは以下のとおりである。


 
〈他人を攻撃(=八つ当たり)する事で、心の虚無を埋めようとする方々とお見受けしました。心理学では「共依存」!? 「境界性人格障害」「攻撃性人格障害」……など幾つかの名を付けて分析・対処方法を研究しているはずです。〉

〈草の根の人たちは、病気なんです。他人を攻撃することで、自己のアイデンティティを保っているんですから。〉

〈この二人が市議として存在することが東村山の大問題ではないでしょうか。Aさんが挙げておられる心理学上の分類に「サイコパス」も追加させてください。〉(これはブログの運営者である佐藤が、コメントの一部に明らかに不適切と判断できる文言が含まれていたため、削除した上で掲載した)



 市民らは理由もなくこれらのコメントを投稿したわけではない。平成19年4月に執行された東村山市議選で新人の薄井政美が当選を果たした。ところが矢野と朝木は当選が確定するや否や薄井に対して「セクハラ市議」などとする誹謗中傷を始めたのである。薄井の前職を問題とするきわめて卑劣かつ執拗なものだった。

 これに対して市民の間から「職業差別だ」とする批判が巻き起こった。しかし矢野と朝木は薄井に対する誹謗中傷をエスカレートする一方、薄井を擁護し、矢野らを批判する市民に対して提訴を匂わせて脅すなど一般市民に対しても攻撃の矛先を向けたのである。

 薄井攻撃だけでなく、自分たちを批判する者たちに対しても際限なく攻撃の手を広げる矢野と朝木の姿を目の当たりにした市民は、世の中にこんな人間がいるのかと恐れおののき、さらに市議会議員として当選していることに驚きを隠せなかった。このことは、それまで「草の根」を何か市民の声を代弁するグループと思い込まされていた東村山市民の目を覚まさせもした。

 こうした矢野と朝木の、市民に対して常に優位に立とうとする姿勢は今に始まったものではなかった。今から16年前の平成7年4月に行われた東村山市議選で矢野と朝木は、当選した朝木が落選した矢野を繰り上げ当選させるために当選を辞退するという、前代未聞の議席譲渡事件を引き起こした。もちろん「草の根」グループは社会的な批判を浴びたが、彼らはいっさい非を認めず、自己正当化を続けたのみならず、彼らを批判した市民に対して告訴、提訴を繰り返したのである。

 矢野はいったん繰り上げ当選者となったが、それから2年後、最高裁が矢野の繰り上げ当選を無効とする判決を言い渡し、矢野は議会から放逐された。議席譲渡は民意を愚弄するものであるとして市民(「『草の根グループ』の議席の私物化を許さない会」)が闘い続けたことで民主主義が守られたのである。

 しかし現在もなお、矢野と朝木の口から市民に対する反省の言葉は聞かれない。彼らはいっさいの批判を受け付けず、非を認めることもない。それどころか逆に、彼らを批判する者、地位を脅かす者に対してはさまざまな嫌がらせを繰り返す。

 薄井問題でも矢野と朝木の対応は同じだった。一般市民が「提訴するぞ」といわれれば怯えるのが普通だろう。実際に、矢野と朝木から名指しで攻撃された市民の中には精神的に追い詰められたり、体調をおかしくした人さえいた。こうした矢野と朝木の特異な体質を知り、思い余った市民が佐藤のブログに正直な感想を述べたのだった。つまり今回の問題の本当のきっかけは、矢野と朝木による薄井に対する悪質な誹謗中傷にあったといえる。

「それなりの言動」を認定

 矢野と朝木の提訴に対して一審の東京地裁立川支部は請求を棄却する判決を言い渡した。まず東京地裁はブログに投稿されたコメントについて次のように認定した。

〈原告ら(矢野と朝木)が病気の一種であるパーソナリティ障害(筆者注=判決では「パーソナリティ障害」について、「精神病ではないとはいえ精神医学で取り扱われ、治療の対象となっている」と規定している)等を有するとの事実を表明したものと認めるべきである。〉

 また、提訴されたのが投稿者本人ではなくブログ運営者であるためプロバイダ責任制限法が適用されるとし、本件は「運営者が記載内容に真実性および相当性が存在しないことを知っていたか、知ることができたと認めるに足りる理由があった場合には名誉毀損が成立する」との認識を示した。コメントの投稿が自由なブログの運営者は、コメントの真実性を事前にすべて確認することは不可能だから、明らかな虚偽や悪質なコメントと判断できる場合を除き、責任を問われないようにするのがプロバイダ責任法の趣旨である。

 その上で東京地裁は、



〈被告ブログ掲示板の管理者である被告につき、(プロバイダ責任法)に該当する事由があったと認めることはできない。かえって、後記イ~オに説示するとおり、原告らにはパーソナリティ障害等であることを疑わせるそれなりの言動及び行動があったものである……〉



 と述べて彼らの請求を棄却した。判決文のこの一節で注目されるのは、東京地裁が後段で〈かえって、後記イ~オに説示するとおり〉として、判断の主たる根拠となったのが矢野と朝木がこれまでに行ってきた誹謗中傷の数々、あるいはかつて裁判所が彼らに対して行った珍しい認定だった(判決文中の「後記イ~オ」)ことをうかがわせている点である。

 その中には、矢野と朝木による薄井攻撃も含まれる。この点からも、問題となったコメントが投稿される原因が彼ら自身にあったといえるのではあるまいか。

(つづく)

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佐藤ブログ事件控訴審 第5回
控訴審も一審を追認

 矢野は控訴審で80ページを超える準備書面を提出していた。その主張はおおむね以下のとおりである。



①佐藤はプロバイダ責任制限法がいう特定電気通信役務提供者に該当せず、一審の判断は誤りである。

②このため一審判決は〈草の根の人たちは、病気なんです。〉などとのコメントについて真実性・相当性があるか否かの判断をしていない。



 ――などである。

 これに対して東京高裁は次のように述べて矢野らの主張をいずれも否定した。



(東京高裁の判断)

〈佐藤は特定電気通信役務提供者に当たり〉

〈本件各書き込みには、控訴人ら(筆者注=矢野と朝木)について「共依存」、「境界性人格障害」、「攻撃性人格障害」、「パワーゲーム」、「病気」及び「サイコパス」という指摘があるが、原判決30頁26行目ないし35頁8行目の事実に照らせば、①上記各指摘が真実でなく、又は投稿者がこれを真実であると信じるについて相当の理由がないことを被控訴人が知っていた事実、②被控訴人がこれを知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある事実を認めることはできない。〉



 ここで東京高裁が、「矢野らに対する『病気』などとするコメントが事実に反することを被控訴人が知っていたとは認められない」と判断した根拠として採用したのが、一審判決が〈かえって、後記イ~オに説示するとおり、原告らにはパーソナリティ障害等であることを疑わせるそれなりの言動及び行動があったものである〉として示した各事実=〈原判決30頁26行目ないし35頁8行目の事実〉だった。東京高裁もまた、過去の矢野と朝木の言動によって、「パーソナリティ障害等であることを疑わせる言動」があったと判断したものと理解できよう。

 矢野と朝木は一審判決が真実性・相当性の判断をしていないと主張したが、そもそもプロバイダ責任制限法において特定電気通信役務提供者はコメント内容の真実性・相当性までを検証する必要はなく、①コメント内容が真実でなく、または相当性がないことを運営者が知っていたか、②知ることができたと認められる以外は違法性は問われない。

〈パーソナリティ障害等であることを疑わせるそれなりの言動及び行動〉

 ブログ運営者である佐藤の免責を認定した裁判所が一、二審とも、たんにコメントに真実性・相当性がないことを知り得なかったとしたのではなく、むしろ矢野らに「パーソナリティ障害等であることを疑わせる言動」あったと積極的に認定したことは特筆に値しよう。

 裁判所が〈原告らにはパーソナリティ障害等であることを疑わせるそれなりの言動及び行動があった〉と認定させた事例について改めて確認しておこう。



①万引き被害者に対する誹謗中傷

『東村山市民新聞』(矢野と朝木が発行する政治宣伝紙)の記載


〈飛んで火に入る虫?〉

〈『真犯人の指紋のついたTシャツのビニールカバーを保管もしないで、なぜ物的証拠もなしに朝木議員をTシャツ万引きの犯人扱いしたの』と指摘した本紙を女洋品店主が提訴。本人尋問でき、逆に手間省け。〉



 朝木明代(朝木直子の母親)の万引き事件をめぐり、矢野は万引き被害者に対して万引きを捏造したとする宣伝を繰り返した。これに対して被害者は矢野を提訴した。その直後に掲載したのがこの記事である。ここでも被害者が加害者であるような宣伝をしていることがわかろう。

 明代の万引き事件で矢野は明代とアリバイ工作を共謀し、万引き被害者に対する嫌がらせを繰り返した。すなわち矢野は、明代の万引きが事実であることを認識していたはずである。それでもなお被害者に対してここまで誹謗中傷を繰り返すとは、やはり「原告らがパーソナリティ障害等であることを疑わせる言動」と判断されてもやむを得まい。



②少年冤罪事件

『東村山市民新聞』の記載


〈95年7月16日夜に、暴漢に襲われて前歯をおるなどの重傷を負った事件で……創価より裁判官はこの事実をわざと無視。〉



 平成7年7月、矢野は暴行を受けたとして1人の少年(当時は未成年)を警察に突き出した。しかし少年は矢野とはまったくの見ず知らずで、暴行についても身に覚えがないことが判明した。ところが矢野は、今度は少年を民事で提訴したのである。

 しかし裁判で矢野は、当然ながら少年が犯人であるとする確たる証拠を提出することはできず、裁判所は矢野の主張には信憑性がないと判断し、次のように述べた。

〈原告(矢野)が被告を本件暴行の犯人である旨断じた根拠は専ら原告の記憶にあるというのであるが、記憶の曖昧さは経験則上明らかであるから、仮にも公職にある者がこの曖昧な記憶に基づき、しかも司法警察職員による捜査がなされながら刑事訴追の手続きが執られていない被告を名指しで犯人であると断定している点において極めて特異であると言わねばならない。〉

 きわめて正当な判決だと思うが、矢野は、「創価より裁判官」と今度は裁判官に公平ではないというレッテルを貼ることで自らを正当化しようとしたのである。そもそもありもしない事実をでっち上げただけでも尋常ではないが、今度は裁判官まで誹謗するとはやはり「パーソナリティ障害等であることを疑わせる言動」と判断されてもやむを得まい。

(つづく)

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佐藤ブログ事件 第6回
「私がやられたことをやり返しているのよ」

 最近では本件の当事者である佐藤や薄井に対する執拗な攻撃の例がある。

③佐藤真和に対する虚偽宣伝

 矢野と朝木は『東村山市民新聞』、「多摩レイクサイドFM」などで平成18年9月以降、佐藤に対しあたかも佐藤が東村山市内に居住する実態がなく、東村山市議会議員の資格がないかのような虚偽宣伝を繰り返した。佐藤攻撃を開始した時期は平成19年の東村山市議選のちょうど半年前だった。たとえば以下のような記載である。



〈佐藤真和・東村山市議に公選法違反の疑惑が発覚した。〉

〈地方議員は選挙区内で生活していなければ詐欺登録罪で失職なのです。〉



 平成18年9月、「オンブズマン」と称する矢野の配下の者が佐藤の妻子が当時住んでいた東京・日野市にあるマンションに張り込み、また全く無関係の日野でも佐藤を誹謗するビラがまかれた。東村山だけでなく日野でも同じビラがまかれた点に矢野の佐藤に対する並々ならぬ個人的執念を感じ取ることができよう。

 矢野は佐藤の当選をめぐり、東京都選管に対して佐藤には東村山には居住の実態がないとして当選の取り消しを求める行政訴訟も提起した。しかし東京高裁は、佐藤は東村山に住所を有していたと認定し、矢野の請求を棄却する判決を言い渡している。

 矢野の一連の宣伝をめぐって佐藤が提訴した裁判で、東京地裁立川支部は矢野が記載事実のような疑いを持ったことには一応、相当の理由があったとして佐藤の請求を棄却したが、その執拗さは尋常ではなかった。これもまた「原告らがパーソナリティ障害等であることを疑わせる言動及び行動」と判断されてもやむを得まい。東京地裁は相当性は認めたものの、「佐藤は東村山市内に生活実態がないから、東村山市議の資格がない」などとした記載内容については真実性を否定している。

 なお、日野にはオンブズマンだけでなく朝木も自ら乗り込んで佐藤のマンションを見張った。朝木はそれだけのために月極駐車場を借り、レンタカーで張り込むという念の入れようだった。並大抵でないこだわりを感じさせる。その理由について朝木は知人にこう話したという。

朝木  私がやられたことをやり返しているのよ。

「私がやられたこと」とは、議席譲渡事件で朝木が千葉県松戸市に住民票を移動した際、朝木が実際に生活しているかどうか東村山市民が調査に行ったことを指している。調べられていることを察知した朝木は松戸市内で3度転居(住民票の移動)を繰り返した。逃げ回ったと言い換えてもよかろう。

 朝木の内心では、佐藤の居住実態を追及することは議席譲渡事件の恨みを晴らすという一面もあったということらしい。発想自体がまともとはいえず、逆恨みもはなはだしい。この点だけをみてもやはり「原告らがパーソナリティ障害等であることを疑わせる言動及び行動」といわざるを得ない。

④薄井政美に対する誹謗中傷



『東村山市民新聞』の記載

〈「薄井(市議)はエロキャスター」裁判所も断定! 現市長支持の「セクハラ市議」をかばった現市長、またも汚点」〉



 平成19年4月の東村山市議選直後に始まった誹謗中傷に対して薄井は東京地裁に提訴した。東京地裁は一部の請求を棄却したものの矢野と朝木に対して200万円の支払いを命じ、東京高裁も100万円の支払いを命じる判決を言い渡した。これは一審判決後の記事だが、あたかも敗訴の腹いせのようにもみえる。この執拗さはやはり「原告らがパーソナリティ障害等であることを疑わせる言動及び行動」と判断されてもやむを得まい。

⑤その他の議員に対する誹謗中傷

 矢野は朝木明代の生前から、『東村山市民新聞』で党派を問わず、他の議員に対する誹謗中傷、揶揄を繰り返している。主な表現は以下のとおりである。



〈「ピーマン議員」「アホキピーマン」「心身症」「失語症」「ハエ男」「足の長さが足りなくて」「常軌を超える偏執」「偏執症?」〉



 これらの表現の中には矢野が市議となって以後のものも含まれる。執拗性と表現の下劣さからみて、少なくとも普通ではないと疑われてもやむを得ないのではあるまいか。

 なお、このうち〈「常軌を超える偏執」「偏執症?」〉との表現は、議席譲渡事件の際に彼らが追跡調査された際に市民を批判した記事の見出しである。彼らが佐藤に対して行った行為にそのまま該当しよう。

「パラノイアに関する論評にも相応の根拠」

 さらに佐藤は裁判で、矢野と朝木の「パーソナリティ障害等であることを疑わせる」相当性の根拠として次の判決を挙げている。

⑥「許さない会」裁判判決

 平成7年に矢野と朝木が起こした議席譲渡事件を追及していた「『草の根グループ』の議席の私物化を許さない会」はビラで、矢野について「矢野にはパラノイア(好訴妄想者)の傾向がある」との趣旨の論評を行った。これに対して矢野は提訴したが、東京地裁は次のように述べて矢野の請求を棄却した。



〈原告矢野は物事を自分本位に解釈する、また、自分の憶測を理屈づけるとの論評及び……異常と思える人間との論評の前提となる事実は相応の根拠があるということができる。〉

〈原告矢野は訴訟を計画し、これをもって時には脅し、執拗なまでに実行するとの論評の前提となる事実は相応の根拠がある〉

〈そして(矢野についての)パラノイアに関する論評は、上記各論評を前提にしたものであることからすると、……当該論評の前提たる事実もまた相応の根拠があると認められる。〉



 この判決についても東京地裁は、矢野らに「かえって、……パーソナリティ障害等であることを疑わせる言動及び行動があった」と判断されてもやむを得ない根拠の1つと認定している。

 これらの具体的事例(本記事では①~⑥)を根拠として東京地裁は、佐藤が問題のコメントを削除しなかったことの方にむしろ相当の根拠があったと認めたのである。矢野と朝木はこの裁判によって、かえって彼らの他を寄せつけない特異性をあらためて知らしめたように思えてならない。

(了)
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