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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第3回
市側との話し合いを拒んだ高野博子


半年弱で9名の保育士が退職

平成20年1月31日  保育士3名、栄養士1名
       3月31日  保育士4名、栄養士1名、看護師1名
       5月31日  保育士2名


 りんごっこ保育園の「園だより」などから確定的に判明した、平成20年1月31日から6月3日までの間にりんごっこ保育園を退職した職員の数である。保育士定数10名の保育園で半年弱の間に9名が退職という事実がよくあることなのかどうか、またこの事実が何を意味しているのかは定かではないものの、仮にこの事実がりんごっこ保育園のなんらかの異常事態を示しているのだとすれば、さらに潜在的な退職希望者も少なからずいるとみるべきなのかもしれない。

 いずれにしてもりんごっこ保育園は、認可保育園である以上、国最低基準を遵守しなければならず、この間に辞めていった保育士の穴埋めをしなければならない。東村山市保健福祉部から保育士の補充に関する改善指導を受けてなお指導自体を拒否しているこの保育園が、はたして確実に辞めた9名分の保育士を補充しているのかどうか。保健福祉部の改善督促に対しても誠実に答えようとしないこの保育園が保育士を充足させているはずがないとみるのが自然だろう。

 危機的な状況である。同園にとって、保育を委託している東村山市にとって、また認可権限者であり、最終的な監督責任を負う東京都にとってもそうだろう。しかし、最も危機にさらされているのは、このような何が起きているのかわからない保育園に預けられている子供たちであることを忘れてはいけない。

保育士を引き連れて市長を訪ねた高野の狙い

 では東村山市は、このような改善指導自体を拒否するような保育園をなぜ認めるに至ったのか。本シリーズ第1部で述べたように、認可申請書提出前の段階からすでにまともな話し合いが困難な相手であることは明らかだった。今りんごっこ保育園で起きていることはまったく予想外の出来事ではないのである。設置者高野博子およびその同居人である矢野穂積の資質を知りながら、「待機児解消」という市民受けのみを狙い、市民を守るべき市長として認可拒否という勇気をもった決断を最後までしようとしなかった細渕一男前市長の罪はきわめて深い。

 さて、東京・東村山市議、矢野穂積が水面下で画策したりんごっこ保育園の認可計画が挫折した原因の1つは、架空の事業計画によって事業権を確保しようとしたこと、さらには園舎の建設に着工しようとする段階に至っても関係者に情報をいっさい公表しようとしなかったことなど、きわめて独善的かつ不誠実な設置者高野博子の姿勢にあった。この結果、東村山市議会は同保育園に予定されていた平成15年度予算案を否決した。

 当時、すでに園舎は完成していた。普通の人間なら、これまでの姿勢を改めて周囲との関係修復を進め、正常な開園への途を探るところである。まして「待機児解消のために私財を投げうった」(高野)というのなら、関係者の意見を聞き入れ、できるだけ早期の開園を目指すのが当然だろう。

 もちろん実情は土地購入費と園舎建設費1億3000万円を多摩中央信用金庫から借り入れ、補助金(一部は自分の給料)で返済し終えたあかつきには土地と建物が晴れて自分のものになるという手品のような計画だった。しかしそれも、平成15年の認可が認められなかったことで予定していた年間8200万円の補助金が入らなくなり、返済計画に大幅な狂いが生じただろうことは容易に推測できた。とすればなおのこと、行政との歩み寄りを模索するのが普通の発想と思われた。

 平成15年の東村山市議選が終わる4月末まで、高野から市に対して何の動きもなかった。園舎には連日十数名の職員が集まり、飾りつけや研修らしきものをする光景がみられた。なぜか無関係のはずの矢野と朝木直子も毎日のように保育園に現れていたものだった。しかし5月に入り、園舎には出勤する職員の姿も見えなくなった。

 動きがあったのは不認可決定から1カ月後の平成15年5月8日。高野は「話し合い」と称して朝木直子と採用したばかりの若い保育士数名を連れ立って市を訪ねた。市側は細渕一男市長、助役、保健福祉部長、保健福祉部次長が対応した。

 3月議会で市長は、平成15年2月から3月にかけて高野が矢野や朝木、弁護士を伴って市長部局を訪れ、市長や助役に対して「認可しなければ損害賠償請求訴訟を起こす」と脅しともとれる発言を繰り返していたこと、また高野が弁護士同伴でなければ話し合いに応じないとしていたことに触れ、「このような状態では高野氏とは人間としての話し合いはできない」と語り、「高野が1人で誠実な話し合いに応じないかぎり認可の進展はない」と明言していた。その市長が、朝木だけでなく職員らを連れてきた高野になぜ会ったのか。いったんは決裁印を押した以上、その認識の甘さはともかく、市長には高野が姿勢を改めてくれればという思いがあったのだろう。

 この日、高野は市が策定を進めていた私立保育園設置の「ガイドライン」に従う意思を示した。しかしその一方で、高野は保育園が不認可になったことで、すでに採用していた職員たちの職場が奪われていると訴えたという。高野は若い職員たちを実際に連れて行くことで、彼女たちが置かれた境遇に対する精神的負担を市側に押しつけようとしたようにみえる。つまり、高野はガイドラインに対する柔軟姿勢と若い保育士の境遇を訴えるという硬軟両様を織りまぜ、市長に認可を迫ったということだろう。

 これは交渉か取引、悪くいえば職員をダシにした穏やかな脅しであり、少なくとも「話し合い」ではない。そもそも高野に誠実に市側と話し合う気持ちがあるのなら、職員を引き連れていくことはあり得ない。人のいい市長も、このときやっと高野の目的に気がついたのだろう。市長は職員の話が出てきた時点で「話し合い」を打ち切った。市側にとってこのとき改めて確認されたのは、「話し合い」のそぶりをみせるだけで強引に認可を迫ろうとする高野の基本姿勢は、矢野が弁護士を同伴して市長に面会を迫ったときと何も変わっていないということだった。これは当然、矢野の考え方でもあったろう。

 もちろん、高野が市側の提案を受け入れたからといって議会が認可を認めるという保証はない。それまでの経過からいって当然、高野の保育園設置者としての適格性が問われることになろう。実際、平成15年5月22日には、それまでの高野の一連の行為について議会としての見解を確認する趣旨の請願が市民から提出されている。認可申請に至る経緯の不透明さに対する議会の認識はすでに確認されていたが、この間に高野が行った虚偽申告や同業者に対する誹謗中傷および公共事業を行おうとする者としての適格性についての議会としての認識はいまだ市民に十分に明示されてはいなかったからである。

 平成15年6月に入り、5日、12日、13日の3度にわたり、市長と助役などがりんごっこ保育園に高野を訪ねている。高野が施設・条件を改善するために、市の意見を聞き入れる余地があるのかどうかを直接確認するためである。当然、矢野と朝木も同席していた。しかし結論からいえば、高野(つまりは矢野)は最終的に譲歩の姿勢をみせなかった。

 彼らはなぜ正当性を主張するばかりでかたくなに譲歩を拒むのか。その理由は常識では計り知れない。しかし少なくとも、彼らがとうていまともな話し合いなど期待できない相手であることを改めて確認させる出来事が、市幹部が高野と最後に会ってから4日後に起きたのである。


(第4回へつづく)


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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第4回
「保育園は誰のものですか?」

作られた「善意の保育者」

 東村山市長や助役がりんごっこ保育園に足を運び、議会が求める保育環境の改善に向けて高野や矢野と話し合いを進めようとしていたちょうどそのころ、東村山市議会や保健福祉部周辺はテレビ取材の話題で持ちきりだった。りんごっこ保育園の認可が認められなかった問題についてTBS『ニュースの森』の記者がカメラクルーを連れて取材に入っていたのである。平成15年6月13日、記者は厚生委員会を撮影したあと鈴木忠文、木村芳彦、田中富造の各議員を取材、16日には細渕市長、保健福祉部長、児童課長、佐藤真和市議の取材を行った。聞けば、TBSはすでにりんごっこ保育園の取材を6月12日に済ませているという。

『ニュースの森』と聞いて私は一抹の危惧を抱いた。かつて朝木明代が自殺した際、テレビの中でも最も矢野の言い分を取り上げ、かつ詳細な特集として2週にわたって放送したのがこの『ニュースの森』だったからである。記者は一応、保育園側だけでなく、この間の事情を最も知る佐藤にも話を聞いてバランスを取ったようにみえた。私は記者に、平成7年の轍を踏まないようにとだけ釘を刺した。

 TBS「ニュースの森」が「保育園は誰のものか」のタイトルで特集としてりんごっこ問題を報じたのは平成15年6月17日午後6時である。

 特集はまず女性アナウンサーの次のようなナレーションから始まった。

――深刻な保育園不足。ところが、問題解消のためにと作られた保育園の開園に、なぜか、「待った」がかかっています。

 ナレーションに続いて、憤りをにじませながらこう訴える中年女性の姿が映し出された。

――本当に、保育園は誰のものですかって、……聞きたいですよ。

 何があったのか――。その5分後、一般のニュースを挟んで特集が始まった。

「認可保育園に入れない、いわゆる待機児童は全国で2万5000人と、いわゆる社会問題にもなっています」

 メーンキャスターの杉尾秀哉が導入し、「開園準備は万全なのに」のテロップを背景に女性キャスター(小川知子)がこう続けた。

「こうした中、国の基準を満たしているにもかかわらず、開園できない事態になっている保育園があります。なぜ開園できないのでしょうか。その背景を追いました」

「保育園は誰のものですか」と訴えていたのは高野博子である。「待機児童は2万5000人と社会問題になっている」という杉尾のセリフは、それ自体は嘘ではないが、「保育の質」にいっさい言及しない点において十分な問題提起とはいえず、「開園準備は万全なのに」のテロップと女性キャスターの「こうした中、国の基準を満たしているにもかかわらず、開園できない事態になっている」のセリフによって、高野=「善意の設置者」、保育園=「本来なら開園しているはずの保育園」という役どころが固まったような印象を与える導入だった。

 では、「報道のTBS」がこのあとりんごっこ保育園問題をどう扱ったのか。本編をみよう。




保育園は誰のものか

――通しタイトル「保育園は誰のものか」――

(園内)
(ナレーション)
新築の保育園の壁に貼られた飾り。保母さんたちの手作りです。
(テロップ「にゅうえんおめでとう、の文字」)

(高野)
「1年間のお誕生日表です」(テロップ「にゅうえんおめでとう、の文字」)
「ええ、これは職員が4月から来てますので」(テロップ「にゅうえんおめでとう、の文字」)
「制作だけでもしましょうということで」(テロップ「制作だけでもしましょう、と」)
「まだ名前は全然入ってません」(テロップ「制作だけでもしましょう、と」)

(りんごっこ保育園周辺からりんごっこ保育園外観)
(ナレーション)
東京・東村山にこの春完成した「りんごっこ保育園」。(テロップ「りんごっこ保育園――東京・東村山市」)

(高野)
(ナレーション)
高野博子園長は25年間保育の仕事に携わってきました。(テロップ「高野博子園長(52)」)
高野園長は、この保育園が国の認可基準を満たしていることから(テロップ「りんごっこ保育園――国の認可基準を満たす」)、4月には開園できると見込んでいました。

(職員)
(ナレーション)
24人の保母もすでに採用済み。しかし、2カ月以上たった今も園児の姿はありません。

(高野)(日めくり)
「これが4月1日からずっと毎日めくられているんですけど」(テロップ「4月1日から毎日めくられている」)
「ついにこの日付になってしまいました(6月12日)」(テロップ「ついにこの日付になってしまいました」)

(職員)
「やっぱり寂しいですね」(テロップ「寂しいですね」)
「やっぱり子供たちがこれを見てどういう顔をしてくれるかとか、そういうのを考えて作っているので……」(テロップ「子供たちがどんな顔をしてくれるか考えて作っているので」)


(国会風景――2000年・小泉首相所信表明)
「待機児童ゼロ作戦を推進し、必要な地域すべてにおける放課後児童の受け入れ体制を整備します」


(子供)
(ナレーション)
保育園に入れない、いわゆる待機児童の数は全国に2万5000人(テロップ「待機児童2万5000人」)。
その解消のため、国は一昨年、社会福祉法人や自治体だけに限られていた認可保育園の運営を企業や個人にも開放しました。(テロップ「認可保育園の運営を企業や個人に」)


(高野)
(ナレーション)
高野園長も、個人で認可保育園を開園するため、土地と建物を借金で購入しました。(テロップ「高野園長――個人で土地建物を購入」)


(第5回へつづく)


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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第5回
矢野と高野の内縁関係には触れなかったTBS

 放送の前半をみるかぎり、高野園長には何の落ち度もなく、待機児解消に貢献しようとしたにもかかわらず、りんごっこ保育園は理不尽にも開園に待ったをかけられた「善意の保育者」――という印象を受けよう。では『ニュースの森』は、りんごっこ保育園が認可されなかった理由は何だというのか。後半をみよう。



(起案書が闇を背景に浮かび上がる)
(ナレーション)
市の内部資料を見ると、市長の決裁が済み、市がこの計画をバックアップしていたことがわかります。


(議場内)
(おどろおどろしい演出ナレーション)
「劣悪な保育環境であることが(テロップ「劣悪な保育環境」)明らかになった。強く見直しを求める」(テロップ「強く見直しを」)

(ナレーション)
開園2カ月前、市議会が土壇場になって認可の見直しを決議。(テロップ「東村山市議会、認可見直しを決議」)
市の予算案を否決し、保育園への補助金をカットしたのです。(テロップ「市の予算から補助金をカット」)


(細渕市長)
「過去をほじくるようなインタビューはいやです」
――ただ、市の方としては今までのプロセスには別に落ち度はなかった?
「ああ、もう、しっかりやってきました」


(りんごっこ保育園)
(ナレーション)
 なぜ市議会は認可に否定的だったのか。理由にあげられた1つは、保育園に庭がないことでした。


(佐藤真和市議)
「認可園というのは最高ランクの施設ですから(テロップ「認可園は最高ランク」)、そうすると、どういうものを作るかっていう責任感がね、市の側にどれだけあったのか(テロップ「どういうものを作るか、市にどれだけの責任感があったか」)、市としてどれだけ、子供たちに責任を持とうとしたのか(テロップ「市としてどれだけ子供に責任を持とうとしたのか」)


(保健福祉部)
(榎本児童課長)

――庭がないって理由で劣悪な環境だということは?
「それは当然、あの、国の基準でいけば適合してますので、問題ない、とは思いますけど」
(テロップ「庭がないから劣悪な環境? 当然、国の基準でいえば、適合していますので、問題ないと思いますが」)

――本来であれば、認可されるというような保育園ですか?
「はい、設備的には当然、問題ないですね」


(りんごっこ保育園)
(TBS桜井記者)

「保育園に庭がなくても、近くの空き地や公園を庭がわりに使うことは法律で認められています。こちらの保育園を出て30メートルぐらい行った場所でしょうか、あのような公園があるのです」
(大岱公園)


(「保育園←→市議会←「質」対立→東村山市」の対立関係を示すフローチャート)
(ナレーション)
 保育園の質にこだわり、市と対立した市議会側。また、問題を複雑にしたのは、りんごっこ保育園を支援している市議が、ふだんから市議会の多数派と対立する人物だったからだという声もあります。


(田中富造市議=共産党)――(テロップ「当初は認可に反対」)
「政争の具というんでしょうか……。問題にしている保育園には誰々が関係しているとか、ですねえ、でまあ、そこのところではどうのこうのとかありますのでね、そのへんになるとちょっと、子供たち以外のところでね、争いっていうんでしょうかね」(テロップ「そのへんになると『子供たち以外』の争い」)


(公園)――(認可保育園)(いずれも資料映像)
(ナレーション)
 認可保育園への民間の参入、混乱は今回のケースだけではないといいます。


(教育評論家・尾木直樹)
「認可を少しでも受けやすくするというので、各自治体が支援する体制はあちこちで始まっているが、それはやはり保育の質を落としてしまうのではないか――そういう思いもあるのだろうと思います」


(高野、中田弁護士ら東京地裁へ――高野の提訴記者会見)
(ナレーション)
 高野園長は、市議会の反対で認可が降りなかったのは違法だとして、東村山市や市議会などに対し、4400万円の損害賠償を求め、今日、提訴しました。


(高野)
「本当に、保育園は誰のものですかって、聞きたいですよ」



(保育園――資料映像)
(ナレーション)
 東村山の待機児童は現在117人。今後、問題の解決は司法の場に移ることになります。



 午後6時9分に始まった放送は6時18分に終了した。


(第6回へつづく)


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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第6回
典型的な情報操作の手法

 読者はTBS『ニュースの森』の報道をどうご覧になっただろうか。私にはこの放送が、国基準という数字上の基準を満たしていればそれだけで認可されるのは当然とする、きわめて短絡的な前提に立ったもののように思える。

 はたしてTBSは、「善意の設置者」である高野が、建設に着工する段階に至っても保育関係者や議会に対していっさい情報を開示しようとせず、それどころか「同業者による妨害」などという虚偽をでっち上げることでそのことを正当化しようとさえした経緯、あるいは高野と矢野穂積が内縁関係にあること、またその矢野穂積が再三にわたって市幹部を脅していた事実について何も取材していなかったのだろうか。

 TBSが最初に議会関係者の取材に来たのは放送4日前の平成15年6月13日で、放送前日にも市長や複数の議員に取材しており、りんごっこ保育園の予算が否決された経緯については十分な説明を受けていた。助役からは「偏った報道にならないように」と釘を刺されている。TBSがこの放送に関してまず高野を取材したことで一定の先入観を持ったとしても、市議会などに対する取材の時点でそれまでの考え方を修正する機会は十分にあったことになる。

 しかしこの放送ではついに最後まで、TBSは高野が情報を開示しようとしなかった点について一言も言及せず、国基準を満たしていることのみを根拠に、この保育園が開園できないことの理不尽さを印象づける仕立てになっていた。TBSがその意図を持っていたとまではいわないが、TBSが高野の姿勢に触れなかったことは、事実評価を左右する重要な要素に触れるのをあえてさけるごとで世論を逆の方向に導こうとする典型的な情報操作の手法である。

切り取られた市長のコメント

 TBSの取材に応じた市長や議員たちのコメントも、まるであらかじめ出来上がっていたシナリオの空白部分を埋めていくように都合のいい部分だけが切り取られ、「国基準を満たしているにもかかわらず理不尽にも認可されない保育園」というストーリーのつなぎ役として利用された。たとえば、

――ただ、市の方としては今までのプロセスには別に落ち度はなかった?

 とする記者の質問に、市長はこう答えている。

「ああ、もう、しっかりやってきました」

 市長はこの言葉で、議会で問題となって以降、高野との間で誠実に話し合いを行う努力を続けてきたことを説明したにすぎない。その前段として市長は、保育が市にとって重要な事業であること、その事業を委託するには市と事業者との間に信頼関係が構築されていなければならないこと、しかし残念ながら、現在のところ、高野は弁護士や「支援する市議」の同席がなければ話し合いに応じない状況にあり、市と高野との間には信頼関係と呼べるような関係は築かれていないことを説明している。桜井記者の質問はそのあとのものだったのである。

 つまりTBSは、市長が高野の事業者としての姿勢に触れた部分についてはそっくりカットし、「しっかりやってきました」という部分のみを使うことで、「市側の認可申請プロセスに落ち度はなかった」とする誘導的な質問を「事実化」しようとしたのだろう。情報開示の不十分さなど、市側にも落ち度があったからこそ議会で問題となったのである。あくまで高野を「善意の設置者」=「理不尽にも保育事業を阻害されている被害者」と位置づけようとする偏向報道というほかなかった。


 国基準を満たし、行政も認可の方向で動いていた計画がなぜ暗礁に乗り上げたのか。TBSがその原因としたのが議会で、事実経過としてその点は間違っていない。議会は確かにりんごっこ保育園の予算を否決し、それが東京都の不認可決定の根拠の1つとなった。しかし、議会が予算を否決した経緯と理由については、いったい誰にたいする取材に基づいていたのか。TBSは報道番組としてみごとに最悪のシナリオを描いていた。

 TBSは「劣悪な環境であることを理由に、開園2カ月前の土壇場になって議会が認可の見直しを決議した」とし、あえて「土壇場」という言葉を使用することで、議会が開園直前になって強引に認可の見直しを決議したかのように印象づけている。しかし実際には、りんごっこ保育園の情報が開示され始めたのは開園予定3カ月前の1月末から2月の初旬にかけてであり、議会はそれ以前にはそもそも反対のしようもなかったのである。
 
 つまり、議会の見直し決議が2月末になったのは、高野と行政が情報開示を拒否してきたからにほかならない。にもかかわらず、TBSは議会が意図的に「土壇場」になって見直し決議をしたかのように印象づけた上で、その理由についてこう説明する。

「理由にあげられた1つは、保育園に庭がないことでした」

 これも誤解を招く取り上げ方である。議会はあくまで関係者の理解が得られない段階での拙速な認可を見直すべきであるとする決議を行ったのであり、庭がないことはその後の問題にすぎない。ところがTBSは、それをあたかも最大の理由であるかのように扱い、さらに保健福祉部によってこう否定させている。

――庭がないという理由で劣悪な環境だということは?

「国の基準でいけば適合してますので、問題ないとは思いますけど」(児童課長)

 TBSは児童課長にわざわざこう否定させることで、議会決議の理不尽さを強調しようとしているように思える。保育環境は庭だけではない。しかしこうして、ストーリーは行政と設置者である高野博子には何の落ち度もなかったにもかかわらず、議会のみが理不尽な反対をしたことで認可がストップされた――という方向に収斂されていった。


(第7回へつづく)

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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第7回

矢野と高野の同居を知っていたTBS

 TBSは市長の「しっかりやってきました」という部分のみを取り上げて、あたかも認可申請の過程で市に何の落ち度もなかったように描き、ことさら議会が理不尽にも認可を阻止したかのように視聴者に印象づけた(真意は別にして、自らに減給処分を課した市長としては、このような誤解を受けることは議会に対する信義に背くことになる)。ではTBSは、りんごっこ保育園の開園に議会がこれほどまでに反対した本当の理由はどこにあったといいたかったのか。それから先が『ニュースの森』の報道の要点だった。ナレーションはいわくありげにこう語った。

「問題を複雑にしたのは、りんごっこ保育園を支援している市議(すなわち矢野と朝木)が、ふだんから市議会の多数派と対立する人物だったからだという声もあります」

議会を冒涜した共産党市議

 その「声」なるものの根拠となったのが共産党、田中富造の発言である。

「政争の具というんでしょうか。問題にしている保育園は誰々が関係しているとかですねえ……」

 聞き捨てならない発言である。平成15年3月の予算委員会で田中は、認可保育園の計画は市民の理解を得られる方法で進めるよう求めた市民や議会と、それらの動きを妨害であると主張した高野、矢野、朝木との対立を「泥沼の抗争」と切り捨てた。今回の「政争の具」発言がりんごっこ保育園に対する市の予算案を否決した3月議会の決議以後のものである以上、「泥沼の抗争」からさらに一歩踏み込んだものとなる。これは自民、公明、市民自治(当時)など予算否決に回った党派は、党派の都合によって待機児解消を求める多くの市民の声を無視した議決を行ったといっているに等しかろう。

 田中のいう「政争の具」発言が事実なら、予算案に反対しなかった「草の根」と共産党以外の党派は市民に対する重大な背信行為を働いたことになるが、田中はその根拠を具体的に示すことができるのか。示せなければ、田中のこの発言は議会決議に対する冒涜というのみならず、りんごっこ保育園の不透明なままの認可に疑義を表明し、その意見を議会に付託した多くの市民、保育園関係者に対する重大な侮辱となる。少なくとも議会人としてあってはならない発言だろう。

 はたしてTBSは、田中の「政争の具」発言についてどんな裏付け取材を行ったのか。私の取材した限り、議会関係者や市幹部の中に田中の発言を容認した者は誰もいない。しかし、すでにシナリオが固まっていたTBSにとって、田中発言の中身が真実であるかどうかなど問題ではなかった。「国の基準を満たした保育園」が、議会の理不尽な反対によって開園できなくなったというストーリーを完結させるには、「政争の具」という言葉だけが必要だったのである。

取材前に決まっていた報道スタンス

 TBSが議会関係者らに対する取材を行ったのは平成15年6月13日(市議)と放送前日の同16日(市長、保健福祉部)のわずか2日間である。TBSにこの問題を公平に扱うつもりがあれば、たった2日間の取材を終えた翌日にすぐ放送するとは考えにくい。かなり以前から一方当事者、つまり高野や矢野に対する取材は終えていて、すでにストーリーの方向性が決まっていたことは容易に推察できた。しかしそれにしても、普通のバランス感覚を持ったジャーナリストなら、議会関係者の取材を終えた段階でこの問題の複雑さ、少なくとも矢野と高野の言い分のみを正当化してしまうことの危うさを感じ、方向性を修正することを考えてもおかしくない。しかし6月13日、私がTBSに放送の趣旨を聞くと桜井記者はこう答えた。

「完成しているにもかかわらず開園できない事態になっている保育園があるというスタンスです」

 この若い記者は聞く耳を持たないようだった。

 TBSのスタンスのおかしさをさらにうかがわせるのは、「善意の設置者」である高野を支援していた矢野と朝木がその名前さえもいっさい登場しない点だった。TBSは佐藤や田中にインタビューしておきながらなぜ、この間の事情を最もよく知る立場にある矢野と朝木を登場させなかったのか。TBSは矢野に取材していたにもかかわらず、矢野を登場させなかった。私は「矢野と高野が同居している事実を知っているか」と記者に聞いた。すると記者はその事実を認識していたのである。だからおそらくTBSは、あえて矢野を表に出さなかったということだろう。

 これは当然、そのように要請したかどうかは別にして、矢野の意思でもあったにちがいない。一方当事者にこれだけの配慮をした上で、「善意の設置者」が作った保育園が「政争の具」によって開園が妨害されているという複雑なストーリーが、わずか数日間の取材で完成すると考える方がむしろ不自然である。

 平成15年3月31日、東京都がりんごっこ保育園の不認可決定を下して以降、市側は何度も保育園に足を運び、高野との間で認可の方向を探ろうとしていた(この市側の姿勢にはもちろん異論がある)。6月には3度保育園を訪ねている。その間、高野の側も市の指導に従うそぶりをみせたこともあった。ところが市との話し合いに並行して、高野は矢野とともに、一方的に議会を非難し、自らはまったく落ち度のない「善意の設置者」として、不認可の不当性を世論に訴えるための情報操作を画策していたことになる。市に対する裏切り行為であるという以前に、高野には最初から誠実に話し合う意思などなかったということである。市はナメられていたといってもいい。

 高野の背信行為はそれだけではなかった。『ニュースの森』の締めくくりは高野が東京地裁で提訴の記者会見を行う場面だった。提訴は高野が市側との話し合い自体を拒否するという明白な意思表示である。話し合いに応じるそぶりをみせながら、そのころ高野は矢野の指示のもと、訴訟準備を着々と進めていたのである。TBS(矢野も同様)が錦の御旗のように使った起案書に決裁印を押した市長の判断が重大な誤りだったことはもはや誰の目にも明らかだった。
 

(第8回へつづく)


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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第8回
高野博子自身の供述(1)


 平成15年6月17日、高野博子はりんごっこ保育園が認可基準を満たしているとして、東京都や東村山市などに対して不認可決定の取消および総額8661万4000円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

 東村山市が話し合いに応じようとしないのならともかく、市は議会の意思に反してむしろ開設に向けて話し合いを進めようとした。起案書に捺印して事業化の意思決定を行った市長としては、いったんは議会によって否決されたとはいえ、最終的に開園にこぎつければメンツを保つことができるとでも考えたのか。

 いずれにしても、市長や助役が保育園に何度も足を運んで話し合いを進めようとしたにもかかわらず、高野はなぜ提訴の道を選んだのか。整備、定員などの見直しがあったとしても、当時150名を超えるといわれていた東村山の待機児解消と「子育て支援に貢献」(平成15年2月18日付高野署名文書)し、「東村山の保育を改革し改善する」(同文書)ために認可保育園の開設を目指したというのなら、話し合いに応じることにいったい何の不都合があったのか。多くの市民が理解に苦しんだのはその点である。あるいは当事者同士にしかわからない微妙な事情があったのか。

 常識的にみれば、裁判に持ち込んだということは話し合いの拒絶を意味する。しかし、かといって、損害賠償の支払いだけでなく「不認可決定の取消」を請求していることからすれば、高野は開園を断念したわけではないらしいということである。東村山市や認可申請当時、その計画内容に深い懸念を表明した児童育成部会でもそう認識していた。

 とりわけ育成部会としては、これまで高野が情報公開を拒んできたのはなぜなのか、今後育成部会や保育関係者の意見を受け入れる意思があるのかどうか、また高野の保育に対する考え方などを直接確認したいという思いがあった。裁判がどう転ぶかわからず、仮に高野が勝訴すれば認可基準のみを根拠に育成部会で示された多くの不安を飛び越えるかたちで一挙に開園という事態もあり得ないことではなかった。そこで児童育成部会は高野を招致し、直接考え方を聞くことにした。これに対し、高野は今度はすんなり要請に応じたのである。

 それまで公式の場にはいっさい姿をみせなかった高野が、児童育成部会に参考人として出席したのは平成15年8月11日のこと。高野は不認可決定前の厚生委員会には「先約がある」として出席を拒んだが、はたして今回の出席は高野の姿勢になんらかの変化があったということ、すなわち保育関係者などの意見を聞き入れる用意があることを意味するものだったのかどうか。とにかく高野の唯一といえる生の発言をお聞きいただきたい。その後にりんごっこ保育園で起きたさまざまな事件を思い出しながら聞けば、よりいっそう興味も増そう。ちなみにこの日は、朝木直子が傍聴に来ていた。


高野博子参考人質疑(児童育成計画推進部会小委員会)

高野 みなさんこんばんは。(こんばんは) りんごっこ保育園の高野と申します。本日は、あの、まとまりのない話にならないように、あの、自分としてのメモを用意してまいりましたので、メモを読みながら、話をさせていただきたいと思います。

(開園に至る経過)

 それではあのー、私が東村山で保育園を開園するに至った経過、そこからお話し申し上げたいと思います。えーと、3年前でしたか、あのー、人を介して、あの、私のところに「東村山の保育を改革し、改善するため、ぜひとも自分の経験を生かして、本当の意味の子育て支援となる保育所を開設してほしい」との強い要請が寄せられました。

 熟慮した結果、2001年1月、東村山市の野口町にりんごっこ保育園を開設し、同年6月に児童福祉法に基づく認証保育所りんごっことして東京都の認証を受け、現在定員は19名で運営しており、経済的に少しでもあのー、子育て支援に貢献するために、保育料は0歳児から1歳児は月額の2万5000円、それから2歳児は3万円です。認可外保育所の中でも最も低い、えー、それはあの、保育者はもちろん全員有資格者です。で、栄養士も看護師も待機しております。

 あのー、嘱託医による健診も毎月行うなど、また職員の待遇もできるかぎり改善し、すばらしい保育が行えるよう、まあ自分としては、あのー、認可園並の職員態勢をとってきたつもりでおります。そういうことから、あのー、東村山の保育、とりわけ認可外の保育現場の改革、改善に少なからず寄与できているのではないかと思っております。

(保育に対する考え方)

 次に、保育に対する私どもの考え方をお話ししたいと思います。私は20年ぐらいにわたり、あのー、保育に携わってきており、その中には乳児院に勤務してきた経験があります。乳児院とはどういう施設かご存じでしょうか。あのー、その当時、私がおりましたときは、0歳児から2歳児までの18名の定員の園だったんですね。で、職員の数も同じく18名です。で、保育士は24時間勤務体制を整えております。

 それはあのう、園児というものは家庭から保育園へ通うわけですが、乳児院は保育士が、乳児院という言葉、つまり子供たちにとっては家庭なんですね。生活の場、そういうところになりますが、そこへ私たちは通うわけです。夜勤になったりとか、まあもろもろあるわけですが、要するに乳児院のあのー、保育士とは他人同士ではありますが、保護者とまったく変わりなく、園児とは実質上、親子の関係になってるわけなんです。

 ですからそのー、さきほどの組み合わせとか、そういうときには、自分の担当の先生が帰るとき、だいたい1歳半前後、まあそういうころには理解できますから、とても悲しい顔をするわけですね。で、もっとつらいのは、2歳になって乳児院を出なければならないとき、まるであのー、わが子の別れのようなつらさを日々体験させられます。

 当時あのー、乳児院の園長先生は口癖のように「子供はかわいいね。何にもいわないけど、ちゃんと見ていますよ。君たちの良いことも悪いことも、全部吸収しますよ。保育は愛情が大切ですから」と、常々おっしゃっておられました。つまり、たんに子供を預かるという態勢ではなく、愛情をもって接する、保育をするということを私たちはとても大切にしてきました。

 このような家庭の愛情を受けることのできない乳児院の子供たちとのふれあいを通して、子供たちの人格が形作られる上からも、乳幼児期の子育てがいかに大切であるかということを実感してきたわけです。これらの体験から、それこそ一人一人の園児が心ゆたかに、そしてしっかりとした人格を作っていけるよう、保護者のみなさんと手を携えて、保育者の立場に立った、愛情たっぷりの、家庭のぬくもりのある保育所、保育園、それを構築していきたい、そんな考えに立って、どの認可園にも負けない園になるよう、認可保育園を一刻も早く開園したいと考えております。


(第9回へつづく)



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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第9回

高野博子自身の供述(2)

(開園のきっかけと事業決定の経緯)

 次に、認可園を開園することになったきっかけ、そして園舎完成までの経過について、少しまとめてお話ししたいと思います。すでにお伝えしたとおり、あのー、私どもは0歳から2歳児までの認証保育所を運営しております。が、その園の保護者の皆さんから、3歳児以上の保育もぜひお願いしたいという強い要望が数多く寄せられてきました。そこで、昨年(平成14年)2月から認可開設に取り組みました。

 まず認可園のあのー、設置場所なんですが、それについては、市の担当の方にお問い合わせしたところ、当初の予定した設置場所は「市の保育所設置計画から適当ではない」ということで、保健福祉部長さんから昨年4月に「認可園を開設するのであれば、恩多町地域などに設置するように」と、その指示を文書でいただきました。

 そこで昨年の4月に紹介のあった当初予定の土地買収なんですけど、その交渉を開始しましたが、ところがその交渉は思いのほか難航しましてですね、仲介者の方には本当にご苦労をおかけしたわけですが、結局、10月末に至って断念せざるを得ないということになったんです。ですから、当初の事業計画も基本設計もすべて白紙となりました。

 そこで新たに事業予定地の紹介を受けて、昨年の11月の26日にようやく売買契約を結ぶことができました。そして、新たにこの時点で事業計画書を、あの土地の形状とか面積とか、代替施設などの使用関係をそろえて持っていきまして、で、市担当者に提出いたしました。

 次に、現在に至る状況についてですが、本年(平成15年)の4月1日に開園するという当初の目標を実現するために、ま、遅れを取り戻すべく、市担当者を通してですね、東京都担当者とその保育内容、その他教育理念について集中的に協議を重ね、そしてあの、東京都関係者から詳細な、本当にあの、こと細かな指示が出されました。その通りに従って何度も設計図面が修正されました。

 その結果、12月19日になってようやく認可権限を持つ東京都の担当者から、園はあのー、非常に設計図面のその状態を得ることができました。直接に東京都の担当者から、「図面はこれでいいですよ」ということ、「これでよろしい」という、そして「認可申請書類は2月には提出してくださいね」というふうに伝えられました。で、12月13日には、東村山市の理事者さん(市長)の決裁が下りまして、これを受けて、融資の決定、それから土地代金の決済、そして園舎の請負契約を行ったわけです。

(東京都の協議と園舎建設までの経緯等)

 次に、その園舎の建設についてなんですが、個人立の私立保育園ですので、私どもはその、全額公費負担の公立保育園とか、それから半額公費負担の社会福祉法人立とは異なりましてですね、園舎建設にあのー、施設の設備にまったく公費の補助措置がないんです。そのない中で、巨費を投入して建物を建てていかなければなりません。もちろん、大きな制約の中での建設となります。
 
 私の場合は遺産相続があったわけでもございませんし、少々の自己資金と、それから1億3500万の銀行融資ですべてをまかなわなければならないという事情もあります。まあ、私としましてはですね、私財を投げ打って、あのー、東村山の保育に寄与すべく開園に向けての努力を続けておりますが、東京都に提出しました償還計画では、元利返済期間が約10年間、それはほとんど収入は見込めないという、そこにある事情から広大な敷地は望むべくもなく、あのー、国基準および東京都保育所施設認可などの事務取扱要綱に反映して、最終的には東京都担当者の指示通りに、敷地を有効活用し、開園後の保育内容を前提として、工夫を重ねて、動線を考えながら、すでに完成しているとおりの園舎を建設いたしました。

 具体的に申しますと、建物にはあのー、なるべく間仕切りを設けず、つまり2階は多目的ホール兼用として園児たちがあの、トイレトレーニングを喜んでできるように、1、2階ともポッポトイレとしております。そのほかに工夫をして、園庭に砂場を設けました。すぐそばにある、2000平米以上もあるんですが、その大岱公園を屋外の遊戯場、代替施設として活用すること、それから夏期には園の脇で、外に出るとすぐそばにある運動公園プールを活用することも考えました。

 また、調理室にはあのー、電解水生成装置というものを設置しまして生野菜の殺菌も可能とするなど、最先端の衛生管理システムを導入しました。で、そのほかには園児には歓迎される内容となっていることなど、それから防災面では、国基準や都要綱に適合した屋外の避難用滑り台を設置しました。消防等検査にも合格しております。土地の狭さを克服する設計内容となるよう工夫された点も含め、園舎の設計などはすべて東京都担当者の指示に従って行われていることを改めてお伝えしておきたいと思います。

 園の建物は、必要な手続きを取って1月16日から着工して、3月半ばには完成しました。そして、建築指導事務所および消防署の検査も完了しました。一方、あの2月7日に保育園設置認可申請を行いました。ところが、その認可権限を持つ東京都は、設計図面などを、まあ本当にこと細かに、詳細にですね、指摘して、承認した上で、必要な提出書類もすべて受理しているにもかかわらず、3月31日になって、わざわざ、あのー、「本来認可すべきであるが」と私ども設置者の責任ではないと断った上で、市議会と市の態度を理由に「認可しない」という処分をしました。

 りんごっこ保育園は当初4月1日を開園予定としておりましたが、すでに放置された状態が5カ月になろうとしています。あのTBSの報道にもありましたように、毎日のランニングコストは私個人の管理できる限度もあります。東京都の指示通りに設計図面を何度も訂正して、国基準それから都要綱に適して、適合し、適法に園舎を完成させたにもかかわらず、300人になろうとする多くの待機児がいる中で、いまだに放置されているこの理不尽については、最近は憤りすら感じております。

(議会決議等に対する見解)

 最後になりますが、特にお伝えしたいことがらが2つほどあります。まず1つは、あの2月24日の市議会で行われました決議、それについてなんですが、さきほどらい申し上げております通り、うちの保育園というのは園舎の設計図面を含めて東京都の担当者からきちんと詳細な細部にわたる指示を受けて何度も訂正された結果、完成しておりますので、りんごっこ保育園は児童福祉法の45条1項に基づく国基準、そして児童福祉法35条4項の認可権限に基づく都要綱に適合していることは申すまでもありません。

 ところがこのりんごっこ保育園についてですね、市議会の2月の決議は、「劣悪な保育環境」と決めつける内容になっています。ここでぜひお伝えしておきたいのは、東京都の担当者の方々が「国基準は劣悪な保育環境ではありませんよ」ということなんですね、これを強く指摘していたことです。

 そして、あの、法的拘束力がある国基準よりも規制を厳しくするような東村山独自の設置基準を作るよう市議会が求めている件についても、認可権限を持つ都道府県でも政令指定都市でも、そういった都市でもないこの東村山市が独自の保育所設置基準を作るということは違法で、あの市議会の決議は誤りだと、このようにおっしゃっておられました。このことはぜひあのー、紹介しておきたいと思います。

 2つ目なんですが、本日の専門部会を含めて、あのー、そのあり方も問題というか、まあそういうことなんですが、今年の春までの経過を振り返ってみますと、たとえばこの私どもりんごっこ保育園の認可などの、この許認可の問題ですよね、この許認可保育園の参入規制を設けるような問題などは、結局、先行してすでに市内の、あの保育事業に関わっている方々の利害に、直接とか間接とか問わずに、なんらかの影響を与えかねないことがらですので、たとえばあのー、失礼なんですが、部会長さんの新保先生のような市内の保育事業に関わりをお持ちでない方々が構成されるこの純粋な第三者機関で話し合われるのでなければ、新規参入というものに対して不当に権利を制限して、企業を担ぐということになってしまうんじゃないか。また、極端な場合には、損害さえ与えてしまうのではないか、というふうな危惧を感じております。

 ただいま、かいつまんでいくつか申し上げましたけれども、なにぶん提訴して、現在は係争中ということもありますので、そのー、御質問にお答えできかねることがらもございます。あらかじめご了承いただきたいと思います。私からお話ししたいことは以上です。ありがとうございました。




(第10回へつづく)

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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第10回

「全額借金」を事実上認めた高野

行政に対する婉曲な脅し

 読者は高野博子が児童育成部会で述べた説明をどう聞いただろうか。いろいろな受け止め方があろうが、私が総体的に感じたのは、半年以上にわたり多くの東村山市民、議会、行政を大混乱に陥れ、東村山市政始まって以来の予算修正という事態をもたらした一方当事者であるにもかかわらず、最後まで高野の口から遺憾の意が示されることがなかったことに対する違和感である。

 高野が児童育成部会で読んだ原稿が仮に高野以外の人物によって書かれたものだったとしても、保育という公益事業を行おうとする者なら、お詫びの一言があってもおかしくない。なにか基本的な常識に欠けるといえばいいのだろうか。

 保育関係者や議会が情報開示を求めたことに対し個人立を理由に拒否したことについての釈明もない。それどころか最後に、育成部会のメンバーが保育園業界の利害関係者であり、りんごっこ保育園の認可に疑義を呈すること自体が新規参入を制限しようとするものなどと非難するに至っては、たんなる自己弁護を通り越して、相手を貶めることによって自己を正当化しようとするきわめて特異な自尊意識を感じさせた。

 興味深いことに、自己の責任についてはいっさい認めない点において、また他人を見下して自己を正当化させる点において、高野は同居人である矢野穂積に共通する性向の持ち主のようだった。もちろん児童育成部会の委員から、りんごっこ保育園を1日でも早く開園させるべきという意見は出なかったし、傍聴人の中にも高野の説明に納得した者は朝木直子ただ1人を除いて誰もいなかった。

 読者は、高野の説明の中に「東京都の指示に従って」という文言がことあるごとに出てくることに気がつくだろう。土地購入後の園舎設計図面の作成から建設、運営計画、さらに園舎の建設に至るまですべて東京都の指示に従って計画を進めてきたのであり、自分には何の落ち度もないと高野は主張しているのだった。

「東京都の指示に従ってきた」とする高野の説明にはもう1つ重要な意味があったのではないか。計画のすべての段階で東村山市保健福祉部も関与している。つまり高野のこの発言は、行政の指示どおりに進めてきたことを公の場で明かにするという以外に、行政側も今回の計画に関与してきた当事者であること、すなわち東京都も東村山市もいまさら不認可になった責任を自分だけに負わせることはできないという婉曲な脅しのように思われた。

 では高野はその後、これまで市議会などで問題にされてきた点についてどんな説明をしたのか。続く質疑応答から順を追って見ていこう。もちろんこれから先の原稿はない。高野自身の生身の答弁である。


(「経済的基礎」と返済計画について)

井村委員  東京都の業者向けガイドラインの8ページ、「社会福祉法人以外の者による認可保育園に対する審査の基準」の中には、「必要な運営開設資産があること」とあります。「経済的基礎」という部分なんですが、今、高野先生は「私財を投入した」といわれたわけですが、銀行から1億3500万円の融資を受けて土地を購入し、建物を建てた。これが「経済的基礎」かどうかというところの判断は、行政の方はどのようにお考えなのか。高野先生には「借金でいいですよ」というふうな話をされたのか。どなたかお答えいただければと思います。

(行政側は誰も手を挙げず)

高野  いいですか? あのー、ええっと、全額融資金でいいですか、ということですよね。あのー、東村山は、ええと、株式会社の「わくわく」さんができ、それで、まああのー、そういう保育環境ができたんですと、ですから、市の財政困難な折に、東京都の方から待機児解消を進める、そういう指導になってましたよね。で、それについて、市民の中であったんですけど、市の財政困難で、市の方は今お金がないと。

 まあ、私はさきほど申しましたけど、あのー、ほとんど10年間というものは認証(保育園で)食べるような状況になるわけですが、もちろんそれでも、そこはやっぱり国の保育を手伝いますという考えがありましたので、そのときに、あのー、ま、……ちょっとはっきり覚えてないんですね。いわれましたのは、「土地も建物もご自分でやられるんですか、市の方は今財政が重いんですよ」と、そんな話がありました。で、私は自分でそれなりに、うん、あのー、「建物とそれから園舎は私の負担で」という話は最初の方にしたことがあります。はい。


 行政側から誰も手を挙げる者がいなかったのは、当然だが、融資を「資金」というのは無理だとわかっていたからだろう。結局、高野が答えることになったが、高野の答弁は質問に対する回答にはなっていないことがわかろう。

 それどころか、高野は早くもちょっとしたボロを出した。答弁に立った高野は「全額融資でいいんですかということですよね」と確認したが、質問者は「全額融資でいいんですか」とは一言もいっていない。高野はその後も、そう聞かれたと思い込んだ質問自体を否定せず、内容はともかく、「全額融資でいいんですか」という質問だったことを前提に答弁を続けたのである。

 高野も矢野も朝木も、これまで保育園開設のために「私財を投じた」と説明してきた。それが事実なら、「全額融資でいいんですか」という質問内容をすぐに訂正すればよかろう。ところが高野は質問をいっさい訂正しなかった。この事実は、高野がそれまでことあるごとに述べていた「私財を投じた」とする説明がきれいごとにすぎず、事実は土地・建物代金など保育園開設資金が「全額融資」によるものだったことを自白したに等しかろう。つまり東京都も東村山市も、「全額融資」を「開設に必要な資産」とみなしたということらしかった。


(第11回へつづく)



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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第11回

給料に名を借りた「資金洗浄」

 続く質疑をみよう。


井村  償還期間は10年ですか。

高野  一応、10年です。10年ちょっとか10年に足りないぐらいの幅です。

井村  それは完済しなければ、高野先生の本来の財産にはならないわけですか。

高野  ええ、そういうことですね。

井村  そういうことも考えられますね。

高野  そういうことです。

井村  ということは、今現在、その土地・建物は、金融機関の抵当物件であるということですね。そうしますと、1億3500万円を10年で返済できるというふうな見込みを考えられたわけですが、その根拠をお聞きしてもいいですか。

高野  ええっとー、あの、協議のときに最初から銀行さんが入っておりました。で、こんなこといっていいのかな、あの、入っておりました。で、あの、できる範囲の償還計画に対しても、東京都さんのこと細かな指示がありました。それで、あのー、まったくこちらの収入というのは、ほとんどといっていいほどありません。でも、保育にかける情熱はまったく衰えておりません。そんなところでお答えになるかどうかわかりませんが。

井村  企業の場合、これだけの借入をする場合、返済期間はだいたい20年というのが普通ですね。そういうことで、非常にちょっと無謀な返済計画だな、ということは逆にいえば、金融機関は魅力があったわけですね。そういうふうに思います。つまり、安定的な収入がある、それは何ですかと考えたときに、安定的な補助金、いってみればそれを担保に取るというふうな考えがあったのかもしれません。ただし、補助金ですから、それをそのまま返済に充当することはできないというところまで金融機関が判断したのかどうか。いずれにしても、金融機関側としては、補助金を担保に取ったのかもしれません。

(このとき朝木が傍聴席から)
「わけのわからないこといって」


 高野が最初に「土地も建物も自費で」と申し出たとき、東村山市と東京都はそのすべてが銀行融資によるものであると明確に認識していたのかどうかはわからない。しかし東村山市も東京都も、たましんが融資を決定した時点で、高野には保育園を開設するために必要な個人資産と呼べるものはないことだけは認識したはずである。

 井村委員が述べたとおり、厚生労働省通知「保育所の設置認可等について」は社会福祉法人以外の者から認可申請があった場合の審査基準の1つとして、

ア 保育所を経営するために必要な経済的基礎があること
イ 経営者が社会的信望を有すること

 と規定している。公益施設である保育園には継続性がなければならない。そのためには一定の経済的基礎が必要とされているのである。すると行政は1億3500万円の融資決定をもって高野には必要な個人資産があると判断したことになるが、その判断は正当なものといえたのか。

監査委員も「公金による私財形成のおそれ」と指摘

 また用地については自前で用意することとされており、土地代金に対する補助金は支弁されない。従来、寺院や個人の篤志家が保育園を経営している例は多い。その場合はいずれも十分な土地を保有しており、その基礎の上に保育園を経営している。仮に保育園の土地が差し押さえられるような事態になれば、保育園の運営自体が脅かされる。そうならないためにも、個人が保育園を経営する場合には土地は自前で用意するのが原則なのである。「土地は自前」の原則には憲法上の理由もある。憲法89条は公金の私的利用を禁じており、土地の取得に関しては補助金はいっさい出ないことになっている。井村が行ったこの質問は、厚生労働省が規定する「経済的基礎」の問題のみならず用地取得に関する憲法上の問題を含むものだった。

 高野の答弁の中で注目されたのは、「協議のときに最初から銀行さん(多摩中央信金)が入っていた」ことを明らかにした点である。たましんにとっての最大の関心は、どこまで確実に補助金が支払われるか、貸付金が無事返済されるのかという点だったのは疑いなかろう。補助金さえ確実かつ永続的に支払われるのなら返済が滞る心配はない。保育園の運営が適正に行われることが前提であるとはいえ、補助金の支払いを保証するのは行政である。たましんは順調に認可が下りるかどうか、また認可後に一定程度補助金の支払いが補償されるのかどうかを確認したかったのだろう。

 高野は「こんなこといっていいのかな」などと前置きした上でたましんが協議に立ち会っていた事実を明らかにしたが、これもいわば、事実上、融資の保証をしたのが行政である、すなわち行政も今回の契約に深く関与していることを公の場で念を押したということではあるまいか。

 たましんの融資1億3500万円に対し、土地の担保価値はせいぜい6000万円である(上物はゼロに等しい)。したがって、たましんは担保価値を超える額を融資するわけだが、それには相当の補償がなければなるまい。井村のいうように、それが認可(つまり補助金)だったと考えるのはきわめて自然なのではないか。とすれば、現実に存在しないものを担保にしたこの融資契約が正常なものだったといえるのか。また、補助金を原資にして土地・建物の融資を返済することが憲法89条の理念に反するものとはいえないのか。

 井村の発言に対して朝木は「わけのわからないことをいって」と野次を飛ばしたが、高野とたましんの間の契約であるにもかかわらず、その担保は補助金だったとしか考えられず、すなわち民民の融資契約に官が事実上一定の担保補償を行ったという特異な契約の実情を十分に理解していたのだろう。

 憲法89条との関係で土地代は補助金による返済が禁止されているため、返済計画では土地代は高野の給料から返済することになっている。給料をどう使うかは個人の自由だから問題なしとするのが行政の見解である。

 しかし、融資契約成立の前に補助金額が確認されていること、社会通念上の制限はあるとはいえ、高野の給料を決めるのは高野自身であること、高野の給料が返済計画の段階ですでに土地代金として計上されていることなどを総合的にみれば、高野の給料の実体は補助金そのものであり、この計画は給料に名を借りたマネーロンダリングを容認するものなのではないか。高野の場合、土地購入以前から継続的に受領していた通常の給料から土地代金を支払うというのとはわけが違おう。

 のちに監査委員会が「公金による私財形成のおそれがある」と述べたのは、監査委員からみても、明らかに違法とまでは断定できないものの、100%肯定できるものではないと感じたからにほかならない。日本には給料の性質までを規定する法律は存在しないのである。


(第12回へつづく)

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