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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

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西村修平事件一審判決 第1回
「行動する保守」の西村修平(「主権回復を目指す会」代表)が平成20年9月1日に東村山駅前で行った街宣などをめぐり、千葉英司元警視庁東村山警察署副署長が名誉を毀損されたとして提訴していた裁判で東京地裁立川支部は平成22年4月28日、西村に対して10万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 名誉毀損による10万円という損害賠償額は金額としては大きなものではない。しかし、西村ら「行動する保守」や彼らを全面的に支援した矢野穂積と朝木直子(東村山市議)にとって、判決の内容は損害賠償額以上に厳しいものだった。                  (宇留嶋瑞郎)

西村は「個人批判ではなく捜査批判」と主張

 千葉が提訴したのは西村が平成20年9月1日に行った街宣と同日付ブログ記事である。西村は街宣で〈創価学会の4悪人〉などと記載したプラカードを指さしながら以下のように発言し、ブログには以下のように記載した。



街宣
 東村山署○○○○刑事係長、千葉英司副署長、この2人が朝木明代さんの謀殺事件を自殺として覆い隠す、物事を握りつぶそうとした張本人。○○○○刑事係長、千葉英司副署長、さらにこの事件を取り上げた東京地検八王子支部の吉村弘、信田昌男、この2人はまぎれもしない創価学会の執拗、筋金入りの学会員、○○○○(刑事係長)、千葉英司も同じ穴の狢。この4人がいったい何をしでかして朝木明代さんの謀殺を自殺事件に仕立て上げようとしたか。

ブログ
 千葉英司、13年前に、朝木市議の謀殺を「自殺」と断定し、闇に放り込もうとした元東村山署副署長だ。さらに朝木市議を万引き犯としてでっち上げた張本人である。



 千葉はこれらの発言や記事によって名誉を毀損されたと主張。一方西村は「本件各表現は、東村山署の機関である副署長としての原告の捜査指揮を批判したもので、原告個人を対象としていないから名誉毀損にはあたらない」とし、また「朝木明代の万引き被疑事件が冤罪であること」「転落死が他殺であること」は真実であるなどと主張していた。

 裁判所が西村の発言や記事が千葉個人に向けられたものでないと判断すれば、真実性・相当性を検討するまでもなく名誉毀損は成立しない。西村は「千葉が朝木明代謀殺事件を握りつぶそうとした張本人」と断定しているが、これをどう解釈すれば「副署長としての捜査指揮を批判」したとする裁判での主張になるのか理解しがたいところである。

 いずれにしても、裁判の争点は、①本件各表現が千葉個人の名誉を毀損するものであるかどうか②本件各表現が千葉個人の名誉を毀損するとすれば、本件各表現に真実性・相当性があるかどうか――という点にあった。

「千葉個人を対象としたもの」と認定

 では、裁判所はまず、西村の発言や記事の名誉毀損性についてどう判断したのか。東京地裁は判決で次のように述べた。



街宣
 本件演説部分は、これと一体をなすその余の部分、とりわけ創価学会がオウム真理教に比類する巨大なカルト集団であり、亡明代の謀殺事件に関わっていると断定的に主張する部分及び前後の文脈等の事情を総合的に考慮し、一般の聴衆の普通の注意と受け取り方を基準として判断すると、亡明代は、自殺したのではなく、計画的に殺害されたと断定的に主張した上、東村山署副署長であった原告が捜査に当たり、亡明代が自殺したものとして処理したことについて、原告が、同署刑事係長及び地検八王子支部の検察官2名とともに、 亡明代が計画的に殺害されたことを知りながら、あえてこれを自殺事件に仕立て上げて隠蔽しようとしたと主張し、さらに、上記検察官2名は亡明代の謀殺事件に関わっている創価学会の学会員であって、原告及び上記刑事係長もこれと結託して上記隠蔽に加担する不正を行った同類のものであると主張し、上記各事実を摘示するとともに、同事実を前提にその行為及び人格の悪性を強調する意見ないし論評を公表したものと解するのが相当である。

 したがって、本件演説部分は、原告の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものというべきである。

ブログ記事
 本件記事部分は、これと一体をなす本件記事の表題及びその余の部分、とりわけ本件窃盗被疑事件の被害店舗の経営者を「創価学会信者」と記載し、原告を同店舗の「ガードマン(?)として登場する創価学会の怪!」と記載している部分及び前後の文脈を総合的に考慮し、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すると、亡明代が、自殺したのではなく、計画的に殺害されたと断定的に主張するとともに、東村山署副署長である原告は、創価学会の関係者であって、捜査に当たり、亡明代が計画的に殺害されたことを知りながら、あえて自殺と断定して、これを隠蔽しようとしたもので、その隠蔽工作として亡明代が万引きをしたという虚偽の事実をねつ造したと主張し、上記各事実を摘示するとともに、同事実を前提にその行為の悪性を強調する意見ないし論評を公表したものと解するのが相当である。

 したがって、本件記事部分は、原告の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものというべきである。



 東京地裁はこう述べて記事の名誉毀損性を認定した上で、「千葉個人を対象としたものではない」とする西村の主張について次のように認定している。



 被告は、本件各表現は、東村山署の機関である副署長としての原告の捜査指揮を批判したもので、原告個人を対象としていないと主張する。

 しかしながら、本件各表現は、捜査を担当した東村山署副署長である原告を特に名指しし、原告の行為ないし人格の悪性を強調するものであるから、原告個人を批判する側面を有するものと認められる。

 したがって、被告の上記主張は採用できない。



 西村の街宣が「東村山署の機関である副署長」の捜査に対する問題提起が目的だったとすれば、千葉を名指しした上、事件を「握りつぶそうとした張本人」とか「朝木市議を万引き犯としてでっち上げた張本人」などと断定する必要はあるまい。東京地裁が西村の街宣および記事について「千葉個人を対象としたもの」と認定したことになんら違和感はない。

(つづく)

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西村修平事件一審判決 第2回
 西村が行った街宣とブログ記事について東京地裁立川支部は千葉の社会的評価を低下させるものと認定したが、①その内容に公共性・公益性があり、かつ②その内容に真実性あるいはそう信じたことについて相当の理由があると認められた場合には不法行為責任は阻却される(問われない)というのが、現在の名誉毀損の考え方である。

 朝木明代の転落死事件の捜査について取り上げることは、公職にあった者に関する事件捜査に関連するものだから公共性・公益性はある。したがって違法性の有無の判断は、西村が行った表現行為に真実性・相当性があったかどうかにかかってくるということになる。

東京地裁の真実性判断

 東京地裁立川支部は真実性・相当性の判断にあたり、まず西村の立証対象となる事実を以下のように整理している。



街宣
①亡明代が自殺したのではなく、計画的に殺害されたものであること。
②原告が①の事実を知りながら、あえてこれを自殺事件に仕立て上げて隠蔽しようとしたこと。
③創価学会が亡明代の謀殺事件に関わっており、原告は、創価学会の学会員である検察官2名と結託して上記隠蔽に加担する不正を行った同類のものであること。

ブログ記事
⑴亡明代が自殺したのではなく、計画的に殺害されたものであること。
⑵原告が、亡明代が計画的に殺害されたことを知りながら、あえて自殺と断定して、これを隠蔽しようとしたこと。
⑶原告がその隠蔽工作として亡明代が万引きをしたという虚偽の事実をねつ造したこと。


 
 この中には西村が街宣で指差したプラカードの記載事実(「創価学会の4悪人」等)は含まれていない。これは単純に、今回の千葉の請求がプラカードの記載内容ではなく街宣の内容に基づいてなされたものだからである。西村が街宣等で主張した事実の真実性が認定されなければプラカードの記載事実の根拠が否定されたこととなり当然、プラカードの記載内容もまた否定されたに等しいということになる。

 では、東京地裁は西村の上記各表現についてどんな判断をしたのか。各項目について、西村の主張に沿って順を追ってみていこう。



「明代が自殺したのではなく、計画的に殺害されたものであること」について

(西村の主張)

1 司法解剖鑑定書において明らかになった上腕内側部の皮下出血は、犯人ともみ合ったときに生じたものであることは山形大学鈴木名誉教授の鑑定結果からも明らかである。

2 転落現場の初動捜査では明代の靴と鍵が見つかっていない。警察犬は明代の臭跡をたどることはできなかった。これは当日夜、明代が現場まで歩いていったのではない=何者かによって運ばれたことを示している。

3 当日夜、事務所に鍵をかけたのは明代だから、明代は鍵束を所持していたはずである。ところが初動捜査で発見されなかったことは、事後に拉致犯人が置いたことを意味する。発見された鍵束が明代のものであることを東村山署が知っていたのは、犯人からこの事実を聞いていたからにほかならない。

4 明代が転落現場ビルの手すりを自力で上がり、落下することは不可能である。

5 明代は転落直後、飲食店店主に対し「飛び降りていません」と答えている。

(東京地裁の判断)
上腕内側部の皮膚変色部について(西村主張の1)
 司法解剖鑑定書には本件上腕部内側の皮下変色部の記載があるが、これが他人と揉み合ってできた可能性があることを示唆する記載はなされていない。

 鈴木教授の「本件上腕部内側の皮下変色部が亡明代と他人が争った際に生じたことが最も考えやすい」とする本件鑑定補充書の記載は採用することができない。

 亡明代が転落したと考えられる本件マンションの5階から6階の間の手すりに残された手指痕跡の真下で鉄製フェンスが折れ曲がっており、亡明代が転落時に同フェンスに衝突したことがうかがえることなどに照らせば、本件上腕部内側の皮膚変色部は、亡明代が他人と揉み合ったことにより生じたとしても矛盾しないという程度の証拠力を有するにとどまるといわざるを得ない。

 別件訴訟(『東村山の闇』事件)の東京高裁判決も、矢野穂積及び朝木直子が本件転落死事件につき「他殺の可能性を示す証拠があると信ずるについて相当の理由がなかったとはいえないというべきである」とするにとどまり、他殺の可能性を示す証拠があることが真実である旨認定するものではないし、上腕部内側の皮膚変色部については、「明代の司法解剖鑑定書には他人と揉み合った際に生じることがある上腕内側の皮膚変色部が存在したことが記載されている」と記載するにとどまる。

 また別件訴訟(『エフエム東村山』事件)の東京高裁判決も、本件上腕部内側の皮膚変色部が「他殺を疑わせる証拠となるようなものであること」が真実であるとは認定しておらず、矢野において、本件上腕部内側の皮膚変色部が「他殺を疑わせる証拠となるようなものであること」を信じたことについては「相当の理由があるというべきである」とされたにとどまる。



「創価問題新聞」判決を否定したかった矢野と朝木

「エフエム東村山」事件について矢野はウェブ版「東村山市民新聞」で「自殺説強調のあの千葉元副署長が、また敗訴」と宣伝。また「東村山の闇」事件は「最終的に東京高裁(7民)の破綻判決を全面否定!」とした上、

〈この結果、千葉元副署長が、これまで矢野、朝木両議員を提訴した合計11件の裁判がすべて終了し、最高裁の最終的な朝木明代議員殺害事件に対する判断が示されたことになります。〉

〈この最高裁決定の11日前の7月3日には、同じく千葉副署長が提訴していた「創価問題新聞」で、最高裁は、東京高裁(7民)の事実を意図的に書き換えた判決を追認する決定をだしていましたが、最高裁はその直後の7月14日の決定で、これらをすべて否定する最終的判断を下したことになります。〉

 などと主張している。矢野がここでいう「東京高裁(7民)」判決とは「創価問題新聞」事件判決のことである。同判決は転落死について、次のように述べて矢野と朝木が主張する「他殺説」を否定している。

〈司法解剖鑑定書には、本件損傷(上腕部内側の皮膚変色部)が他人と争ってできた可能性があることをうかがわせる記載はなく、本件損傷の存在からは、……その生成原因として明代が他人ともみ合って上腕を強くつかまれた可能性があることが認められるだけであり、明代が他人に突き落とされて本件転落死したことまで推認できるものでないことは明らかである。〉

 矢野と朝木は「東村山の闇」判決によってこの「創価問題新聞」事件判決があたかも否定されたと印象づけるために、「最高裁はその直後の7月14日の決定(「東村山の闇」事件)で、これらをすべて否定する最終的判断を下したことになります。」と宣伝したのである。2つの判決に連続性はなく、当然、明代の万引き冤罪説と他殺説を否定した「創価問題新聞」判決が覆った事実もない。

空振りに終わった最高裁前街宣

 しかし、この矢野と朝木の明らかなデマを妄信したのが西村や「行動する保守」Aらである。「東村山の闇」事件が矢野勝訴で確定したのちの平成21年7月24日、西村らが最高裁前に集結し、「創価問題新聞」判決を非難したことは記憶に新しい。「行動する保守」Aは矢野と朝木の主張をそっくりコピーした街宣を行い、こう締めくくった。

「千葉英司がいい加減な捜査をし、真実を隠蔽して、捜査をしないで、事実を歪曲したと。これが最高裁で確定したということをはっきりと述べさせていただいて、……同じように千葉英司に訴えられている西村さんの裁判でも有効な判決でありますので、あえて最後に付け加えさせていただきます」

「行動する保守」の指導者であるAは、「東村山の闇」判決について彼なりに考えた結果、矢野と朝木の主張は正しいと判断したのだろう。しかし「行動する保守」Aの主張に反し、東京地裁立川支部は上腕内側部の皮下出血の痕について、〈(「東村山の闇」判決は)他殺の可能性を示す証拠があることが真実である旨認定するものではない〉とする判断を示した。まだ一審段階ではあるが、「行動する保守」Aの「東村山の闇」判決に対する「西村さんの裁判でも有効な判決」という評価・判断は「あえて最後に付け加え」るほどのものでもなかったということになろうか。

 余談だが、平成22年5月7日、千葉がブログの記事をめぐり「行動する保守」Aとその弟子を提訴していたことがわかった。はたして「行動する保守」Aにとって「東村山の闇」判決が自分自身の裁判でも「有効な判決」となるのかどうか、きわめて興味深いところである。詳細はあらためて報告したい。

(つづく)

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西村修平事件一審判決 第3回
 西村は裁判で、街宣とブログで主張した「他殺説」(裁判所が判決で整理した①と⑴の「亡明代が自殺したのではなく、計画的に殺害されたものであること」)の根拠として上腕内側部の皮下出血以外の点も何点か挙げており、東京地裁はそれらの主張についても詳細に検討している。

 まず、朝木(=矢野)の指南を受けた西村の主張から確認しておこう。



「明代が自殺したのではなく、計画的に殺害されたものであること」について(前回の続き)

(西村の主張)
1 「最後のメッセージ」

 平成7年9月1日午後9時19分、明代は事務所にいた矢野に電話し、「ちょっと気分が悪いので休んでいきます」と電話した際の音声は、生命の危険に直面した状態での音声だったと鑑定されている。

2 「明代は万引きで書類送検されていても弱気になってはいなかったこと」
 明代は転落死当日の午後、万引き事件の弁護士と打ち合わせをし、弁護士から「万引き事件がねつ造でなければ完全な人違いである」旨の説明を受け、あくまでも闘い抜くと闘志を燃やしていた。

3 「転落現場の状況」
①明代が自宅から現場マンションまで歩いて行ったとすれば、靴を履いて出かけたはずだが、明代は発見時、靴を履いておらず、現場でも靴がみつかっていない。したがって、明代は転落死当日、自宅から現場マンションまで歩いていった事実は存在しない。
②転落現場真上の手すりの高さは109センチメートルないし151センチメートルあるから、明代が自力で手すりに上ることは不可能である。
③明代は転落直後、飲食店の店長に対して「飛び降りてはいない」とはっきり答えている。
④明代が所持していたはずの鍵束が、現場の捜索後に発見されている。
⑤転落当時、現場マンション住人が「ギャー」という叫び声を聞いているが、自殺する者が「ギャー」という声を出すとは考えられない。

4 「自殺の動機がないこと(万引きの冤罪性)」
①千葉は指紋が残っているはずのビニールカバーを調べていない。
②朝木が「明代の万引き当日着てきた服」を着て撮影した写真は被害者の供述と異なっているから明代は万引き犯ではない。
③上記の服装は白っぽいものであり、目撃者の1人の証言とは異なっている。
④明代は万引き事件発生当時、矢野とレストランで食事をしていたというアリバイがある。ところが東村山署は、そのアリバイを証明できるレジ・ジャーナルを押収していながら、その提出を拒んでいる。
⑤東村山署が明代を万引き容疑で書類送検した当日、東村山署において公明党議員が千葉と話し込んでいた。したがって、万引き事件および転落死事件がいずれも創価学会によるものであることが強く疑われる。
⑥明代は転落死事件の2日後、高知で開催されたシンポジウムにパネリストとして出席する予定だったから、自殺するはずがない。



(東京地裁の認定と判断)
1について

 これを認めるに的確な証拠はない。
〈なお、付言すると、本件音声鑑定書によれば、日本音響研究所の鈴木松美は、平成8年3月22日、精神的緊張により音声の基本周波数が上昇するという因果関係があることなどを前提として、亡明代が平成7年9月1日9時19分に矢野に電話を架けた際の亡明代の音声の基本周波数の推移から、当時、亡明代が相当な精神的緊張状態にあったと推測したことが認められるものの、同鑑定は亡明代の音声が「生命の危険に直面した状態での音声であった」とするものではない。〉

2について
 これを認めるに的確な証拠はない。

3について
 いずれもこれを認めるに的確な証拠はない。(※筆者注=なお西村主張の上記3のうち、東京地裁は以下の点についてより具体的な判断を示している。)

 3の①(「発見されない靴」)について
〈東村山署による捜索によっても亡明代の靴が本件マンション付近から発見されなかったことは前記認定のとおりであるが、そのことから亡明代が靴を履かずに本件マンションに赴いた可能性が否定されるものではない。〉

 3の④(「事後にみつかった鍵束」)について
 〈本件鍵束が本件転落死事件後に行われた現場付近の捜索後に本件マンション2階階段において発見されたことは前記認定のとおりであるが、そのことから直ちに亡明代を殺害した犯人が本件鍵束を同所に置いたという事実が推認できるわけではない。〉

 3の⑤(「転落事件発生時、マンション住人が『ギャー』という叫び声を聞いたこと」について
 〈(上記事実が)仮に認められるとしても、その際に人が争うような気配があったことをうかがわせる証拠はないから、これらをもって亡明代が何者かに殺害されたと認めることはできない。〉

4について
 4の②③④(万引き事件関連)について

 〈直子が本件窃盗被疑事件当時亡明代が着ていた洋服と同じ洋服を着て写真を撮影したこと(筆者注=②)、撮影された写真に(万引き被害者)の犯人識別供述と矛盾する映像があること(筆者注=③)、亡明代にアリバイがあること(筆者注=④)は、いずれもこれを認めるに足りる証拠はなく、本件窃盗被疑事件に創価学会の関与があったとする点(筆者注=⑤)は確たる根拠がなく、他に本件窃盗被疑事件を亡明代が犯していないことを認めるに足りる証拠はない。〉

 4の⑥(シンポジウムの予定)について
 〈これをもって、同年9月1日の本件転落死事件当時、亡明代が自殺するはずがないと断定できるものではない。〉

 ※筆者注=4の①については、東京地裁は言及さえしなかった。



「鍵と靴」の事件性を否定

 明代の「上腕内側部に残された皮下出血の痕」についてだけでなく、西村が主張する「明代が自殺したのではなく、計画的に殺害されたものであること」の根拠について東京地裁がことごとく排斥したことがおわかりいただけよう。

 東京地裁の判断の中でも、矢野と朝木が事件直後からしきりに「他殺の根拠」として宣伝していた「発見されなかった靴と鍵」について、それぞれ「明代が歩いて現場まで行った可能性は否定されない」(靴)、「犯人が置いたという事実が推認できるわけではない」(鍵)として矢野と朝木の主張を否定した意味は大きい。いずれも「靴を履いていなければ、明代はどこで靴を脱いだのか」「犯人が置いたのでなければ誰が置いたのか」という反問でもある。自宅にもない(朝木は「家にはない」といっている)靴はどこにあったのか、また誰かが捜索後に鍵を置いたのだとすれば当然、矢野もその可能性を持つ1人ということになる。

「再現写真」も捏造と断定

 万引き事件についても東京地裁は、「明代が万引きを犯していないことを認めるに足りる証拠はない」として西村の主張を全面的に退けている。とりわけ矢野と朝木が苦心して作出した「万引き事件発生当日の明代の服装」の「再現写真」なるものについて「根拠がない」と認定したことは、それが捏造された証拠であると断定したに等しかろう。

 西村や「行動する保守」Aらはむしろこの判決によって、矢野と朝木が明代の「万引きを苦にした自殺」という事実を隠蔽するためにどれほどの嘘を重ね、世間を欺いてきたかということに早く気づくべきなのではないかという気がする。西村や「行動する保守」Aにもそれなりのプライドがあることはわからないではない。しかし、誤りは誤りとして認め、修正するのが指導者としての器というものだろう。西村ら指導者がいつまでも事実から目を背け続ければ、彼らを信じ込んでいる多くの支援者をますます迷妄の果てに追いやる結果になるのではあるまいか。

(つづく)

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西村修平事件一審判決 第4回
転落直後の明代の言動に関して重要な認定

 これまで見てきたように、東京地裁は西村の主張をことごとく排斥している。その上で東京地裁は、千葉の主張・立証を採用して明代が「計画的に殺害されたもの」であるとする西村の主張を次のようにあらためて否定している。



「明代が自殺したのではなく、計画的に殺害されたものであること」について(前回の続き)

〈(明代が)仮に他人により本件マンションから転落させられたため重傷を負ったのであれば、これを発見した第三者に対して、通常は転落の事実を申し述べるなどして、必死に救助を求めると考えられるところ、前記認定事実によれば、亡明代は、転落直後、重傷を負ったにもかかわらず、(ア)発見者に対して転落の事実を否定し、(イ)救急車の手配さえ断ったというのであり、(ウ)これは亡明代が自分が本件マンションから転落し負傷したことの発覚をおそれたものとみることができ、他人により高所から転落させられるような危害を加えられた者の言動としては不自然である〉

(ア)(イ)(ウ)および下線は便宜上、筆者が付した)



 ここで東京地裁は、明代の転落直後の発見者らに対する言動から、明代が何者かに突き落とされたのではないと結論付けている。転落直後の言動のうち、東京地裁が取り上げたのは(ア)(イ)である。

 とりわけ(ア)について矢野と朝木は、「落ちたのですか」(発見者=店長)との問いかけに対してそれを否定するかのように首を横に振った明代の反応のうち、店長の発言を意図的に「飛び降りたんですか」にすり替え、あたかも明代が「飛び降りたのではない」と答えたかのように主張し、自殺を否定していた。もちろん西村も、朝木が届けた「店長(実際には店長ではなくオーナー)の共同記者会見」の反訳を書証として提出し、自殺を否定する材料としていた。また(イ)について矢野と朝木は、ただ「そのような事実はない」と主張し、明代が救急車を断った事実を否定し続けている。

 これに対して東京地裁は、千葉が提出した書証(捜査状況を記載した準備書面)などから店長の発言が「落ちたのですか」であり、これに対して明代が首を横に振った事実、および「救急車を呼びましょうか」との第1発見者の呼びかけに明代が「いいです」と断った事実を認定。その上で東京地裁は、これらの明代の言動が(ウ)「他人により高所から転落させられるような危害を加えられた者の言動としては不自然である」と結論付けたのである。矢野と朝木の主張を真っ向から否定するものにほかならない。

「自殺の動機」に踏み込んだ東京地裁

 さらに東京地裁は、これまでの関連裁判では具体的になされていない初めての認定を行っていた。転落直後の明代が「他人により高所から転落させられるような危害を加えられた者の言動としては不自然」であると認定し、続いて万引き事件との関連性について東京地裁はこう述べた。



〈被害者が亡明代が犯人である旨供述し、被害者が現場から犯人を追跡し、被害品を取り返したところなどを目撃した第三者らもこれに沿う供述をしていたこと、亡明代がレジジャーナルの写しをアリバイの証拠として提出したが、原告ら捜査機関において裏付け捜査の結果、アリバイの主張は信用性がないと判断されており、警察官による被疑者取調べや原告による広報などを通じて、亡明代もそのことを知っていたと考えられることなどに照らせば、本件転落死事件当時、亡明代を被疑者とする本件窃盗被疑事件が地検八王子支部へ書類送致されていたところ、検察官送致後、被疑者である亡明代が本件窃盗被疑事件につき、自己が今後起訴されて刑事責任を問われかねない厳しい立場に置かれていることを憂慮していたことがうかがえる。〉



 東京地裁はすでに西村が主張する「他殺の根拠」を否定し〈亡明代が何者かに殺害されたと認めることはできない。〉と認定し、〈本件窃盗被疑事件を亡明代が犯していないことを認めるに足りる証拠はない。〉(本連載第3回)と明代の万引きの事実を事実上認定している。その認定と合わせ、矢野と共謀したアリバイ工作が破綻した事実、転落死当日の明代の行動と矢野の説明の矛盾、「落ち込んだ様子で歩いていた」とする東京地検の発表内容などから、東京地裁は転落死当時の明代の心境についてこう推認したものとみられる。論理的にも証拠評価の観点からも、きわめて常識的な認定といえるのではあるまいか。

 転落直後の「他人により高所から転落させられるような危害を加えられた者の言動としては不自然」な明代の言動と、多くの証拠から推認される当時の明代の心理状態をふまえ、東京地裁は明代の「自殺の動機」に言及してこう述べた。



〈したがって、被告の主張するその余の点を考慮しても、本件転落死事件当時、亡明代に自殺の動機がなかったとはいえない。〉



 これまでの明代の転落死関連裁判のうち、月刊タイムス事件で「万引きを苦にした自殺」とする表現について相当性が認定されているが、「自殺の動機の有無」にまで直接的に踏み込み、その「動機」があったことを明確に認定した判決はこれが初めてである。今回の東京地裁判決は「万引きを苦にした自殺」とする表現の相当性を内実的に検討し、認定したものと評価できよう。

 その上で、東京地裁は次のように結論付けた。



〈以上によれば、被告の主張するその余の点を考慮しても、亡明代が殺害されたことや、これが計画的なものであったことを認めることはできない。〉



 東京地裁はこう述べて、「明代は自殺したのではなく、計画的に殺害されたものである」とする西村の主張を全面的に否定したのである。

 なお余談だが、裁判官席のある壇上に駆け上がったことで有名な右翼Mを千葉が提訴している裁判は、右翼Mが拘留されていて準備書面が用意できなかったとの理由で延期を申し立て、第3回口頭弁論が5月26日に延期となっていた(当初の予定は4月13日)。しかし、口頭弁論が2日後に迫った5月24日午前の段階でもまだ右翼Mから準備書面は提出されていないとのことである。どうしたのだろうか。

(つづく)

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「行動する保守」事件 第1回
 平成22年5月7日に東村山警察署元副署長千葉英司が「行動する保守」Aとその弟子を提訴したことはすでにお知らせしたとおりだが、5月25日、「行動する保守」Aらのもとに訴状が送達されたようである。

 平成20年7月29日、「行動する保守」Aは八王子駅前において、朝木明代の万引きを苦にした自殺事件について「東村山署は明代を殺害した犯人を特定していたにもかかわらず、自殺として処理した」とする「内部告発」を得たとして、「創価学会の関与が疑われるこの事件の真相を究明しなければならない」と主張した。以後、「行動する保守」Aの主張を信頼した「主権回復を目指す会」代表の西村修平や右翼M、浦安の行政書士などを糾合して「他殺」を主張する街宣活動を繰り広げてきた。もちろん背後で、明代の万引き事件でアリバイ工作に深く関与した東村山市議の矢野穂積、朝木直子が情報提供を行っていた。

 八王子での街宣後、私は「行動する保守」Aに対して「事実を精査してください」と直接お願いしたが、「行動する保守」Aはこれまでの裁判資料を精査したのかしなかったのか、その主張が変わることはなかった。「行動する保守」Aは私に対して「内部告発者」に「直接会った」とも述べているから、「内部告発」は「事実」で、その内容は「行動する保守」Aにとってよほど信用できるものだったのだろう。

 しかしこれまで、「行動する保守」Aはなぜか「内部告発」の内容について明らかにしないままである。その間、「行動する保守」Aの主張を信じて一行が行ってきた街宣活動などをめぐって西村、右翼M、行政書士が名誉毀損や肖像権侵害で提訴され、慰謝料の支払い命令が出るなど、「行動する保守」Aを信頼する仲間たちは次々に苦境に立たされている。

8項目にわたる請求

 さて、今回千葉が提訴したのは、「行動する保守」Aがこれまでブログに掲載してきた記事に関してである。弟子についてはブログの管理人として管理責任を問うている。

 具体的な請求項目は以下の8点である。



 被告らは連帯して140万円を支払え。

 平成21年11月13日付ブログに掲載したプラカードの写真にある「創価学会の4悪人」及び「千葉英二副署長」との文言を削除せよ。

 平成22年5月4日付ブログに掲載したプラカードの写真にある「創価学会の4悪人」及び「千葉英二副署長」との文言を削除せよ。

 平成21年7月13日付ブログに記載した「大嘘つきの千葉英司元副署長」「大嘘つきの千葉英司元副署長に抗議」「千葉の虚偽発言」との文言及び原告の写真を削除せよ。

 平成20年9月6日付ブログ(「朝木事件ウォッチャー・ブログの正体3」)に掲載した原告の写真を削除せよ。

 平成20年9月6日付ブログ(「朝木事件ウォッチャー・ブログの正体4」)に掲載した原告の写真を削除せよ。

 平成21年11月10日付ブログに掲載した原告の写真を削除せよ。

 平成21年11月20日付ブログに記載した「にも拘らず捜査の指揮をとった東村山警察署の千葉英司副署長(当時)は強引に自殺として処理。」「この男こそが13年前、自殺事件にすり替えた張本人・千葉英司だったと分かった。警察を退職した今でも創価学会シンジケートで繋がり、店主を装って用心棒を演じていたとは。」との文言をそれぞれ削除せよ。



 2、3、4は「侮辱」、4、5、6、7は肖像権侵害、は名誉毀損に基づく請求である。

 このうちについて、千葉は訴状で、〈被告らは本件ブログにおいて……訴外槇泰智が発行する政治団体「政経調査会」の機関紙「政経通信(平成21年9月1日付第38号)」を転載している。〉とし、その転載部分を示した上で、

〈(これらの記事は)「原告が、亡朝木は創価学会に殺害されたことを知りながらあえて自殺と断定して、これを隠蔽し、その隠蔽工作として亡朝木が万引きをしたという虚偽の事実を捏造した」また「原告は創価学会の犯罪組織関係者である」との事実を摘示し、……原告の社会的評価を低下させるものである。〉

 と主張している。したがってこの裁判は「行動する保守」Aにとって、「他殺を自殺として処理した」とする千葉を直接追及する絶好のチャンスと捉えることもできよう。「内部告発」の内容を公表する機は熟したといってもいいのではあるまいか。

「朝木明代殺害事件の真相を究明する」と宣言して一行をこの問題に引きずり込んだ者として、また一行の指導者としても、「行動する保守」Aは「内部告発」の内容を明らかにすべき責務がある。

 なお、第1回口頭弁論は6月30日午後1時30分と指定された。

(第1回口頭弁論後に続く)

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西村修平事件一審判決 第5回
プラカードの記載内容も全面的に否定

 真実性判断の論点(争点)は本連載第2回で示したとおりである。このうち①と⑴について東京地裁は西村の主張を全面的に否定した(本連載3、4回)。②⑵以降の論点はいずれも「明代が計画的に殺された」とする事実が存在しなければ、その可能性は生じ得ない。したがって、「明代が自殺したのではなく計画的に殺害されたものであること」を全面的に否定した東京地裁は、そのことを理由に「その余の争点については検討するまでもない」と切り捨てることもできた。

 しかし東京地裁は丁寧に②⑵以下の争点についてもなお検討し、判断を示している。「創価学会の4悪人」などと記載したプラカードについては直接の請求内容には含まれていないものの、東京地裁はこの記載を悪質と考えており、その内容に重なる争点について具体的な判断を示しておくべきと考えていたのではないか、私はそう推測している。②⑵以下の論点について東京地裁は次のように述べた。



 以上のとおり、亡明代が自殺したのではなく、計画的に殺害されたものであることは認められないが、仮に亡明代が殺害された可能性があるとしても、本件において、原告が、(明代が殺害された)事実を知りながら、あえてこれを自殺事件に仕立て上げ、またはこれを断定して、隠蔽しようとしたこと、創価学会が亡明代の謀殺事件に関わっており、原告は、創価学会の学会員である検察官2名と結託して上記隠蔽に加担する不正を行ったこと、原告がその隠蔽工作として亡明代が万引きをしたという虚偽の事実をねつ造したことは、いずれも客観的にこれを認めるに足りる証拠はない。

 よって、本件各表現について、摘示または前提とされた事実の重要な部分が真実であることが証明されたとはいえず、違法性は阻却されない。



 裁判官の意図はともかく、この認定によって「創価学会の4悪人」などと記載したプラカードの内容も否定されたことになる。こうして東京地裁は、千葉が問題とした西村街宣すなわち矢野穂積と朝木直子の主張の真実性をすべて否定したのである。

添付写真の証拠能力を否定

 名誉毀損裁判では、表現内容について真実性が認められなかった場合でも、そう信じたことに相当の理由があったと認められれば違法性は阻却される。では、西村が「明代は殺された」と信じたことに相当の理由があったのか。

 平成20年7月29日以降、「行動する保守」Aや西村らが開始した「他殺疑惑」街宣にいかなる根拠があったのか、またそれは彼らがどのような調査を行った結果だったのか。西村街宣の相当性が認められるかどうかは、「行動する保守」一行の街宣に相当の根拠があったかどうかが問われるということである。したがってこの裁判において、相当性の判断は真実性判断と同等の重みがあると私は考えている。

 平たくいえば、「行動する保守」一行が『東村山の闇』など矢野や朝木の主張、あるいはそれまでの週刊誌記事の内容についてなんらかの裏付けを取ったのか、それらをただ鵜呑みにして騒ぎ、市民に多大な迷惑をかけただけだったのかということである。東京地裁はどう判断したのか。

 東京地裁は西村の街宣およびブログ記事掲載当時、西村がその前提として把握していたものは、
①司法解剖鑑定書(ただし添付写真を除く)
②音声鑑定書
③国会議事録(筆者注=自民党保坂三蔵の質問や野田刑事局長の答弁を記載したもの)
④『怪死』(乙骨正生著)
⑤『東村山の闇』
⑥『週刊文春』等の週刊誌
 ――だったと認定している。

 このうち①の死亡解剖鑑定書について裁判所が「(ただし添付写真を除く)」とただし書きを付したのは、矢野と朝木が西村に提供し、書証として提出した鑑定書の添付写真がきわめて不鮮明なもので、それが事実の記録として通用するものではないと判断したためではないかと私は推測している。司法解剖鑑定書を法廷に最初に提出したのは東京都で(救急隊事件)、その事件記録に綴られた添付写真はきわめて鮮明なものである。明代の上腕内側部やそれ以外の部位の写真を確認すると、上腕内側部の皮下出血が上腕裏側から続くもので、明代が打ちつけたとみられるフェンスの形状に近い。ところが、西村が提出した添付写真ではそのような遺体の状況は確認できない。

 矢野はその後多くの裁判で司法解剖鑑定書を証拠として提出したが、鮮明な写真を添付したことは1度もない。矢野はなぜそのような不鮮明なコピーを添付したものを証拠として西村に提供したのか。事実を隠蔽するためであると考えても不自然ではあるまい。いずれにしても東京地裁は、添付写真があまりに不鮮明だったため、判断材料の1つとするには適当ではないと判断したのではないかと私はみている(「西村修平事件第6回口頭弁論(その6)」参照)。

矢野と朝木の主張を鵜呑み

 さて、これらの資料をもとに「明代は計画的に殺害されたにもかかわらず、千葉は万引き事件をねつ造するなどして隠蔽し、自殺として処理した」とする西村の主張に対して東京地裁はどう判断したのか。東京地裁は次のように述べた。



 被告が参考にした上記資料には、左上腕部後面等に皮下出血を伴う皮膚変色部があること(上記①=筆者。以下、同)、本件転落死事件直前の亡明代の声からは亡明代が相当な精神的緊張にあったと推測されること(上記②)及び亡明代が自殺したとするには不自然な点があることなどが記載されている(上記③④⑤⑥)にすぎないのに、被告は、原告が本件転落死事件につき早々に本件被疑事件を苦にした自殺説を打ち出して他殺の証拠を無視したなどと記載されている本件書籍等を前提とし、これに沿うように上記資料を解釈して、本件各表現を行ったものと認められ、これらの事情に照らすと、被告が報道等に携わる者ではないことを考慮しても、裏付け調査を十分にしたとはいえず、本件各表現当時、亡明代が自殺したのではなく、計画的に殺害されたものであることを被告が信じるについて相当の理由があったと認めることはできない。

 ましてや、本件において、原告が、同①の事実(筆者注=明代が計画的に殺害された事実)を知りながら、あえてこれを自殺事件に仕立て上げ、またこれを断定して、隠蔽しようとしたこと、創価学会が亡明代の謀殺事件に関わっており、原告は、創価学会の学会員である検察官2名と結託して上記隠蔽に加担する不正を行ったこと、原告がその隠蔽工作として亡明代が万引きをしたという虚偽の事実をねつ造したことは、被告の推測にすぎず、本件各表現当時、これらの事実を被告が信じるについて相当の理由があったと認めることはできず、本件各表現の意見ないし論評が公正な論評として許容される範囲であるともいえない。



 東京地裁はこう述べて、西村の街宣と記事の相当性も否定した。西村ら「行動する保守」一行が街宣の時点で出されている判決を何一つ読んでいなかったことは想像に難くないし、なんらの調査もしていないことは西村に対する尋問からも明らかだった。東京地裁は西村の街宣や記事がなんらの裏付け調査もしないまま矢野と朝木の主張、週刊誌記事などを鵜呑みにしたものと認定したということである。

 これは重大な認定ではあるまいか。すると西村ら「行動する保守」一行は、なんらの裏付けもないままに集団で万引き被害者の店に押しかけ、大声でいいがかりをつけたということになる。尋常な感覚ではあるまい。

 今回の東京地裁判決は、明代の「万引きを苦にした自殺」を認定したというだけでなく、西村ら「行動する保守」一行の特異さを鮮明にしたという点においてもきわめて重要な判決であると私は考えている。

(了)

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