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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

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万引き被害者威迫事件 第17回
記録されていなかった発言

『東村山市民新聞』の記事によって名誉を傷つけられたとして万引き被害者が矢野と朝木直子を提訴していた裁判で、東京地裁八王子支部は平成12年11月29日、矢野と朝木に対し連帯して100万円の支払いを命じる判決を言い渡した。その後、矢野と朝木は控訴したが平成15年7月31日、東京高裁が矢野らの控訴を棄却し、終結している(この裁判の詳細についてはあらためて書く機会があろう)。

 しかし、矢野と明代による被害者に対する威迫の事実関係については直接の争点ではなく、一審、二審とも判決文の中では触れられていない。矢野の側からすれば、敗訴はしたものの、威迫の点においてはわずかに、明代が万引き犯であると主張する側の傍証を否定する材料だけは残すことができたということになるのだろう。しかも矢野はこの裁判で、被害者の口から「矢野が来たのは2回」だったという供述を引き出し、矢野が提出した「会話記録」が正確であると主張できる言質を取ったかたちとなった。

 ところが一方、被害者は一貫して矢野が「『無実の人を訴えると罪になる』と言い残していった」と証言している。「行ったのは2回だ」とする矢野の主張と、会話記録には存在しない発言が「あった」とする被害者の主張の根本的な食い違いをどう理解すべきか。パート店員の証言が勘違いだったのか、その報告を受けた被害者の思い込みにすぎないのか。あるいは、そのどちらでもないとすれば、矢野の提出した反訳に偽造があることになる(矢野自身が4度の尋問で「会話記録は反訳のとおり」と供述している以上、たんなる誤りではあり得ない)。

 そこで私は、矢野が「正確」に反訳したと称するテープ(矢野がダビングして証拠提出したもの)によって、矢野反訳の正確性を検証してみることにした。「許さない会」裁判までは威迫発言の有無が直接的な争点ではなかったため、それまで誰もテープを聞き直すことによって反訳の正確性を検証したことはなかったのである。テープを直接聞くことによって、反訳の正確性だけでなく、平面的にしか再現できない反訳からはうかがい知れない言葉の調子や語気の強弱などといった、矢野と明代による「取材」の全体的な雰囲気も感じ取ることができるだろうとも考えた。

 私が店員との会話を録音したテープを聴いたのは平成14年10月のことである。同年10月3日、「許さない会」裁判で矢野が提出したものである。この日の尋問でやはり矢野は、会話は反訳のとおりであり、被害店に行ったのは2回であると供述している。では、実際にこの録音テープを聴いた結果はどうだったか。

 まず、矢野がいう1回目の訪問時の記録からみていくと、1回目については反訳のとおりだった(本連載第12回参照)。その口調も店員を責めるようなものとはあまり感じられなかった。しかし、その内容をみると、矢野が「失礼ですけど、どなた様ですか?」と聴かれた際、「ちょっと、取材」と答える様子は、やはり話をそらして名乗らなかったという雰囲気であることは否定できない。また、店に入った矢野の最初の問いかけである「こちらの方は?」という発言も、断定はできないものの、見方によっては、相手が被害者本人ではないことを矢野と明代が認識していたことを示しているようにも聞こえよう。なお、矢野がいう1回目の訪問時に明代が店の営業時間について「何時まででしたっけ」と聞き、「8時」までであることを確認していることにご注意いただきたい。

 矢野のいう2回目の訪問時の会話記録では、二人の口調とそれぞれの姿勢に若干の変化が感じられた。最初は矢野が口火を切るかたちで話しかけているのは1回目と同じだが、途中から明代が積極的、主導的に質問するようになり、口調も最初は穏やかだが、しだいに問い詰めるような調子に変化している。たとえば矢野が提出した会話記録の最後半の「お話ぐらいは聞いてるんじゃないですか? こういうことがあったという……」や「店長が『こういうことがあったのよ』ぐらいのことは……」という明代の発言には、「何も知らない」としか答えない店員に対するなにか苛立ちのようなものさえ感じられた。このあたりになると、矢野は詰問調になってきた明代の質問に割って入り、むしろ双方のなだめ役になっている。

 このしだいに高揚してきた感のある明代の発言の中に1カ所だけ明らかな「記録漏れ」があった。テープを聞くと、本連載12回目の※と※の間には次のような明代の発言があった。

「おかしな人たちですね」

 その口調は低く強く、どう聞いても店員を責めているようにしか聞こえない。続いて矢野が「へぇーっ」と、明代の詰問をなんとか中和しようとしたのか、小さく意味不明の声を上げている。

「どういう事情かわからないから取材に行った」という明代が、万引きの話は何も聞いていないという店員の話を聞いて、何度も確認するというのならまだわかる。しかし、店には店の事情というものがあり、店主がパート店員に万引き事件のことを話していなかったとしてもさほど不審なことではないし、店員が「聞いていなかった」ことについて仮に明代が不審を持ったとしても、いきなり「おかしな人たちですね」とまで飛躍し、非難する理由はあるまい。少なくとも明らかに冷静さを欠いた発言であり、被害店に対して明代が特別の感情を抱いていたと思われかねない発言である。だから矢野は、反訳で注意深く削除したのではないかと推測できた。

 つまり、明代が被害店に対して特別な感情を抱いていたということになれば、矢野がこれまで法廷で供述してきた「身に覚えがなく、どういうことなのかを確認するために行った」、すなわち中立的な立場で「取材に行った」とする趣旨の主張に大きな疑問符がつくことになる。矢野が意図的にこの発言を反訳から削除したのは明らかだった。この点について、私が作成した新たな反訳に基づいて行われた「許さない会」の尋問(平成14年11月28日)で矢野は、

「これはたぶん、発言がだぶっているので、十分に聞こえなかったので、反訳のときには起こしてないんだと思いますが、こういう部分があったとしてもおかしくないと思いますけども」

 と答えている。しかし、明代の語尾のあたりで矢野の「へぇーっ」という意味不明の声がわずかにかぶっているものの、明代の発言は明瞭に録音されていたのである。


(第18回へつづく)


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万引き被害者威迫事件 第18回
矢野は録音テープの編集を否定

 矢野のいう2回目、「午後8時前」に行ったとする会話記録の、正しく反訳された発言の中にも不自然な点がある。2回目の冒頭部分にある矢野の「終わりごろには来られるんですか?」という質問である。矢野の主張によれば、1回目に行ったとする「午後7時ころ」、矢野と明代は被害店が8時には閉店することを確認している。だから矢野と明代は、閉店まぎわの「午後8時前」にもう一度行ったと主張している。「午後8時前」とはすなわち「終わりごろ」である。

 その「終わりごろ」に行った矢野が、「終わりごろには来られるんですか?」と聞くだろうか。逆にいえば、実際に彼らが行ったのが「終わりごろ」ではなかったから「終わりごろには来られるんですか?」と聞いた、ということなら少しも不自然ではない。つまりこの発言は、矢野のいう時間帯が「8時前」ではなくもっと前だったことを示すものではないのか。

 パート店員の証言によれば、明代の最初の取り調べ当日、矢野と明代が被害店に現れたのは「午後5時20分頃」「午後7時頃」「午後8時前」の3回である。仮に事実がそうだとすれば、矢野と明代は午後5時20分に来て閉店時間を確認し、午後7時頃に来たとき、矢野の会話記録にあるようなやりとりをしたということなら、矢野の「終わりごろには来られるんですか」という質問は少しも不自然ではない。

 矢野が法廷に提出した録音テープはもちろんダビングされたものである。私が聞いたかぎりでは、明代の「おかしな人たちですね」という発言が記録から削除されていたこと以外に一カ所、プッと録音が途断したような不自然な音が入っていた。それが何の音なのかはわからないが、ダビングである以上、複数の声がかぶっていない箇所なら、マザーテープを停止させることである発言を消すことも不可能なことではない。

 もちろん、矢野は一貫して否定しているが、仮に彼らが3度(被害者は最後は矢野が1人で入ってきたと証言している)被害店に行っており、3度目に矢野が被害者に対する威迫と取れる発言をしていたとしても、その録音をダビングの際に削除することは、会話の途中と違ってきわめて容易なことは誰が考えても明らかである。2回目の会話が終了した時点でダビングも終了すればいいだけなのだから。いずれにしても、少なくとも明代の「おかしな人たちですね」という発言が「会話記録」から削除されていたという点において、矢野の提出した「会話記録」の信用性は大きく揺らいだことだけは事実だった。

 これらの疑問について矢野はどう応えたのか。平成14年11月28日に行われた「許さない会」裁判の反対尋問における矢野の供述をみよう。

「許さない会」代理人  このテープなんですけれども、一連のつながりのテープとして反訳を出されました。そのテープ自体、ダビングはともかく、テープを編集しておりませんか。

矢野  そういうことありません。お渡ししたテープそのものが一連のもので、途中で止まっておりますけれどもね、一連のテープですから、編集するようなことはないですね。

代理人  途中では止まってるというのは、1回目訪問、2回目訪問の間に止まってるということですね。

矢野  そうですね。1時間待ちましたから、1回帰ったときに、それは止めているということですね。

代理人  お店に行って会話してる途中では、テープを止めたということはありませんか。

矢野  いや、止めてないですね。それは専門家に鑑定していただければ、すぐわかることだと思いますよ。

代理人  ……あなた方がいう2回目に行ったときの会話(矢野が提出したテープに基づいた新たな反訳)の中に、「録音テープ途断の跡」というふうに書いてあるんですけども、そこでテープが1回切れてると、で、またスタートしてるというふうに言ってるんですが、記憶ありません?

矢野  それは、だから、鑑定書でもお出しになればいいと思いますが、まだ帰ってきてないんですかって聞いてますから、8時少しぐらい前に行ったときに録音をしていたものですから、途中で止めたということはないですね。

代理人  テープ自体はいじってないと。

矢野  そうですね。

 テープ途断の跡については、そう聞こえるにすぎないのかもしれないし、矢野がダビングの段階でテープを編集したと断定できる証拠はない。しかし、矢野が提出した「会話記録」の時間帯が違うということになれば、すなわちそうすることによって矢野が3回目の訪問時の矢野の発言をなかったことにしようとしたとすれば、テープが「一連の」ものであり、テープの改ざんがなかったのだとしてもなお、矢野が「会話記録」を改ざんしていないということにはならない。


(第19回へつづく)


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万引き被害者威迫事件 第19回
矢野自身が証明した「会話記録」の作為性

「許さない会」代理人による尋問は続いた。次に代理人がテーマとしたのは、矢野が2回目、「8時前」に行ったとする発言の中で、閉店まぎわであるにもかかわらず「終わりごろには、来られるんですか?」と質問していることの不自然さについてである。少し長いが、非常に興味深い尋問なので、「市民派」を自称する東村山市議会議員、矢野の生の供述をノーカット、編集なしでじっくりご覧いただこう。

代理人  前回、供述の中で、店が8時までだというふうに聞かれたんですね。

矢野  そのとおりです。

代理人  で、8時少し前なら帰ってるんですかというふうに聞いて、それで8時少し前に行ったんだとおっしゃいましたね。

矢野  そのとおりです。

代理人  あなた方の反訳だと、正確にいうと、終わりごろには来られるんですかと聞いてる。

矢野  そうですね、たぶんそういう聞き方だったと思いますね。

代理人  それに対して、店員が、ええーちょっとはっきりしたことはわからないんですけど、というふうに答えてる。

矢野  そういう会話の前に、8時ごろというのが、どっかでやりとりで出てると思いますが。

代理人 「何時まででしたっけ?」と朝木さんが聞いて、「8時までです」と。

矢野  そうですね。

代理人  そうすると、終わりごろには来られるんですかと聞いて、まあ、はっきりしたことはわかんないんですけどと。

矢野  どっかに発言があったと思います、店員の方が、いつごろ帰るのか。

代理人  示しましょうか。

矢野  この部分ですね。1ページの下から4行目に、朝木さんが、経営者の方がここにいらっしゃるときもあるんですかと聞いたときに、店員が、ほとんどおりますけれどもちょっと用事で出かけておりますというやりとりがあったので、で、8時に終わるということですから、ちょっと用事で出ているけれども8時という終わりの時間には帰ってくるっていう判断をしたんだと思います。

代理人  あなたが、「終わりごろには、来られるんですか?」と言ってますね。

矢野  ええ。

代理人 「ええー、ちょっとはっきりしたことはわからないんですけど」というふうに答えてるね。

矢野  はい。これはもう店主に連絡が行ったんだろうというふうに判断をあとでしましたですね。

代理人  あとでね、なぜ店員がこういうふうにいうのかなということに関して。

矢野  はい。

代理人  この段階の話を聞いてるんだけど。

矢野  その段階も変だなと思いましたけどね。言葉濁してますから。

代理人  で、前回の尋問見ると、終わりごろには来られると聞いたんで、それで8時前に行ってみたんだと。

矢野  そのとおりです。

代理人  そうすると、終わりごろには来られるんですかというふうに聞いて、それでその次にもう1回行ったというふうにならないんですか。

矢野  どういうふうな御質問なのかちょっと理解しにくいんですが。

代理人  終わりごろには来られるんですかというふうにあなたは聞きましたね。

矢野  そうですね。8時というのがありましたから。

代理人  で、それを聞いたんで、前回の証言では、聞いたんで8時前にも行ってますというふうにおっしゃったんですよ。

矢野  都合2回行ったうちの最初は7時前後かというふうに答えてると思うんですが、そのあと終わりごろ、つまり8時の終業よりも少し手前で行ったんではないかということで2回。

代理人  2回とか3回とか聞いてるわけじゃなくて、あなたは、話の流れとして、お店の終わりごろには来られるんですか、来ますと。で、それを肯定的な返事というふうに受け取ったので、8時少し前にも行きましたと。

矢野  そうですよ。それは前回の供述どおりです。

代理人  そうすると、終わりごろには来られるんですかというふうな質問は、終わりごろに行った前のときに聞いた質問じゃないの。

矢野  ほとんど質問の意味が理解できませんですね。2回行って、7時前と8時前に行ったというだけのことですから、それ以外行ってないんで。

代理人  話の流れを聞いてるの。

矢野  流れはそこに反訳してるとおりですよ。続きはちゃんとなってるじゃないですか。

代理人  もう1回示します。あなたは終わりごろには来られるんですかというふうに聞いてるわね。

矢野  ありますよ。

代理人  ということは、このとき終わりごろだったら、こんなこと聞かないでしょう。

矢野  全く質問の趣旨がわかんないですね。終わりごろに、つまり8時が終業時刻だとお聞きしてるから、終わりごろに行ったのに、終わりごろには来てないんですかというふうに確認したのはおかしくないじゃないですか、全然。

代理人  終わりごろに来てないんですかというふうに確認するんだったらおかしくない。あなたはそういうふうに聞いてないから確認してる。

矢野  全然そういうふうには取りませんよ。

代理人  もう質問の趣旨をわかったようだから。

矢野  わかってないですよ、全然。まるで通じませんですね。

代理人  私の質問の趣旨は、あなた方が2回目に行った、その2回目は終わりごろに行ってなくて、7時ごろに行ってるから、終わりごろには来られるんですかというふうにこのときに聞いたんじゃないかですかと。

矢野  予断が入ってて、質問の前提が間違ってるじゃないですか。なんで7時ごろなんですか。2回目は8時前ですから。

代理人  だから、そのときに、終わりごろには来られるんですかというふうにあなたが聞いてるから、僕は聞いてるの。違うなら違うっていえばいい。

矢野  8時前に行ったときの会話でしょう、それ。つまり8時前というのは、8時が終わりですから、終わりごろにはもう帰ってると思って行ったのに、いないみたいだから、終わりごろには来てないんですかというふうに確認しただけでしょう。前提がやっぱ違うんじゃないですか。

代理人  前提がもちろん違うんですよ。だから、御質問してるわけですよ。

矢野  根拠が不明ですよね、8時前じゃないという。

代理人  いいでしょう、話はわかってくれたようだから。

矢野  いや、全然理解してませんですよ。

「終わりごろには、来られるんですか?」という質問の不自然さについて矢野は最後まで認めようとはしなかった。しかし矢野はこのとき、自ら反訳した「会話記録」の作為性を自分自身の供述によって証明してしまったことにまだ気づいていないようだった。


(第20回へつづく)

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万引き被害者威迫事件 第20回
自ら発言内容を変えてしまった矢野

 前回紹介した尋問の流れをみると、当初、矢野が弁護士の質問の意図がどこにあるのかよくわからなないまま答えていたが、途中からその意図に気づいた様子がうかがえる。閉店まぎわに「終わりごろには来られるんですか?」と聞くことの不自然さについて、その内容に踏み込まれたくない矢野はなんとか「行ったのは2回」であると、話題を回数にすり替えることで会話記録が事実であることを主張しようとした。

 しかし、弁護士からはっきりと「終わりごろには来られるんですかというふうな質問は、終わりごろに行った前のときに聞いた質問じゃないの」と追及されると、「ほとんど質問の意味が理解できませんですね。2回行って、7時前と8時前に行ったというだけのことですから、それ以外行ってないんで」と、やはり発言の内容に触れられることを避けた。意味明瞭な質問を受けた矢野が、ここではなぜ「2回行って」などと答えるのか。

 弁護士の一連の質問の意図はいうまでもなく、「終わりごろには、来られるんですか?」という質問が「8時前」ではなく「7時ごろ」の話であり、「8時前」には矢野が提出した会話記録に残されていない発言があったはずだというところにある。だから、矢野にとってこの質問がなされた時間帯は「8時前」でなくてはならない。矢野がここで「理解できませんね」といいつつ「2回行って、7時前と8時前に行ったというだけのことですから」などと反論を試みているのは、弁護士の質問の意味を十分に理解したからにほかならなかった。

「もう1回示します。あなたは終わりごろには来られるんですかというふうに聞いてるわね」

 再度、弁護士がこう詰め寄ると、矢野が「全く質問の趣旨がわかんないですね」といいながら、自分の質問が不自然ではないことについて主張したのも、弁護士の質問の趣旨を理解していたということである。

 しかし矢野は、自分の質問の合理性を認めさせようとするあまり、自分の発言を言い換えてしまった。矢野は「終わりごろには、来られるんですか?」という明らかな疑問文を、「終わりごろには来てないんですかというふうに確認した」というのである。「来ていないんですか」なら現在、つまりそう「確認」したのが「8時」といえるかもしれない。しかし矢野が録音し、反訳した「会話記録」に残っている発言は「来られるんですか?」なのである。「来られるんですか?」が現在ではなく未来について尋ねていることは明らかで、だから矢野は、あくまで現在のことを聞いていることにするために「来ていないんですか」へと自らの発言を変えてしまったということである。

 言い換えれば、矢野は自分の発言の文言を変えなければ、「終わりごろには、来られるんですか?」という「8時前」の発言の合理性を説明できないところまで追い詰められていたということだろう。この事実こそ、2回目の訪問が「8時前」ではなかったことを裏付けている。では、矢野のいう「2回目」の訪問とは何時のことなのかといえば、録音テープが一連のものであるという事実から、また会話の流れからしてもそれは実際には「午後7時ころ」だったという結論になる。矢野は「会話記録」の時間を、それぞれ「午後5時20分頃」を「午後7時ころ」に、「午後7時ころ」を「午後8時前」にすり替えた上で、裁判所に証拠として提出したのである。

 矢野はなぜ訪問時間をずらす必要があったのか。1つは、取り調べの終了からわずか1時間後にもう被害店に行ったのでは、「身に覚えがない」といっているにもかかわらずあまりにも早すぎる、それでは明代が犯人であることがバレかねないと考えたためであり、もう1つ最大の目的は、被害店の閉店時刻は8時だから、それ以降は行きたくても行けない、2回しか行っていないと主張するためである。そうすることよって3回目の訪問がなかったことにし、矢野が言い残した「オーナーに、無実の人を訴えると罪になると伝えてください」という発言がなかったことにするためにほかならなかった。

 矢野が法廷に提出した「会話記録」は時間がそっくりずらされているという点において偽造であり、録音テープは仮に提出の範囲では編集されていないとしても、3回目の訪問時の記録がすべて削除されているという点において偽造ないしは変造されたものといわれても仕方あるまい。

 私は尋問を終えて法廷を出ようとする矢野に近づき、今日の供述内容について確認しようと声をかけた。すると矢野は、私の質問も聞かず、凄味をきかせてこういうと、朝木とともに法廷から出て行った。

「いくら追及しても、何も出てこないぞ」

 何も出てこないかどうかは別にして、これはいったい「明代は万引きの濡れ衣を着せられたあげく、他殺に見せかけて殺された」と涙ながらに主張し、「万引き犯の汚名を晴らす」と言い続けてきた「被害者」の元同僚のセリフだろうか。明代が無実で、矢野もまたアリバイ工作と威迫行為に加担していないのなら、その事実を誠実に訴えればいいだけではないのか。そもそも「何も出てこないぞ」などというセリフが何の抵抗もなく真っ先に口をついて出てくること自体、矢野がすでになにか常軌を逸した状態にあることを示しているように思えてならなかった。


(第21回へつづく)


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久米川駅東住宅管理費等請求事件
 最近では自己の議員辞職を求めた市民らを名誉毀損で提訴するなど、これまで多くの東村山市民を相次いで提訴してきた東村山市議(草の根市民クラブ)の矢野穂積が、今度は自分の住む久米川駅東住宅の管理組合から管理費等(計76万2000円)の支払いを求めて提訴されていることが明らかになった。

48カ月の間1度も支払いはなし

 久米川駅東住宅管理組合が管理費等の支払いを求めて提訴したのは矢野穂積と、同居する高野博子(認可保育園「りんごっこ保育園」設置者=矢野と高野は1つの部屋の所有権を50%ずつ保有)及び2名の区分所有者。組合によれば、矢野は管理組合が発足した平成15年10月以降平成19年9月までの48カ月間(訴訟での請求範囲)、月額7000円の管理費及び長期修繕積立金1万円の計1万7000円を1度も支払っていない。

 この管理費及び長期修繕積立金の額が議決された管理組合総会が開かれたのは平成15年9月21日。総会は適法に成立し、管理費等も出席者の圧倒的多数で決議されている。なお矢野は、この総会の招集自体が役員らによる一方的なものだとして総会の延期を申し立て、総会には出席しなかった。通常、総会で決議された以上、仮にその議案に賛成しなかったとしても決議に従うのが民主主義のルールであり、現実に336名の区分所有者のうち矢野と高野ら4名を除くすべての住人が滞りなく管理費等を納入している。

 矢野は11月13日開かれた口頭弁論においてこう主張した。

「管理組合は非民主的な運営が行われていて信用できない。管理費等の支払い意思がないわけではなく、管理組合の理事長が交代し、運営が改善されれば支払う意思はある。その証拠に平成15年10月以降、1万3000円を法務局に供託している」

 矢野(高野の分も代表)とともに出廷したもう1人の滞納者も供託しており、この住人は「理事長が交代すればすぐにでも支払う」とし、「このような裁判を起こされること自体、まったく時間と労力の無駄だ」などと主張した(1万7000円の管理費等に対してなぜ矢野が1万3000円しか供託していないのか、その根拠は不明だが)。

「供託」とは、支払いの意思を示しているにもかかわらず、相手方がこれを拒否したり、支払いの相手が不在である、誰に支払ってよいかわからないなどの場合に、一時的にその金を法務局に預かってもらう、という制度である。相手方は一定の手続きをすれば供託金をいつでも受領することができる。ということは、管理組合の側は矢野からの管理費の受領を拒否しているということなのだろうか。

 ところが管理組合の理事に確認すると、実情はそうではなかった。管理組合は管理を委託している公社に矢野らに対する督促を依頼するとともに、管理組合自身も内容証明を送付するなどして支払いを促したが平成15年10月以降現在まで、矢野からももう1人の住人からもただの1度も支払いの意思表示を受けたことはないというのである。事実とすれば、矢野の供託の根拠もあやしいものということになろう。

すでに最高裁が総会決議の適法性を認定

 矢野は管理費を法務局に供託する一方、組合の決議から約2年後の平成17年8月、「総会の成立および決議は無効」などとして管理組合を提訴していた(つまり、この提訴理由が管理費不払いの理由に共通するものとみられる)。矢野は総会の無効などを争ったその裁判で、組合側は総会の開催通知を団地外居住者に送付していないとか、委任状に不正があるとか、あるいは出席集計が捏造であるとか、また管理費および長期修繕積立金の額には根拠がなく、管理委託会社の選定にあたっても理事長と利害関係のある会社を選んだ上、勝手に高額の契約を結び、住民の管理費を浪費しているなどと主張していた。

 しかし東京地裁八王子支部は、総会の成立を認め、総会での決議事項についても適法に議決されたものと認定して矢野の主張をことごとく排斥している(東京高裁、最高裁もこの判断を追認)。したがって、提訴された矢野が管理費等の支払いをあくまで拒んだとしても矢野の主張が容認される可能性はきわめて低く、話し合いによる和解にせよ判決にせよ、最終的に矢野がこれまでの供託金と不足分を加えた正規の管理費等を納めさせられることになるのは時間の問題だろう。ただ、4年間にわたり管理費等を支払わず、総会の決議をめぐって自ら裁判を起こし、敗訴してもなお自ら支払おうとはせず、ついには裁判という最終手段によらなければ管理費等の回収ができないこと自体、きわめて異様というほかない。

管理組合相手に4年で9件の争訟

 矢野穂積はこれまで多くの東村山市民を提訴し、法廷に引きずり出してきた。その件数は50件を超えるが、ここ久米川駅東住宅も例外ではなかった。今回の取材の過程で、前述の管理費等の決議が無効として提訴した裁判を含め、矢野が東住宅に入居した平成15年以来平成19年にかけての4年間に、管理組合を相手に9件もの争訟を起こしていたことがわかった(うち民事調停が3件)。このうち6件の裁判ではすべて矢野の主張が退けられているが、その中には、有線テレビ(JCOM)の導入によって受信障害が発生したから原状回復せよなどと請求、ところが管理組合とともに訴えられた会社側が調査を申し入れたところ矢野はこれを拒否したという不可解な事件もあった。

冒頭荒れた管理組合総会

 平成15年の管理組合発足以来、4年間で9件もの争訟を起こしてきた矢野は、団地の維持・管理についてもまったく協力していない。たとえば排水管清掃は全戸が参加しなければ意味がないが、矢野だけは清掃をさせず、共用部であるベランダの防水工事もさせなかったと聞く。そんな矢野が、理事長が交代したからといって延滞している管理費等をすんなり払うのかどうか。

 その新理事長の承認などを行う管理組合総会はさる11月25日に開かれ、矢野も今回は出席した。しかし総会は冒頭、荒れたものとなった。矢野がいきなり「質問がある」などとして議長の資格について異議を唱えたのである。1人の理事が「あなたに発言は許されていない」と一喝してその場は収まったが、今度はもう1人の滞納者が議長のマイクを奪い、理事の制止も聞かず裁判批判を始めたため、やむなく理事の1人が引きずり出し、ようやく自席にもどった。この間矢野は自席からしきりに野次を飛ばしていたというが、矢野に対してはこんな罵声も浴びせられた。

「文句があるなら管理費を払ってからにしろ」

 通常の総会ではめったに見られない光景だろう。その混乱の原因を作った側の1人が市会議員の矢野であることは明らかだった。しかし総会は、途中、矢野の長い質問があったものの、無事新理事長は承認され、昼前に終了した。

 裁判で矢野は「運営が民主的なものになれば支払う」などと主張しているが、管理組合に対して4年間に9件もの争訟を起こし、受信障害があるといいながら調査を拒み、まったく無関係の少年を警察に突き出すような人物の総会出席を拒まず、質問さえ許した管理組合の姿勢こそきわめて寛容かつ民主的というべきだろう。新理事長が選任されたことで矢野は滞納した管理費等をすんなり払うのだろうか。12月12日に予定されている弁論準備手続の行方が注目される。

(宇留嶋瑞郎)


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