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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

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りんごっこ保育園食中毒騒動退園事件 第1回
りんごっこ保育園食中毒騒動退園事件                     
                                                      
                                             宇留嶋瑞郎

矢野が保健所の立ち入りに難色

 平成18年11月13日、東京・東村山市にある個人立の認可保育園、「りんごっこ」保育園(高野博子施設長)で「保護者のみな様へ」――「にせ食中毒事件」のご報告――と題する印刷物が配布された。印刷物には次のように書かれていた。

〈11月10日午後、当園の2才児クラスの保護者の方が、昭和病院で園児の診察をうけた際、担当医師に、「りんごっこ保育園で、昼食後2、3時間して園児の半数が嘔吐した」と全く事実に反することを伝えたため、そのまま信じた医師が保健所に通報し、保健所から午後7時すぎに担当者が見えました。
 事実を確認し、食中毒で吐いた事実がないことがわかり、問題ないとして保健所はひきとりました。〉

 ここに書かれているのは、2日前の11月10日、「りんごっこ」保育園で食中毒が疑われる事件が起きたこと、しかし立ち入り調査した保健所が「問題ない」と判断した、ということである。この印刷物が配布されたのは月曜日。つまり、この印刷物は土日の間に作成されたもので、園側は休日返上で、きわめて迅速に対応しようとしていたことがわかる。

 11月10日午後、帰宅した1人の園児が嘔吐の症状を示していた。このため保護者は午後4時ころ、小平市にある公立昭和病院の小児科で診察を受けた。子供の症状と「昼食後2、3時間して園児の半数が嘔吐した」という保護者の説明から、医師は食中毒の疑いがあると判断、午後5時ころ、小平保健所に通報した。食品衛生法27条には〈食品、添加物、器具若しくは容器包装に起因して中毒した患者もしくはその疑のある者を診断した医師は、直ちに最寄の保健所長にその旨を届け出なければならない〉と規定されている。医師は法に従って通報したのである。

 通報を受けた保健所はただちに園に電話をしたが、すぐには連絡が取れなかった。3度目の電話でようやくつながり、午後6時50分ころ、保健所は食品衛生担当3名、感染症担当1名の計4名で園に立ち入り検査に入った。

 園で待っていたのは施設長の高野博子、看護士2名、栄養士2名、ほかに高野と同居する東村山市議(「草の根」市民クラブ)で園の「運営委員」を名乗る矢野穂積と、同じく「草の根」の朝木直子だった。保健所の立ち入り検査は法律に基づいた強制力のあるもので通常、その検査に立ち会い、対応するのは施設長である。ところがこの検査で主導的に対応したのは施設長ではなく、なぜか矢野だった。しかも矢野は当初、「園児の半数が嘔吐した事実はなく、なぜ立ち入りの必要があるのか」と立ち入り検査を拒否したという。

 保健所の立ち入り検査は、園児の症状が食中毒によるものかどうかを判断し、仮に食中毒だった場合には、何が原因で、どうすれば再発を防止できるかを明らかにするためのものである。検査の結果、食中毒でないことがはっきりすればそれに越したことはない。要は子供の安全を確保することが最大の目的なのだし、「疑いあり」とされた以上、園としても子供の安全を最優先し、検査が迅速に行われるよう協力すべきだろう。保健所の立ち入りに対して園長の高野ではなく矢野が対応したというのみならず、矢野が当初は検査を拒否したこともまた、通常の認可保育園ではあり得ないことだった。

 仮に検査の結果、食中毒であることが判明した場合には数日間の業務停止という事態も想定できる。そうなれば当然、「りんごっこ保育園で食中毒を出した」という事実が公表され、園の信用の低下につながることは避けられない。土地と園舎の建設代金1億3000万円を全額融資でまかない、約8000万円の補助金の中から年間1000万円近くを返済に充当(その半分は高野の給与分)しているという事情からしても、園の信用低下から、最悪の場合、認可取消という事態になれば、矢野にとっても重大な死活問題となる。矢野が最悪の事態を想定していたとしても不思議はなかった。

 もちろん保健所は、医師から「食中毒の疑いがある」と通報されれば、立ち入り検査をしなければならない。その検査は本来、サンプル分析や厨房付近を中心とした拭き取り調査分析を行う場合と事情聴取のみで終わる場合がある。りんごっこ保育園のケースでは、小平保健所は最終的に看護士などから事情を聴取したのみで引き上げ、「食中毒が発生している可能性は低い」と結論づけたのだった。

「意図的な虚偽」と断定

 冒頭に紹介した印刷物の記載は、この部分だけなら、2日前にあった食中毒の疑いによる保健所の検査とその結果を報告したもののようにもみえる。しかし、高野施設長が休日返上で作成したこの印刷物の目的は別のところにあった。印刷物は次のように結ばれていた。

〈園との信頼関係を根底から否定するあまりにも悪意のあるデタラメ情報を、当園の園児の保護者が行ったとは、信じられない思いです。……今後、このような事件が再発しないよう、必要な措置と対策を行うことにしております。〉

 ここまで読めば、この「保護者のみな様へ」と題する印刷物配布の目的が、食中毒騒ぎが実はそうではなかったとして保護者を安心させようとするものではなく、1人の保護者が意図的に「デタラメ情報を伝えた」結果(「悪意のあるデタラメ情報を、当園の園児の保護者が行った」)、「ニセ食中毒事件」が発生した、ということを伝えようとするものであることがわかる。最後の「このような事件」とは、保健所が立ち入り検査に入ったという事実ではなく、保護者が「悪意のあるデタラメ情報を流した」という「事件」のことなのである。すでに園の側からみれば、保健所の立ち入り検査という事実が、「悪意ある保護者」によって生み出された「捏造事件」へと変質していることになる。

 印刷物の最後に記載されている〈今後、このような事件が再発しないよう、必要な措置と対策を行うことにしております。〉という文言もまた、「園児が嘔吐するような事態が起きないよう園側も注意する」という趣旨ではもちろんない。「保護者が『デタラメ』情報を流すような事件が起きないような措置をとる」ということなのである。

 この印刷物は「事件」の翌日から翌々日にかけて作成された。すると金曜日、保健所の検査終了後から土日にかけて園はこの保護者を調査し、保護者が医師に、「意図的に嘘の情報を伝えた」という事実を確認したのだろうか。平成18年12月13日に開かれた「りんごっこ保育園設置者の資質と特定議員の関与に関する調査特別委員会」での東村山市保健福祉部による経過説明では、「保護者の側が嘘をついた」などという報告はいっさいなされていない。

 保育所というのは通常、共稼ぎであるなど家庭で子育てができない事情にある保護者がやむを得ず昼の時間帯、子供を預ける施設である。子育て支援事業として、とりわけ「りんごっこ」のような認可保育所には国や都、それに自治体が補助金を出している。保護者は自治体の窓口に保育所への入所を申請、自治体は保護者の年収などを審査して入所児童を決定する。つまり、自治体が子供を預かり、その保育を委託するというのが認可保育所制度なのである。

 しかも、東村山市においても認可保育所に入りたいが入れない、いわゆる待機児童は毎年数十人にのぼっている。「デタラメ情報を伝えた」と断定されたこの保護者も、市の審査を受けて入所を許されているのであり、そのような保護者がわざわざ医師に「デタラメ情報」を伝え、保育所を窮地に追い込むようなことを企てるだろうか。この保護者は、嘔吐する子供が心配という一心で病院に連れて行き、聞かれたことに答えたというにすぎず、仮にその内容に事実と異なる部分があったとしても、それが「意図的」だったとは普通では考えられないし、普通の施設長ならそのような発想もしない。

 しかし、「りんごっこ」保育園では、どんな根拠があってか、この保護者が意図的に「デタラメ情報を伝えた」と断定したということだった。この印刷物には当事者の実名は記されていない。しかし、園内に配布された印刷物なら、それが誰であるのかはすぐに判明し、またたく間に園内に噂は広まろう。もちろん、これを見せられた当事者の心中がどんなものだったかについては、もはや多言を要しまい。

(第2回へつづく)


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りんごっこ保育園食中毒騒動退園事件 第2回
すぐに転園希望を提出した保護者

 さて、当事者である保護者に対して「デタラメ情報を伝えた」と決めつける一方、平成18年11月13日11時30分ごろ、矢野は昭和病院を訪れている。高野博子、朝木直子も同行した。矢野は医師が保健所に通報したことについて2時間にもわたり繰り返し非難した。これに対して病院側は「法に従って行動しただけで、病院にはなんら落ち度はない」とする説明を繰り返したという。その間、矢野は「当事者(医師)を出せ」とする趣旨の要求もしたが、医師は勤務中であり、病院側はこれを拒否した(矢野らはやりとりの一部始終を録音していた)。

 11月13日といえば、すでに保健所が一応の結論を出したあとである。にもかかわらず、なぜ矢野は病院にわざわざ出向いたのか。病院(医師)に非を認めさせたかったのか。矢野の目的は判然としないが、矢野は「次の議会質問で取り上げるからな」と、脅しとも取れる捨てぜりふを残していった。対応した職員は矢野について、きわめて特異な人物であるという認識を持ったという。

 この日の午後、東村山市保健福祉部でも動きがあった。高野施設長から「デタラメ情報を伝えた」と決めつけられ、非難された保護者が転園希望を提出しに訪れたのである。保護者はその際、窓口の担当者に11月10日の出来事についても話したが、その中には保護者が矢野からいわれた内容も含まれていた。ただし、保健福祉部としては一方当事者の話であり、施設長の高野からはなんらの説明もしてもらえないため、保護者の話を客観的事実とは確認できないという判断だった。では、この保護者はなぜ転園を希望したのか。

 この点について保健福祉部は「家庭の事情」としか説明していない。しかし、転園と退園とでは背景事情は大きく異なる。退園なら子供を保育園に預ける必要がなくなったものと考える余地もあるが、転園とは今も保育所に子供を預けなければならない状況になんら変わりはないということを意味する。

 さらにこの保護者の転園希望提出に至る具体的な事実背景、つまり転園希望の提出が11月10日の出来事から土日を挟んだわずか3日後と、どうみても急なものであること、またこの日園内で配布された印刷物の内容からすれば、保護者が医師に「園の半数が嘔吐した」と説明したことについて高野から責められた可能性が高いことなどから推測すれば、この保護者は「りんごっこ」保育園の本質を知り、この保育園にはもう1日たりとも子供を預けたくないと考えたとみるのが自然である。

 実は、保健所が検査に入った翌日の11月11日、保健福祉部長は矢野から前日の件で「報告」を受けている。部長によれば、矢野が「保健所が入ったが食中毒はなかった。(保護者が)デマを流しているので園としては困っている」といったのに対し、部長は「月曜日からの保護者への対応と病院へ行かれた保護者のケアをしっかりやってください」と伝えたという(なおこの際、部長は矢野からの「報告」を正式な報告とは受け止めていない。本来、その報告は施設長である高野自身がしなければならないなのである)。

 しかし、矢野にとって「保護者への対応」と「病院へ行った保護者のケア」とは、騒ぎが1人の保護者の「悪意のあるデタラメ情報」によるものと決めつけることにほかならなかった。そこには子供を思う母親の気持ちに対する配慮などみじんもない。ちなみに、この保護者が転園手続きをした翌日にはもう1人、別の保護者が「転園」手続きを行っている。その保護者は高野作成の「保護者のみな様へ」を市の窓口に持参した。少なくとも保護者が、その内容に賛意を示したという話は聞かない。

 病院に行った保護者が転園希望を出した1週間後、この保護者の本当の転園理由をうかがわせる保育園の印刷物が再び配布されている。印刷物には次のように書かれていた。

〈園の顧問弁護士さんのお話では、事実に反することを言って保育園の業務を混乱させたり業務停止させようとする行為は「偽計業務妨害」という犯罪にあたるということです。〉

〈園長の諮問機関の学識経験者等による「運営委員会」が開催され、この問題を教訓にして「園児の保護者が虚偽事項を申告などして園……の信用を傷つけた場合には退園勧告ができる」とするよう「意見具申」がありました。〉(筆者注=ここにいう「運営委員」とは矢野と朝木のことである)

 まさに矢野と高野にとって、「偽計業務妨害」と「退園勧告」の両方に該当するのが転園手続きを行った保護者であるということになる。「虚偽事項を申告などして園の信用を傷つけた場合には退園勧告ができる」というのだから、この保護者の場合もなんらかの形で「退園勧告」がなされた可能性がないとはいえまい。道義的のみならず制度上も、保護者が自治体と契約し、自治体が各園に保育を委託するという認可保育園制度において、園が独自に保護者に対して「退園勧告」ができるのかどうか。保健福祉部は「退園勧告はできないものと理解している」と答えている。

「知らねーな」とトボけた矢野

 高野から「悪意のあるデタラメ情報を流した」と決めつけられた保護者の転園理由が今回の事件にあったとすれば、この保護者に対する矢野と高野の対応に原因があったとみるのが自然だろう。だとすれば、転園の人数にかかわらず、「りんごっこ」保育園では食中毒とは別に、より重大で深刻な新たな事件が発生していたということになる。

 この件について私は平成18年12月13日午後4時20分ころ、「運営委員」である矢野に直接取材を試みた。以下は、矢野とのやりとりである。

――退園者が出たんですって?

矢野  知らねーな。

――もう公知の事実ですよ。

矢野  なんでお前がそんなこと知ってるんだ?

――委員会で報告があったんですよ。どうしたんですか?

矢野  お前には関係ないだろ。(東村山市に)税金も払ってないくせに。

 矢野はそういって話をそらし、決して核心に近づけようとはしなかった。このやりとりは矢野の隣で朝木直子が録音していた(会話を録音するのは彼らの習性)。では、このきわめて短い取材でわかったことは何か。

 まず、「運営委員」として今回の一連の事件のすべての局面で前面に出てきた矢野は、病院に行った保護者が転園したことについて「知らねーな」と虚偽の回答をした。それは矢野自身の「誰から聞いた」という反問からも明らかである。

 矢野はなぜ、知らぬフリをしようとしたのか。最初の園の印刷物の内容が事実で、矢野(=高野)の側に正当性があるのなら、なにも「転園の事実を知らない」とまで答える必要はあるまい。印刷物にあるとおり、「悪意のあるデタラメ情報を流した」といえばすむ話である。つまり保護者の転園に関して、矢野にはなにか知られたくない事情があるということではないか。

 その事情とは何か。矢野が昭和病院に対しても医師に対しても執拗に抗議し、非難している事実、2つの印刷物の記載内容、保護者が実質的には立ち入り検査の翌日に転園手続きをしている事実、矢野が転園の事実を「知らねーな」とごまかそうとした事実――を積み上げれば、矢野あるいは園側が保護者に対し転園を決意させるに至るような発言をしたのではないかと推測することに必ずしも合理性がないとはいえまい。

(第3回へつづく)


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りんごっこ保育園食中毒騒動退園事件 第3回
なぜか直接の説明を拒んだ高野博子

 一連の経緯について認可権者である東京都はどう考えているのだろうか。万が一、園側が保護者を退園に追い込んだとすれば認可取消にも匹敵する重大な事実ではないかと私は考えていた。11月30日、東京都に見解を聞くと、担当者はこう答えた。

「事実を確認していないので回答できない」

「では、東村山市に事実を確認の上、回答願いたい」というと、12月4日、担当者から電話があった。

「東村山市もまだ事実関係を把握していない。事実確認には時間がかかりそうなので、回答にはしばらく時間をいただきたい」

 12月7日午後5時前、私は再び東京都に電話してこういった。

「今回の保護者の退園の件は、高野は市の調査には応じない可能性が高いから、東京都でやるべきではないか。その場合、高野に対する調査だけでは何も明らかにはならない。退園した保護者から直接聴取すべきだ」

 すると担当者はこう答えた。

「監督責任は東京都にあるが、現実の監督は実施機関である東村山市が行うべきもの。東京都はその報告を受ける立場だ」

「それでは東村山市に強く指導してほしい」

 担当者は「わかりました」と答えた。いうまでもないが、この時点ではまだ東京都は事態を把握していないものと私は受け止めた。その後、東京都からの連絡は来なかった。私はやむなく、1週間後の12月14日、担当者に電話した。すると、名前を名乗っても担当者からはなぜか反応がなかった。私の用件はわかっているはずと思いながら「東村山のりんごっこの件ですが」と聞くと、担当者はようやくこう答えた。

「あの件は東村山市の方でまだ事実確認ができていないということなので」

「東村山市が事実確認ができていない」というのがいつの時点での話なのかはわからないが、とにかく東京都の担当者はこう答えた。実は、東村山市議会に設置されていた「りんごっこ保育園設置者の資質と特定議員の関与に関する調査特別委員会」でも今回の問題が取り上げられており、私が東京都に電話した前日の平成18年12月13日、同委員会において東村山市保健福祉部から報告がなされていた。

 それによると、東村山市は平成18年11月11日、市内で開かれていた「健康のつどい」の場で保健福祉部長が矢野と朝木に出会った際に矢野から報告を受け、食中毒騒動の発生を最初に認知した。その際保健福祉部長は矢野に対し、施設長から直接説明するように求めている。しかしその後、高野からは何の連絡もなく、11月13日、保健福祉部がりんごっこ保育園に電話するも高野は不在。主任から「保健所の立ち入りを受けているが、問題はなかった」との説明を受けている。翌14日午前、保健福祉部は再度園に電話して高野からの報告を求めた。しかしこのときは、高野と内容のあるやり取りはできなかった。すると同日午後、矢野から保健福祉部に連絡があった。担当者が矢野に対して施設長からの報告・説明を求めると矢野は、

「経過は説明している。なぜ施設長が報告する必要があるのか」

 と反論した。保健福祉部は矢野のいう「経過説明」が「健康ひろば」における矢野の説明のことと理解したが、保育園の責任者であり、11月10日当日の状況を直接知る高野に説明を求めるのは所管として当然だし、高野が自分で説明すればそれですむ話である。それをなぜわざわざ矢野が電話してきて、高野に説明を求めたことに対して異を唱えるのか、理解に苦しむ話というほかなかった。矢野は翌11月15日にも児童課に電話してきて、「なぜ施設長が説明する必要があるのか」と抗議した。11月17日には私立の園長会が開かれた。出席した高野に児童課の担当者が報告を求めると、高野は「すでに報告済み」などとして自分の口からはいっさい説明しなかったという。高野のこの対応も尋常ではあるまい。

 保健福祉部は立ち入り検査に行った小平保健所からも事情を聞いており、保健所の立ち入りの際にほとんど対応したのは矢野で、

「(保護者が病院で説明したような、園児の)半数が嘔吐した事実はなく、なぜ立ち入りか」

 と主張したため保健所職員と議論になったという。保護者の説明が虚偽だったのかどうか、すなわち食中毒が発生していたのかどうか、保健所がサンプル等の検査をすれば明らかに判明しよう。食中毒がなかったらなかったで、保育園側の潔白が証明されるのだからそれでいいのではないのか。にもかかわらず、矢野はなぜこれほど強硬に立ち入り検査を拒んだのだろうか。

「闇に葬りたくない事件」

 この日の特別委員会ではもう1つ、きわめて重要な情報が明らかにされた。11月10日、当該園児を診察した昭和病院小児科の医師から11月24日、東村山市長宛の手紙が届いていたというのである。医師は同じ手紙を東村山共産党と東京都にも送付していた。同じ手紙を3カ所にも送付したということは、その内容を公にしてもらいたいという強い意思表示だったに違いないと私は思った。

 11月24日午前、私はその医師に取材を申し込んだが、その際の医師の言葉が強く印象に残っていた。医師は「勤務医の立場上、自分個人の判断では取材に応じられるかどうかはすぐには回答できない」と答えたが、そのとき一言だけこういったのである。

「でも、個人的には闇に葬りたくない事件です」

 この言葉には医師の強い意思のようなものを感じた。しかしその日の午後、医師から電話があり、医師は「やはり個人では対応できない」と残念そうに伝えてきた。医師はこんな感想も述べた。

「あのような市会議員が存在していることについて、今後は関心を持たなければならないと感じた」

 と。あるいは医師は、矢野から直接抗議を受けていたのかもしれない。それにしても、「闇に葬りたくない」とはただならぬ言葉だった。「闇に葬ってはならない」とまでいうからには、医師はその事実を知っているということでもある。「闇に葬ってはならない事実」とは、いったいいかなる事実なのか。

 私が医師と電話で短い会話を交わしたちょうどその日、東村山市長と東京都、東村山共産党には医師からの手紙が届いていたということになるが、もちろん当時私にはそのような事実など知る由もなかった。「闇に葬りたくない」といった医師が送付した手紙に書いた内容とはどんなものだったのだろう。りんごっこ保育園に対する告発以外であるとは考えられなかった。

 医師からの手紙が届いたことが報告された特別委員会では当然、その中身に関する質疑があった。

木内委員 「市長への手紙」の内容とはどんなものだったのか。

保健福祉部長  まず、食中毒に関する経過、また保健所の対応についてなど。あと特に、保育園にいる子供たちの状況を心配されていた。「そこが一番大事だ」という内容になっている。

木内委員  医師は法に基づいて通報したが、矢野から「なぜ通報したのか」などという抗議の電話があったことについて書いてあるのか。

保健福祉部長  通報したことについて矢野議員から抗議があり、電話なり、昭和病院へ行っての抗議があった。そのようなことが書かれている。

 保健福祉部長はこれだけしか説明しなかった。しかし、「闇に葬りたくない」とまでいった医師が東村山市長などに対して手紙を出すには相当の覚悟があったはずである。手紙には食中毒に関する医師の見解、医師が「保育園にいる子供たちの状況を心配」する理由、矢野からの抗議電話に対する医師の感想などが書かれていたのではないかと私は推測している。結局、手紙は市長に対する私信であるという理由で公開されず、同じ手紙を受け取っていた共産党に対して他の委員から公開するよう要望が出たが、共産党はこの日、市側と同じ理由で「検討する」と答えるにとどまり、最終的に公表しなかった。

 後日、私は医師が送付した「市長への手紙」を情報公開請求した。しかしこれに対しては、「請求のあった文書全体が、複数人物の個人情報と、公にすると法人の事業運営上の利益及び社会的地位が損なわれるおそれのある情報で構成されている」ことを理由に非公開の決定がなされた。しかし、保健福祉部長の説明だけでは特にりんごっこ保育園に対してそれほど不利益になるような内容とも思われなかったものが、「文書全体が」対象の利益を損なうおそれがあると判断されたということは、部長の説明以上のものが書かれているということの証拠でもあろう。私は、「市長への手紙」にはやはり「闇に葬ってはならない」事実が書かれていたのだという確信を深めた。

 12月13日開かれた特別委員会では、東村山市保健福祉部が東京都へ出向き報告していたことも報告された。

保健福祉部次長  先日、次長、児童課長、係長の3人で東京都子育て支援課に行って報告を行った。すると、同じような文書(医師からの手紙)が東京都にも届いていた。市としても、認可権は東京都にあるので苦慮しているという話をした。その際、東京都は「認可の取り消しはよほど大きなことがなければできないでしょう」ということだった。

 特別委員会での「市長への手紙」に関する説明も含めて、当事者の退園理由を対外的に「家庭の事情」としか説明してこなかった東村山市の口から「認可権」の話が出、東京都から「認可取り消し」の話まで出るとはどういうことなのだろう。所管も東京都も、実は今回の退園理由が少なくとも「通常の退園」ではないことを十分に認識していたということではなかっただろうか。

 また、私が12月14日、東京都に電話した際、担当はなぜ、

「あの件は東村山市の方でまだ事実確認ができていないということなので」

 と答えたのか。私は前日の特別委員会で「東京都に報告した」という東村山市保健福祉部の報告を確認したから電話したのである。私はやむを得ず、

「昨日、委員会で一応の報告がありましたよ。市に確認してください」

 とだけいって電話を切ったが、東村山市の報告と東京都の回答が矛盾するのはなぜなのか。どちらかの勘違いということだったのだろうか。


(第4回へつづく)

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りんごっこ保育園食中毒騒動退園事件 最終回
                             ★第1回から読みたい人はこちら


事実を知った東京都の苦慮
 
「東京都には報告に行った」という東村山市保健福祉部の説明と「まだ報告を受けていない」という東京都の言い分のどちらが正確な話なのか。平成18年12月13日行われた「りんごっこ特委」の翌日、私は東村山市が東京都に報告に行ったのがいつなのかを確認した。すると、東京都に報告に行ったのは12月7日午後2時であるという。経緯を話すと、都側は「それでも認可取り消しということにはなりませんね」などと話した。東村山市はその足で監査局にも行き、状況を説明したという。実は、私が東京都の保育担当に電話し、「あの件は東村山市の方でまだ確認ができていない」という回答を受けたのはそのあとのことだった。

 それでも東村山市が勘違いしているという可能性もある。そこで12月15日、私は再度東村山市に確認した。

「東京都はまだ東村山市から説明を受けていないといっているが、東京都に説明に行ったことに間違いないか」

 保健福祉部の回答にはまったく迷いがなかった。担当者はこう答えた。

「12月7日に東京都に出向き、説明をしたことに間違いない。東京都側の出席者は3名だった」

 保健福祉部の説明に出てきた3名の中に、私が何度も電話した担当者の名前が含まれていた。12月7日の夕方と12月14日の2度、この担当者は私に対して「まだ報告を受けていない」といったが、この回答は事実に反するものだったことになる。東村山市からの報告を受け(さらに東京都の一部は医師からの手紙も読んでいたかもしれない)、認可権者である東京都も苦慮していたのだろう。

 はたして東京都は私に対して、食中毒騒動をきっかけにした退園事件に対する認可権者としての見解を示してくれるのか。しかし12月14日、私が電話をかけて以後、東京都からの連絡は途絶えた。

すでに退園していた保護者

 一方、園児を病院に連れて行って3日後(病院に行ったのは金曜日だから、土、日を挟んで実質的には翌日)、保健福祉部に転園申請を提出した保護者はどうなったのだろう。12月13日の「りんごっこ特委」での保健福祉部の説明によれば、「13日に申請に来たが、他にも空きがなく、申請だけを受理したという状況だった。情報として、今現在はすでにりんごっこを退園し、りんごっこに入る前の認可外保育所に預けていると聞いている」とのことだった。

 この保護者はそれまでりんごっこ保育園に2人の子供を預けていた。この保護者の場合、保育料は2人分で5万7000円だったという。認可外では1人あたりの基本料金は4万5000円程度で、早朝保育や夜間保育があればその分が加算されるから、おおむね50000円程度である。認可保育園と同じように認可外にも2人目の割引があったとしても、この保護者はそれまでの2倍の保育料を負担しなければならなくなったという計算になる。この保護者は、それでもりんごっこ保育園にはわが子を預けたくないと考えたということである。あまりにもいたましい話だった。高野、あるいは矢野との間でよほどのことがあったとみるべきだろう。

 東京都からの連絡がないまま平成19年が明けた。東京都が苦慮していることは推測できたが、そのことと東京都職員には都民の安全を守るべき義務があることとは分けて考えなければならない。私が東京都のこれまで電話でやりとりしてきた担当者に電話したのは平成19年1月24日のことである。

――先般の東村山の件はどうなったか? 東村山市は東京都に報告したと聞いているが。

 担当者は、東村山市の報告についてはもう否定しなかった。

「はい。報告はありましたが、私だけではお答えできないので、あの件についてのご回答はもう少しお時間をいただきたい」

 私は「では今後は、子育て支援課長に聞く」と伝えて電話を切った。同日午後、私はさっそく課長に電話を入れた。

――昨年11月に東村山のりんごっこ保育園で起きた事件について見解をうかがいたい。ついては、直接会って、取材をお願いしたい。

 これに対して課長はこう答えた。

「あの件については、保健所が立入検査して『食中毒はない』と判断したこと、後日、当事者の園児が退園したという事実以外の事実は承知していない。退園についても通常の退園であると聞いている」

 とすれば、「何も問題は発生していないのだから、なんら問題はない」というのが都の見解で、そもそも「見解」を出すような話でさえないということになる。しかし、

――園が発行したビラには保護者を非難する内容が含まれている。そのほかにも重大な問題が存在したことをうかがわせる資料がある。

 というと、翌週に取材に応じてくれることになった。翌1月25日、私は課長宛にそれまでの取材に基づいた雑誌の記事をファックスし、「記事の内容をふまえて取材にお答えいただきたい」と伝えた(記事は、医師からの手紙と東京都の事実に反する対応の部分を除き、本連載のこれまでの部分とほぼ重なる内容とお考えいただきたい)。私は記事を「認可権者である東京都が、この痛ましい事件を闇に葬ることは許されない。」と結んでいた。

 取材予定日だった1月30日午前、課長から電話があった。

「今日の取材の件は、所用ができてしまい、延期してほしい。『東京都の見解を』ということだが、事実の確認が難しく、見解も難しいと思う。事実関係も含めてということなら……」

 取材は2月2日に延期となった。この段階で私は、東京都の姿勢が「食中毒はなかった。退園も通常の退園」という以上の事実を把握していない、というものであると理解した。

東京都の公式見解と事実の矛盾

 平成19年2月2日、取材は東京都庁の会議室で行われた。東京都側は課長と係長の2名。以下は、主なやり取りである(録音については断られた)。

――ファックスで送った記事について、記載事実に対する評価、解釈は別にして、事実経過については把握しているか。

課長  東村山市から説明を受けたが、事実は断片的にしか把握していない。

――前回の電話では、東京都の見解としては、「食中毒はなかった。退園も通常のものと判断している。それ以上の事実は承知していない」ということだが、それに変わりはないか。

課長  そういうことだ。

――しかし、形式上は通常の退園といっても、実態がそうでないことは明らかだ。保護者はまず11月13日に転園届けを提出し、その後退園届けを提出している。当初は転園届けを出して、空きがあれば転園したいと考えていたが、その後「これ以上この保育園に預けることはできない」と考え、退園届けを出したとみるのが自然なのではないか。その間に何か、よほど耐えられないようなことがあったと。2回にわたって発行された保護者に対する非難のビラをみれば、これに近いことが行われた可能性があるのではないか。

課長  都としても高野さんに事情を聞くように市に指示したが、応じてもらえないとのことだった。

――そもそも高野は一方当事者にすぎない。事実をより客観的に把握するには退園した保護者からも事情を聞かなければならないのは当然のことではないか。

課長  しかし、保護者が退園届を提出するにあたって、市になんらの苦情も申し立てておらず、保護者の気持ちを確認することができない。

――確認すればいいだけの話ではないか。市や東京都ならその保護者が特定できるのだから。

課長  市には保護者の名前がわかるが、都にはわからない。保育の実施主体は東村山市だ。調査するとしても、それをやるのは市だ。東村山では特別委員会が開かれていると聞いている。東京都としては委員会の推移を見ながら対応していこうと思っている。

――1月31日の特別委員会で、「退園した保護者には不利益が生じていないから、認可取消ということにはならない」とする趣旨の都の見解が公表されている。しかし、保護者の退園理由は事件と無関係であるとは考えられず、現在、認可外の保育所に子供を預け、2倍近い保育料を負担しているという事実は、まさに不利益が生じているということ。市に調査するよう指示してもらいたい。

課長  しかし、本人から、園の対応に関する苦情等がない以上、都としては通常の退園と理解するしかない。

――ビラを見てもわかるように、退園が今回の事件と関係があるとすれば、本人も苦情を訴えたあとの心配をして何もいえないという事情にあることは容易に推測できる。さきほど「事実関係は断片的にしか把握していない」といわれたが、東京都には医師からの手紙が来ているはずだ。東村山市が説明に来たときに、手紙が話題になったと聞くが、間違いないか。

課長  手紙が来たのは福祉保健局ではなく別の部署だ。

――どこに来たかはともかく、あなたはその手紙を読んだのか。

課長  (一瞬、逡巡ののち)読んだ。

――その手紙に何が書かれてあるかは私にはわからないが、その中には事実経過や保護者が退園に至った理由についても書かれていたのではないか。退園理由に関する記載があったか。

課長  内容及び退園理由に関する記載があったかなかったかについては、公表してもいいのかどうか、差出人の意思がわからないので答えられない。

――医師は「闇に葬りたくない」といっている。当然、公表されることも考えていたと思う。東村山市の説明、保育園側のビラ、手紙の内容を見れば、何が起きたのかわかるはずだ。それでも本人に対する調査をしないのか。

課長  今後、東村山市とも協議を重ねようと考えているが、東京都としては保護者本人から何も苦情がない以上、本人に対する聴取をする考えはない。

 取材はちょうど1時間。東京都は「当該園児が退園した、という事実以外には何も承知していない」という基本姿勢を貫き、「本人から園の対応に対する苦情等の意思表示がない」ことを理由に何もしない方針であるとした。

 しかし、東京都の私に対する「当該園児が退園した、という事実以外には何も承知していない」とする回答(公式見解)と、東京都が東村山市の求めに応じて送ったファックスの内容はどう考えても矛盾していよう。東村山市保健福祉部がりんごっこ特委で公表した「東京都の見解」は、「今回の件によりただちに許可の取消を行うことはできない」と明言している。

 これは、その見解の内容以前の問題として、東京都が一連の経緯を把握した上で、今回の事件がりんごっこ保育園に対する事業許可の取消に該当するか否かについて一定の判断をしたということ、少なくとも東村山市と東京都の間で、許可の取消に該当する事案であるか否かが検討課題にのぼったということを意味する。すなわち、東村山市が公表した東京都の見解こそ、東京都が一連の経緯を把握していることの何よりの証拠である。それでも東京都は「通常の退園」とする方針を変えなかった。

 こうして事件後、保護者は認可外保育園に子供を預け、それまでの2倍の保育料を負担しているという事実だけが残った。このことについて、東京都と東村山市保健福祉部がなんらの痛みも感じていないということはあるまい。しかし当然だが、この保護者を気の毒に思うだけでは都民、市民を守るという公務員の責務を果たしたことにはならない。

 子供を預けている立場上、保護者には保育園の不利益になるようなことをいえないこともあろう。ことに裏で矢野という特異な議員が差配するりんごっこ保育園ではなおさらだろう。そのことになぜ行政は想像をめぐらさず、踏み込もうとしないのか。東京都や東村山市保健福祉部の思いがどうであれ、現実に現れた結果から見れば、事件は「闇に葬られた」のである。

 事件直後に高野が園内に配布したビラをみる限り、この保護者が少なくとも園にはもういられない状況に至ったことは明らかだろう。万が一、この保護者が医師に申告した内容に誤りがあったとしても、「園との信頼関係を根底から否定するあまりにも悪意のあるデタラメ情報を当園の園児の保護者が行った」とまで書いて保護者を責めるとはどう考えても異常である。私にはこれだけで十分に「劣悪」な保育園と思えるが、読者はどう判断されるだろうか。

(了)


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多摩レイクサイドFM裁判で矢野・朝木(東村山市議)の議員報酬を差し押さえ
 千葉英司元東村山警察署副署長が多摩レイクサイドFMの放送などによって名誉を毀損されたとして、同放送を実質的に運営している現職の東村山市議、矢野穂積と朝木直子(いずれも「草の根市民クラブ」)を提訴していた裁判で、平成20年2月7日、東京高裁は矢野らの控訴を棄却し、それぞれ20万円の支払いを命じていたが、さる2月26日、両名の議員報酬が差し押さえられたことがわかった(矢野21万2240円、朝木20万8190円)。高裁判決に対して矢野と朝木が2月21日上告したため、千葉が債権の差し押さえを申し立てていた。

 差押命令を受けて、東村山市は矢野・朝木両名の議員報酬から債務額を法務局に供託する手続きを行った。なお、差押命令は3月3日、矢野と朝木にも送達されている。これによって、矢野と朝木の3月分の議員報酬は差し押さえ分を差し引いた額となるもよう。私の知るかぎり、矢野は2度目、朝木は3度目の議員報酬差し押さえである。

名刺広告強要事件裁判では矢野・朝木が15万円を支払い、和解が成立

 また、私(宇留嶋)が矢野と朝木の政治宣伝ビラ「東村山市民新聞」やインターネット「東村山市民新聞」の記事をめぐり、「あたかも名刺広告強要事件に関与したかのような記事によって名誉を傷つけられた」などとして矢野と朝木を提訴していた裁判では、平成20年3月7日、矢野と朝木が連帯して私に対して15万円を支払い、和解が成立した。
 
 この和解協議では、矢野と朝木が「裁判の経過を公表しないでほしい」などと要求。私は「原告の言論活動を制限しようとするものでとうてい応じられない」と主張して調整は難航したが、東京地裁八王子支部は公表を認め(あたりまえ)、矢野と朝木も最終的に裁判所の指揮に従った。

 和解金額は同日裁判官がその場で提示、矢野と朝木はこれに同意し、ただちに15万円が支払われた(朝木が近くのコンビニに引き出しに行った)。

 なお、矢野と朝木が公表させまいと執拗に抵抗した裁判の経過等については、近く詳細に公表する予定である。

(宇留嶋瑞郎)
 

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りんごっこ保育園問題とは何か 第1回
 東村山市議矢野穂積と朝木直子が「運営委員」を務め、矢野と同居する高野博子が施設長として運営している認可保育園、りんごっこ保育園で異常事態が発生していることが3月5日、東村山市議会本会議における佐藤真和市議の質疑を通して明らかになった。同園には10名の保育士が勤務していたが、平成20年1月31日付で3名の保育士と1人の栄養士が退職。それをきっかけに保護者の間に動揺が広がり、転園希望者が相次いでいるというのである。 

 矢野が隠然と差配しているこの保育園でいったい何が起きているのか。保育士なら担当している園児の進級や卒園を見届けたいと思うのが普通で、年度末を目前にしながら3名の保育士が同時期に退職すること自体、どうみても不自然である。

 保育士の同時退職は、保護者の動揺を含む園内事情の深刻さをうかがわせるというのみならず、りんごっこ保育園を管轄する東京都と東村山市にとっても看過できない事態となった。認可基準によれば、定員77名の同保育園では最低10名の保育士を配置しなければならない。すると、2月1日の時点で、同保育園は認可基準を下回っているということになる。

 佐藤市議の質疑に対する保健福祉部長の答弁によれば、複数職員の同時退職を認知した東村山市保健福祉部は2月13日、同保育園を訪問して保育士が不足している事実を確認し、認可権者である東京都と協議の上、認可基準を下回った職員数を速やかに補充するよう文書による改善指導を2月18日付で行ったという。保育士の数が基準を下回れば当然、1人の保育士の目が行き届かなくなり、たとえば誤飲など事故の起きる可能性が高まることになる。改善指導は当然の措置である。

 保健福祉部が事実を確認したとすれば、通常の保育園なら素直に指導に従い、速やかに改善計画を提出するところである。だが、高野の対応はそうではなかった。高野は「2月1日の時点ですでに保育士は補充している」などと主張して、改善指導を受けること自体を拒否する旨回答したのである。

 佐藤市議が東村山市議会本会議の一般質問でこの問題を取り上げた際には、同保育園の運営委員である矢野は「指導自体が間違っている」などと反論。さらに矢野は3月14、17日の予算特別委員会においては、乳児が6人以上の場合には看護師1名を保育士1名とみなすなどとする議論を繰り返した。すなわちりんごっこ保育園でも看護師1名が保育士1名とみなされるという主張だが、保健福祉部の認識ではそれでも2名足りない計算になる。3月17日現在、保健福祉部と東京都の「保育士の数が認可基準を下回っている」という認識に変わりはない。

 仮に同園において保育士の数が認可基準を下回っており、その状態の下でなんらかの事故が発生した場合には東京都も管理責任を問われよう。保育士の数が認可基準を下回っているかどうかの再確認を含め、東京都と東村山市保健福祉部が早急な対応を迫られていることは間違いない。

 ところで、矢野は今回の改善指導をめぐり保健福祉部を執拗に追及したが、同園において保育士が足りているかどうかは、法令解釈や認識の問題という以前に園児の安全を確保できる状態にあるかどうかの問題である(もちろん、資格のない者を有資格者と偽るなどは論外)。少なくとも矢野は議会で、職員の同時退職の事情やその後の園児、保護者に対するケアに関して言及しなかった。

 改善指導を受けたことで、なぜ矢野はこれほど保健福祉部を追及する必要があるのか。そもそも議会で取り上げるような性質の問題なのかという根本的な疑問もある。認可保育園として園児の安全を確保することは当然の責務であり、万が一保健福祉部の指摘に誤りがあったとしても、園児の安全が確保されており、保護者からも信頼されているのならそれでいいのではないか。それが保育を委託する行政側と認可保育園の信頼関係というもので、なにも連日、運営委員の矢野が議会の場で担当者を追及する必要はあるまい。この間の行政に対する矢野の姿勢は、平成18年11月に発生した食中毒騒動で医師に症状を説明した保護者を追及したケースを思い起こさせる。

 今回の佐藤市議の質疑から浮き彫りになったのは、りんごっこ保育園が実際に認可基準を下回っているのかどうかという法令上の問題とは別に、矢野と同居する高野博子が園長を務めるこの個人立保育園では保護者や行政、さらには保育士との相互的な信頼関係が軽視されているようにみえることである。たとえば、保育園には苦情受け付け窓口として第三者機関の設置が義務づけられている。ところが同園の苦情受け付け窓口は「中田国際法律事務所」となっているという。この法律事務所は、矢野が朝木明代の万引き事件の被害者を追い詰めた時代からの顧問弁護士である。この法律事務所に苦情を持ち込んだ場合、保護者の情報が矢野、高野に瞬時に流れないと考えるのは無理があろう。

 しかし、このような事態は認可申請の動きが始まった5年前からすでにある程度は予測されたことでもあった。そこであらためて、りんごっこ保育園の認可申請までの経緯を振り返ってみたい。                                  (宇留嶋瑞郎)

(第2回へつづく)

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りんごっこ保育園問題とは何か 第2回
提出資料と矛盾する高野園長の主張

 前回の末尾でりんごっこ保育園の認可申請までの経緯を振り返ってみたいと書いたが、その矢先、今回の改善指導に関する新たな事実が判明したので、本連載第2回も引き続き、保健福祉部および東京都が「保育士の人数が認可基準を下回っている」と指摘している問題について報告することにする。

 改めて事実関係を整理すると、まず平成20年1月31日付で、保育士3名と栄養士1名が退職。認可基準によれば、定員77名のりんごっこ保育園に必要な最低保育士数は10名だから、単純計算すると、この時点で3名分認可基準を下回ったことになる。

高野が提出していた「職員の構成」

 保育士3名が退職した事実を認知した東村山市保健福祉部は、事実を確認するために2月13日に同保育園を訪問したが、それに先立って2月8日、高野から保健福祉部に対して2月1日現在の「職員の構成」と題する文書が送付されている。保育士の数が認可基準を下回ったのではないかと不安を感じた保健福祉部が高野にまず電話で実態を報告するよう要請したのだろう。高野が提出した「職員の構成」によれば、2月1日現在の職員構成は以下のとおりだった。

1施設長・高野博子 2主任保育士(育児休暇中)3~10保育士 11~12保育補助(20年2月1日付採用) 13看護師(20年2月1日付採用) 14看護師 15管理栄養士(20年2月1日付採用) 16栄養士 17調理師(※番号は職員全体の数を表す。番号の隣は「職名」と記載されており、「資格」の有無とは記載されていないことに注意)

 このうち施設長の高野と育児休暇中の主任保育士は保育士の数にはカウントされないから、今回カウントの対象になるのは3~10の(職名)保育士である。すると、この「職員の構成」からみる限り、りんごっこ保育園は2月1日の時点で(職名)保育士は8名しかおらず、認可基準を2名下回っていることが明らかだった(仮に矢野が主張するように、看護師1名を保育士1名とカウントしたとしてもまだ1名、認可基準を下回っている)。

 そこで保健福祉部はこの事実を根拠に2月13日、同保育園を訪問して事実確認を行い、東京都と協議の上、2月18日付で「りんごっこ保育園職員等の改善について(通知)」と題する指導文書を送付した。文書には「2 改善を要する事項」として次のように記載されている。

〈児童福祉施設最低基準第33条第2項及び保育所設置認可等事務取扱要綱の規定のとおり、保育士資格を有する職員を現在より3名以上配置し、園全体で10名以上の保育士有資格者を確保すること。〉

 高野が提出した(職名)保育士から逆算した不足数と保健福祉部が指摘した不足数には1名分の食い違いがあることに読者も気がつこう。これはどういうことなのか。推測の域を出ないが、考えられるのは、高野が「職員の構成」を提出した2月8日から保健福祉部が訪問した2月13日の間に保育士がさらに1名退職していたか、あるいは「職員の構成」にある(職名)保育士のうち1名が保育士資格を有する者ではなかった、ということぐらいだろうか(ただ、3月5日の保健福祉部長の答弁の中には、1月31日に3名の保育士が退職して以降、退職した保育士がいたという話はいっさい出ていないが)。

「職員の構成」と矛盾する高野の反論

 保健福祉部が改善指導を行ったことに対して2月20日、高野は2月18日付の「事務連絡(常勤職員等について)」と題するファックスを送付した。文書の日付が「2月18日付」となっているにもかかわらず、なぜ送付したのが2月20日だったのかはよくわからない。

〈本年2月1日付けをもちまして、下記の者を採用し、同日付で当園の常勤職員として発令いたしておりますので、取り急ぎ御通知いたします。なお、2月18日付け貴殿名義の文書については、国の通知にも反する認識が前提となっており、適法なものとしてお受けいたしかねます。したがって、遺憾ながら返上させていただきますので、念のため、併せてお伝えいたします。〉

「事務連絡(常勤職員等について)」にはこう記載されており、下に「2月1日付で採用した」と称する2名の保育士の氏名があった。高野の文書にある「国の通知にも反する認識」とは、のちに矢野が議会で取り上げた「看護師1名を保育士1名とみなす」とする国通知のことであるらしい。すると高野の主張は2月1日付で2名の保育士を採用し、看護師1名を保育士とみなせば、退職した3名の保育士の穴は埋められているという趣旨なのだろうか。

 ここで前掲2月8日に高野が保健福祉部に送付した「職員の構成」を改めて確認していただきたい。「職員の構成」によれば、2月1日付で採用したのは保育補助2名と看護師1名、管理栄養士1名で、(職名)保育士の中には同日付の採用者は存在しないし、「事務連絡(常勤職員等について)」の中に「職員の構成」に記載洩れがあったとの記載もない。いったいどちらが本当なのか。

 それ以上に不可解なのは、「2月1日付で保育士資格を有する保育士を2名採用している」というのなら、2月13日に保健福祉部が訪問した際に高野はそう説明しなかったのだろうかということである。この「事務連絡」なる文書には、2月13日の保健福祉部の訪問時にそう「説明した」という文言はない。保健福祉部が2名採用の事実を確認したとすれば、少なくとも改善指導にあるように「3名」足りないということにはなっていないはずなのである。

 どういうことなのだろう。つまり、これらの事実から推定できるのは、2月18日に保健福祉部から改善指導を出されたことで、高野は急遽指導の前提事実がなかったかのように繕おうとしたということではないかということである。文書の日付と実際にファックスした日付に2日のずれがあるのは、その間に指導を逃れる理屈を探していたということであり、文書の日付が改善指導の日になっているのは、すぐに反論したようにみせかけるためであると推測できよう。18日に作成できていたのなら、その日に送付しない理由はあるまい。しかしそれでもなお、すでに高野が2月8日に提出していた「職員の構成」との矛盾を埋めることはできなかったということだろう。

 保育士(有資格者)の数を確認するというただそれだけのことで、このりんごっこ保育園という認可保育所ではなぜこれほど手間がかかるのか。不思議としかいいようがないが、保健福祉部の改善指導に対する高野の反論が指導を逃れようとするものであるとすれば、すでにこのこと自体、認可保育所としての資質を疑わせるものといえるのではあるまいか。

(第3回へつづく)



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りんごっこ保育園問題とは何か 第3回
水面下で進められた計画

 平成14年末、東村山市野口町で東京都認証保育所を経営している女性施設長(のちに明らかになる高野博子)が、平成15年度に新たに認可保育園を開設すべく土地を確保し、すぐにでも建設着工可能な状況になっているという情報が保育関係者の間に広がった。

 従来、国が認可する認可保育園の運営は自治体や社会福祉法人のみに制限されていた。しかし平成12年、女性の社会進出や共働きの家庭が増えたことなどによる保育需要の急増を背景に、厚生省(当時)は社会福祉法人以外でも認可保育所の設置・運営ができるよう政策変更を行った。それにともなって、東京都も平成13年8月から独自に認証制度を設けて民間の参入を促し、待機児問題解消に力を入れている。東村山市でも平成13年9月、株式会社を運営主体とする認可保育園が開園している。

 だから、社会福祉法人でもない個人が認可保育園を立ち上げようとしていること自体は法的には問題ない。しかし、この話を伝え聞いた保育関係者らは一様に怪訝な思いを抱いた。それまで東村山市保健福祉部は「平成15年度には認可園の定員変更はない」(同年10月)、「15年度の待機児解消は既設園(認証、認可外を含む)の定員緩和(=定員増)で対応したい(11月)と説明、すなわち15年度には新たな認可保育所の開設計画はないとしてきた経緯があったからである。

 認可保育園は国の認可事業ではあるが、東京都の場合には、自治体が認可申請書に意見書を添えて東京都に提出、国基準等に照らし、その内容に問題がなければ東京都は認可を認めるのが通例である。つまり、国の認可保育園といっても、開設地域や時期など地元の保育事情を反映させる必要があるため、実質的な認可判断および保育の実施は各自治体に任されている。

 東村山市ではそれまで、事業者から開設の要望や計画が出された時点で園長会や保育・教育関係者、学識経験者などで構成する児童育成計画推進部会(いわゆる審議会のような位置付け)に諮り、また市議会(厚生委員会)の賛同を得た上で事業化を進めてきた。より多くの意見と民意を反映させ、事業の公開性、公益性を担保するためである。

 認可保育園は80名規模なら8000万円近い補助金が交付される。このような公共性のきわめて高い事業において担当部署の独断専行、密室での事業決定は許されない。平成13年に開設された株式会社立の保育園の場合も、育成部会では開園の1年以上前に事業化要望が報告され、慎重な論議が重ねられたのである。

 ところが今回にかぎっては、着工も間近だというのに、保健福祉部からはなぜか誰も正式な報告を受けていない。そこで平成14年12月6日、数人の市議が漏れ伝わった情報をもとに保健福祉部幹部に非公式に問いただした。すると、情報の内容は事実で、敷地面積約100坪、定員約80名の認可保育園が計画されていることが明らかになった。しかし保健福祉部はそれ以上の説明はせず、12月13日開かれた認可園長会でもその詳細について説明されなかったのである。

 年が明けた平成15年1月7日、現場ではすでに杭打ちを終え、計画が着々と進行していることをうかがわせた。1月17日に開催された育成部会では当然、この問題が議論の中心になった。冒頭、保健福祉部長は、「待機児解消のために新しく2園の認可保育園の計画を進めていること、1カ所については平成15年4月か6月の開園を目指している」としたものの、「計画がまだ固まっておらず、詳細についてはお話しできない。まだ建築は始まっていない」と説明した。

 早ければ3カ月後には開園を目指しているというのに「まだ計画が固まっていない」ということがあり得るのか。開園までには都による検査や園児募集もしなければならず、逆算すればこれから建築工事を始めても遅いぐらいである。実際に、予定地の状況はいつ建築工事が始まってもおかしくない状況にあった。

 普通はまず土地があって、建物の規模を決め、建築面積などから定員を算出し、さらに補助金の予算化が確実な状況になっていなければ工事には入らないのではないかとみられた。個人が建てる以上、市の予算とは直接関係がないのかもしれないが、保育園をやろうとしているのなら補助金を計算に入れていないということは考えられなかった。つまり、工事が始まろうとしているということは、事業者と保健福祉部との間で計画を含めたなんらかの合意がなされているということではなかったのか。

 問い詰められた保健福祉部は1月17日の育成部会が閉会に近づいたころ、ついにその認可保育園の場所と敷地約100坪で定員81名を予定していることを初めて公表するに至った。この敷地面積と定員は、国の認可基準をぎりぎり超えてはいるものの、園児1人あたりの面積は東村山市内の認可保育園に比較すると2分の1にも満たないというきわめて貧弱なものだった。東村山市内には同じ100坪程度の認可園があるが、定員は30名である。

 これでは、最低基準の範囲内で床面積を1人あたり面積で割ればこういう定員になったというだけで、経営効率優先、とても十分な保育環境の確保を前提に算定された数字とは思われなかった。認可基準は、それを下回ってはいけないというだけで、それで十分というものでは決してないのである。その上、その保育園には園庭もなかった。東村山市の認可保育園に園庭がない保育園は存在しない。それまで常に保育の質の確保を話し合ってきた育成部会にとってはとうてい考えられない代物だった。

 いかに「待機児解消のため」とはいえ、これでは本末転倒になりかねない。東村山市においてこのような貧弱な認可保育園が異例であるのなら、保健福祉部はなおのこと広く専門家の意見を聞き、市民の理解を得ておく必要があろう。にもかかわらず、保健福祉部はこのような認可保育園を事業者側との間で相談したのみで認可しようとしていたのか。保健福祉部はこう答えた。

「隠していたわけではない。計画が固まった段階でお話ししようと考えていた」

「計画が固まったとき」とは予算が議会を通過したときなのか、上物が完成したときなのか。いずれにしても、それならもはや児童育成部会で検討する余地はなく、その時点での諮問は儀式にすぎまい。

 事実、「まだ計画が固まっていない」と保健福祉部長が答弁したわずか3日後の1月20日には本格的な建設工事が始まったのである。

(第4回へつづく)

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りんごっこ保育園問題とは何か 第4回
園名の公表を拒否した事業主

 早ければ3カ月もたたないうちに開園を予定しているというのに「まだ計画が固まっていない」ことのほかに、おかしな点はまだあった。平成15年1月17日に開かれた児童育成計画推進部会で保健福祉部は、その認可保育園の名前と事業者名について、「プライバシーに関わる部分がある」としてかたくなに明らかにしようとしなかったのである。

 この園の規模だと補助金は年間8000万円以上にのぼる。国が認可を与える保育園の名前や事業者の名前を出すことがプライバシーに関わるはずがなかろう。またも詰め寄られた保健福祉部が、その保育園の名が「りんごっこ保育園」であること、事業者が高野博子という女性であることをようやく明らかにしたのは、2時間の会議終了わずか10分前のことだった。

 認可基準をぎりぎりクリアしているだけという従来の東村山の認可保育園では考えられない保育環境の貧弱さはともかく、園舎の建築工事が始まろうとしている段階になってもなお事業者名さえ公表できないとはどういうことなのか。すでにこれはたんなる不可解を超えて、なにか事態の異常を意味しているのではないか。

 のちに、ある保育関係者が情報公開請求によって同保育園の申請書類を取り寄せたところ、保健福祉部の対応の不可解さはより鮮明となった。高野は平成14年4月16日に事業要望を提出。市の予算化申請書類にあたる起案書は同年12月3日に起こされ、12月13日には市長の決済印が押されていたのである。4月以降12月までの間に高野と保健福祉部との間で協議が重ねられていなければ、通常の行政手続において年間8000万円の予算がわずか10日で決定されるとは考えにくい。

 すると、保健福祉部はこの計画についてかなり早い段階から承知していたことになるが、なぜか児童育成部会にも議会にも保育関係者にも報告しなかった。というより、逆に「平成15年には認可園の定員変更はない」「15年度の待機児解消は既設園の定員緩和で対応したい」と説明していたのである。この点をどう理解すればいいのか。少なくとも、平成15年1月17日の時点で「計画が固まっていない」とした保健福祉部の説明は起案書の内容と矛盾しよう。「計画が固まっていない」ものに市長が決済印を押すような地方自治体はあり得ない。

 こうした不透明な状況に対して、市民は公明正大な方法で福祉行政を進めるよう求める請願(「待機児童の解消は、保育の質を確保し、多くの関係者の協力が得られる公明正大な方法で行うことを求める請願」)を議会に提出。しかし、この請願を審査した平成15年1月29日の市議会厚生委員会でも保健福祉部は計画の中身を明らかにしようとせず、園名についても「個人を特定する恐れがある」としてなかなか答えようとしなかった。公共事業において特定されてはいけない「個人」とはいったいどういう「個人」なのか。

 この日の午後になって、情報公開を担当する総務課が認可保育園の園名等が個人情報にあたらないとの見解を示したことで保健福祉部はこの保育園が「りんごっこ保育園」であること、事業者が高野博子であることをようやく公表するに至った。つまり、東村山市議会が公式に園名と事業者名を知らされたのはこのときだったのである。わずか2カ月後に開園が迫り、園舎の建築工事はすでに始まっている。当初、この段階においてなお、必要な情報開示をしようとしなかった保健福祉部の対応と、「個人情報」を理由に園名と事業者名の公表を拒んでいた高野に対して議会が深い不信感を持ったのも当然だった。第1回厚生委員会は、高野が保育に対してどういう考え方を持っているのか次回の委員会に招致することを決めて閉会した。

 第2回目の厚生委員会が開催されたのは平成15年2月10日。議会も市民も高野がどんな話をするのか期待したが、冒頭、高野が出席できないといってきていること、その代わりに1通の文書が委員長宛に届いていることが報告された。しかし、委員長は高野が出席しないことを伝えただけで文書の内容については詳細には触れなかった。

 さて、情報公開で入手した平成14年4月の認可申請「要望書」提出時の「出席者」欄には、行政側に保健福祉部次長と課長の名前、事業者側には高野ともう1人、名前が墨塗にされた人物がいたことがわかった。保健福祉部によると、この人物の名前が墨塗りになっているのはプライバシーに触れるからであるという。公共事業に関わる公文書において名前を公開することがなぜプライバシーに触れるのかよくわからないが、墨塗りの本人自身が情報開示を拒んでいるというのだった。

 2月10日行われた、この墨塗りの人物の存在に関する厚生委員会での午前中の質疑をみよう。質疑を行ったのは公明党の鈴木茂雄市議(当時)である。

――4月16日付「要望書」の面会者のうち、墨塗りの人物は誰か?

保健福祉部長  事業には関係ない人の個人情報だからいえない。

――事業に関係ない人間が相談に来るのか?

保健福祉部長  一般の相談についてはそういうこともある。すべての同席がダメだとはなっていない。

――保健福祉部次長は4月以降は来ていないといっているが、前回の委員会で部長は、12月の起案書までの間、相談は継続していたといっているが。

次長  私が関わったのは平成14年2月。(保育所設置の)場所はどこでもいいとはいっていない。2月は、4月に野口町に建てたいといってきたが、野口は無理といった。その後恩田に建てたいといってきたあと、連絡がなかった。11月になって(土地売買の)仮契約ができそうだという話があった。

――相談の中で、現職の市会議員が来たとのことだが、次長は会ったのか。

次長  何度か来た。保育課長を通して来た。

――それは誰ですか?

 しかし保健福祉部は、この段階では「現職の市会議員」の名前を明らかにしなかった。


(第5回へつづく)

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りんごっこ保育園問題とは何か 第5回
黒子の正体を現した朝木直子

 保健福祉部との相談に同席していた墨塗りの人物の名前が明らかにされたのは、厚生委員会が午後1時45分に再開された直後である。再開後の質疑をみよう。

保健福祉部次長  (墨塗りになっている)同席者については請願に関連しないので名前は出さないつもりだったが、本人に電話で確認したところ、出してもいいということなので出すことにした。相談に同席したのは朝木直子議員です。

――議員から内容に立ち入る相談はあったか。

次長  設置者(高野)以外とは相談はしていない。

――認可の方向にした基準は?

次長  すでに認証保育所を経営している。

 その後の休憩中の保健福祉部長の説明によると、朝木は保健福祉部と高野との相談の場に3度同席したという。1回だけならまだしも、3度も同席したとはどういうことなのか。部長によれば、話をしたのは高野だというが、それなら朝木が3度も同席する必要はあったのか。認可保育所を経営しようとするような人物なら、当然、市会議員の手を何度も借りなくても所管と必要な話し合いぐらいはできるだろう。それとも何か、通常の認可申請相談とは異質の相談でもあったのか。次長はその疑問に先回りするように、

「議員だからと、特別な便宜をはかることはない」

 と述べた。少なくとも、議会にも保育関係者にも公表しないままに決済したことが「特別な便宜」でないとすれば、この間の経過は東村山市の地方自治体としての主体性のなさ、あるいは市民に対する責任感の希薄さを示しているといえばいいのか。

 ところで、最初は公表を拒否していた朝木はなぜ自分の名前を公表することに同意したのか。当初、「個人情報」をタテにうまく保健福祉部をコントロールしながら水面下で進めてきた認可申請計画がバレて、市民から公明正大な方法で進めることを求める請願が提出されたことをきっかけに、議会でも少なくとも行政手続の方法について強い拒否反応が広がっていることは明らかだった。あらゆる行政手続は透明でなければならない。

 りんごっこ保育園の認可申請計画が、当事者と保健福祉部、市上層部以外の誰にも知らせることなく進められていたことに対しては、今回の請願だけでなく、2月10日付で児童育成計画推進部会長から「緊急要望」が、また保育所保護者連合会会長からは「緊急要望書」がそれぞれ市長宛に提出されていた。誰が見ても、開園を3カ月前に控えた保育園の名前も設置者の名前も公表できないなどあり得ない話で、保育環境を論じる以前に、いっさいの批判を頭から受け付けないというやり方にあらゆる方面から批判の火の手が上がるという状況になっていた。

 仮に今回提出された請願が採択されることになれば、平成15年春にも予定している開園に大きな支障が生じることにもなりかねない。情報公開によって改善や定員減の声が高まれば、開園時期の大幅な遅延や運営計画に狂いが生じる可能性もあろう。それが朝木1人の判断かどうかはわからないものの、朝木はもはや黒子として推移を見守っている状況ではなくなったと考えたようだった。

 しかし、朝木が考えたのは自分の名前を表に出すことだけではなかったらしい。保健福祉部次長が、相談の席にいたのが朝木直子であることを公表した直後のことだった。朝木は自分の名前を公表することに応じただけでなく、厚生委員会の傍聴席に現れたのである。もちろん、朝木はただ委員会を傍聴に来たわけではなかった。朝木は傍聴席に座るやいやなや、質疑に割り込んでこう発言したのである。

「文書を提出しているでしょ。全部読みなさいよ。読めないのは(開園に反対している人たちにとって)都合が悪い部分があるからではないですか?」

 いったい、進め方に異議を唱えている人たちにとってどんな「都合が悪い部分がある」というのか。むしろ、認可保育園という公益事業に関与していたのなら、朝木自身が最初から関与を認めた上で、それまで高野が保育園の名前を明かさず、朝木が相談に同席していたことを隠していたことを含め、この保育園が東村山市民にとっていかに有益な存在になり得るのかを議会や市民に堂々と説明すればよかろう。厚生委員会から呼ばれた高野が出席できないといってきたのならなおさら、朝木が高野に代わって説明すればよかったのではないか。

 本来すべきことをいっさいしようとせず、きわめて当然の疑問を述べているにすぎない市民や議会に対して一方的に「都合が悪い部分があるからではないですか」と逆に非難するとは、とても公益事業の認可申請相談に同席した市会議員の言葉とも思えなかった。私が横から「矢野も相談に来たのか」と聞くと、朝木はただ「うるさい」と怒鳴り返した。

 朝木の乱入によって質疑はいったん中断したが、その後も鈴木市議の質疑は続いた。とりわけ後半には、その後の東村山市議会の重大な意思決定を予感させる質疑があったが、その前に高野が厚生委員会に提出し、朝木が「読み上げろ」とわめいた文書を紹介しておこう。文書の題名は「認可園開設に関する経過等について」(平成15年2月8日付)。厚生委員長と保健福祉部長に宛てたものである。差出人は当然、「高野博子」となっており、高野の印が押されている。しかしもちろん、この文書を実際に高野が書いたという保証はどこにもない。

 裁判所に提出する書類なら、誰が書いたものであろうと署名人の責任であり、署名人の文書と認定されるが、ここは裁判所ではなく議会なのだった。厚生委員会は高野の生の声を聞きたかったのであり、生の声にこそ意味があった。実際に高野博子がいるのなら質問もできよう。しかし書面では、それが高野自身が書いたものかどうかさえわからない上に質問のしようもなく、ヘタをすれば高野の一方的な主張で終わってしまいかねない。厚生委員長が高野が提出した文書を読み上げなかったのは賢明な判断だった。文書は長い前置きから始まっていた。――
 
「2月7日午後、外出して不在中、市議会厚生委員長さんから、再三お電話をいただき、月曜日に行われる厚生委員会に出席してほしい旨の伝言がありました。

 市議会の委員会への正式の出席要請であるのならば、何らかの文書で事前にその趣旨をお知らせ頂けるものと思いますが、金曜日午後に翌週月曜日の件が突然、架電によってなされましても、あまりにも唐突ですし、10日はすでに先約も入っており出席できませんが、ちょうどいい機会ですので、経過及び私どもの考えをお書きした書面を、9日市役所時間外受付にお届けしておきます。ぜひとも、厚生委員会の委員さんだけでなく傍聴者の方々のいらっしゃる席で、この文面全部を読み上げて頂くようお願い致します。なお保健福祉部長さんにも、同じ内容の書面をお届しておきましたので、付け加えておきます。」

――そもそも市議会の委員会が民間人を呼び、見解を求めるということはそうあることではない。今回の場合、議会だけでなく保育関係者、市民から強い疑問が提出されるという重大なケースである。公益事業を行おうとする者が、本当に市民の疑問を解消しようとする気持ちがあるのなら、高野は自ら都合のいい日を指定することもできたはずである。ところが、厚生委員長から伝言があっても、高野が厚生委員長に電話をかけたことをうかがわせる記載はない。つまり、そもそも高野には最初から厚生委員会に出席する意思などなかったのではあるまいか。保健福祉部長にも同じ書面を届けたのは、その内容を保健福祉部長に読ませる意図があったのだと思われた。

(第6回へつづく)

テーマ:社会 - ジャンル:政治・経済

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