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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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元市議が矢野穂積を提訴
 平成27年10月9日、政治宣伝ビラ『東村山市民新聞』第186号に掲載された記事によって名誉を毀損されたとして、元東村山市議山川昌子は同ビラを発行する東村山市議の矢野穂積(「草の根市民クラブ」=発行人)と朝木直子(同=編集人)に対し300万円の損害賠償の支払いを求めて東京地裁立川支部に提訴した。

 矢野と朝木は『東村山市民新聞』という名の政治宣伝ビラを最近では年4回発行し、1号当たり4万5000部を東村山市内にポスティングによって各戸配布している。

「詐欺に関与」と断定

 彼らは平成27年7月31日付で同ビラ第186号を発行したが、訴状で山川が問題にしている記事は同ビラに掲載された2本の記事。1本目は1面に掲載されたもので、

〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉

〈創価、元市議らが仲介して〉

〈言葉巧みに、一般市民から、借りて1860万円も返さず〉

 との見出しの記事である。記事はまず、事件の概要を以下のように説明している。

「被害者は山川の紹介でMと知り合い、Mの仲介で、Mの妹のSに3年間で2140万円を貸した。ところが1860万円がまだ戻ってこない。被害者は東京地裁に提訴し、Sが返済することで和解が成立したが、当初は返金していたものの、返済が滞った。被害者はMの紹介者である山川に相談したが、いまだ1860万円が未返済のままだ」(=要旨

 問題はその後である。矢野はこう続けている。

〈山川元公明市議は口では被害者女性の味方になってお金を取り戻すそぶりをしていたが、結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかった。〉

「被害者は山川に相談し、山川は被害者に協力したが、返金は滞ったまま」という事実はあった。ところが矢野は、見出しで〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉と断定した上、山川が協力したことが「口先だけ」で、〈お金を取り戻すそぶり〉したにすぎず、実体は〈お金を巻き上げる連中の口利き〉つまりはグルであると記載している。どう転んでも、読者が「山川は1860万円の詐欺に関与した」と理解するのは明らかではあるまいか。

本人には取材なし

 2本目の記事は2面に掲載された、

〈本山破門「御本尊」放棄の政治集団化の先は、「詐欺集団?」〉

〈新興宗教の衣を脱ぎ捨てた集団〉

 との見出しの記事である。とりわけ〈「詐欺集団」〉という文言が関心を引く。今度は創価学会全体が「詐欺集団」だという趣旨であると理解できる。

 読者にそう印象付けた上で、本文ではこう記載している。

〈少なくとも仲介のような役割を果たした山川元公明党市議も(前掲Sが)1860万円を返そうとしていないことについて、知らん顔をしています。〉

〈元議員の立場で、貸金の仲介者のような役割を果たしながら、山川元市議は「知らん顔」、あきれた人たちです。〉

 矢野の主張によれば、山川は〈詐欺集団〉の一員ということになろうか。その山川が〈貸金の仲介者のような役割を果たした〉というのだから、1面の記事と同様に読者はこの記事も「山川は詐欺に関与した」と理解してもなんら不思議はない。

 山川は訴状で、〈上記記載は、「原告が詐欺事件に関与した」との虚偽の事実を摘示し、原告の人格的価値について社会から受ける客観的評価を著しく低下させるものである。〉と主張している。

 山川は「詐欺に関与した」どころか、人に貸した金を返してもらえないと被害者から相談を受け、被害者を伴って警察や弁護士に相談するなど、むしろ解決のために協力したという。ところが記事では、逆に「詐欺の関与」したことになっていた。

 記事掲載までに矢野もしくは朝木から山川に対する取材はいっさいなかったという。矢野はどんな根拠をもってこの記事を掲載したのか。裁判では当然、その立証が求められよう。

 山川は提訴に踏み切った理由をこう語っている。

「被害者のために尽力した者を、逆に『詐欺に関与』したと中傷するのは、人の善意を踏みにじり悪用する行為で、許容の限度を超えるものです。しかも、市民に奉仕すべき市議会議員の地位にありながら、善意の市民を陥れようとする被告らの卑劣さは断じて放置すべきではないと思います」

繰り返される誹謗中傷

 これまで矢野と朝木は『東村山市民新聞』で東村山市の行政関係者や市議に対する誹謗中傷を繰り返してきた。明らかな名誉毀損と思われる記事が掲載されたこともある。しかし、これまで提訴された例はあまり多くない。むしろそのほとんどが放置しているのが実情である。

 公務員だから、あるいはつまらない悪口に付き合っている暇はないという事情はあろう。しかし、同新聞に掲載される誹謗中傷を事実と受け止める市民が存在することも事実で、それは彼らが市議の地位にあることからも明らかである。矢野と朝木から誹謗中傷を受けることに慣れてそれを放置することは、市民の利益に反するのではあるまいか。

 とりわけ市外から転入してきた新住民にとっては、「ここまで書く以上は本当なのだろう」と受け取っても不思議はない。『東村山市民新聞』は彼らにとって議席を確保するための重要な手段にもなっている。

 今回の山川に関する記事も、〈元公明市議〉を見出しにすることで、公明党・創価学会に批判的な市民の共感を得ようとする意図もうかがうことができる。仮に本件記事に事実の裏付けがないとすれば、記事は市民を欺いて共感を得ようとするものにほかならない。山川はそのために「詐欺の共犯者」にされたということになる。

 なお、山川は今後、刑事告訴も検討するという。

千葉と私が公選法違反容疑で彼らを告発した事件は、処分結果について東京地検立川支部からまだ連絡がない)

(了)
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元市議名誉毀損事件 第1回
第1回口頭弁論期日が決定

 政治宣伝ビラ『東村山市民新聞』(平成27年第186号)の記事によって名誉を毀損されたとして、元東村山市議の山川昌子が東村山市議の矢野穂積と朝木直子(いずれも「草の根市民クラブ」)を提訴した裁判(民事3部=平成27年(ワ)第2196号)の第1回口頭弁論期日が平成27年11月30日午後1時10分(407号法廷)と決まった。

 矢野と朝木は『東村山市民新聞』第186号に、〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉などと、山川が詐欺事件に関与したと断定する記事を掲載した。山川は「そのような事実はなく、名誉を毀損された」と主張している。第1回口頭弁論において矢野と朝木がどんな反論および立証を行うのか、注目される。

 なお、第1回口頭弁論の翌日には東村山市議会12月定例会の初日を迎える。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第2回
西村修平の代理人に弁護を依頼

 平成27年11月30日、元東村山市議の山川昌子が名誉を毀損されたとして同市議の矢野穂積と朝木直子(いずれも「草の根市民クラブ」を提訴していた裁判の第1回口頭弁論が開かれた。原告山川昌子と、被告側は東村山市議の朝木直子と代理人の田中平八弁護士が出廷したが、矢野(社会福祉法人「林檎の木」理事長でもある)は出廷しなかった。のちに朝木が説明したところによれば、矢野は月水金は差し支えがあるとのことだった。退院したと聞くが、病気と何か関係があるのだろうか。

 田中平八弁護士といえば、平成20年9月1日に「行動する保守」Aとともに東村山駅前街宣を主催し、「朝木明代の謀殺事件を自殺として処理した」などと元東村山警察署副署長千葉英司を誹謗中傷し、千葉から提訴された西村修平の代理人を務めた人物――といえばわかりやすいかもしれない。その裁判では矢野と朝木のいいなりになって裁判を進めたが、その主張はことごとく排斥され、西村に10万円の支払いが命じられた(なお、西村はまだ千葉に対する損害賠償をわずかしか支払っていない)。この弁護士で大丈夫なのだろうか。

 さて、矢野側の答弁書は第1回口頭弁論前日の同年11月29日、速達郵便でようやく原告の手元に届いた。

 原告は矢野が発行する『東村山市民新聞』第186号に掲載された2本の記事について「原告が詐欺に関与した事実はない。しかし記事は、原告が詐欺事件に関与したとの虚偽の事実を摘示し、原告の名誉を毀損した」(趣旨)と主張している。これに対して矢野らは答弁書でどんな主張をしていたのか。

「政治宣伝紙」を否認

 答弁書では、原告の主張する事実についてそれが事実と認めるか事実とは認めないか、正当な主張と認めるかそうとは認めないか(=認否)を最初に答え、それぞれの認否に応じた主張をするのが通常のやり方である。

 訴状に記載された項目のうち、矢野はまず「第1」として記載された当事者の職業、『東村山市民新聞』の発行部数や配布状況等について、型通りの認否を行い、否認した箇所についてはその理由について主張していた。たとえば原告は『東村山市民新聞』について、「矢野と朝木の政治宣伝紙」とし、「1号当たり4万5000部発行し、市内に各戸配布している」などと記載していた。

 上記の記載に対して矢野は、同紙の発行部数と配布形態に関しては〈認める〉と明記し、原告が同紙を「矢野と朝木の政治宣伝紙」としていた点に対しては、〈被告両名の単なる政治宣伝紙ではなく、公正な立場で東村山市に関する情報を同市の市民に提供しているミニコミ紙である。〉と主張していた。矢野のこの記載は、前段は「認める」と明記しており、後段については「否認」の文言はないものの、原告が主張する論点を明確にした上で否定しているから、後段は「否認」の意思表示であると判断できる。つまりここまでは認否を行い、否認した部分については矢野の主張を記載していることが明らかで、通常の答弁書の内容であるといえた。

見当たらない主要部分の認否

 ところが本件の訴因である訴状の「第2 不法行為」、原告が〈(『東村山市民新聞』の記載は)「原告が詐欺事件に関与した」との虚偽の事実を摘示し、原告の人格的価値について社会から受ける客観的評価を著しく低下させるものである。〉と主張している箇所に対する答弁は「第1」に対するものとはやや趣が違っていた。矢野はこう主張していた。

(記事1に対して)

〈事実は、「東村山市民新聞」186号の1面及び2面に記載されているとおりである。〉

(記事2に対して)

〈事実は、同記事2に記載されているとおりである。〉

 矢野はこう主張した上で、〈(被告らが)虚偽の事実を摘示して原告が社会から受ける客観的評価を低下させたことはない。〉と主張していた。

 訴状の「第2 不法行為」は、この裁判の根幹部分である。原告山川は、記事が「山川が詐欺事件に関与したと記載したもの」と主張している。矢野はこれに対して「事実は、記載されているとおりである」と主張しているのだが、記事1、2には山川に関する事実以外の事実(事実かどうかはわからないものも含めて)も記載されており、矢野がここでいう「事実」が具体的に何を指しているのかわからない。

 したがって、「第2 不法行為」に対する答弁は、何も答弁していないのと同じというほかなかった。「第1」に対する答弁では明確な認否が記載されていたが、ここでは認否がなされていないことからも、明らかに対応が異なることがわかる。認否を先送りしたい、すなわち裁判の進行を見ながら対応を決めようとする意思の表れのようにも思われた。

裁判官も同じ見解

 開廷後、裁判官はまず原告山川昌子に対して訴状と書証の確認を行い、次いで被告代理人に対して答弁書の陳述について確認を求めた。するとこれに対して、田中平八弁護士は起立した上で、裁判官から聞かれてもいないのにこう述べた。

「次回に真実性の立証を準備します」

 と。「真実性の立証」とは「『山川昌子が詐欺事件に関与した』とする事実の真実性を立証する」ということにほかならない。訴状の「第2」に対する曖昧な答弁内容からは想像しにくい強気な姿勢である。この弁護士は西村の裁判のときにも最初はやけに強気を装っていたと記憶するが、仮に「『山川昌子が詐欺事件に関与した』とする事実」の真実性を立証できなければ、今回もはったりをかましただけということになるが、はたしてどうなるのだろうか。

 裁判官は「わかりました」と答え、原告に対して次回までに答弁書に対する反論および陳述書を提出するよう命じて終わりにしようとした。そのときである。山川が裁判官に向かって手を挙げ、発言を求めた。山川は裁判官に対してこう述べた。

「答弁書における〈事実は、「東村山市民新聞」第186号の1面及び2面に記載されているとおりである。〉〈事実は、同記事2に記載したとおりである。〉とは、「記事は原告が詐欺事件に関与したとの事実を摘示している」と認めるものと理解してよいか、端的に答えるよう求めます」

 山川は訴状の「第2 不法行為」に対する答弁内容について被告らに釈明を求めているのだった。これだけで答弁書のどこを指しているのか裁判官に伝わるだろうかと心配したが、裁判官は山川に「答弁書のどの箇所ですか」と聞くこともなく答弁書を確認すると、田中弁護士に向かってこう述べた。

「そうですね、この部分は何のことをいっているのか不明確ですので、次回に明確な答弁を出してください」

 裁判官もこの箇所については答弁をごまかしていると感じていたのかもしれなかった。田中弁護士は裁判官に一言も反論せず、「はい」と素直に命令を受け入れた。そう指摘されても仕方がないことがわかっていたかのようだった。矢野側は次回までに本件の根幹部分に対する態度を明らかにしなければならないが、代理人が「真実性を立証する」と陳述した以上、その発言に反する答弁はできないのではあるまいか。

 第2回口頭弁論は平成28年1月18日午後1時10分(407号法廷)と決まった。次回は本件の方向性を左右する重要な弁論となりそうな気配である。

(第2回口頭弁論以降につづく)
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元市議名誉毀損事件 第3回
 政治宣伝ビラ『東村山市民新聞』の記事によって名誉を毀損されたとして、元東村山市議の山川昌子が東村山市議の矢野穂積(「草の根市民クラブ」=社会福祉法人「林檎の木」理事長でもある)と朝木直子(同)を提訴した裁判の第2回口頭弁論が平成28年1月18日、東京地裁立川支部で開かれた。被告側は朝木と田中平八弁護士が出廷したものの、月水金は差し支えという矢野はこの日も出廷しなかった。

 第1回口頭弁論で、裁判官は原告側、被告側双方に書面の提出を命じていた。原告に対しては被告の答弁書に対する反論および陳述書、被告に対しては第1回口頭弁論で原告が指摘した点について準備書面において態度を明らかにするよう命じていた。

重要部分には認否せず

 このうち本件裁判の行方を左右するとみられていたのは被告の準備書面である。原告は訴状の「不法行為」の項で、矢野と朝木が『東村山市民新聞』に〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉〈創価、元市議らが仲介して〉〈言葉巧みに、一般市民から、借りて1860万円を返さず〉との見出しで掲載した記事は〈「原告が詐欺事件に関与した」との虚偽の事実を摘示し、原告の人格的価値について社会から受ける客観的評価を著しく低下させるものである。〉と主張している。これに対して矢野は、〈事実は、「東村山市民新聞」186号の1面及び2面に記載されているとおりである。〉と答弁していた。このわずか1行のみである。

 これでは、記事が「原告は詐欺事件に関与した」との事実を記載するものであることを認めるのか、あるいはなにかその他の「事実」を記載したという趣旨なのか、明確に特定することができない。このため原告は第1回口頭弁論で、「上記答弁は『記事は原告が詐欺事件に関与したとの事実を摘示している』と認めるものと理解してよいか」端的に答えるよう求めた。すると裁判官も原告の申し立てを認め、矢野側に対し、改めてこの項について第2回口頭弁論において明確に答弁するよう命じていた。

 原告は「『山川は詐欺事件に関与した』とする記事によって名誉を毀損された」と主張している。したがって、本件の主たる争点は、①被告が「山川は詐欺事件に関与した」とする記事を掲載したものと認めるかどうか、認めた場合には、②真実性の立証がなされるのかどうか、または「山川は詐欺事件に関与した」と信じたことについて相当の理由があったかどうか――という点にあることになる。

 矢野の代理人は、その点に関する認否が曖昧であるにもかかわらず、裁判官から聞かれるより先に「次回以降、立証活動を進めたい」と冒頭で述べた。ところが答弁書では、矢野側はまだ、「山川は詐欺事件に関与した」とする記事を記載したことを明確に認めているとは理解できなかった。だから原告側は、その点を明確にするよう求めたのである。

態度を明確にしなかった被告ら

 この代理人はいったい、根幹部分の認否もしていない段階で、何について「立証活動」を進めたいと考えていたのか。あるいは、最初の法廷だからとりあえず、記事には相当の根拠があると印象付けようとしただけだったのか。

 田中弁護士の認識は定かでないが、根幹部分に対する態度が曖昧なまま立証活動はあり得まい。無関係の事実について立証をされても意味がない。しかしいずれにしても矢野側は、第2回口頭弁論で「『山川は詐欺事件に関与した』とする記事を掲載したものと認めるかどうか」について明確な答弁をすることを命じられた。矢野の代理人は、「次回以降、立証活動を進めたい」といっていたにもかかわらず、裁判官の命令を何の反論もせずに受け入れたのだった。

 この弁護士は、名誉毀損部分に対する答弁が、不明確で、認否とはなっていないことがよくわかっていたのだろう。何の認否もしないまま「次回以降、立証活動を進めたい」と主張するとは、めったにない訴訟対応ではあるまいか。

 仮に矢野側が「『東村山市民新聞』に記載した事実とは、原告が詐欺事件に関与したとの事実である」と答弁すれば、矢野側は「原告が詐欺事件に関与したとの事実」が真実であること、あるいは「原告が詐欺事件に関与したとの事実」を真実と信じたことについて相当の理由があったことを立証しなければならない。したがって裁判の争点は、「原告が詐欺事件に関与したとの事実」について矢野側がどう立証するかに絞られることになると思われた。

開廷直後に提出

 一方、原告の山川は第2回口頭弁論の10日前、被告らの答弁書に対する反論を記載した準備書面と裁判官に命じられた陳述書(いずれも平成28年1月8日付)を提出。準備書面で原告は、本件の最大の論点すなわち原告が訴状で「被告らは、山川は詐欺事件に関与したと記載し、原告の名誉を毀損した」としている点に対する明確な答弁を求めた。

 しかし、被告らの準備書面は口頭弁論の前日、平成28年1月17日に至っても原告の元には送付されなかった。「山川は詐欺事件に関与した」とする『東村山市民新聞』186号の記載に明確な裏付けがあったとすれば、少なくとも相当性の立証はさほど難しいことではあるまい。また代理人の田中弁護士も、第1回口頭弁論の際、裁判官から聞かれる前に、「次回以降、立証活動を進めたいと思います」と述べていた。にもかかわらず、口頭弁論前日になっても準備書面が送付されないとは不可解なことに思われた。

 矢野らの準備書面は第2回口頭弁論の開廷直後、あわただしく提出された。それにしても、通常は事前に提出すべき準備書面がなぜ口頭弁論当日になったのか――。そのあたりの事情も準備書面の記載内容からうかがい知ることができた。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第4回
原告が送付後に作成

 民事裁判では口頭弁論期日の1週間程度前に準備書面を提出するのが普通である。しかも矢野側は、〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉〈創価、元市議らが仲介して〉〈言葉巧みに、一般市民から、借りて1860万円を返さず〉との見出しで掲載した記事に対して原告が〈「原告が詐欺事件に関与した」との虚偽の事実を摘示し、原告の人格的価値について社会から受ける客観的評価を著しく低下させるものである〉と主張したことに対して明確な認否をするよう裁判官から命じられている。

 本来なら第1回口頭弁論で答弁すべきであり、十分な取材に基づいたものとして自信があるのなら最初から明確に「虚偽ではない」とする主張をすればよく、準備書面の提出が口頭弁論当日になることは通常ではあり得ない。どういう事情でこれほど提出が遅れたのか。

 その理由は準備書面や朝木の陳述書の記載そのものに示されていた。朝木の陳述書(平成28年1月12日付)には次のような記載がある。

〈原告山川の陳述書を読み、原告山川がこの「詐欺事件」に関与していたという確信がより強くなりました……〉

 山川が準備書面1と陳述書を裁判所に提出したのは平成28年1月8日である。山川は同日、被告代理人に発送しているから、被告らは1月9日には原告の書面を入手しただろう。朝木は山川の陳述書を読んだあとで、陳述書の作成にとりかかったということと理解できる。

 一方、田中弁護士が作成したと思われる被告準備書面は平成28年1月16日付である。その内容は朝木の陳述書に基づいていると思われる箇所がいくつもあった。田中弁護士は朝木の陳述書が完成するのを待って準備書面を作成したものと推測できた。準備書面の提出が1月18日、口頭弁論当日になったのにはこんな事情があったようだった。

 それにしても、記事に確かな裏付けがあったのなら、朝木はなぜもっと早めに陳述書を作成しなかったのだろうか。最初から意図したものかどうかは定かでないものの、原告の書面を見たあとに作成したものであるためか、被告準備書面も朝木の陳述書も、提出した時点で原告の最新の主張に反論するかたちになっていた。

 なお原告は準備書面と陳述書で、詐欺事件にはいっさい無関係であること、むしろ被害者から相談を受けて、被害者とともに警察に行き、弁護士を紹介するなど、被害者のために尽力した経緯を説明した上で、にもかかわらず「詐欺に関与」と断定した本件記事がいかに悪質であるかを主張していた。

「事件」そのものはすでに裁判所で和解が成立している。しかしその後返済が滞り、1860万円が未返済となっているのだった。

真実性を主張した矢野・朝木

 では、本件で最も重要な争点と思われる部分、すなわち〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉〈創価、元市議らが仲介して〉〈言葉巧みに、一般市民から、借りて1860万円を返さず〉との見出しで掲載した記事に対して原告が〈「原告が詐欺事件に関与した」との虚偽の事実を摘示し、原告の人格的価値について社会から受ける客観的評価を著しく低下させるものである。〉と主張したことに対する認否はなされていたのか。矢野側は今回提出した準備書面で次のように主張していた。

〈「原告の名誉を毀損された」と原告が主張する東村山市民新聞186号の「1860万円詐欺、元公明市議らが関与」、「創価、元市議らが仲介して」、「言葉巧みに、一般市民から、借りて1860万円を返さず」なる記事は、被告朝木直子が取材した事実関係に基づく記事であった。〉

 これだけではまだ答弁書の記載と同様に、何をいっているのか明確にはわからない。準備書面では「原告が詐欺犯のグループの一員であるMを被害者に紹介し、原告は被害者の個人情報を懇意にしていたMに漏らしたため、詐欺犯であるS(Mの妹)が被害者宅を訪ね、多額の現金を詐取した」などと主張した上で、次のように主張していた。

〈東村山市民新聞186号の「1860萬円詐欺、元公明市議らが関与、創価、元市議らが仲介して言葉巧みに一般市民から借りて1860萬円も返さず」は、事実であって、これにより原告の名誉が毀損されたことはない。〉

「事実だから名誉毀損はない」とは弁護士とも思えない乱暴な主張だが、真実性を争うという趣旨と理解すべきなのだろう。普通は、「真実性」に加えて「相当性」(=記載事実を真実と信じるに足りる相当の理由があった)も主張するが、矢野側の準備書面には相当性の主張はない。あくまで真実性を争うということなのだろう。

 なお名誉毀損訴訟では、それが真実だったとしても、「公益性」、「公共性」がなければ名誉毀損は成立する。ところが田中弁護士の準備書面には、「公共性」「公益性」に関する主張もなかった。

朝木が主張する「詐欺関与」の態様

 さて、そう述べた上で、矢野側は準備書面でこう結論付けていた。

〈原告が、高齢で高額な資産を有する独居女性についての情報、換言すれば、詐欺犯にとって耳寄りな犯行相手に関する情報を、詐欺犯の一味であるMに伝えたことは、この情報がMからS(詐欺の主犯)に伝わり、この高齢で資産家の独居婦人が詐欺常習犯のSによる格好の詐欺対象人物となったことは間違いなかった。〉

〈従って、創価学会員で公明党所属の東村山市議会議員であった原告が、詐欺師Sの高齢で独居中の被害者女性に対する詐欺事件に関与したことは間違いなく、Sの姉であり、詐欺グループの一員でもあるMに被害女性に関する上記情報を開示したことは、Sの被害女性に対する詐欺行為を仲介したものである。〉

「原告が、高齢で高額な資産を有する独居女性についての情報、換言すれば、詐欺犯にとって耳寄りな犯行相手に関する情報を、詐欺犯の一味であるMに伝えた」とは具体的にどういうことなのか。朝木は陳述書でその経緯についてこう述べていた。

〈(被害者は)夫と別居し、一人暮らしを始めたことを原告山川に話した。〉

〈原告山川に夫と独り暮らしになったことを話した途端に、その情報を原告山川から得たMが、再び被害者女性宅に訪ねて来るようになり……〉

 その後、「被害者はMの妹であるSに総額2600万円を渡すことになった」(要旨)という。この間に山川が具体的にどんな関与をしたのかに関する事実は記載されていない。つまり、朝木が「原告の関与」として指摘しているのは「被害者が独り暮らしを始めたことを山川に話し、山川はそれをMに伝えた」とする事実だけだった。準備書面ではこれを「仲介」であるとも主張している。

 仮に「被害者が独り暮らしを始めたことを山川がMに伝えた」とする朝木の主張が事実だったとしても、直接関与者でもないMに「被害者の状況を伝えた」というだけでただちに「詐欺に関与した」とまで結び付けるのは、常識的に考えてかなり強引なこじつけというべきではあるまいか。これだけでは、朝木はむしろ、「『山川は詐欺事件に関与した』とする事実の裏付けはありません」といっているに等しいように思えてならない。

 なお、第3回口頭弁論は、朝木に差し支えがあって、いったんは3月にずれ込むかに思われたが、最終的に2月10日午後1時10分と決まった。口頭弁論の間隔がわずか3週間ちょっととは異例の早さではあるまいか。

 余談だが、口頭弁論終了後、私と千葉、それに山川は地裁の地下にある食堂で遅い昼食をとっていた。するとそこへ、朝木と田中弁護士、それから外1名もやってきた。その日、東京は大雪で、裁判所に来るだけでも一苦労だった。彼らも昼食にありついていなかったのだろう。ところが、ちらと中を見た朝木はすぐに私たちの存在に気がついた。すると朝木一行はすぐに踵を返し、食堂から出て行った。

(「第3回口頭弁論以降」につづく)
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元市議名誉毀損事件 第5回
「詐欺に関与した」とする記事によって名誉を毀損されたとして元東村山市議の山川昌子が同市議の矢野穂積と朝木直子(いずれも「草の根市民クラブ」)を提訴している裁判の第3回口頭弁論が平成28年2月10日、東京地裁立川支部で開かれた。

「個人情報を漏洩した」と主張

 前回第2回口頭弁論で、被告の矢野と朝木は準備書面と朝木の陳述書を提出している。矢野らは準備書面で、

〈東村山市民新聞186号の「1860万円詐欺、元公明市議らが関与、創価、元市議らが仲介して言葉巧みに一般市民から借りて1860万円も返さず」は、事実であって……〉

 と真実性を主張。さらに、〈原告……は、……高齢で相当な資産家である被害者の独居女性が一人暮らしをしている旨原告に話した直後、懇意のM(筆者注=準備書面では実名)(詐欺グループの一員)にその個人情報を漏らしたため〉詐欺事件が発生した、「原告がMに上記被害者の情報を漏らした」ことは〈詐欺行為を仲介したもの〉と主張していた。

 また朝木は陳述書で、被害者から取材した内容として、原告が「詐欺事件に関与した」とする主張の「根拠」をより詳細に主張していた。上記準備書面は朝木の陳述書に基づいて作成されたものだった。

 上記準備書面における主張を要約すれば、「原告は被害者である高齢女性が資産家であり、一人暮らしをするようになったとする情報を詐欺グループの一員であるMに報せた。このことが詐欺に関与したとする根拠である」と主張していた。すなわち詐欺グループは、原告から「被害者には資産があり、一人暮らしである」という情報を得たことによって、被害者を詐欺の標的として狙いを定め、実行に移したのだ――という主張である。

 朝木は「原告は市民相談で得た個人情報を詐欺グループに漏らした」とも主張しており、これは「原告が個人情報保護法に違反した」と主張しているものと理解できた。今回の口頭弁論で、原告はこれらの主張に対する反論を提出することになっていた。

「新たな名誉毀損」

 原告は2月8日付けで上記被告らの準備書面に対する反論を提出。主張の骨子は2点だった。

 第1点は、被告らが「原告は市民相談で得た被害者の、資産家であること、一人暮らしになったという個人情報を詐欺グループの一員に漏洩した」と主張している点に対する反論である。原告は「上記主張は『原告が個人情報保護法違反の犯罪を犯した』と主張するもので、これは原告に対する新たな名誉毀損である」と主張、第3回口頭弁論終了までに撤回するよう求めた。

 第2点は、「原告は詐欺グループの一員であるMに被害者の個人情報を報せた」とする主張を含め、朝木が陳述書で述べている内容に対する具体的な反論である。朝木は陳述書で、原告がMに被害者の個人情報を報せ、その後、被害者が原告に「貸した金を返してもらえない」と相談し、原告が被害者とMを伴って東村山署に相談に行った際にも、原告は被害者に対して「外部にしゃべらないよう口止め」したなど、原告が実は詐欺グループ側の人間であると思わせるような言動を繰り返した――などとし、あたかも原告が詐欺グループの一員であるかのように主張していた。

朝木陳述書に反論

 これに対して原告は、朝木の陳述書における原告に関する記載のうち12カ所にわたり記載事実を否定し、それに対して逐一事実を示した上で、次のように主張した。

〈上記朝木の主張する各事実は、原告が詐欺事件に関与したとの被告らの主張、並びに、原告が個人情報保護法第54条違反の行為をしたとの被告らの主張に信憑性を持たせるために被告らが捏造したものである。

 よって、……被告ら準備書面(1)における「(原告は被害者の)個人情報を漏洩したことによって詐欺事件に関与し、あるいは詐欺行為を仲介した」とする主張にも、なんらの根拠もない。〉

 また、被告らは答弁書においても第2回口頭弁論で提出した準備書面においても「原告は詐欺事件に関与した」とする事実について、「原告は詐欺グループの一員であるMに対して被害者の個人情報を漏洩した」とする理由によって真実性は主張したが、「そう信じるに足りる相当の理由があった」とする相当性の主張はいっさいしていない。このため原告は、「相当性の主張をしていない以上、記事には相当性も認められない」と主張した。

被告側が新たな証拠を提出

 原告が上記の準備書面2を提出したのは口頭弁論2日前の2月8日である。ところがそれと入れ違いに、被告側も新たな主張とA4用紙100枚を超える膨大な枚数の書証を提出した。そもそも被告側は第3回口頭弁論に際して書面の提出を命じられていない。にもかかわらず分厚い書類を提出したのは、急いで提出しておく必要があると判断したのだろう。あるいは被告側は、第3回口頭弁論で結審する可能性があると感じていたのだろうか。

 書証の中には、矢野と朝木が期末手当の一部を「返上」してきたことを証明する書類すべてが含まれていた。「自分たちはお手盛り値上げ分を返上するなど、清廉な議員活動を行っている」とアピールしたかったようである。「だから、市民に対して根拠のない誹謗中傷などするはずがない」と。もちろん、期末手当をどれだけ「返上」していようが、今回の記事とは何の関係もない(「返上」が議員として称賛される行為である理由もない)。

 しかし書証の中には、矢野と朝木が『東村山市民新聞』に記載した「詐欺事件」の真相に関わる2点の重要な証拠が含まれていた。前回の準備書面における矢野らの主張の骨子は「原告は詐欺グループの一員であるMに被害者の個人情報(「一人暮らしで資産家である」というもの)を提供した。これが詐欺事件への関与だ」というものだった。彼らはその主張を立証するために、新たに2点の重要な証拠を提出したのである。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第6回
告訴していた被害者

 第3回口頭弁論を前に被告らが提出した重要な証拠とは、被害者が加害者らを①民事提訴した際の和解調書、被害者が②警察に提出した告訴状、その告訴に際して原告が提出していた③「陳述書」(筆者注=本件裁判の原告陳述書と区別するため、告訴の際に提出したものはカッコ付きの「陳述書」と表記する)の3点だった。

 この和解調書は、貸した金を返してもらえなくなった被害者が東京地裁立川支部に提訴し、被告らが月々決まった額を返済するという内容の和解が成立したことを立証するもの。しかし、和解が成立したものの相手方からの返済は滞った。このため被害者は相手方を告訴しようとした。

 その告訴状を本件裁判に証拠として提出したのである。告訴の相手には、「原告が被害者の『一人暮らしである』『資産家である』という個人情報を漏洩した相手」と矢野らが主張しているMも含まれた(民事提訴の際には、Mが直接借りた証拠(借用証等)がないと弁護士が判断したため被告には含まれていない)。

 この告訴状提出の際、原告は被害者(あるいは被害者の代理人弁護士)に求められて「陳述書」を提出していた。Mとの関わりや和解までの経緯、和解後の対応などを述べたもので、記載内容のすべてが被害者の側に立ったものであることが明らかだった。矢野と朝木はそれをこの裁判で、「原告が詐欺事件に関与した」とする証拠として提出したのである。

 被害者の側に立った「陳述書」であるということは、普通に考えれば、原告には逆に有利な証拠であるように思えた。矢野には何か、特別の狙いでもあったのか。

新証拠を提出した理由

 原告の準備書面と入れ違いに送付されてきた準備書面には、上記告訴状と原告の「陳述書」を証拠として提出した理由についてこう主張していた。

〈(和解後も返金がなされないため、被害者は)Mら4名を被告訴人とし、高井戸警察に刑事告訴をしようとしたが、……告訴状の受理には至らなかった。〉

 原告は上記事件について「民事で和解が成立したものであって、刑事上の詐欺事件ではなく民事上の返金問題として決着している問題であり、『詐欺事件』と記載することは刑事事件として扱われた事件と認識させるもので誤りである」と主張していた。矢野らはこの告訴状を提出することで、この事件は「和解」によって解決したものではなく告訴しようとしたもので、原告も「陳述書」を提出しているから「詐欺事件」として認識していた――こう主張するために告訴状を提出したもののようだった。

 しかし原告はすでに、これが「仮に『詐欺事件』だったとしても、原告が関与した事実はない」と主張している。本件で問題となるのは「原告が事件に関与したかどうか」であって、仮にこれが刑事事件としての「詐欺事件」だったとしてもその本質には影響しないのではないかと思える。

 もう1つの重要な証拠である原告の「陳述書」についてはどうか。矢野らは「原告は詐欺グループの一員であるMに被害者の『一人暮らしである』『資産家である』という個人情報を漏洩した。その結果、詐欺事件が起きた」と主張。それに対して原告は「そのような事実は存在しない」と主張していたが、「陳述書」には原告がMに「(被害者が)一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことがあるとの記載があった。矢野らはこれが「原告が個人情報を漏洩した」とする主張の裏付けであるとし、〈(原告)がこの事件に関して、結果的に仲介し関与したことは明らか〉などと主張していた。

 つまり矢野らは、原告が「詐欺グループの一員であるM」に対して、被害者が「一人暮らしになったこと」を話したとする主張には根拠があることを立証するために原告の「陳述書」を提出したとみられた。しかし、原告がMに対して被害者が「一人暮らしになった」と話したからといって、原告が「詐欺に関与」したことの証拠といえるのだろうか。かなり強引なこじつけのようにも思える。

相当性の主張も追加

 矢野らはまた、第2回口頭弁論の時点まではいっさい主張していなかった「相当性」の主張も行っていた。矢野らはまずこう主張している。

〈本件記事は原告山川が詐欺を働いたという記載ではなく「結局口ききでしかなかった」という記載内容である。〉

 したがって、原告が刑事告訴の際に提出した「陳述書」には「(被害者が)一人暮らしになっちゃったのよね」とMに話したとする記載があるから、「口きき」をしたと記載したことには真実と信じるに足る相当の理由があったと主張しているのである。

 矢野らは本件記事について次のように述べて名誉毀損の成立そのものも否定している。

〈「結果的に口ききとしての役割を果たしたに過ぎない」と批評しているのであって、原告山川が直接的に詐欺を働いたと読み取れる箇所はない。……原告山川の「役割」について結果を批判的に述べているに過ぎず、名誉毀損は成立しない。〉

 本件『東村山市民新聞』の記事をあらためて確認すると、〈結果的に口ききとしての役割を果たしたに過ぎない〉とする記載は〈山川元公明市議は口では被害者女性の味方になってお金を取り戻すそぶりをしていたが〉に続くものであり、原告が被害者の支援をしたことを否定する趣旨の文言にほかならない。つまりこの一節は「詐欺に関与」の見出しを裏付ける事実として記載されているのであって、たんに「『口きき』だったといっている」と読み取るのは難しいのではあるまいか。

 原告は準備書面の提出と入れ違いに送付されてきた被告らの上記の準備書面に対して、被告らの主張の根拠である告訴状と原告の「陳述書」が、原告が詐欺事件とは無関係であることを証明するものであること、さらに〈本件記事は「結局は口ききでしかなかった」という記載内容である〉とする被告らの主張に対する反論等を記載した準備書面を提出した。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第7回
原告に有利と思える証拠

 ところで、矢野らが今回提出した告訴状とその際に原告が提出した「陳述書」には、原告が「詐欺事件」になんらかの関与をしたことがうかがえる記載がいっさい存在しない。たとえば告訴状には、「告訴の理由」として「M(「詐欺グループの一員」で、原告が個人情報を漏洩した相手と矢野らが主張している人物)がマッサージの過程で顧客の家族関係や財産関係を聞き出し、その情報を詐欺の実行行為者に伝えて、被害者から多額の借金をし、詐取した」(趣旨)と記載されているだけで、詐欺行為が実行されるまでの経過の中で原告が何らかの関与をしたとする記載は存在しない。原告が本件詐欺に関与しているなどとは、被害者もまたいっさい認識していなかったことがわかる。

 また原告が告訴に協力して提出した「陳述書」には、原告が被害者から相談を受けて以後、警察に相談に行き、弁護士を紹介し、和解成立後に返済が滞った後にも被害者を伴ってMの家を訪ねたことなども記載されている。このことは原告がいかに被害者に協力してきたか、また被害者が原告を頼っていたかを物語っている。

 つまり、矢野らが提出した告訴状も「陳述書」も、原告が「詐欺事件に関与」どころか、関与などいっさいしていないことを立証するものと判断できるのではあるまいか。「詐欺事件」が受理はされなかったものの告訴された事件であること、「(被害者が)一人暮らしになっちゃったのよね」とMに話したことがある(「陳述書」に記載されている)ことは事実らしいが、全体的にみればむしろ原告に有利な証拠のように思える。

 この2つの証拠を提出するにあたって、矢野にはそれなりの理由があったはずである。しかし私には、矢野がなぜこのような証拠を提出したのか理解することができなかった。

主張の一部を削除

 さて第3回口頭弁論で、裁判長はまず双方に対して準備書面の提出を確認した。するとその直後、矢野ら代理人の田中平八弁護士が立ち上がり、準備書面の一部箇所を「削除したい」と申し立てた。矢野らが提出した2月3日付け準備書面には次のような一節があった。

〈本件は、原告山川が「○○(筆者注=被害者)という高齢の女性が、……一人暮らしをしており、この女性が相当高額の資産を持っている」旨の○○(同上)に関する個人情報を……詐欺グループの一員であるMに漏洩したことにより……〉

 上記記載のうち、田中弁護士は「〈おり、この女性が相当高額の資産を持って〉の箇所を削除したい」というのだった。裁判官はこれを認めた。その結果、詐欺犯にとって最も重要な情報である「相当高額の資産を持っている」という情報が消えてなくなり、上記記載部分は以下のようなものとなった。

〈原告山川が「○○(同上)という高齢の女性が、……一人暮らしをしている旨の○○(同上)に関する個人情報を……詐欺グループの一員であるMに漏洩したことにより……〉

「高齢の女性が一人暮らしをしている」という程度の話が個人情報の漏洩とまでいえるのかどうかはともかくとして、「一人暮らしをしている」という情報を聞いたというだけで詐欺グループに狙われるということになるのだろうか。

 本件の場合、10万円という比較的小さな額から始まり、被害者は様々な理由で1回の額を数百万円単位で10回近くに分散するかたちで合計2600万円を貸している。したがって、「詐欺グループ」はこの高齢者が一定の資産を持っているというアタリを付けた上で接近したものように思える。矢野が証拠として提出した告訴状でも次のように記載している。

〈被告訴人ら(筆者注=「詐欺事件」の実行者ら)は、(被告訴人M)をして……告訴人が……相当の資産を抱えていることを探らせた上……〉

 つまり、「詐欺グループ」はたんに「一人暮らし」という情報のみに基づいて被害者に近づいたのではないということである。また、その旨を記載した告訴状を提出したということは、矢野らもそのことを認めているということにほかならない。

「原告がMに漏洩した」とする情報のうち、「被害者が相当高額の資産を持っている」という部分を矢野らが準備書面から削除したのは、告訴状の記載と矛盾しないように辻褄を合わせたということだろうか。真意は定かでない。しかしそうすると、矢野らが「原告がMに漏洩した」と主張している個人情報のうち、「被害者が相当高額の資産を持っている」とする部分を削除すると、なんら詐欺行為につながる「情報漏洩」などとはいえなくなってしまうのではあるまいか。

 一人暮らしの高齢者は少なくない。通常、一人暮らしだからという理由だけで、本件のようなかたちの詐欺を仕掛けることは、常識的には考えにくい。あるいはこれは、被告の「原告は個人情報保護法違反を犯した」とする趣旨の主張に対して原告が「新たな名誉毀損である」として撤回を求めたことに対する対応でもあったのだろうか。

本人尋問を求めた朝木

 被告らは朝木直子の本人尋問を求める申立書を提出していた。これに対して原告は、「朝木に事実関係を聞いたところでしょせん伝聞にとどまる」という理由で、却下を求めた。裁判官は申し立てに対する態度を明らかにしなかったが、原告に対して尋問の希望があるかと聞いた。原告は書面で足りると答えた。

 裁判官は被告側がそれまで主張していなかった相当性の主張をしたこと、朝木が尋問の申し立てをしたことなどを考慮したのか、進行についてこう述べた。

「じゃあ、もう1回やりましょう」

 こうして原告はあらためて書面を提出することとなり、この日の弁論を終えた。

 次回弁論について裁判官は3月の上旬はどうかと聞いたが、双方に差し支えがあり、次回、第4回口頭弁論は4月11日午後1時10分となった。

(「第4回口頭弁論」以降につづく)
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元市議名誉毀損事件 第8回
想定外の訴訟指揮

 元東村山市議の山川昌子が「詐欺事件に関与した」などとする『東村山市民新聞』(=「草の根市民クラブ」の政治宣伝紙)の記事によって名誉を毀損されたとして現職東村山市議の矢野穂積と朝木直子(いずれも「草の根市民クラブ」)を提訴していた裁判の第4回口頭弁論が平成28年4月11日、東京地裁立川支部で開かれた。被告側は代理人と朝木は出廷したが、矢野は通院のためかこの日も出廷しなかった。

 前回の口頭弁論で朝木は自分に対する尋問を要求し、裁判官から原告に対して「原告は(尋問は)どうですか」と聞いた。これに対して原告は朝木に対する尋問の必要性を否定するとともに、自らも尋問ではなく陳述書の提出で足りると答え、これを受けて裁判官は「ではもう1回やりましょう」と応じたという経緯があった。

 したがって、今回の弁論にあたり当面注目されたのは、①裁判官が朝木に対する本人尋問を容認するかどうか②朝木の尋問を認めなかった場合、「もう1回やりましょう」という言葉どおり、この日で弁論を終結するのかどうか――この2点だと私は考えていた。ところが、裁判はやはり何が起きるかわからないということを改めて痛感させる展開となった。

 裁判官は開廷後、すぐに双方に対して新たに提出する書面の確認を行い、その上でこれ以上の主張があるかどうかを聞いた。先に聞いたのは被告に対してだった。すると被告代理人はこう述べた。

「(原告が今回提出した準備書面4は)今いただいたばかりで読んでいませんので、改めて反論したいと思います」

 これはまったく想定外の主張だった。ところが被告代理人の主張を聞いた裁判官は、原告に対しても「もうないですね。あるいは、まだいいたいことがありますか」と聞いた上で、最終的に「ではもう1回(口頭弁論を)やりましょう」と述べたのである。「この日で結審ではないか」と考えていた私の予想は大外れだった。ただ、裁判官は原告に対してか被告に対してかは明らかでないものの、念を押すようにこう付け加えた。

「次回で終わりですよ」

 裁判官は次回期日を指定し、閉廷となった。裁判官はこの日、前回朝木から出されていた尋問申請にはいっさい触れず、朝木の側も申請に対する裁判官の判断を確認することはなかった。

 前回口頭弁論からの経緯と合わせ、この日の裁判官の訴訟指揮をどう理解すべきだろうか。証人(本人)尋問が行われる場合には、通常以上の時間をとる必要があるし、尋問を希望する当事者に対して必要な時間等を確認するのが通常である。尋問の展開によってはあらためて書面の提出を求める場合もあるから、朝木の尋問申請を認めるのなら、この日の弁論の時点で「次回で終わり(すなわち結審)」と宣言することは考えにくい。

 またそもそも、裁判官は朝木に対する尋問にさえいっさい触れなかった。このことは、実質的に朝木の尋問申請を却下したに等しいと思われた。

 前回口頭弁論で尋問を申し立てた朝木が、そのことについてなんらの確認もしなかったことも意外な気がした。裁判官が触れなければ、自分の方から聞けばよかろう。なぜ積極的に聞こうとしなかったのか、これもまた不可解というほかなかった。

双方が準備書面を提出

 断定はできないものの、「記事を書いた朝木に事情を聞いてみる必要がある」と裁判官が判断したとすれば、朝木の尋問申請を無視するようなことはなかったのではあるまいか。

 本件記事は被告を「詐欺事件に関与した」と断定するものである。被告の矢野と朝木が責任を免れるためには、「山川は詐欺事件に関与した」とする事実あるいはそう信じたことの相当性を立証しなければならないが、彼らはこれまでに明らかな証拠をなんら提出していない。仮に裁判官が、本件記事にはなんらかの正当な理由、つまり真実性とまではいかなくても相当性があるのかもしれないと考えたとすれば、裁判官としてもそういう判決(すなわち原告を請求を棄却する判決)を書くためには相当の根拠を集めなければならないから、朝木の尋問申請を認めてもおかしくない。

 ところが裁判官は朝木の主張を無視する形で尋問申請を事実上、却下した。裁判官は、法廷で朝木の供述を聞く必要性があるとは判断していないということになろうか。裁判官はこれまでの双方の主張に基づいてそう判断したということになるが、問題は「山川が詐欺事件に関与したのはすでに明らかだから、尋問の必要はない」と考えたからなのか、「どうみても山川が詐欺事件に関与した根拠は認められないから、尋問の必要はない」と考えたからなのか――ということである。

 少なくとも、朝木が自分に対する尋問を申し立てた前回口頭弁論の時点では、裁判官はまだそれを認めるかどうかの最終的判断を下していなかった。すると裁判官が、今回の口頭弁論で事実上朝木の尋問申請を却下する判断をしたのは、前回口頭弁論のあと、つまり原告と被告の双方がそれぞれこの日の口頭弁論までに準備書面を提出したあとということになろうか。裁判官は口頭弁論までの間に双方の準備書面に記載された主張や証拠を検討し、その結果として、朝木の尋問申請を無視することにしたのではないかと推測できた。

 なお、裁判官が「次が最後」と通告した次回口頭弁論は、平成28年5月23日午後1時10分と指定された。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第9回
被告らの第3回口頭弁論までの主張

 被告の矢野側が朝木直子の本人尋問を申し立てた前回の口頭弁論から第4回口頭弁論までに、原告被告双方の間で準備書面のやりとりがあった。

 原告は口頭弁論1週間前の平成28年4月4日、裁判所と被告代理人に対して「準備書面(4)」を送付した。その内容は前回第3回口頭弁論までの被告の主張に対する総括的反論と、本件記事の名誉毀損性についての主張である。

 被告らのこれまでの主な主張は以下のとおりだった。



(第3回口頭弁論までの被告らの主な主張)

本件記事が記載した「詐欺事件」の存在は事実である。

原告山川は被害者に加害者Sの姉で詐欺の仲間でもあるMに対し、「Tさん(被害者)が一人暮らしになっちゃったのよね」などと、被害者の個人情報を漏洩した。その結果、SによるTに対する詐欺事件に発展した。これは結果的に、詐欺犯人を仲介し、事件に関与したということである。

筆者注=なお、第3回口頭弁論前に提出した準備書面で矢野側は、上記「個人情報」について当初は「被害者が一人暮らしをしており、相当高額の資産を持っている」との情報である旨の主張をしていたが、第3回口頭弁論において上記の「個人情報」のうち「相当高額の資産を持っている」との部分について口頭で削除を申し出たという経緯がある。)

「1860万円詐欺、元公明議員らが関与」「創価・元市議らが仲介して」「言葉巧みに、一般市民から、借りて1860万円を返さず」との見出しで本件記事が摘示しているのは「原告は詐欺事件に関与した」(原告の主張)というものではなく、本文中に記載している以下の部分、すなわち、

①「結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかった。」

②「元議員の立場で、貸金の仲介者のような役割を果たしながら、山川元市議は『知らん顔』」

 というものであり、上記記載は客観的真実と一致する。よって記事には真実性も相当性もある。

筆者注=被告らの上記主張によれば、被告らが主張する真実性・相当性の立証対象は上記①②についてであるということになる。)

④本件記事は「山川元市議は口では被害者の味方になってお金を取り戻すそぶりをしていたが、結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかった。」と記載し、批評しただけで、原告が直接的に詐欺を働いたと読み取れる箇所はない。よって名誉毀損は成立しない。



 矢野と朝木はこう主張し、第3回口頭弁論では新たに証拠として貸金被害者がSに対して貸金の返済を求めた民事裁判の和解調書および、和解成立後も返金がなされなかったためにSやMを告訴した際の告訴状、またその際に原告山川が被害者に協力して提出した「陳述書」(筆者注=原告は本件裁判でも陳述書を提出しているので、本件のものと区別するために告訴の際の陳述書を括弧付きとする)などを提出していた。

自らの首を絞める証拠

 ただ、矢野が新証拠として提出した告訴状には原告が事件に関与したことをうかがわせる記載はいっさいなかった。「陳述書」には原告がMに「Tさん(被害者)が一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことが記載されてはいるものの、和解成立後も原告が被害者に協力していた事実が記載されており、原告に有利な証拠のように思われた。告訴のために「陳述書」を作成したこと自体、むしろ被害者に協力したことを裏付けていよう。そんな原告を利するとしか思えない証拠を矢野と朝木はなぜ提出したのか、私には謎だった。

 しかしその後、矢野の主張をあらためて検討してみて、ようやくある結論にたどり着いた。告訴状は本件事件がたんなる貸金問題ではなく「詐欺事件」であると主張するためであり、「陳述書」は原告がMに対して「被害者が一人暮らしになった」と話したことを立証するためだったのだろう、と。

「被害者が一人暮らしになった」ことを話したことが「詐欺への関与」を疑わせると認定されるとすれば、上記の2つの要素をつなげ合わせると、「原告山川は詐欺事件に関与した」ということになるのである。

 理屈の上ではそうだが、現実には告訴状は警視庁に提出したものの受理されていないから、法律上、本件は刑事事件としては成立していない。また「一人暮らしになった」ことを話したことが「詐欺事件に関与した」ことになるといえるのかどうか。

 少なくとも矢野が提出した告訴状には、原告山川が詐欺に関与したことをうかがわせる記載はいっさい存在しない。被害者が「原告山川は詐欺に関与している」と認識しており、また被害者の代理人弁護士もまたそう判断していたなら告訴状にそう記載しただろうし、山川に「陳述書」を依頼することもあり得ないのではなかろうか。

 つまり矢野と朝木が提出した上記2つの証拠はいずれも、部分的に見れば矢野の主張にも一応の理由があると思わせるものであるのかもしれなかった。しかし全体を見れば、どうみてもむしろ原告が詐欺にはいっさい関与しておらず、むしろ被害者の側に立っていたことを証明するもので、これほど原告に有利な証拠はないように思えた。

 とすれば、原告が関与していないことを証明する証拠を、原告ではなく被告の方から提出したということだから、矢野と朝木は原告山川の主張を裏付けるために告訴状と「陳述書」を提出してくれたことになる。常識的に考えれば、彼らは彼らの主張を裏付ける証拠として提出した以上、そこに記載された内容を否定することはできない。

 自分たちの首を絞めるような証拠を矢野と朝木はなぜ提出したのだろう。木を見て森を見なかったということではないのだろうか。

(つづく)
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