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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

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創価問題新聞事件 第6回
東村山署ではなく地検でメニューを変更した不思議

「創価問題新聞」裁判は提訴から丸4年後の平成19年12月18日結審となるが、最終準備書面を除き、矢野と朝木は彼らが主張する明代の「万引き冤罪」と「他殺説」の具体的な根拠に関してはほとんど踏み込まなかった。平成7年10月7日行われたアリバイに関する矢野の取り調べをめぐる反訴についても、千葉が別訴で提出した陳述書の内容が虚偽であると主張するのなら所持している録音テープを(改竄しない状態で)提出すれば話は早いと思うが、矢野は最後までテープを提出しなかった。

 平成7年7月12日の取り調べで明代が「レギュラーランチ」のアリバイを否定されたことを知った矢野は東京地検八王子支部での取り調べで「日替わりランチ」だったとメニューを変更した。そもそも明代は7月12日、取調室を退去する際、「もう1度調べさせてください」と言い残した。にもかかわらず、矢野はなぜまず最初に東村山署に「メニューが違っていたこと」を申し立てず、地検八王子支部でメニューを変更したのか。

 矢野は明代が東村山署でアリバイ主張が崩され、明代がそれまでの主張を「なかったことにして下さい」と自らすべて撤回に追い込まれた経過を知っていた。だから、いまさらメニューを変更してもそれが言い逃れにすぎないことを簡単に見破られる恐れがあることを予測していたのだろう。東村山署が万引き当日のすべての売上記録(レジジャーナル)を調べ上げているとすれば、「日替わりランチ」の主張もその場で否定されかねない。そうなれば、メニューの変更は矢野と明代のアリバイ工作の意図をより明らかにすることとなるのである。

メニューを切り出さない矢野

 そうならないためにも矢野は地検で主張した「日替わりランチ」の主張を東村山署では、できればしたくなかったようにみえる。平成7年10月7日の取り調べは次のようなやりとりから始まっている。



矢野  あの、何? 「レジの記録」の話?

取調官  そこらへんから、やった方がいいでしょ。

矢野  ええ、まあ。

取調官  時間がほら、たとえば1時間2時間あればね。

矢野  ええ。

取調官  あれでいいんだけど。

矢野  あの、「レジの記録」が間違ってる、といいたいの?

取調官  いや、そうじゃなくて、そういうことじゃなくて。

矢野  どういう?

取調官  あの、いわゆる1番問題は、まあ、あの、朝木先生もおっしゃってたしね。

矢野  ああ。

取調官  あるいは、矢野先生もおっしゃってたと思うけど。

矢野  うん。

取調官  うん、それはアリバイのこと。

矢野  うん、そうそう。



 10月5日、矢野は東京地検八王子支部での取り調べでアリバイについて「明代の供述した『レギュラーランチ』は誤りで実際には『日替わり』だった」とメニューを変更した。それなら10月7日、取調官の顔を見るなり「食べたのは実は『日替わり』でした」と主張してもおかしくない。ところが妙なことに、それほどの「確信」とは裏腹に矢野はなかなか自分から「日替わりランチ」とは切り出そうとはしない。



取調官  うん、だから、私はそれは、「アリバイありませんよ」と、こういったの。だから。

矢野  うん。「アリバイがない」っていうのは? だから、その決め手は?

取調官  あ、そ、それはね、確かに、あのう、ほら、朝木先生にこれもらったの(注・「レギュラーランチ」のレシートか)。

矢野  ああ、これでしょう? これは違うんだっていってるじゃないよ。

取調官  そうすると、これ、どう違うかですね。

矢野  それは食べたもんじゃないんだもん、こっちの。

取調官  ところがね、それじゃ、食べたもんじゃない、そうすると?

矢野  食べたものが違うの。

取調官  あっ、そう。うん、じゃ、そこら、まあそのへんから聞いてみます。食べたもんが違うんだと。

矢野  うん。

取調官  まあ、アリバイでね。

矢野  ああ、そう。

取調官  そうすると……。

矢野  これの、レジが……。

取調官  これ、これが。じゃあね、7月12日に出したのと、違うってわけね。

矢野  そう、それ違うの。これは間違って、店長が、つまりこちらの言い方もまずかったんだけど。だから、こういうものあるかって聞いたときに、向こうもあのう、正確な聞き方してないわけですよ。こちらも正確な言い方をしてないわけ。

取調官  なるほど。

矢野  それはしょうがないじゃない。9月30日、ああいや、えっと、何だっけ、6月30日、6月30日だっけ。

取調官  うん、そうそうそう。

矢野  その、あなたに最初に呼ばれて。

取調官  うん。

矢野  朝木さんも、すっぽりこれ抜けちゃってんだから、カッと来てて。

取調官  んーまあ、そうだね。

矢野  そりゃそうでしょ。



 矢野はまだ自分から「日替わり」を切り出さない。むしろ「決め手は?」と逆に質問し、警察がどこまで裏付捜査をしているのか、「日替わり」を出して大丈夫なのかどうか、探りを入れようとしている様子がうかがえる。


(その7へつづく)


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創価問題新聞事件 第7回
レシートのメニューを確認しなかった理由

 ここ(前回掲載の取り調べ内容)では、「こちらも正確な言い方をしなかったせいもあるが、店長が間違ったレシートを渡した」とする趣旨の供述をしている点も注目される。

 矢野が「聖教新聞」裁判で提出した平成11年5月31日付陳述書によれば、矢野と明代がこのレシートを店から受け取ったのは平成7年7月1日深夜である。その経緯について矢野はこう述べている。

〈その「レジ・ジャーナル」を見ると、店を出た時刻は15時21分となっていたので、おおよその記憶と一致していたので、特に質問もしないまま、帰宅しました。〉

 明代がそのレシートを警察に提出したのは7月3日である。ということは、レシートを受け取ってから警察に提出するまでに丸2日もありながら、矢野と明代は「レギュラー」と書かれてあるそのレシートが「日替わりランチ」のレシートかどうか確認もしなかったということになる。それによって明代のアリバイが証明されれば万引き容疑は晴れるという重要なレシートであるにもかかわらず、メニューも確認しなかったとは、いつも冷静で思慮深い矢野にしてはちょっとうかつである。

 しかし、別の見方もあろう。矢野と明代にとって重要なのはメニューではなく万引き現場にはいなかったことにすること、すなわち別の場所にいたことの「証明」ができればよく、矢野がメニューはどうでもよいと考えていたとすれば、矢野がメニューを確認しなかったことにも合理的理由があったということになる。

 だから矢野が取調室でいうように、明代がレストランにレシートがないかと問い合わせた際にも「正確な言い方をしなかった」。7月12日まで明代が「レギュラーランチ」を主張したのは、受け取ったレシートの表示がたまたま「レギュラー」だったからにすぎない。明代はレシートのメニュー表示に合わせ、メニューの内容を店のパンフレットからきわめて正確な記憶力でみごとに暗記し、取調室で供述した。そのアリバイが崩れると今度は矢野が「日替わり」に変更したということである。

 ちなみに、レストランの店長は朝木から電話があった際、朝木は「食事の内容についてはあいまいな言い方をした」と証言している。したがって、取調室における矢野の「こちらも正確な言い方をしなかった」という供述はめずらしく事実に近いものだったことになる。

今度は店長に責任を転嫁

 ところが一方、平成7年10月7日には取調官に対して「こちらも正確な言い方をしなかった」と供述しているにもかかわらず、矢野は平成11年の陳述書ではこう書いている。

〈朝木議員が、すぐに事務所から「びっくりドンキー」に電話をかけ、6月19日の午後2時から4時の間で、「日替わりランチ」とコーヒーを注文した2人組のレシートの控えがあると思うので、探しておいてほしいと依頼したのです。朝木議員がこの電話をかけた際、私はそばで聞いていたので、その様子ははっきり覚えています。〉

 取り調べから4年後の陳述書では「正確な言い方」をしていることが明らかである。たった1つの事実を説明するのに、取調室での供述と陳述書ではなぜこれほど違いが出るのか。

 取調室の供述の時点では矢野はまだ「日替わりランチ」の主張をしておらず、矢野はまだ東村山署の捜査状況と取り調べの成り行きについて探っている状況にあった。ところが陳述書の段階ではすでに「日替わり」も否定されており、明代は「何の落ち度もなく誤ってレギュラーランチのレシートを提出してしまった」ことにしなければならなかったということではあるまいか。

 そのために矢野は、今度はレストランの店長に対してもまるで明代が書類送検された原因を作ったかのように主張したということである。たまたま矢野と明代が行ったことがあるというだけで明代からの電話を受け、背景も知らないまま客の要望に応えただけで責任を転嫁されてしまうのだから、店長もたまらない。店長は電話の主が人の善意も平気で踏みにじり、利用しようとするきわめて特異な市会議員であろうとは考えもしなかっただろう。

(食べたメニューは)「勘弁してもらいたい」

 さて、取り調べの続きをみよう。



――中略――

取調官  そうすと、これでいくと、時間とかそれはもう関係ない、食べ物も違うということですね。

矢野  そう、そうそう。

取調官  そうすると、まあ、ここで聞きたいのは、あの。

矢野  アリバイの理由?

取調官  うん、そう。食べたものが違うっていうことでしょ。

矢野  そうそう、違う。

取調官  食べたものが、ああ、そうすると、矢野先生方は何を食べたんですか、この日。

矢野  いいたくはないんだけど、調べたいの?

取調官  いや、そうじゃなくて、どうなのかって聞いてるの。あの、もしあれだったら、まず1番のそれは。

矢野  それでね、それについては、あの地検ではいったんだわ。

取調官  うん、うん。

矢野  地検ではね、この話を。だからそれはちょっと勘弁してもらいたいんだけれど、それ以外にもね、あるの。

取調官  うん、ああ……。

矢野  こちらが、ほら。

取調官  他にやったところ……。

矢野  いやそうじゃなくて、3時15分にあの現場に行ってないという、ものがあるんですよ。客観的に一応こちらで。

取調官  ああなるほど。そうすっとこれは、あれですね、あの、ド、ドンキーじゃなくて。あ、ドンキーには行ってるわけ?

矢野  ドンキーは、飯、食ってるの。

取調官  あ、ドンキーは間違いないわけ。

矢野  その日の午後、行ったのはね。私はとにかく、議会が終わってから、とにかくドンキーへ行って、事務所に帰って来たの。

取調官  うんうん。

矢野  彼女が、要するに、銀行振込をしてるわけでしょ。それと、ドンキー行って、帰ってる。それだけしか、3ヶ所しか行ってないんだもん。

取調官  なるほど、なるほどね。

矢野  だから、これ(レジ・ジャーナル)は、これはもう、アテにしない方がいいの。

取調官  ああ、なるほどね。

矢野  お互いに不幸な結果になるから。



 矢野は明代が7月12日に提出したレシートとは食べたものが違う(すなわちレシートも間違えた)という。そうなれば次は、では「食べたのは何だったのか」となるのが当然の流れというものである。ところが矢野は「地検ではいったんだわ」「だから、ここでいうのは勘弁してもらいたい」といい、「それ以外にも(アリバイが)ある」と話を別の方向に持っていこうとしている。ほかにもアリバイがある、「これ(レジ・ジャーナル)はもう、アテにしない方がいい」とは、レシート以外にアリバイを立証できるということだろうか。

「お互いに不幸な結果になる」とは、一種の脅しのようにも聞こえる。あまりレジ・ジャーナルの記録にこだわらない方がいい、レジ・ジャーナルでアリバイを崩そうとしても失敗するよ、という趣旨だろうか。いずれしても矢野は懸命にレジ・ジャーナルから取調官の目をそらそうとしているように思えてならない。


(その8へつづく)




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創価問題新聞事件 第8回
得意の論点のすり替え

 もともと、レジ・ジャーナルの記録に基づいてアリバイを主張したのは明代の方であり、東村山署がアリバイを証明しろといったわけではない。したがって東村山署が、「お互いに不幸な結果になるから」、あまりレジ・ジャーナルの記録にこだわらない方がいいなどと矢野からいわれる筋合いの話ではない。本来なら取調官は「アテにしたのは明代の方ではないか」と反論してもよかった。しかし、取調官はあわてなかった。取調官は「うん、じゃ、これしない(アテにしない)」とあっさり矢野の言い分を受け入れたのである。続くやりとりを見よう。



矢野  ただ、これはね、だからあの、誰だっけ、店長も、あの、いい加減なもんじゃないかって、いってんじゃないかと思いますよ。つまり、こちらであるかないかという点では。

取調官  うん。

矢野  そういうこと。

取調官  そうすっと、まあね、ええ、これ(レジ・ジャーナル)はきちっと合わせないで、時間的ね、たとえば、ええ、ドンキーに行った時間。

矢野  そうそうそう。



 矢野のいう「いい加減なもんじゃないか」というのは、「レギュラー」だろうが「日替わり」だろうが、同じ時間帯にたくさん注文があるからメニューの間違いはあり得るという趣旨だろう。この時点では矢野はまだ、万引き事件の時間帯には「日替わり」の客もいるはずと勝手に思い込んでいたのだろう。取調官はしばらく矢野に適当に合わせようとしたようである。



取調官  ね、ドンキーに行った時間っていうのはだいたい何時ごろ?

矢野  ええと、だから、このだから。

取調官  これは。

矢野  はっきりいってね、はっきりいって、2時40分から3時2、30分の間は、これはね、食事をしたと考える以外にないんですよ。アリバイをこちらが工作したなんて書いとかないでくださいよ。工作のしようがないんだから。これだって、なんで工作できんのよ。

取調官  うん。

矢野  店長にいったら、これが出てきたから、そのままそっくり3日に渡した分じゃない。

取調官  うん、そうそうそうそう。

矢野  そうでしょう。これ、3日に私が、あの、課長に渡した分じゃない。

取調官  そうそう、そうそう。

矢野  隠す、隠し立てする必要ないじゃない。



「日替わり」を認めざるを得なくなった矢野

 明代は提出したレシート自体には確かに変造したりといった「工作」の形跡はない。しかし、行ってもいないレストランのレシートを提出して「行った」と言い張れば、これは立派なアリバイ工作になる。取調官はやんわり話をメニューに戻していった。 



取調官  うん、ないない。うん、だからまあ、これ、違う。ね、ということは、まず違うっていうことは、食べ物が違うってことでしょ、これ。

矢野  食べたものが違うの。

取調官  違うのね。

矢野  これ「レギュラーランチ」とか書いてあるのね。これ、あとで教えてもらったの、12日に。

取調官  ああ、なるほど。

矢野  あなた、「じゃあ、調べてきます」って、朝木さん、いって、帰ったでしょ。

取調官  うん。

矢野  で、そのあと、その足で行ったんだもん。

取調官  うん、ああこれね。

矢野  これ。

取調官  あ、そしたら「レギュラー」になってたわけだ。

矢野  「レギュラー」、これ「ランチ」っていうのは、どういう意味かって聞いたら、聞いたら「レギュラーランチ」だっていうから、ああ、じゃ、食ったのと違うって話になって、初めてそこではっきり確認できたの。

取調官  うん、そうすっと、食ったのと違うってことになると、んー、矢野さんとそれから、ええ、朝木、朝木さんは、ええ、「日替わり」を食べたっていうことですよね。

矢野  まあ、そういうことになりますよね。誰に聞いたんですか? それと、あと、何か食べてんだけど、あの、飲んだり食べたりしてんだけど。



「食べたものが違う」、そういいながら矢野は、けっして自分からは何を食べたのかはいわない。矢野が自分から「日替わり」といわなかったのは、万引きの時間帯に日替わりを食べた客はいるだろうとは期待していたものの、確証が持てなかったからだろう。だからこそ「(何を食べたのかをいえば)互いに不幸になる」などと取調官を揺さぶったりもした。

 しかし、自分から「食べたものが違う」という認識に至ったとする具体的な理由を自白し始めたことで、食べたものが何だったのかについていわなければならない状況へとしだいに追い詰められていったようである。取調官から指摘されてごまかしきれなくなった矢野はついに「食べた」ものが「日替わり」だったと認めざるを得なくなった様子がわかる。だがこの時点では、万引きの時間帯に「日替わり」が売り切れていたことを矢野はまだ知らされていない。


(その9へつづく)



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創価問題新聞事件 第9回
最初から「日替わり」だったことにしようとした矢野

 矢野は取調官から指摘されて、万引き事件の時間帯に「食べた」のが「日替わりランチ」だったということをようやく認めた。しかし矢野は、明代が7月12日に主張した「レギュラー」が否定された時点で、矢野も明代も食べたものは「日替わり」だったと認識していたが、店長が間違って「レギュラー」のレシートを渡してしまったために明代が自分のものとは異なるレシートを提出してしまった、という話にしようとしていたようである。書類送検後にメニューを変更したのではなく、店長が間違ったのだと。矢野は「聖教新聞」裁判で提出した平成11年5月31日付陳述書で次のように供述している。

〈同年(平成7年)7月11日、○○代理(取調官)から「明日、いつでも都合をあわせるから、もう1度だけ来てほしい」との連絡があったので、朝木議員は12日午前に東村山署に出向きました。

 その際、朝木議員は、課長代理から指摘される前に、7月3日に提出した「レジ・ジャーナル」は店長が間違えて渡して寄越したものであることを自ら伝えて「必要なら再度調査して、店長に間違いないものを出してもらい、また出向くことにしますがどうしますか」と伝えたところ、課長代理は「ではそうしてください」と同意し、朝木議員は東村山署を出たのです。〉

 しかし、「明代が課長代理から指摘される前にジャーナルが間違いであることを伝えた」とする矢野の陳述書の内容が虚偽であることは次の取調記録からも明らかだった。

見え透いた改竄

 矢野が自らの取調記録の反訳を裁判所に提出したのは、「7月12日の取り調べで明代が自らレシートの誤りを指摘していた」すなわち、明代も7月12日の時点ですでに、食べたのは「日替わり」だったと認識していたことにするためだった。それが前回に続くやりとりの場面である。その様子をみよう。



取調官  うん、これは、あの、あの人がいってたの、朝木先生が。

矢野  ああ、そのときいったの?

取調官  そうそう。

矢野  12日に?

取調官  うん。

矢野  じゃあ、もう聞いてんじゃないよ。

取調官  うん、だから、それ(食べた「日替わり」)はこれ(「レジ・ジャーナル」の写し記載)ですねって、私、確認したの。

矢野  「日替わり」じゃないじゃあない。

取調官  いや、だから、それ(食べた「日替わり」)は、これ(「レジ・ジャーナル」の写し記載)ですねって、聞いたの。

矢野  聞いたら、なんていったの?

取調官  ああ、そしたら、一瞬見ながら、ああ違いますってこう。

矢野  だったら、もうそのときわかってんじゃない。

取調官  いや、だから、いや、だから、それは、だから……。

矢野  どうして書類送検なんかするのよ。

取調官  いや、いや、書類、すぐ出してらっしゃいと。「すぐ持ってきます」、こうだったもん。で、待ってたの。

矢野  ところが、待ってたって、その日に送っちゃったんじゃない。

取調官  いや、待ってたの。

矢野  その日に出すっていったの? うそでしょ、それ。

取調官  いや、いや、「すぐ持ってきます」って。

矢野  「すぐ持ってきます」って?

取調官 「すぐ持ってくる」って。

矢野  いや、それはちょっと違うよ。

取調官  ああそう。まあ……。

矢野  私、その足で行ったもん。

取調官  まあ、まあ、今いってもしようがないけどね。

矢野  それでね、その日、行ったんですよ、すぐ足で。行ったら、全部おたく(警察)が全部持って行った。持って行って、「ない」っていうんだから。それじゃ話になんない。

(※上記太字カッコ内はいずれも矢野による注釈)



 矢野は取調官から「日替わりですね」と聞かれてやっと認めたが、「日替わり」と供述を変えたことの不自然さを説明するために、あらためて7月12日の明代の供述について話そうとしているのが取調官の最初の発言である(「うん、これは、あの、あの人がいってたの、朝木先生が」=この発言中、「これ」とは「レギュラーランチ」を指している)。しかし矢野は、この部分のやりとりを、「7月12日の時点ですでに明代が『日替わり』といっていた場面にしようとしている。

 それがカッコ内の(食べた『日替わり』)と矢野が付加した注釈で、これは裁判所を欺くための工作にほかならない。この場面で取調官が「それ」といっているのが「レギュラーランチ」を指していることは、続く矢野の「『日替わり』じゃないじゃあない」という発言から明らかである。つまりこの場面は、矢野が「日替わり」だったといったのに対し取調官が、明代が7月12日、食べたのは「レギュラー」だと供述したこと、その証拠がすでに提出されていたレシートであると明代が主張していることを確認したことを矢野に説明しているやりとりなのである。


(その10へつづく)



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創価問題新聞事件 第10回
狭められた包囲網

 さて、矢野は「レシートを間違えた」ことを前提に、店に行ったもののジャーナルはすでに警察が押さえていて確認できなかったと言い訳しているが、取調官はもう矢野には付き合わず、やんわりと包囲網を狭めていった。とぼけた調子が悪くない。



取調官  それとね、それとね、たとえば、ええ、まあ、時間は少しずらしてもいいんだけど、これ、これは時間は関係なくね、今、あの、まあ、矢野先生がいうには2時40分ごろ、あるいはまあ、もっとさかのぼってね、もっとさかのぼって、あの、これ、もう1つ、これ見せてもらったんだけどさ。

矢野  ああ、キャッシュ(銀行振込明細書)の……。

取調官  キャッシュのね。

矢野  これ……。

取調官  これ、何分だ、これ、なんだ、14分か……。

矢野  14分? ん?

取調官  12分か。(銀行振込の時刻は)2時12分でしょ。

矢野  ああ、ああ。

取調官  ね、そうすと、朝木さん、朝木先生にもいったの。先生、これは、「行き」に寄ったんですか、「帰り」に寄ったんですか。

矢野  うん。

取調官  そしたら、「行き」だっていうんですよ。

矢野  たぶんそうだろうと思うけど、私は。時間的にそういうふうに考える以外にないんだから。

取調官  ないんでしょ、普通考えてね。だから、そう聞いたの。そしたら、間違いなく「行き」だと。ああそうですかと。

矢野  うん。



 取調官は捜査を指揮していた副署長の千葉英司から、矢野にはまず好きなようにしゃべらせろと指示されていたようである。これまでの取り調べで、まず矢野は、万引き事件の時間帯に矢野と明代がレストランで食べたのは「レギュラーランチ」ではなく「日替わりランチ」であると自白した。その上で、取調官はその時間帯について明代が提出した銀行振込記録を出してもう一度確認したことがわかる。

逃げ道をふさがれた矢野

 明代が銀行に立ち寄ったのがレストランからの「帰り」ではなく「行き」であることを認めさせた取調官は、さらに矢野を追い詰める。



取調官  そしたら、これ(銀行振込)に「行き」に寄ったっちゅうことになると、これよりは、ドンキーに行ったの、遅いってことですよね。

矢野  そうなりますよね。

取調官  ね、ね、そうですよね。

矢野  うん、うん。

取調官  2時12分より、遅いってことですよね。そうすると、もう1ついっていたのは、先生は2時12分より遅くドンキーに行かれた。さらに矢野先生よりはちょっと遅い。

矢野  ちょっと遅い、と思いますね。

取調官  うん、まあ、それいい。まあ、それ、わかってるから、いいと思いますよ。

矢野  ええ、いいですよ。



 取調官は矢野に対して、①「明代が銀行に立ち寄ったのがレストランに行く途中であること」、②「『日替わりランチ』を食べたのは銀行に立ち寄ったあとであること」、③「『日替わりランチ』を食べたのは銀行に立ち寄った時間である『2時12分』よりもあとであること」の3段階に分けて聞いている。矢野はこの3点の確認に対して「そうなりますよね」「うん、うん」「ええ、いいですよ」といずれも認めている。

 つまりこの時点で矢野は、「午後2時12分以降」に「『日替わりランチ』を食べた」ことについてはもうどうにも否定のしようがない状況に追い込まれているということになる。

 そうしておいて取調官が矢野に突きつけたのが「2時12分の時点では『日替わり』は売り切れていた」という事実だった(本連載第4回)。矢野が「ええっ? ウソっ!」と慌てふためいた理由もおわかりいただけよう。こうして千葉の捜査指揮のもと、矢野と明代は2度にわたり、みごとなまでにアリバイ工作を崩されたのだった。

「反訳」を提出した矢野の意図

 矢野は7月12日の書類送検について「だまし討ち」などと主張している。アリバイを否定された明代が、取調室を退去する際「正しいレシートを探してきます」といい、それに対して取調官が「ではそうしてください」と応じたたんなるやりとりをもって、その段階ではまだ書類送検はしないという意味であると明代と矢野が勝手に思い込み、にもかかわらずその日のうちに書類送検したことが「約束」に反するという趣旨らしい。

 矢野はこの取り調べの反訳書をアリバイを立証する目的と称して裁判所に提出したが、これには東村山署による書類送検が「だまし討ち」だったと主張する意図もあったようである。前回の取調記録の「レギュラーランチ」の部分を「日替わり」に改竄したのも、明代が7月12日の段階で「日替わり」を主張していたことにするためだった。そうすることで、明代が「レギュラー」のレシートを提出したのもたんなる「間違い」だったと思わせ、正しいレシートをもらいに行ったがすでに警察がすべてを押収していて探すことができなかった――すなわち東村山署は明代が「無実」を立証しようとするのを妨害した――というストーリーを組み立てることが矢野の狙いだったように思える。

 東村山署の書類送検を「だまし討ち」と批判するなら、その前提にはまず、明代が最初から「日替わり」を主張していたという事実があり、さらに矢野と明代が「日替わりを食べた」という事実がなければならない。しかし、この取調記録の内容からみても明代が当初は「レギュラーランチだった」と主張していたことは明らかで、万引きの時間帯に「日替わり」がないはずがないという期待と思い込みに基づく矢野の主張も、客観的事実を突きつけられ、アリバイ工作の事実を矢野もまた自ら証明する結果となった。

 つまり、「日替わり」にしたところで「レギュラー」にしたところで、明代は最初からありもしないレシートを「探してきます」といったわけで、どちらが「だまそう」としていたかは明らかである。少なくとも「だまし討ち」なる文言は、2度も虚偽のアリバイ主張を崩された者のいうべき言葉ではあるまい。

 千葉は反訳書の改竄を暴くとともに、この反訳書が明代と矢野の主張するアリバイが崩されている事実を証明するものにほかならないとする陳述書を提出した。2度アリバイを崩された矢野としてはどうしても千葉の陳述を認めるわけにはいかない。そこで矢野は反訴に及んだが、ついに取り調べを記録したテープを提出することはできなかったのである。


(その11へつづく)



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創価問題新聞事件 第11回
「開設」「更新」手続きへの関与を否定

「創価問題新聞」裁判において矢野と朝木は終結まぎわまで真実性・相当性の主張・立証をしなかった。平成15年に上梓した『東村山の闇』では「明代の万引き冤罪と他殺が確定し、事件は真犯人を特定する段階に入った」と結論づけているのだから、その根拠を法廷でも主張し、それが認められれば名誉毀損は阻却されることになろう。

 ところが裁判が始まって3年もたつというのに矢野と朝木は、終結1年前の平成18年11月24日付準備書面では、「創価問題新聞」の開設と運営に関する責任関係について主張している。それが彼らのいう「真相究明活動」とどんな関係があるのかはわからないが、矢野と朝木の主張や行動様式・傾向を知る上でそれなりに興味深い。矢野と朝木は、彼らが「発行人」(矢野)と「編集人」(朝木)であるホームページ「創価問題新聞」について次のように述べて、本件記事掲載について彼らの関与を否定したのである。

〈被告ら(矢野・朝木)は、……本件創価問題新聞ホームページのドメインが日本国内ではなく海外において取得されたものであったことにより、技術上の困難さから本件HPの開設及び更新の手続きに実際には関与していない。〉

 この1文によって彼らが何をいいたいのかは判然としないが、どうも「創価問題新聞」の発行責任は自分たちにはないといいたいようにもみえる。したがって、仮に問題とされた記事に名誉毀損があったとしても自分たちに不法行為責任はないと主張したいもののようだった。もちろんこれが仮に事実だったとしても、矢野が「発行人」で朝木が「編集人」と明記している以上、ホームページの開設と更新作業を行ったのが誰であるかに関わらず、彼らが発行・掲載責任を免れることはあり得ない。

内容証明送付後にホームページを閉鎖

 さらに興味深いのは、矢野と朝木が「創価問題新聞」ホームページの閉鎖について次のように説明していることである。

〈また、上記事情から本件HPを被告ら自身で維持することが困難であることから、すでに本件訴状の被告らに対する送達のあった2003年2月19日以前において、本件HPを閉鎖するよう直接の担当者に再三連絡し、現実に本件HPは閉鎖されている。〉

「連絡」はともかく、現実にホームページが閉鎖された時期を明記していないところが矢野の巧妙さというべきだろう。「創価問題新聞」が現実的に閉鎖されたのは提訴から4カ月後の平成15年6月ごろである。つまり矢野は準備書面で、提訴とは関係なく自主的にホームページを閉鎖しようとしていたといいたいようだが、このことに何の意味があるのか。ここでも彼らが何をいいたいのかは必ずしも明確ではないが、少なくともホームページ閉鎖に関わる内部事情が本件と無関係であることだけは確かである。

 千葉は同年1月21日と2月25日の2度にわたり、矢野と朝木に対して「ご通知」と題する内容証明を送付している。その内容を紹介しておこう。



ご通知

冠省 通知人は貴殿らに対し、下記の通り通知します。

 貴殿らは、インターネット「創価問題新聞」の発行人及び編集長であるが、平成12年9月9日に、同創価問題新聞のホームページ草の根掲示板に、投稿名MIDNIGHT MESSENGERが、「東村山警察の千葉のどあほが、証拠消すために立ち入り禁止のロープも張らんかった」「東村山署の元・副署長じゃった千葉じゃ。千葉英司のどあほ、あほの千葉」「あのあほの千葉じゃ。証拠消しくさった千葉じゃ。あいつは、いまじゃ、どじのなれのはてじゃのう『すりチカン』係やっとる。鉄道警察隊のぞいてやってくれや。やりすぎるとのう、しまいはあわれじゃ」「あのアホの千葉、アホの千葉(東村山署・元副署長)」「あほの千葉、あのアホの千葉」

 同月10日に、「あほの千葉 アホの千葉 アホの千葉 アホの千葉」

 同月14日に、「あほの千葉」「あほの千葉 あのホアの千葉 あのアホの千葉」「あのアホの千葉」

 同月22日に、「あのアホの『千葉副署長』」

 同年11月3日に2回、同月4日に1回、「『万引きのでっちあげ』も証拠あがっとる 証人尋問の時に千葉英司(東村山署・副署長)が証拠つきつけられて激しく動揺し きょろきょろ代理人に助けを求めた事実や」

 同4日に、「東村山店に来店していないなんちゅう証言は 店関係者はだれもしていないなんちゅう証言は、店関係者はだれもしていない ふれまわっとるとすればぢゃ 千葉英司副署長らクサーイ連中のでっちあげじゃ こいつほんまにアホとちゃうか」とする発言が書き込まれた。

 平成13年10月23日に、同掲示板に投稿名Mが、「アホの千葉英司(元副署長)」

 同14年3月25日に、「千葉ちゅうのは蚤垢側の人間じゃろ こういうのが警察にいるからこまったもんよ 警察だけやないがな 朝木事件殺害事件当時の担当検事が蚤垢信者ちゅうことはオウム事件をオウム検事が捜査でけるか これはもう 疑惑のレベルやないで」とする発言が書き込まれた。

 以上の発言は、通知人を誹謗中傷するものであり通知人の名誉権を侵害した。

 創価問題新聞の発行人及び編集長である貴殿らは、他人の名誉権を侵害する発言が書き込まれた場合には、ただちに削除すべき条理上の義務を負っている。

 しかし、貴殿らは削除の義務を怠り、通知人の名誉権が侵害されるのを放置し、通知人は精神的損害を被った。

 貴殿らの、この行為に強く抗議するとともに次の事項を要請します。

1 「MIDNIGHT MESSENGER」及び「M」が、創価問題新聞のホームページ草の根掲示板に書き込んだ、通知人の名誉権を侵害する発言の全てを、本書面到達後5日以内に削除し、同草の根掲示板において謝罪すること。

2 今後、同草の根掲示板に、通知人の名誉権を侵害する発言が書き込まれた場合にはただちに削除すること。

 万が一、1並びに2の要請が看過された場合には民法709条に基づく提訴もやむを得ませんので、呉々も御承知おき下さい。以上、通知します。

平成15年1月21日
                                                         (太字は筆者)



 これに対し、矢野と朝木から回答はなかったものの掲示板から当該投稿は削除された。


(その12へつづく)


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創価問題新聞事件 第12回
「MIDNIGHT MESSENGER」及び「M」の身元

 千葉の内容証明に対する矢野と朝木の反応は早かった。しかし当該投稿の削除はしたものの矢野と朝木から千葉に対してなんらの謝罪もなかった。この千葉は同年2月25日、2通目の内容証明を送付した。



ご通知

冠省 通知人は貴殿らに対し、下記の通り通知します。

 貴殿らが、発行人並びに編集長である、インターネット「創価問題新聞」の草の根掲示板のホームページに、通知人を誹謗中傷する発言を書き込んだ投稿名「MIDNIGHT MESSENGER」及び「M」に関し、貴殿らに次の事項を要請します。

1 「MIDNIGHT MESSENGER」及び「M」の、通知人を誹謗中傷する発言の書き込み文言を削除したものの、貴殿らは、通知人に対する謝罪を行わなかったが、謝罪しなかった理由を明示せよ。

2 「MIDNIGHT MESSENGER」及び「M」は、貴殿らに極めて近い人物であることを自認しているが、この人物の身元を明示せよ。

3 本草の根掲示板に、一般投稿者が、「MIDNIGHT MESSENGER」及び「M」は、矢野氏であると指摘しているが、この指摘に対し、矢野氏の論駁を明示せよ。

 なお、1ないし3について、本書面到達後5日以内に、通知人宛書面をもって回答されたい。以上、通知します。



 もちろん2通目の内容証明に対する回答もなかった。ちなみに、要求項目3の「一般投稿者」とは、MIDNIGHT MESSENGER及びMに対してのみならず、MIDNIGHT MESSENGER及びMとともに草の根掲示板に頻繁に登場して千葉への誹謗中傷を繰り返したTWILIGHT MESSENGER及びTについても、それが「朝木直子」であると指摘し、2人に対して実名で堂々と投稿するよう主張していた。

 この「一般投稿者」はこのような正当な指摘などをしたため掲示板上でMIDNIGHT MESSENGERとTWILIGHT MESSENGERから攻められ、現実でも矢野と朝木から疎まれ、「朝木明代基金」へのカンパを突き返されたといわれる。しかしこの「一般投稿者」は、それでも明代の「万引き冤罪」と「他殺説」についてはいまだ矢野と朝木のデマ宣伝を妄信しており、最近も平成20年9月1日の右翼らによる東村山駅前での街宣活動に参加し、洋品店襲撃にも加わった。

 さて、時系列で見れば、ホームページが閉鎖されたのは内容証明の送付および提訴のあとであり、内容証明の送付以前に矢野が「本件HPを閉鎖するよう直接の担当者に再三連絡」したかどうかはわからない。「再三連絡」したのならその証拠を提出してもよさそうなものだが、それも提出していない。

矢野と朝木は準備書面においてこうも主張している。

〈原告千葉は、訴状において、原告千葉自身が本件記事に関し、2003年1月22日到達の「通知書」で被告らに対して抗議したと主張するが、被告らは原告千葉からそのような「通知書」によって本件記事に関する抗議を受けた事実はない。〉

 千葉が送付した内容証明の内容は「草の根掲示板」の記載内容に関するもので、確かに本件で問題としている内容とは異なる。矢野と朝木はこの主張によって何がいいたいのか。矢野と朝木は本件記事について千葉が抗議をしていないということは、千葉はすでに記事内容を容認しているといいたいのだろうか。もちろん抗議した事実がないからといって、それが記事を容認したことにはなるまい。

 あるいは矢野と朝木は、こう主張することによって本件提訴がホームページ閉鎖の理由ではないということ、つまりホームページの閉鎖はそれが違法性を問われる恐れがあると認識したからというわけではないといいたかったのかもしれない。いずれにしても本論とはかけ離れた枝葉の主張にすぎない。

最後にようやく真実性を主張

 平成15年2月の提訴以来5年になろうとするこの裁判で、矢野と朝木が主張してきたのは以下の内容である。

①本件提訴は職務上知り得た情報の漏洩を前提としたものであり不適法である。

②本件記事は原告(千葉)が副署長として在職中の事件について、その捜査指揮及び広報が適切であるかどうかについて検討、批判等の論評を加えたものにすぎず、千葉に対する個人攻撃ではなく違法性はない。

③公務員がその職務行為を行うにあたり、故意または過失によって違法に他人に損害を与えた場合には公務員個人はその責任を負わないから、たとえ公務員の職務に対する批判言論が相当性を超えたとしても、公務員個人に対して損害を与えたとはいえない。
(公務員はその職務行為に対して個人として責任を負うことはないのだから、公務に対する論評に違法性があったとしてもその公務員が個人として違法性を問うことはできない、という趣旨のように読める)

 いずれも明代の万引きと転落死に関する具体的な主張ではない。明代の転落死後、一貫して万引きと自殺を否定し、東村山署とりわけ捜査を指揮した千葉を批判・誹謗してきた矢野と朝木にすれば、当事者である千葉に提訴されたことは逆に彼らの主張の「正しさ」を証明するまたとないチャンスである。にもかかわらず、彼らはなぜ明代の万引きと転落死について詳細な主張をしないのか。

 その矢野と朝木が明代の万引きと転落死に関する真実性・相当性の主張・立証をようやく行ったのは終結を目前にひかえた平成19年9月12日である。おおむね『東村山の闇』で主張した内容で、いずれもすでに多くの裁判で採用されなかった主張にすぎなかった。それにしても、終結間近になって真実性・相当性の主張をするのなら、矢野と朝木はなぜ最初からそれをしなかったのか。「明代の万引き事件と転落死の真相を究明する」と言い続けた者の応訴方針としてはきわめて理解しがたいものというほかなかった。

 これらの主張に対して一審の東京地裁は平成20年4月15日、千葉の提訴の適法性を認めた上で、記事1~3はいずれも千葉の社会的評価を低下させるものと認定。また真実性・相当性もないとして、矢野・朝木に対し記事1についてのみ10万円の支払いを命じる判決を言い渡した(記事2、3については損害賠償金の支払いを命じるほどのものではないとして請求を棄却した)。

 反訴についても、

〈本件陳述書には、「虚偽・歪曲や改ざん」、「変造」などといった表現が存在するものの、原告(千葉)が作成した陳述書という書面の性質からすれば、これを読む者は、被告矢野が認識している事実と原告が認識している事実が異なっているという印象を持つに過ぎないというべきである。〉

 などとして矢野の請求を棄却。矢野と朝木は判決を不服として控訴した。


(その13へつづく)




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創価問題新聞事件 第13回
150ページを越える準備書面

 控訴審になると様相は一変した。明代の万引きと転落死の事実関係について一審ではほとんど踏み込んだ主張をしなかった矢野と朝木は、控訴審ではきわめて積極的に万引き「冤罪」と「他殺説」を主張したのである。書面の分量で勝敗が決まるというものではないが、矢野と朝木が控訴審の結審までに提出した準備書面はA4用紙で優に総計150ページを超えていた。

 その内容は平成15年11月に彼らが出版した『東村山の闇』以降の主張および最近の判決までも網羅したもので、現在における「万引き冤罪」「他殺」についての彼らの主張のすべてを出し尽くしたものといえた。これらは一審ではほとんど主張されていないものだった。

 裁判所は原告被告双方の主張を十分に聞いた上で、どちらの主張に正当かつ合理的な根拠があるかを判断しなければならない。したがって、内容はともかく一方の当事者から新たな主張が提出されれば、裁判所も頭から無視するわけにはいかない。なぜ一審でこの主張をしなかったのかという疑問があったとしても、東京高裁としては矢野と朝木の主張について判断しないわけにはいかなくなったのである。

 ただ東京高裁は、少なくとも矢野と朝木の準備書面の提出の仕方に関しては不快感を隠さなかった。控訴人は控訴状のほかに控訴理由書を提出しなければならないが、矢野が控訴理由書を提出したのは控訴審第1回口頭弁論のわずか数日前だった。通常、準備書面は口頭弁論の1週間前までに提出し、口頭弁論期日までに裁判官はそれに目を通し、今後の進行等を含めて検討した上で口頭弁論に臨む。しかし、数日前に提出されたのでは内容を検討することもできない。かといって無視もできないから、必然的にもう1度口頭弁論を開かなくてはならないことになる。

 控訴審の第1回口頭弁論が開かれたのは平成20年8月26日。裁判長は矢野側代理人に対してこう述べた。

「控訴理由書の提出が遅くなったのはなぜですか。控訴人はこれまでに同じ内容の裁判をいくつもおやりになったんじゃありませんか? 仕方ありませんので、もう1回弁論を継続します。被控訴人は次回までに反論をお願いします」

巧妙な審理引き延ばし

 控訴審第2回口頭弁論が開かれたのは平成20年10月16日。この日、被控訴人の千葉は事前に矢野らの準備書面に対する反論を提出したが、口頭弁論当日、矢野らは千葉の準備書面に対する反論を提出した。裁判長は矢野らの控訴理由とそれに対する千葉の反論を見て、審理を続行するかどうかを含めた判断をしようと考えていたようである。しかし、矢野から新たな準備書面が提出されれば状況は変わってしまう。それも当日提出されたのでは、裁判官も目を通す時間もなく、当日の口頭弁論で判断することは難しくなる。裁判官は明らかに不快感を隠さず矢野の代理人にこう問うた。

「あなたはなぜ当日になって準備書面を提出するんですか。前回にも準備書面を口頭弁論前に提出するようにいったはずですよ。これは警告ですからね」

 しかし、矢野側代理人はこう言い訳した。

「本日提出した準備書面は被控訴人準備書面に対する反論でして、反論の提出は早い方がいいと思いまして……」

 裁判長は矢野側準備書面に目を通しておらず、それがどんな内容なのか知らなかった。こういわれれば裁判長も代理人の主張を認めないわけにはいかない。裁判長は代理人に謝罪し、弁論はさらに続行されることとなったのである。相手の反論が提出される口頭弁論のはずが、矢野がぎりぎりに反論を提出したことで、また新たな局面に移った状態になっていたことがわかろう。矢野はこうしてさらに審理を続行させることに成功したのである。第3回口頭弁論は11月20日に開かれることになった。

 なおその1週間後の10月29日、矢野と朝木はさらに準備書面を提出。東京地検が保管している平成7年6月19日の万引き事件当日の明代の服装を特定する銀行の防犯カメラの静止画像、書類送致の際の捜査報告書の提出を求める文書提出命令を申し立てた。

 11月20日、千葉は矢野の準備書面に対する反論を提出。文書提出命令申立に対しては、「千葉は捜査書類を所持していない」として却下を申し立てた。一方矢野は、またも千葉の準備書面を前提とした反論を提出した。準備書面のやりとりという局面だけを見れば、第2回口頭弁論のときと同じ状況になったことになる。

 しかし、裁判長は矢野の意図をすでに見抜いていたのだろう。裁判長は矢野の文書提出命令申立を却下した上で「もうこのくらいでいいでしょう」と述べ、結審することを告げた。そもそも矢野が控訴審で展開した主張は1審でやろうと思えばできたことだった。控訴審で主張するのならなぜ一審でしなかったのかという根本的な疑問があった。しかも矢野が控訴審で提出した新たな証拠は、明代の遺体も転落現場も見ることなく、司法解剖鑑定書を鑑定しただけの山形大学名誉教授、鈴木庸夫の「鑑定書」なる代物だけにすぎなかった。



(その14へつづく)

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創価問題新聞事件 第14回(最終回)
                           ★第1回から読みたい人はこちら


矢野の主張をことごとく排斥

 平成21年1月29日、東京高裁は矢野と朝木に対して10万円の支払いを命じた東京地裁判決を支持し、矢野と朝木の控訴を棄却する判決を言い渡した。千葉の提訴から丸5年がたっていた。では、一審とは異なり、150ページにも及んだ矢野と朝木の主張に対して東京高裁はいかなる判断を示したのか。矢野と朝木の主張と対照しながら東京高裁の判断を見ていこう。



転落死
(矢野側主張)

 司法解剖鑑定書には「上腕内側部に皮下出血の痕がある」と記載されており、これは他人につかまれたものであることを裏付けるものであり、転落死は「他殺」であると推認できる。法医学の権威である鈴木庸夫山形大学名誉教授も司法解剖鑑定書を「鑑定」した「司法解剖鑑定書に対する意見書」で「他人につかまれた可能性が高い」と述べている。

高裁判決
〈司法解剖鑑定書には、本件損傷が他人と争ってできた可能性があることをうかがわせる記載はなく、本件損傷の存在からは、鈴木医師の意見書に記載されているとおり、その生成原因として、明代が他人ともみ合って上腕を強くつかまれた可能性があることが認められるだけであり、明代が他人に突き落とされて本件転落死したことまで推認できるものではないことは明らかである。〉



 矢野が「法医学の権威」と称する鈴木山形大学名誉教授はもちろん明代の遺体をつぶさに検案したわけではなく、たんに司法解剖した医師が作成した司法解剖鑑定書を見ただけである。これは現実の遺体の観察に基づいて作成された司法解剖鑑定書の文言から現実の遺体の状況を類推するという転倒にほかならず、科学者としてあってはならない行為である。また鈴木教授の行為は司法解剖を行った医師および法医学そのものを冒涜する行為にほかなるまい。なお、控訴審で矢野は鈴木教授の「意見書」に加えて同教授の「鑑定書」まで提出したが、東京高裁は同鑑定書の信頼性を否定したのである。

 さらに東京高裁はこう続ける。



高裁判決
〈司法解剖鑑定書の記載に加えて、……明代の転落前後の状況(明代が転落前に人と争った気配はないこと、明代が転落後に意識があるのに、救助を求めていないこと、明代が落ちたことを否定したこと、明代が転落箇所から真下に落下していること等)を考慮すると、明代が他人に突き落とされたもの(他殺)ではないことがうかがわれる。以上によれば、本件転落死が殺人事件であると認めることは到底できず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。〉



万引き事件
(矢野側主張1)

 朝木明代市議から万引きの被害を受けたと届け出た洋品店の店主の供述する真犯人の服装と、犯行当日に朝木明代市議が着ていた服装が全く異なる(矢野と朝木は万引き事件当日の明代の服装であるとして、色の異なる服装の写真を法廷に提出した)。

高裁判決
〈控訴人ら(矢野と朝木)が明代の服装として作成した再現写真と明代の監視カメラの写真について、○○(万引き被害者)は、服装の雰囲気が違うような気がすると供述し、被控訴人(千葉)は、服が同じか断定できないと供述しており、控訴人らは、明代の服装の再現写真として同一とは判定できないものを作成しているところ、控訴人らは、アリバイの裏付資料としてアリバイを裏付けることのできないレジジャーナルを提出するなどしていることに照らすと、明代の服装の再現写真なるものは必ずしも採用することができず、他に本件窃盗被疑事件の真犯人の服装と明代の服装が異なることを認めるに足りる証拠はない。〉



 矢野と朝木は、明代が万引き時刻前に振り込みのために立ち寄った銀行の防犯ビデオの静止写真が白黒だったため、白黒にすれば似たよう感じに映る洋服を朝木が着用し、「再現写真」なるものを作成した。しかし、洋服の色は被害者の証言とは異なっており、その服装なるものと本物の防犯ビデオの画像が一致しているという証拠はどこにもない。



(矢野側主張2)洋品店主は「万引き犯(朝木明代)の服装は『グリーングレーの上着に黒のブラウス』」と供述しているが、一人の目撃者は「犯人は黒っぽい服装だった」と証言している。したがって、当日白っぽい上着を着ていた明代は万引き犯ではない。

高裁判決
〈○○(目撃者の一人)の目撃内容は、明代が本件窃盗被疑事件の犯人であることをうかがわせるものであり、明代が万引きをしていないことを裏付けるものということはできない。
 そして、○○(被害者)は、……明代が万引きをしたことを明確に供述しており、控訴人らが提起した別件訴訟においても、いずれも○○の供述に信用性を疑わせるものはないとされている。
 以上によれば、明代が万引きをしていない(本件窃盗被疑事件がえん罪である)と認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。〉



 矢野と朝木はこの目撃者の「犯人は黒っぽい服を着ていた」とする証言から、「犯人は明代ではない」と主張していたが、この目撃者は別の目撃者が「犯人は朝木だ」と話していたことも証言していた。したがって東村山署もまた、明代が万引き犯であることを裏付ける証言と判断し、この目撃証言を追送検していた。被害者は明代の服装について「グリーングレーの上着」と一貫して供述しており、この洋服は白黒にすれば白っぽく映っている。以上の状況から、明代の服に関するこの目撃者の証言について裁判所は信憑性がないと判断、むしろ他の目撃者の「犯人は朝木」という話を聞いたとする証言を重視したのである。

別件判決に対する明確な判断

 矢野と朝木はこれまでの判決について彼らの都合のいい部分のみを抜き出し、それによって彼らの主張する「万引き冤罪」と「他殺説」があたかも認定されたかのような主張を続けてきた。では、この部分に対する東京高裁の判断はどうか。



潮事件
(矢野側主張)

 平成14年3月28日、雑誌「潮」事件判決で東京地裁は、東村山警察の捜査結果を検討した上で、「司法解剖の結果、亡明代の左右の上腕内側部に皮膚変色が認められたこと」を根拠の筆頭に挙げて「朝木明代市議が自殺したとの事実が真実であると認めるには足りない」と判示認定し、また「同人を『万引き被疑事件』の犯人と断定するに足りない」と判示認定し、事実上、東村山警察の捜査結果を否定している。

高裁判決
〈いわゆる潮事件判決は、明代が本件窃盗被疑事件の犯人の可能性は相当程度に達するものと思われるが、なお明代を本件窃盗被疑事件の犯人と断定するには足りない、明代の死因が自殺であるとみる余地は十分にあるが、なお明代が自殺したとの事実が真実であると認めるには足りないとしたものであり、本件転落死が殺人事件である(明代の死因が他殺である)こと、及び明代が万引きをしていない(本件窃盗被疑事件の犯人でない)ことが真実であるとしたものではなく(明代が万引きをし、万引きを苦にして自殺したことは同判決で否定された旨の控訴人らが出版した書籍の記述は、当たらない)、……控訴人ら主張の真実性を否定する趣旨であることが明らかである。〉



 潮事件については、矢野は一審で敗訴したものの控訴しなかった。「明代を万引きの犯人とするには足りず、自殺が真実であると認めるに足りない」とした部分が使えると判断したためだろう。事実その後、矢野は多くの裁判で潮判決を援用してきた。しかしそれが詭弁であることを、東京高裁はあらためて認定したということになる。



FM東村山事件
(矢野側主張)

 平成19年6月20日、東京高裁は司法解剖鑑定書および「鈴木鑑定意見書」を援用して「『上腕内側は、一般に、転落による外力などが作用しにくい箇所であること』、『他人ともみ合い、上腕を強くつかまれたような場合には、上記箇所に皮膚変色部(皮下出血)が生ずる可能性があること』という事実に照らすと、少なくとも被控訴人(矢野)が本件のアザが他殺を疑わせる証拠となるようなものであると信じたことについては相当の理由があるというべきである」と判示認定している。

高裁判決
〈FM放送事件判決は、アザ(本件損傷)が他殺を疑わせる証拠となるようなものであることについての相当性について判断しただけであり、その真実性については判断しておらず、まして、本件転落死が殺人事件である(明代の死因が他殺である)としたものでないことが明らかである。〉



 このFM東村山判決もまた、明代の遺体に残された上腕内側部の皮下出血の痕が「他殺の証拠」と認めたわけではなく、同僚である矢野がそれを「他殺の証拠」と考えたことはやむを得ないとしたにすぎない。それを矢野は他殺の証拠と認定したかのように主張した。東京高裁はこの点に関する矢野の主張もまた明確に否定したのである。

 自分が判断を下したわけではない裁判の判決書の読み方まで判示する判決というのも珍しかろう。この点については、矢野と朝木が判決を都合のいいように解釈し、利用してきたことに対する裁判所の強い意思を示したもののようにも感じられる。

自ら墓穴を掘った判決

 東京高裁が示した判決内容を見ると、これまで矢野と朝木が明代の「万引きを苦にした自殺」という事実を否定するために主張してきた内容をことごとく、それも具体的にすべて排斥したものであることがわかる。矢野と朝木が詳細な主張をしなかったためにたんに名誉毀損の成立を認めただけで終わった一審判決と比べれば、その違いは歴然である。

 控訴が棄却される場合、一審判決に若干高裁独自の判断が加わる程度で、今回の判決ほど詳細な検討を行う例は珍しかろう。一審で敗訴した矢野と朝木は、一審判決を覆すためにそれまでしなかった具体的な主張を行った。その結果、控訴審は若干長引いた。しかしその分、東京高裁は矢野の主張に従って詳細な検討を行った。最終的に、明代の「万引き冤罪」と「他殺説」を主張する彼らの根拠は完膚なきまでに否定されるという結末を招いたのである。矢野と朝木は平成21年2月10日上告したが、確定を長引かせるにすぎまい。

(了)

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