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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

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りんごっこ保育園保育士虚偽申告事件 第2回
提出されなかった「改善計画書」

 高野は平成20年3月5日にも「職員はすでに配置済み」「2月18日付文書を直ちに撤回せよ」などとする文書を東村山市に対して送付している。3度目の否定である。東村山市が送付した改善指導に誤りがあるというなら詳細に説明すればよく、高野がなぜこれほど「返上」や「撤回」にこだわるのか理解しがたい話だった。東村山市の指導文書に疑義を唱えるのなら、園児の安全が確保されていることを示し、東村山市を納得させてからでも遅くはあるまい。

 東村山市としては市長の名において市民の子供を預かり、りんごっこ保育園に保育を委託している以上、子供の安全を確認できないような施設に保育を委託することは許されない。このため東村山市保健福祉部は部長名で平成20年5月1日、高野に対して2月18日付通知に対する回答(改善計画書の提出等)を早急に提出するよう求める内容の「改善計画書等の提出について(通知)」と題する文書を送付、回答提出期限を同年5月16日(厳守)とした。

 しかしこれに対して高野は誠実に回答しようとするどころか、逆に同年5月15日、「保健福祉部長名義の文書について(質問書)」と題する文書を送付してきたのである。文書には次の2項目を含む4項目の質問が記載されていた。



1 東京都保育所指導監査所管および保育所管からは本件に関して何ら指摘等はないが、にもかかわらず保育所設置認可権者(指導監督所管)でもない市保健福祉部長が、本年2月18日付けで前記文書等により、直接の改善指導等ができるとする法令上の根拠は何か。

2 保健福祉部長名義の本年2月18日付前記文書で、当園の保育士配置数が、児童福祉施設最低基準が定める必要数を3名不足しているとした根拠は何か。



 事実上の回答拒否であり、保育士が最低基準を下回っていたとの指摘に対する4度目の否定である。かつてりんごっこ保育園は食中毒が疑われる事件が発生した際、園児を病院に連れて行った母親を園内に配布したビラで責め立てるなどし、事実上の退園に追い込んだが、何があっても非を認めず、それどころか問題を指摘した者を追及するきわめて特異な体質は今回の件でも共通している。これでは園内で何が起きても、高野が誠実に対応することはあり得まい。はたしてりんごっこ保育園が、国が認可した認可保育園として東村山市が市民の保育を委託する保育園としてふさわしいといえるのか。

保育士不足を6度否定

 さて、もちろん東村山市は高野からの「質問書」に対応しなかった。こうして平成20年2月18日、東村山市保健福祉部が高野に送付した「通知」はそのまま無視されるかたちとなったまま、同年9月10日、東京都福祉保健局指導監査部による定期監査を迎えることになった。保育士不足をめぐり、半年以上にわたって東村山市が改善報告を求めていた問題に指導監査部はどんな結論を出したのか。

 指導監査部は監査の結果を十分に検討した上で数カ月後に正式な結果を通知するが、暫定的な見解を園側に残していくのが普通である。保育士不足が疑われた問題については東村山市保健福祉部、東京都子育て支援課の見解は「不足していた」ということで一致している。ところがこの問題に関して指導監査部は、暫定的ながら次のような見解を示していたのである。

〈保育士の退職に伴い、平成20年1月18日から3月22日までの期間においては、保育士が1名不足しているが、看護師が配置されており、保育士とみなすことができることから、職員の配置基準は満たされている。保育士の退職等に備え、必要な保育士有資格者を配置することにより、最低基準に示された職員配置を行うこと。〉

 指導監査部がその時点での見解とはいえ、それまでの東京都と東村山市の共通認識に反する判断をしたのかはわからない。指導監査部がなんらの理由もなく、子育て支援課と真っ向から対立する見解を示すことは考えられない。立ち入り調査において高野が「保育士は不足していない」とする趣旨のなんらかの説明をした結果であると推測できた。5度目の否定である。

 高野と同居する運営委員の矢野は、指導監査部が暫定判断を示したのち、インターネット「東村山市民新聞」で次のように勝利宣言を行った。



〈都の定期監査で、りんごっこ保育園は、児童福祉施設最低基準の上で特に問題なしの結論の講評と文書交付で終了〉



 ここで矢野は「最低基準」としか記載していないが、最低基準が問題とされたのは保育士不足の問題以外にはない。つまり矢野は、ここでも「保育士は不足していなかった」と主張していることになる。6度目の否定だった。


(その3へつづく)

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りんごっこ保育園保育士虚偽申告事件 第3回
                           ★第1回から読みたい人はこちら


東京都指導監査部の結論

 東京都指導監査部が監査当日の暫定判断をそのまま結論とするということになれば、平成20年2月以降、東村山市が東京都と協議の上、りんごっこ保育園に対して行ってきた改善指導も誤りだったことになる。まだ結論が出ていない段階ながら、子育て支援課と指導監査部の見解に齟齬が生じている点について東京都指導監査部に取材すると、

「9月10日時点での見解は結論ではない。詳細についてはお答えできない」

 とした。

 東京都指導監査部が正式な監査結果を出したのは平成21年に入ってからである。保育士不足の問題について指導監査部は9月10日とは異なる結論を出していた。「『助言』」事項」〈在籍児に見合う職員数は配置すること〉として指導監査部は次のように結論付けた。

〈保育士の退職に伴い、平成20年1月18日から1月31日までの期間については、保育士が1名不足していたが、看護師を保育士とみなすことにより、職員の配置基準は満たされていた。1月31日付で保育士2名が退職したため、翌2月1日付で2名の保育士を採用したが、うち1名が実際に勤務を開始したのは2月25日であり、同24日までの間、みなし規定によってもなお保育士1名の実人員の配置が不足していた。同25日以降については、職員の配置基準が満たされた。

 2月中の職員配置については、同月中に必要な保育士が補充され、以後改善が図られている。2月25日から出勤した保育士が実際に勤務を開始するまでの状況については、2月1日付けにて採用されていることから、雇用のない欠員だったのではなく、施設長からは、職員の家庭事情(介護)により出勤できなかった旨、説明があった。〉

 9月10日の現地調査から結論を出すまでに何があったのか、指導監査部がいかなる調査をしたのかはわからない。しかし少なくとも「助言」の記載内容から読み取る限り、その間に指導監査部がなんらかの調査を行い、高野からも事情聴取していたことは明らかである。

事実上、虚偽申告を認めた高野園長

 高野は2月1日に採用した職員のうち1人が実際に勤務したのは2月25日からであると説明している。高野はそれまで6度にわたり否定していた保育士不足の事実を認めたことがわかる。つまり、高野と矢野の1年間に及ぶ主張はすべて虚偽だったという結論になる。

 園児の安全に直結する保育士の人数について所管に対しても誠実な回答、改善をしない認可保育園が、市民や保護者に対して誠実な対応をすることも期待できるだろうか。食中毒騒動、補助金返還問題、今回の保育士不足の問題に共通しているのは、りんごっこ保育園が自分たちに都合の悪い事実はすべて隠蔽しようとする保育園であるということである。

 平成21年3月議会で東村山市長が東京都指導監査部が「助言」を行ったことについて触れると、高野と内縁関係にあり、りんごっこ保育園の運営委員でもある矢野穂積は「法律的根拠はどこにある」などと噛みついた。「助言」とは「口頭指摘」「文書指摘」と並ぶ歴とした行政指導である。指導監査部は児童福祉法の規定に基づいて定期監査を行い、必要な改善指導を行っているにすぎない。

 行政指導には行政処分と違って法的強制力はない。しかし、指導監査部は園児の安全を最優先に考えて行政指導を行ったのであり、認可保育園としては指導を真摯に受け止めるべきで、強制力や法的根拠とはまるで次元の異なる話である。要するに、そんな受け止め方しかできない市議会議員であり、園長であるがゆえに、1年もの間、言い逃れを繰り返してきたのだと理解すべきだろう。

終わりのない「りんごっこ保育園問題」

 りんごっこ保育園が保育士不足の事実を隠蔽していたことは結論が出た。東京都指導監査部によれば保育士不足は解消したという。しかし、いまだに矢野穂積が「法的根拠はあるのか」と行政指導を受け入れようとしていないことからも明らかなように、りんごっこ保育園の保育士不足をめぐる問題は、たんに保育士が充足していたか充足していなかったかという問題なのではなく、この保育園の持つ根本的な不誠実さの問題というべきなのである。

 その意味で、保育士不足が解消されても、本質的な問題である「りんごっこ保育園問題」は、この保育園が認可されている限り解消することはないのだということを、行政も市民も認識する必要があろう。

(了)

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りんごっこ保育園民改費過請求事件 第1回
 認可保育園、りんごっこ保育園(高野博子園長)の保育士不足問題をめぐり東村山市保健福祉部が平成20年5月1日付通知を送付したのとちょうど同じ時期(りんごっこ保育園保育士虚偽申告事件第2回参照)、東村山市とりんごっこ保育園の間では普通の認可保育園では考えられないもう1つの不毛だが緊迫したやり取りが続けられていた。(宇留嶋瑞郎)

平均勤続年数を引き上げていたベテラン職員

 平成18年6月19日、会計検査院が東村山市に対して行った会計検査で、りんごっこ保育園が平成16年度分として国に請求していた補助金のうち、83万9800円の過請求があったことが判明した。この補助金とは「民間施設給与等改善費(=民改費)」といい、名目上は民間保育所の職員の給与等の待遇改善を目的としたものである。

 この補助金の支弁対象は「常勤職員」あるいは「非常勤であっても1日6時間以上かつ月20日以上就労し、社会保険等に加入している等雇用形態が常勤と同様の職員」で、職員の平均勤続年数によって支弁額が加算される(簡単にいえば、勤続年数の長い職員が多ければ民改費の支弁額は多くなる)。民改費の加算率は上から12%(平均勤続年数10年以上)、10%(同7年以上10年未満)、8%(同4年以上7年未満)、4%(4年未満)となっている。

 会計検査院の指摘によれば、高野は常勤職員を15名としてその平均勤続年数を「4年3カ月」と算出して民改費を請求。この場合の加算率は8%で補助金額は167万9300円だった。ところが、高野が申請した常勤職員のうち継続勤務年数27年のベテラン職員が常勤とはみなされない勤務形態にあり、民改費請求の対象とはならないことが判明した(この職員の月勤務日数は16~18日にすぎなかった)。

 したがって、このベテラン職員を除いて平均勤続年数を算出すると「2年7カ月」で、加算率は4%となり、補助金額は83万9500円となる。当時、りんごっこ保育園の常勤職員の勤続年数は他に8年、4年、7年、7年、5年で、残りの8名の職員は0年だったから、このベテラン非常勤職員が全体の平均勤続年数をかなり引き上げていたことがわかる。

 なお、民改費の請求にあたっては「申請書記載上の注意」があり、「(算定対象職員は)常勤である者。非常勤であっても1日6時間以上かつ月20日以上で、社会保険等に加入している等雇用形態が常勤と同様な職員も対象とする」と明記されている。経営者である高野は職員の給与計算もしているのだから、高野がこのベテラン職員の勤務実態を把握していなかったことはあり得ない。にもかかわらず、なぜこのような過請求が起きたのか。その原因は明らかになっていない。

 もちろん民改費の請求については、申請者は申請書を所管に提出(りんごっこ保育園の場合は東村山市)し、所管を経由して国に請求する。したがって過請求の原因がすべて高野にあるとは言い切れないが、通常、所管は保育園側の請求内容を信用して事務処理をしているようである。東村山市は過請求が明らかになった当時、会計検査院に対し「(故意ではなく)保育園側の単純ミス」と説明した。

高野は返還に応じる姿勢

 当時、東村山市保健福祉部は高野にその旨を説明し、返還してもらうことになると伝えた。これに対して、高野は応諾したという。誰にでも誤りはあるし、誰かを責めているわけでもない。誤りは素直に認め、返還すればそれですむ話で、所管もそれ以上の労力を割く必要もない。

 会計検査院の指摘に基づき東村山市は平成19年2月27日、過請求分83万9800円のうち国と都に対し国・都負担分の計62万円余をそれぞれ返還した。その段階で東村山市は、高野に対して東村山市の負担分を含む過請求分83万9800円全額の返還を要請することとした。

 ただし、いったんは返還に応じる姿勢をみせたとはいえ、すでに継続中の保育士不足問題や食中毒騒動の際の高野の対応からすると話がこじれる可能性もなくはないと東村山市はみていたらしい。東村山市は市の顧問弁護士に相談した上で平成20年4月28日、高野に対して「平成16年度東村山市民間保育所支弁交付額の返還請求のお願い」と題する文書を送付、同年5月8日までに回答してほしい旨要請した。文書の内容は以下のとおりである。



平成16年度東村山市民間保育所支弁交付額の返還請求のお願い

 平成16年度東村山市民間保育所運営費支弁については、平成18年6月19日に会計検査院第二局厚生労働検査第一課にて実施された会計検査により、誤りが確認され、交付額が2730万3166円(注・「民改費」を含むりんごっこ保育園に対する全体の交付補助額)となりました。したがって、下記差額分を返還されるようお願いします。
 なお、返還日を定めて平成20年5月8日までにご返答下さい。


1 交付額  2730万3166円
2 差額分  83万9800円
3 経過  別紙のとおり



 文書の交付から回答期限までには10日以上ある。誤って補助金を規定よりも多く受け取ってしまった場合、通常の認可保育園設置者ならただちに返還の意思表示をするところだろう。疑問があればその旨回答すればよい。ところが回答期限を過ぎても、高野からはなんらの回答もなかった。


(その2へつづく)


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りんごっこ保育園民改費過請求事件 第2回
会計士に依頼した不思議

 東村山市保健福祉部が高野に民改費の過請求分の返還を求めた時期(4月28日送付、5月8日回答期限)は、保育士不足問題をめぐり改善報告を求めた時期と重なっている(5月1日送付、5月16日回答期限)。いずれも回答に時間を要するようなものでもなさそうに思えるが、当事者としては2つの回答時期が重なったために期限までに回答できなかったのだろうか。

 その高野が東村山市保健福祉部児童課に訪れたのは期限から4日後の5月12日午後のことである。担当は高野にこう聞いた。

「回答期限を過ぎましたが、どうでしょうか?」

 高野はこう応えた。

「現在、会計士に内容をみてもらっている最中です」

 わざわざ来庁しなくても電話ですむ内容である。それはともかく今回の過請求は、高野が民改費請求の対象とした1人の職員が要件を満たしていたかどうかの問題で、あとは会計検査院が行った正しい民改費の計算に誤りがないかどうかの確認だけだと思うが、高野は会計士にみてもらう必要があると考えたらしい。

 確かに返還額(83万9800円)は返還する側からみれば少ない額ではない。それでなくても高野は、園舎建設費と土地購入代金として多摩中央信金から借り入れた(自己資産・自己資金はほぼゼロ)1億3500万円を補助金(公金)の中から年間100万円以上返済しなくてはならない。この借金を補助金(一部自分の給料)から返済すれば、借金で手に入れた土地・建物はすべて高野のものになるという無から有を生じる鮮やかな、かつおそらく前例をみない公金による個人資産形成の手法である。

 過請求分を返済資金に返還するということは当然、経営に影響を及ぼすこととなり、ひいてはその年の返済計画に狂いが生じるということにもなろう。高野がいったん受け取った83万円もの返済要請には簡単に応じられないと考えたとしてもなんら不思議はない。

「多忙」な会計士

 5月15日、高野は保育士不足問題で東村山市保健福祉部に対して改善計画を示さず逆に質問書を送付。しかし、民改費の返還についてはいまだ回答がなかった。5月19日午後、高野は再び児童課を訪れた。

「返還請求の件について対応いただいていますでしょうか?」

担当がこう聞くと、高野はこう答えた。

「現在も会計士にみていただいていますが、決算期なので忙しい様子です。平成16年度のものなのでそのあたりも考えながら、支払いをする場合、5月末までに完了したいので、来週の初めには回答したいと思います」

 このやり取りは平成20年に行われたものである。するとこの高野の発言の中の「平成16年度のものなので」とは時効のことを意味しているのだろうか。これだけでは判断できないが、いずれにしても高野は最初の回答期限から丸20日間、一方的に回答を引き延ばしたことになる。

「支払いをする場合、5月末までに完了したいので、来週の初めには回答したいと思います」といっていた高野は5月27日(火曜日)になっても来庁せず、連絡すら寄越さなかった。そこで同日午前、児童課担当者はりんごっこ保育園に電話した。以下はそのやりとりである。

児童課  民改費の返還について、今週の初めまでに回答をいただける予定でしたが。

高野  会計士が現在繁忙期であり、そちらからなかなか回答をいただけない状態です。もう少し時間をいただきたい。

児童課  いつぐらいに回答をいただけるか、会計士に確認いただけますでしょうか。

高野  いつぐらいに回答できるかは、確認してみます。

 誤りであろうと故意であろうと、国民の税金が不当に支払われたという事実は間違いない。この返還請求は税金の不正使用を正すという意味がある。それにしては「会計士が多忙」などというあいまいな回答を受け入れた東村山市の対応も悠長というほかない。


(その3へつづく)

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りんごっこ保育園民改費過請求事件 第3回
露にした対決姿勢

 民改費の一部の返還を求められた高野が会計士に何を確認してもらおうとしていたのかはわからない。しかし児童課が電話して1週間後の6月3日午前、高野は児童課を訪れ、初めて具体的な回答を持ってきた。高野はこう述べた。

「会計士と弁護士と相談した。具体的に根拠となる法律や条文を示してほしい」

 要するに高野は、「会計検査院が指摘しただけでは返還はできない」といっているのである。さすがに矢野と同居している(できる)だけのことはある。道理にかかわらず、自分を不利にするもの、自分を相手よりも劣位に立たせるものに対しては手段を尽くして闘うのが矢野のやり方である。多かれ少なかれ、自分の立場を悪くしたくないのが人情だとしても矢野の場合は、自分の立場を守るためには無実の人間を警察に突き出すことも厭わない。この特異性は、矢野の判断基準が道理や良識といったごく普通の社会的規範以外のところにあるからだろうか。

 さて、「根拠となる法律等はメモレベルのものでもかまわないか」と児童課が聞くと、高野は「それでけっこうです」と答えた。しかし高野が児童課を退出して5分後、高野から電話がかかってきた。

「弁護士に確認したところ、別紙でかまわないので部長名で正式な文書でほしい」

 メモでは誰が作成したものかも特定できず、裁判になったときには役に立たない。弁護士からそういわれた高野は急いで児童課に電話してきたということだろう。

 さらに6月6日午後、高野は児童課にやってきた。児童課は高野に対し「返還請求についてはやはり、当初送付した文書の内容で検討してほしい」と要請した。児童課としては、請求に誤りがあっただけだから、単純にその分を返還すればすむ話であるという理解だったのだろう。常識的にはそれだけのことだと思うが、高野にとってはそうではないようだった。高野は児童課の要請に対してこう答えた。

「最初の文書だけでは、根拠の法令がないと会計士と弁護士が判断できない。この状態では返還はできない」
 高野や矢野の常識では、いかなる不当な理由によるものだろうと、1度自分の懐に入れたものを返すについては法律的な根拠が必要だということなのか。あるいは彼らの中ではすでに、「民改費請求の誤り」という問題とはまったく別の問題となっていたのだろうか。だとすれば、高野のこれまでの対応を常識で理解するのは無理というほかない。

2度目の返還請求

 東村山市は誤りがあったことを認めて国と東京都に過請求分を返還したが、高野の判断基準は「法的根拠」以外にはないようだった。この段階で、東村山市は法的手段に訴える方法もあっただろう。しかし東村山市はなお高野の要求に応じる判断をし、高野に対し6月16日付で、改めて「『平成16年度東村山市民間保育所支弁交付額の返還請求のお願い』にかかる根拠について」と題する以下の内容の文書を保健福祉部長名で送付した。2度目の返還請求である。



「平成16年度東村山市民間保育所支弁交付額の返還請求のお願い」にかかる根拠について

 標記の件につきまして、平成20年4月28日付20東保児発第36号にて返還のお願いをさせていただいております。根拠等につきましては、下記のとおりとなりますのでご確認方よろしくお願いいたします。



 貴園に支払われるべき費用は、「児童福祉法第24条第1項に規定する児童の保育の実施に関する委託契約」(16東保児契委第1号)第5条及び東村山市民間保育所運営費支弁規則第6条第1号により、「児童福祉法による保育所運営費国庫負担金について(昭和51年16日厚生省発児第59号の2)に規定する運営費」と規定されており、先の通知のとおり、貴園に支払った費用に超過支払いが認められるため、当該超過支払い分につき返還をお願いしたい。なお、支払期限についての回答は平成20年6月30日までにご返答ください。



 保育士の人数さえまともに明らかにしようとしない認可保育園の園長に対する対応としてはきわめて生ぬるいとも思うが、一歩も引かない姿勢は評価できよう。法律的な内容としてもこれで十分と思われる。

 では、「根拠の法令がないと会計士と弁護士が判断できない」として法律的根拠の提示を求めた高野は、2度目の返還請求に対してどんな回答をしたのか。ところが、回答期限の6月30日を過ぎても高野からは何の返答もなかった。会計士も弁護士もいまだ「繁忙期」にあったのだろうか。今度は、高野からはその言い訳すらないまま、一月が過ぎようとしていた。


(その4へつづく)



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りんごっこ保育園民改費過請求事件 第4回
対決姿勢を鮮明にした東村山市

 これまで東村山市が高野に対して民改費の返還を求めて送付した文書は、事実上の返還請求ではあるものの、文書に対する回答期限を設けていたという意味で一方的に返還を請求するものではなく、穏当な話し合い解決を目指したものであると理解できよう。

 高野がいかに特異な保育園設置者であるとはいえ、りんごっこ保育園は一応国基準を満たした認可保育園であり、東村山市が大事な市民の子供の保育を委託している保育園である。いまさらどうかという気もするが、東村山市としてはたんに補助金を交付し交付される関係ではなく、本来信頼関係で結ばれるべき保育園と無用の争いはしたくないという思いがあったのだろう。

 しかし、「弁護士と会計士が判断できないから」という要求に応じて法律的根拠を示した文書を再送付したにもかかわらず、高野からなんらの回答もないことに対して、よくいえば鷹揚な、悪くいえばどこか腰の引けた東村山市もさすがに決断をしなければならないと考えたようである。7月14日、東村山市はこれまでの保健福祉部長名ではなく渡部尚市長名で「民間保育所運営費支弁額返還請求書」と題する以下のような文書を配達記録郵便で送付した。



民間保育所運営費支弁額返還請求書

 貴園に対し、平成16年度に交付した標記支弁額に関して、誤りのあったことが判明しました。つきましては、差額分を指定された期限までに返還してください。



1 平成16年度民間保育所運営費支弁額
(修正前)2814万2966円
(修正後)2730万3166円

2 返還金額  83万9800円

3 請求理由
 民間施設給与等改善費(以下「民改費」という)の算定に誤りがあり、加算率を8%から4%に修正したことによって民改費加算分が減額となり、この分が児童福祉法による保育所運営費国庫負担金について(昭和51年16日厚生省発児第59号の2)に規定する運営費を超えているため。

4 返還期限  平成20年7月28日



 それまでの文書と異なり、この請求書がすでに高野の意見や回答を聞くものではなく、有無をいわせず返還を求めるものであることがわかる。配達記録で送付したということは提訴を視野に入れたものであることを意味しよう。すでに遅いぐらいだが、渡部市長自ら高野の引き延ばしにずるずる付き合わない決断をしたことは評価できる。

最後通告

 しかし、高野は返還期限が過ぎても返還せず、返還請求に対するなんらかの回答もなかった。無視したという状況である。東村山市はナメられているというべきだろうか。普通の認可保育園設置者は所管に対してこのようなナメた対応はしない。

 東村山市には、この期に及んでなお、高野がたった1度の請求で素直に返還に応じるかもしれないというかすかな期待を持っていたのだろう。保育という公共事業のパートナーを最後まで信用しようとする姿勢はけっして悪いことではない。

 しかし、そのような性善主義がまったく意味をなさない相手が世の中には存在するということもまた動かしがたい事実なのである。東村山市は、(何度目かは知らないが)あらためて高野に対して常識を判断基準にすることはできないことを再確認したのではあるまいか。

 東村山市は当初の返還期限から一月後の8月27日、渡部市長名で「民間保育所運営費支弁額の返還について(最後通告)」と題する次のような文書を配達証明郵便で送付した。



民間保育所運営費支弁額の返還について(最後通告)

 このことについて、平成20年7月14日付、20東保児発第87号民間保育所運営費支弁学返還請求書を送付させていただいたところですが、返還期限の平成20年7月28日を過ぎても、下記金額が未だに返還されておりません。

 つきましては、直ちに同金額について返還をお願いいたします。

 なお、平成20年9月10日(水)までに全額返還されない場合は、法的対応をさせていただきますのでご承知置きください。



返還金額  83万9800円



 本来ならこの書面は返還期限(7月28日)を過ぎてからただちに送付していてもおかしくない。東村山市は1回目の返還請求を送付した時点ですでに「最後通告」までの流れを想定し、いつでも「最後通告」を送付できるように準備していたと思う。にもかかわらず、「最後通告」の送付が一月後だったのは盆休みを挟んだためだったか。

 ちなみに、高野がどう受け取ったかは別にして、東村山市が設定した返還期限がちょうど東京都指導監査部によるりんごっこ保育園に対する監査の日と重なったのはたまたまだろう。


(その5へつづく)


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りんごっこ保育園民改費過請求事件 第5回(最終回)
                           ★第1回から読みたい人はこちら


 さて、東村山市が送付した「最後通告」を受け取った高野が9月10日までに過請求分83万9800円を返還したのかといえば、高野はまたも返還しなかった。高野はこのまま返還に応じず、東村山市が返還請求訴訟を提起するのを待つのか。仮にこのまま法廷に持ち込まれれば高野に勝算はないように思えた。東村山市も負ける要素がないと踏んだゆえに「最後通告」を突きつけたのである。

質問に答えなかった矢野

 返還期限から1週間が過ぎた9月17日、東村山市議会の委員会室で市議会決算委員会が開かれていた。傍聴席の1つ隣の席に、高野の同居人であり、りんごっこ保育園の運営委員でもある市会議員の矢野穂積が座っていた。またとない機会なので、私は矢野にこう聞いた。

「矢野先生、民改費は返したんですか?」

 矢野は「税金も払っていないやつに答える必要はない」といった気がするが、残念ながら記憶が定かではない。高野が返したか、返さないのか、同居人である矢野が知らないことはあり得ない。しかしいずれにしても、高野が民改費を返還したかどうかについて、矢野はいっさい答えなかった。

 質問の仕方や状況にもよるが、回答しないのも1つの回答とみなすことができる場合がある。私の矢野に対する取材の経験からいえば、矢野が私の質問に答えないときは、そのほとんどが都合が悪くて答えられないのだろうと推測できるケースである。では、今日の矢野の反応をどう理解すべきかと私は考えた。

 そもそも今回の誤請求は規定以外の職員を対象として計算したことによるもので、故意はなく単純な過失だったとしても高野が過請求分を受け取ることのできる法的根拠はない。つまり、過請求分は不当利得と解釈することができよう。

 すると、常識的に判断すれば、高野が過請求分を返還しないというのは社会的に容認されることではあるまい。当然、高野が最後まで返還しなければ東村山市は法的手段に訴えることとなり、記者会見も行われ、マスコミで報道されることになろう。高野の立場がますます悪くなるのは目に見えている。したがって高野が「返還しない」のなら、矢野にとって好ましい状況とはいえず、私の質問に答えないことも理解できる。

 一方、高野がすでに返還していたとすれば、高野は過請求の事実を認めたことになる。ただ、返還の要請があった時点ですぐに返還に応じていたのなら、誰からも非難されることはない。誰にでも過誤はある。むしろ東村山市の事務処理も最小限度ですむから、すみやかに返還に応じたことを評価されるかもしれない。(認可申請以来の行政に対する高野と矢野の異常な敵対姿勢を知る者からすれば、すみやかに非を認めたという点において間違いなく評価しよう)。

 しかし、仮に返還したとしても、4月下旬の返還要請に対して不誠実きわまる言い訳を重ねた事実、自分の「誤請求」に起因するにもかかわらず、いったんは「法的根拠を示さなければ返還できない」などと、あわよくば過請求の責任を東村山市(すなわち東村山市民)になすりつけ、過請求をまんまとせしめようとした事実を消すことはできない(高野が返還しなければ、東村山市民は二重の被害を受けることになる)。

 高野が返還したとすれば、それは高野が返還に応じたという事実だけでなく、高野の不遜かつ狡猾なたくらみが東村山市の毅然とした姿勢の前に不調に終わったことをも意味する。平たくいえば、(高野の背後にアドバイザーがいたとすれば、その人物も含めて)高野の負けである。

 すると、この間の普通では考えられない異常な経緯をふまえれば、高野が返還していたとしても矢野にとってすでにその事実も堂々と明らかにできる状況にあるとはいえないことになろう。つまり矢野は、高野が返還しようが返還していなかろうが、私の質問に対して正面から答えたくない状況にあったと理解できるのではあるまいか。

観念した高野博子

 はたして高野は返還するのかしないのか。その答は私が矢野に質問してからほどなくして明らかになった。東村山市保健福祉部によれば、高野は9月16日、保健福祉部を訪れ、担当職員の指示のもと返還手続きをすませたという。返還期限の9月10日を6日も過ぎていたことは、東村山市がすぐに提訴することはないとみたのだろう。なかなかのふてぶてしさだが、私が矢野に質問した日の前日、高野はすでに過請求分を返還していたことになる。もちろんその事実を矢野が知らなかったことはあり得ない。

「草の根市民クラブ」は故朝木明代(万引きを苦に自殺)をはじめ、矢野もまた東村山市の公金使用のあり方について、その内容とやり方はともかくとして、きわめて厳しい立場をとってきた。その矢野が、認可保育園の補助金の過請求についてなんら議会で発言することもなく、過請求分を返還したかどうかさえ自ら明らかにしないとは不可解というよりない。この矢野の態度は、高野との同居人としての私的関係、さらにはりんごっこ保育園運営委員としての個人的立場を市議会議員としての公的立場よりも優先したものといわれても仕方あるまい。

 高野が過請求分を返還したのは、裁判になれば勝算はないと判断したということだろう。食中毒騒動事件をはじめ平成20年2月に発覚した保育士不足問題などにおける高野の対応をみれば、東村山市が法的手段を取ると言明しなければこれほど早く返還が実現したとは思えない。

 それでも、東村山市保健福祉部は通常の相手なら1回の説明で解決できる問題、それも本来の業務以外の問題を解決するために半年もの時間を費やしたという事実は軽くない。高野という特異な認可保育園経営者1人のために延べ何人の職員が、どれだけの時間とエネルギーを割いたか。半年という時間をかけて東村山市が得たものは何もない。財政上のマイナス分がゼロに戻っただけであり、そのために職員が費やした労力と時間は完全にマイナスのままなのである。

(了)

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西村修平「婚外子」差別発言裁判 第1回
 外務省が主催した意見交換会(平成19年8月31日)での発言によって名誉を傷つけられたとして、同意見交換会に出席していた女性が「主権回復を目指す会」代表の西村修平に対して220万円の支払いを求めて提訴していた裁判の第2回口頭弁論が平成21年5月14日、東京地裁で開かれた。     (宇留嶋瑞郎)

原告の主張と異なる裁判報告

 この裁判について同日、西村は「主権回復を目指す会」のホームページにおいて次のように説明している。

〈主権回復を目指す会の西村修平代表は平成19年8月、外務省主催の「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」の政府とりまとめの意見交換会で私生児(婚外子)は人種差別に該当しない旨を述べた。この席上、西村修平代表は婚外子を私生児と呼んだ。さらに 私生児が嫡子と区別(差別)されるのは当然だと意見を申し立てた。

 これが名誉毀損に当たるとして○○(実名)西村修平代表を相手に220万円の損害賠償を請求する訴訟を起こした。〉

 内容は別にして、意見交換会における西村の発言が上記のとおりのものだったとすれば特に誰かを特定して個人の名誉を傷つけるものではないような気がする。

 では、原告は訴状でどんな主張をしているのか。原告は事実関係について次のように主張している。

〈原告は、自らが当事者として婚外子差別問題に取り組んでいることを述べた上、日本国内において婚外子差別が温存され、日本政府は国連から差別解消を求める勧告を出されていることを述べたが、その際、被告は原告の発言を妨害しつつ、婚外子について「個人の不倫の関係で生まれたアレだ。不貞の子どもでしょう。」「世界の常識だ。不貞の子どもは差別される。」と発言した。(発言1)

 また、原告に向けて「何回でも言ってやる。私生児が! 私生児が!」と今日では差別語として認識されている「私生児」という言葉を投げつけた。〉(発言2)

〈原告が法務省官房秘書官……に対して……、その差別語がこの意見交換会の席上で発せられたことに対する見解を問うていると、被告は原告に近寄り「おまえは何人不倫の子を産んだのか?」などという言葉を投げつけたうえ、さらに「何度でも言ってやる。訴えてみろ。裁判でも何でも受けて立ってやる。」などと言い放った。〉(発言3)

 その上で原告は、上記発言1については事実摘示部分は原告の名誉を毀損し、発言2については〈原告に向けて私生児という言葉を連呼する行為であり、やはり原告の名誉感情を著しく侵害する侮辱行為〉、発言3については〈原告を意図的に傷つけるためにした行為〉であるとそれぞれ主張している。

 西村が第2回口頭弁論後にホームページで説明したたんなる婚外子に関する意見を述べたにすぎないとする内容と原告の主張との間には明らかな食い違いがあることがわかろう。意見交換会における自己の発言に対する西村の「一般論である」とする認識はともかく、裁判の報告をするのなら、「原告個人に対して向けられた発言」であるとする原告の主張は主張としてなぜそのまま正確に伝えようとしないのだろう。原告の主張は主張としてありのままに明らかにし、その上で反論すればいいだけではないのかという気がしてならない。

 原告の主張に対し西村は答弁書で、発言1(「個人の不倫の関係で生まれたアレだ。不貞の子どもでしょう。」「世界の常識だ。不貞の子どもは差別される。」)については、

〈原告の発言に対して反対の意見表明をしたもので発言を妨害したものではない。〉

 と主張し、発言2(「何回でも言ってやる。私生児が! 私生児が!」)、発言3(「おまえは何人不倫の子を産んだのか?」)については西村の発言ではないと主張している(発言3のうち「何度でも言ってやる。訴えてみろ。裁判でも何でも受けて立ってやる。」については答弁がない)。

 すると西村は、原告の主張が西村の原告個人に向けられた発言によって名誉を傷つけられたとするものであることを必ずしも理解していないわけではないようである。それがなぜホームページでは、たんに婚外子についての一般論を述べたことに対して提訴されたことになっているのか、私にはよく理解できない。

理解不能の言語

 第1回、第2回口頭弁論が開かれた当日、西村は彼を支援する右翼らとともに東京地裁前で街宣活動を行っているが、右翼らは次のように主張している。



右翼  これはですね、まさに訴訟権の濫用であります。われわれが政府主催の意見交換会でですね、これを述べてですね、なぜそれがですね、そういう民事事件に問題にされなければならないのか。

右翼の弟子  日本政府主催の意見交換会において、人種差別問題および私生児の問題について「どうぞ忌憚のない意見をお聞かせください」「どうぞ忌憚のない意見をお願いします」、そのようにいわれて忌憚のない意見を述べたというのに、それで訴えられたらたまったものではない。



 何も知らない者が彼らの主張を聞けば、なるほどこれは提訴自体が不当と考えるだろう。右翼はこう締めくくった。



右翼  しかもおかしなことにですね、この人権侵害を一緒に訴えられたMさんにはですね、裁判は提起されておりません。このことを考えると、この裏にはやはり創価学会、公明党をですね、厳しく追及してきたわれわれ行動する保守運動、そしてそのリーダーでもある西村さんをですね、なんとしても黙らせたい、そういう思惑でですね、今回の裁判が提起されたと、そういうふうに考えざるを得ません。



 西村とともに意見交換会に出席して西村と同趣旨の意見を述べたMに対しては「おかしなことに」提訴していない、と右翼はいうのだが、これはたんにMが原告個人に向けた発言をしなかったからということにすぎないのではないか。右翼のそれ以下の主張については飛躍が激しく論評不能というほかないが、この街宣に集まった30名前後の右翼の支援者たちの間からは「そうだ、そうだ」という同意の声はあがっても特に異論もなかったことを考えると、支援者たちにとって右翼の言語は理解できるものであるらしかった。

 ちなみに、この提訴について右翼は「訴訟権の濫用であります」と主張している。しかし、西村が答弁書で「訴権の濫用」を理由に却下を求めている事実はない。


(第2回へつづく)

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西村修平「婚外子」差別発言裁判 第2回
 ところで、西村による婚外子差別発言および個人に対する名誉毀損発言がなされたとされる「外務省主催の『あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約』の政府とりまとめの意見交換会」とはどのような趣旨で行われたものだったのか。

意見交換会の趣旨

「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(以下、「条約」)は1961年12月21日、第20会期国連総会において全会一致で採択され、1961年1月4日に発効した。日本においては1995年11月21日に衆議院、12月1日に参議院のそれぞれ本会議おいて全会一致で批准され、12月15日に146番目の締約国となり、翌1996年1月14日に発効している。

 なお条約のいう「人種」とは、人を骨格・皮膚の色・毛髪の形など身体形質の特徴によって分類することのみならず、民族や部族的出身や、世系と表現されるカーストやカースト類似の特定集団あるいは特定の身分(過去にそうであったことを含む)とされる集団の出身、特定言語や文化圏あるいは異なる歴史的背景等の出身、公的市民登録(日本においては戸籍等)によって異なる存在であることを明示されているなどの幅広い概念である。

 したがって、条約が撤廃を目指そうとする「人種差別」とは、特定の集団や特定の集団の一員であることで一般とは異なるカテゴリーに分類されることに基づくあらゆる区別、制限または優先を意味する。つまり条約のいう「人種差別」とは「黒人」「白人」「朝鮮人」「日本人」といった一般に認識されている「人種」のみを指すのではなく、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権および基本的自由を認識し、享有しまたは行使することを妨げ、または害する目的または効果を有するものすべてを指しているのである。(西村はこの件に関連して「日本に人種差別はない」と主張しているが、西村が条約のいう『人種』の意味を理解していたかどうかは保証のかぎりではない)。

 条約は第9条において、「この条約の諸規定の実現のためにとった立法上、司法上、行政上その他の措置に関する報告を、委員会による検討のため、国際連合事務総長に提出することを約束する。」としている。すなわち日本政府は、政府報告書を作成することで、条約の国内実施のために必要な「立法上、司法上、行政上その他の措置」等を洗い出し、国内の「立法上、司法上、行政上その他の措置」を条約に合致させる責務を負っている(「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と定めた憲法第98条2項に基づく)。
 
 平成19年8月31日に外務省本省内で行われた「『あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約』政府報告に関する市民・NGOとの意見交換会(第2回目)」(正式名称)は、まさに条約の国内実施のために政府が人権NGOとの間で建設的対話を行う場として設定されたものである。意見交換会を主催した外務省も、意見の募集要項に「人種差別撤廃条約の実施状況に関する要望・意見であること。」と明記している。

参加NGOは国連への協働が前提

 ちなみに国連はNGOについて、1968年5月23日の国連経済社会理事会決議1296において、「国連の活動を支援するとともに、自らのねらいと目標、ならびに、その能力と活動の性質および範囲に従い、国連の原則と活動に関する知識を向上させることを約束する」存在として規定し、NGOに国連憲章、世界人権宣言等の理念が共有されていて、国連の目指すところと協働することを想定している。また、NGOには国連憲章第71条による国連との協議資格が理事会決議の規定に従って付与されることとなっている。

 したがって意見交換会を主催した外務省も、会に出席する市民・NGO側は人種差別撤廃条約がどういうものであるのかを理解しており、その国内実施のための建設的意見を用意してくるものと想定し、あるいは期待もしていただろう。つまり参加NGOには「あらゆる形態の人種差別の撤廃」を目指すという共通の前提があるものと認識されていたと考えてよかろう。

 言い換えれば、この意見交換会では、発言は自由ではあるものの、その内容においては自ずと一定の枠組があったということになる。たんにいいたいことをいえばよい、というような場では決してなかったのである。

 意見交換会とはそもそもそのような性格のものだった。そこに西村や右翼らも参加していたわけである。


(第3回へつづく)

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