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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

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「行動する保守」事件 第7回
 東村山市議、朝木明代が書類送検された万引き事件を「捏造」した上、「他殺」の証拠を隠蔽して「自殺」として処理したと名指しして誹謗されたとして、当時の捜査責任者で東村山警察署副署長だった千葉英司が「行動する保守」Aとその弟子を提訴していた裁判の第5回口頭弁論が平成23年3月2日、東京地裁立川支部で開かれた。
 
 第5回口頭弁論を迎えるにあたり注目されていたのは、西村修平や右翼Mら「行動する保守」一行を東村山デマの泥沼に引きずり込んだ責任者として、「行動する保守」Aが「明代は殺された」「千葉は『他殺』の証拠を隠蔽した」などとする主張の具体的根拠(すなわち「内部告発」)を明らかにする(主張する)のか――という点だった。前回口頭弁論(平成23年1月19日)で「行動する保守」Aは、裁判長から「遅くとも2月18日午前中までに具体的な反論を記載した準備書面を提出するように」と命じられたが、「行動する保守」Aはこの命令を無視していた。

都合のよくない判決

 東京地裁が命じた準備書面の提出期限2日前の2月16日、「行動する保守」Aにとっては常識的にみてあまり好材料とはいいにくい判決が言い渡されていた。「行動する保守」Aが丸々引用して本件の請求原因の1つともなった右翼Mによる記事を千葉が提訴していた裁判で、東京地裁が右翼Mの主張をことごとく退け、右翼Mに対して10万円の支払いを命じたのである。

「行動する保守」Aが判決内容を詳細に検討したかどうか、またこの判決と裁判所が命じた提出期限が反故にされたことと関係があるのかどうかはわからない。しかし、判決内容とそれが自分の裁判にどう関係してくるかについて何か感じるところがあったとしても不思議はなかった。

 東京地裁が右翼Mに対して10万円の支払いを命じた判決の内容を確認しておこう。

 千葉が提訴していたのは、右翼Mが発行した「政経通信」第38号(平成21年9月1日付)にトップ記事として掲載した〈創価学会の犯罪を許さない 徹底した総力戦で粉砕するぞ!〉と題する記事である。同記事において右翼Mは〈(創価学会=)殺人さえも厭わない犯罪者集団〉〈高額賠償請求の乱発は司法を駆使した恐喝行為だ〉などとするリードのもと〈(朝木市議の転落死事件は)創価学会が口封じに殺害した可能性が高く、現場の状況証拠から見て、これは確定的である。〉などと記載した上で、千葉について次のように記載した。

〈にも拘わらず捜査の指揮をとった東村山警察署の千葉英司副署長(当時)は強引に自殺として処理。〉

〈自殺に見せかけるためにはその動機が必要となる。そのために同年6月19日に朝木市議が駅近くの洋品店でブラウスを万引きしたという事件をでっち上げた。後日取調べを受けた朝木市議は書類送検されたことを苦に自殺したというストーリーまでお膳立てしていた。〉

〈この男こそが13年前、自殺事件にすり替えた張本人・千葉英司だったとわかった。警察を退職した今でも創価学会シンジケートで繋がり、店主を装って用心棒を演じていたとは。〉

 一般読者が記事の流れに沿って上記記載を素直に読めば、「朝木明代市議は創価学会によって口封じのために殺された。ところが万引き事件をでっち上げた上に(この部分の主語は欠落しているが、読者が「創価学会が捏造した」と理解してもなんら不思議はない)、千葉はこれを強引に自殺と捏造した。千葉は現在も創価学会の犯罪組織に所属している」と理解するのではないか。千葉はこれらの表現によって名誉を毀損されたとして提訴したのである。

これまで相手にされなかった「根拠」

 これに対して右翼Mは、①「記事は創価学会による犯罪行為を糾弾するのが目的であり、千葉の糾弾を目的とするものではないから、原告の社会的評価を低下させるものではない」②「被告は原告が創価学会と何らかの関係性があったとは指摘せずに『創価学会シンジケートと繋がり』と軽く触れたにすぎない」などと主張して名誉毀損の成立を否定。

 さらに、記事が仮に千葉の名誉を毀損するとしても、③千葉が朝木市議に対する殺人事件を自殺として処理したこと④千葉が、朝木市議の万引き事件がえん罪であるのに、万引き事件をでっち上げたこと⑤千葉が創価学会シンジケートで繋がり、洋品店の店主を装って用心棒を演じたことはいずれも真実であり、違法性を欠くと主張し、「万引き冤罪」と「他殺」、さらに「東村山署が殺人を隠蔽したこと」「千葉と創価学会の関連性」が真実であることの根拠として以下の事実を挙げた。



(右翼Mが示した真実性の根拠)

1 本件万引き事件が冤罪であること


a 本件洋品店における朝木市議に対する目撃証言と当日の服装が異なる。

b 万引きしたとされる店頭につるされたTシャツにはビニールのカバーが掛けられており、……ビニールカバーには朝木市議の指紋が付着しているはずである。しかし、東村山署はこのビニールカバーから指紋の採取を行っていない。

c 朝木市議が万引きで書類送検された直後、原告は、報道関係に対し、「明代が万引きを隠そうとして同僚議員の矢野穂積とアリバイ工作をしようとした疑いが濃い」と発表したにもかかわらず、裁判で証人尋問されると「アリバイ工作をしたなどといってはいない」と供述した。

2 本件転落死事件が殺人事件であること

a ビル1階に入居するモスバーガー店長の「飛び降りたんですか」という問いに、朝木市議は「いいえ、飛び降りていない」と答えている。

b 朝木市議の両上腕内側に何者かに強い力で掴まれたような皮膚変色がある。

c 朝木市議は平成7年9月2日に高知県で開催される「創価学会問題シンポジウム」に講師として出席する予定で、殺害された当日は自宅で講演の原稿を作成していた。

d 殺害される直前の午後9時19分、朝木市議から事務所にいた矢野穂積に対し「ちょっと気分が悪いので休んでいきます」と電話が入った。録音されていたこの声を日本音響研究所で鑑定したところ、平静を装っているが究極の極限状態の声であると鑑定された。

e 朝木市議が転落した午後10時、「ギャー」という悲鳴とドスンという音を複数の人が聞いている。

f 同年9月2日に警察犬を入れて現場一帯を創作したが、朝木市議の靴も鍵の束も発見されなかった。しかし、その夕方には2階裏の階段踊り場で、鍵の束が発見された。警察犬や関係者が去った後に何者かが置いていったと考えられる。

g 朝木市議の靴が見つかっていないから、自殺なら自宅から裸足で歩いていったことになる。諏訪町の自宅から転落した現場まで裸足で歩けば目立つはずであるにもかかわらず、一切目撃情報がない。

3 本件転落死事件が殺人事件であることを東村山警察署が隠蔽したこと

a 東村山警察署は朝木市議の遺族に対し遺体の面会を拒み続け、遺族らが対面できたのは、事件の一報が東村山警察署に入ってから6時間半も経過していた。

b 朝木市議の遺体の司法解剖も捜査も行われていない段階で、東村山警察署の鶴見刑事課長が遺族に向かって「自殺だよ、自殺」と繰り返し叫んだ。

c 東村山警察署では朝木市議の遺体を柩に入れて、火葬する準備に入っていた。遺族らは司法解剖を要求したが、当初、難色を示し、東村山警察署は行政解剖を主張した。

d 所在不明の朝木市議に関し、矢野穂積が午後10時33分に東村山警察署に行方不明である旨の電話を入れ、119番へも通報した。東村山警察署の須田豊美係長は、午後11時前には現場に落下して倒れているのが朝木市議であると知っていたが、矢野穂積に連絡したのは翌9月2日午前3時だった。

4 原告と創価学会の関連性

 本件訴訟は、創価学会による被害者に対する言論を抑圧する目的で乱発されている提訴の一環である。原告は、創価学会信者が被告を相手方として提起した著作権裁判の口頭弁論を、創価学会信者とともに傍聴していた。

 平成22年9月1日の午後3時半ころ、原告は、殺害現場であったマンションの5階から6階にある踊り場にいたことが目撃され、その際に、2名の創価学会信者が同行していたし、同ビル内には創価学会の御用ライターといわれる宇留嶋瑞郎もうろついていた。



 以上が、「真実性」に関する右翼Mの主張である。「4」を除き、いずれも矢野穂積が一連の裁判で主張したが、「万引き捏造」と「他殺」の根拠にはならないとしてことごとく排斥されたネタにほかならない(「4」にしても、これがどうして「万引き捏造」と「他殺」の根拠になるのか、常識的には理解できるものではあるまい)。右翼Mはそのことを自覚していたのか、矢野の主張をただなぞっただけで、いっこうに立証しようとはしなかった。

(つづく)

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「行動する保守」事件 第8回
名誉毀損性を認定

 名誉毀損性はないとする右翼Mの主張(本連載第7回)に対して東京地裁はまず、記事の名誉毀損性について次のように述べた。



(名誉毀損性)
 
 本件記事は、これと一体をなす表題その余の部分において、朝木市議に関する本件窃盗被疑事件及び本件転落死事件が創価学会の謀略によるものだという事実を摘示し、創価学会が殺人さえも厭わない犯罪者集団であるとの主張をした上で、本件記事により、創価学会シンジケートなる犯罪組織と繋がった原告が、東村山警察署副署長としての在職中、本件窃盗被疑事件の捏造に関与し、さらに創価学会による殺人事件であった本件転落死事件について真実を曲げて本件窃盗被疑事件を苦にした自殺として処理し、警察官退職後も創価学会との関係から、本件窃盗被疑事件で虚偽の被害届を提出した本件洋品店の用心棒を演じていたとの事実を摘示するものである。

 ……上記事実は、原告が現職中に一部の者の利益のために万引き事件を捏造し、また殺人事件を意図的に自殺として処理した人物であったとの評価につながるものであるから、上記事実の摘示は、原告の社会的評価を低下させるものと認められる。



 上記のとおり、東京地裁は包括的に記事の名誉毀損性を認定した上で、さらに右翼Mの主張に沿って逐一右翼Mの主張を排斥している。



(①「記事は創価学会による犯罪行為を糾弾するのが目的であり、千葉の糾弾を目的とするものではないから、原告の社会的評価を低下させるものではない」とする主張に対して)

 本件記事は、原告を名指しし、原告自身の行為に着目してこれを批判する内容であるから、原告自身の社会的評価を低下させるものであり、また、被告自身が創価学会の批判をするとともに同団体と原告との関係を指摘しておきながら、原告が創価学会との関係を否定したから被告は原告を批判していないことになるという主張は、被告の独自の見解であり、失当である。

(②「被告は原告が創価学会と何らかの関係性があったとは指摘せずに『創価学会シンジケートと繋がり』と軽く触れたにすぎない」などとする主張に対して)

 創価学会「シンジケート」の用語について、それが仮に被告の主張するとおり、カルテルや商業組織という意味で用いられていたとしても、朝木事件を謀略したとする創価学会に関わる組織と原告との繋がりを示していることに変わりはないばかりか、……当該用語は、創価学会の犯罪組織との意味として理解するのが一般人の通常の解釈であると認められる。

 また、被告は、本件記事で「創価学会シンジケートと繋がり」と軽く触れたにすぎないと主張するが、創価学会が犯罪集団であるという前提の下に、原告が、創価学会に批判的だった朝木市議に関する本件窃盗被疑事件を及び本件転落死事件の真実を歪曲したという本件記事の記載を見れば、……原告は創価学会シンジケートなる組織との何らかの関係から、その意を受けて、当該行為を行ったと理解するのが一般の読者の読み方であり、……原告の社会的信用及び評価を低下させることは明らかである。



 右翼Mは「朝木市議は創価学会によって殺害された」「東村山警察署副署長が自殺にすり替えた」「万引きはでっち上げ」などの記載はこの14年間に多数流布されているから名誉毀損にはならないとも主張したが、東京地裁は〈被告が本件記事で記載する朝木事件に関する原告及び創価学会の関わりが社会一般に周知されその評価が確定しているほどのものであったとは認められない〉として右翼Mの主張を斥けている。

 また名誉毀損性の認定に関して右翼Mは、「『政経通信』は不特定多数の者に配布されていないから名誉毀損は成立しない」とも主張していた。しかしこの点についても東京地裁は、〈政経通信は、「政経調査会」あてに直接申し込む方法のほか、……「模索舎」で入手でき、……特定の者にだけ政経通信を配布したとの事実はなく、政経通信の配布による本件記事の伝播可能性は極めて明らかである〉と認定し、右翼Mの主張を否定している。

2行で否定された「真実性」

 その上で東京地裁は、真実性・相当性(違法性阻却事由)を検討している。まず右翼Mが主張した16項目(「右翼Mが示した真実性の根拠」=本連載第7回)にわたる「根拠」について東京地裁は次のように述べた。



(真実性について)

(被告が主張する16項目の)事実を認めるに足りる証拠はなく、本件記事が摘示し又は前提とした事実の重要な部分が真実であるとは認められない。



 右翼Mは「真実性の根拠」としてかなりの行数を費やしたが、東京地裁が真実性の否定に費やした行数はわずか2行である。なんらの証拠も提出されないのでは検討以前の問題で、右翼Mの「真実性の主張」が最初から相手にされなかったとみえるのもやむを得まい。

「十分な裏付け調査」を否定

 では「相当性」についての東京地裁の判断はどうだろうか。右翼Mは〈「朝木市議殺害は創価学会による犯行である」、「東村山署副署長が自殺にすりかえた」、「万引きはでっち上げだ」等の言論が14年間にわたり種々雑多な出版物及び言論活動で紹介されており、また別訴の平成14年3月28日判決(筆者注=『潮』事件判決)においても、朝木市議が万引きをしたという事実及び矢野穂積議員とアリバイ工作をしたという事実もない旨が認定されている〉などとして記事の相当性を主張していた。

 これらの点について東京地裁は次のように述べた。



(相当性について)

 被告は、いかなる出版物及び言論活動のいかなる記述等をもって、上記事実を真実と信じるに至ったのかを具体的に主張立証しない。……

 同判決(筆者注=『潮』事件)は、朝木市議が窃盗犯人である可能性は相当程度に達するものの、なお犯人と断定するに足りない旨、また朝木市議のアリバイの主張には根拠はないが、それが虚偽であったとまでは認めるに足りないから、このアリバイの主張が意図的に虚偽の事実を主張したものとまで認めることはできない旨判示したにとどまる。



 また右翼Mが「相当性」の根拠として「矢野らが本件転落死につき他殺の可能性を示す証拠があると信じるについて相当な理由がなかったとはいえない」「矢野らが万引き事件について朝木市議が犯人でないことをうかがわせる証拠があると信じるについて相当な理由がないとはいえない」旨判示した「東村山の闇」判決を提出していた点について東京地裁は次のように述べた。


 仮に被告が本件記事を掲載するに当たり上記東京高等裁判所平成21年3月25日判決を1つの参考にしていたとしても、他に被告が本件窃盗被疑事件や本件転落死事件について十分な裏付け調査をしたことを認めるに足りる証拠がない本件においては、本件窃盗被疑事件がえん罪であることや本件転落死事件が殺人であることを被告が信じるについて相当な理由があったと認めることはできない。

 ましてや、本件において、原告が、本件転落死事件が殺人であることを知りながら、あえてこれを強引に自殺として処理したこと、本件転落死事件を朝木市議の自殺に見せかけるため、原告が朝木市議の本件窃盗被疑事件を捏造したこと、原告が創価学会シンジケートで繋がり、本件洋品店での小競り合いの際、本件洋品店の店主を装って用心棒を演じたことは、被告の推測にすぎず、本件記事を記載した当時、これらの事実を被告が信じるについて相当の理由があったと認めることはできない。



 東京地裁はこう述べて、記事の相当性も否定したのである。関連裁判において明代の「他殺」と「万引き冤罪」が認定された判決はただの1件も存在せず、矢野と朝木の責任が阻却された判決(「東村山の闇」判決)があるといってもその具体的表現内容は本件「政経通信」とは異なり、したがってその判決があるからといって本件記事の相当性が認められることにはならない。

 右翼Mが相当性を主張するなら記事掲載までにいかなる独自調査を行ったのか具体的に示さなければならないが、右翼Mにはそれができなかった。それでも後日、右翼Mは私に対して「矢野の宣伝を鵜呑みにしたのではなく、独自に判断したのだ」と語った。それはそれでよいが、問題はその「独自の判断」にどの程度の客観性が担保されていたかだろう。もちろん判例では「週刊誌が書いていたから」という理由は相当性の根拠として通用しない。

(つづく)

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「行動する保守」事件 第9回
相次いだ予期せぬトラブル

 右翼Mが千葉から提訴された裁判は右翼Mの完敗である。すると右翼Mの記事を丸々転載した「行動する保守」Aが右翼Mと同じ主張・立証をした場合には敗訴を免れないということになろう。ただ、右翼Mが敗訴したからといってただちに「行動する保守」Aも敗訴すると考えるのはやや早計だろう。なぜなら「行動する保守」Aは、「現職警察官による内部告発」という、事実なら東京地検の結論をも覆す切り札を持っているというのだから。

 しかし「他殺」の決め手となる可能性もある「内部告発」者に直接会っていながら、その後丸3年にもなろうというのに「行動する保守」Aはいまだその具体的状況さえ明らかにしない。「行動する保守」Aが千葉に提訴された平成22年5月の段階で支援者たちはおそらく、われわれの重鎮がいよいよ「内部告発」の真相を明らかにしてくれると淡い期待を抱いたのではあるまいか。
 裁判所も「行動する保守」Aに対してすみやかに具体的な反論を提出するよう求めた。これに対して「行動する保守」Aは当初、「9月中には(「他殺」の)証拠が揃うので、10月中には書面を提出する」などと回答した。ところがその後の3、4カ月というもの、重鎮の周辺には尊父の死去や相続などの煩わしい手続き、さらには代理人の急病など予期せぬアクシデントが相次ぎ、結局、平成22年中には準備書面そのものを提出しなかった。

 前回1月19日に行われた第4回口頭弁論では一応準備書面を提出したものの、千葉が「万引き事件を捏造」し、「殺人事件を隠蔽して自殺として処理した」と主張する事実に関する具体的主張はなく、記載事実に名誉毀損性は成立しないと主張していただけだった。このため裁判長は代理人に対してわざわざ体調を確認する気遣いまでみせながら、「2月18日午前中までに(内容のある)準備書面を提出されたい」としてさらに1カ月の猶予を与えたのである。

 第4回口頭弁論終了後、「行動する保守」Aは「(これで)結審すると考えていた」などと真実性の主張をいっさいしない応訴態度を正当化する見解を述べていた。あるいは「行動する保守」Aは、あわよくば「内部告発」どころか真実性の主張すらせずに逃げようとしていたのだろうか。

 しかし裁判官は、被告は真実性・相当性の抗弁が必要と判断していたものとみられた。右翼Mの表現が千葉の社会的評価を低下させるものと認定されたのと同様に「行動する保守」Aの裁判でも表現には名誉毀損性があると判断しているということではあるまいか。

 そのころ「行動する保守」Aはブログで〈(新連載)東村山朝木市議殺害事件〉なる連載を行っていたが、2月18日正午を過ぎても「行動する保守」Aから準備書面は提出されなかった。連載の内容は準備書面の役には立たない代物だったらしい。

 それまで「行動する保守」Aが「内部告発」の詳細はおろか真実性・相当性の主張をしてこなかった不可解な経過もあって、締め切りを過ぎた時点ですでに準備書面の中身よりも準備書面を提出するのかどうかが大きな関心となった。「内部告発を聞いた」として「行動する保守」一行を東村山デマに引きずり込んだ者として、ここまで信用を失くすのはまずいのではあるまいか。

右翼Mよりも老練な主張

 裁判官が設定した締め切りから1週間が過ぎても準備書面は届かず、「行動する保守」Aは今回も真実性・相当性の主張をしないかもしれないとの憶測も流れ始めた2月28日、千葉のもとにようやく準備書面3が届いた。第5回口頭弁論の2日前のことである。はたして「行動する保守」Aは「内部告発」を含めた「千葉が万引き事件を捏造」「殺人事件を隠蔽して自殺として処理した」とする事実の真実性・相当性についてどう主張していたのだろうか。「行動する保守」Aはまず次のように主張していた。



 本件で、原告の名誉を毀損したとされるブログの記事は、(右翼Mの)記事を、被告瀬戸が、同人が運営する「せと弘幸Blog『日本はどこへ』(ママ)」に転載したものである。

 被告瀬戸が転載した記事は、……全体としては、創価学会の行為を糾弾するのを目的としたものである。朝木市議の死亡事件の内容を説明する中で、……捜査の責任者として当時の副署長であった原告の氏名が登場したに過ぎない。

 ……それは、東村山署という組織が行った捜査の責任者としての捜査方法、内容を批判したにすぎず、そのことから直ちに原告個人の名誉が毀損されたことにはならない。



 転載した記事は創価学会を糾弾することを目的とするもので、また千葉に対する個人攻撃をしておらず名誉毀損は成立しないと「行動する保守」Aは主張しているが、ここまでの主張内容は右翼Mが千葉との裁判で主張した内容に酷似していた。

 主張のニュアンスが右翼Mとやや異なると思えたのはそれから先である。「千葉に対する名誉毀損は成立しない」と主張した上で「行動する保守」Aは、仮に記事が千葉の社会的信用を低下させるものだったとしても、〈本件記事を転載するについて、そこに記載されている事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当な理由があった〉と主張し、〈被告らが本件記事を転載するまでに知り得た主要な事実〉として14項目にわたる「事実」を具体的に示したが、その14項目もまた右翼Mが主張していた項目とすべて一致していた(本連載第7回参照=(右翼Mが示した真実性の根拠)のうち、「4 原告と創価学会の関連性」の項を除いた部分)。

 ただ、「行動する保守」Aが列挙した「事実」は右翼Mと同じであるものの、その主張内容は右翼Mとは異なっていた。不明確な部分はあるものの、右翼Mはこの14項目を掲げて真実性を主張しようとしたように思える。しかし「行動する保守」Aは真実性をいっさい主張せず、「これら14項目は週刊誌で報道されたものだから、それを事実と信じたことには相当の理由がある」と相当性の根拠として列挙していたのである。

 いうまでもなく「真実性」を主張すれば、直接的にそれが真実であることを立証しなければならないが、「相当性」なら「真実であること」それ自体ではなく「真実であると信じたことに相当の理由があった」と裁判官に認めてもらえばいいのである。右翼Mの裁判と判決が異なるかどうかは別にして、ともすれば猪突猛進する右翼Mと違ってさすがに重鎮は老獪というべきか、あるいはプロの弁護士に委任しただけのことはあったというべきだろうか。

(つづく)

※なお、千葉が西村修平と元側近を提訴していた裁判の元側近に対する第3回口頭弁論は3月17日に予定されていたが延期となった。期日は決まっていない。
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西村修平事件最高裁判決(速報)
 故朝木明代(東村山市議=草の根市民クラブ)の万引きを苦にした自殺をめぐり平成20年9月1日、「行動する保守」Aらが東村山駅前で開催した「朝木明代さん殺害事件を13年目の命日に市民に訴える!」と題する集会で西村修平(「主権回復を目指す会」代表)が行った演説や「主権回復を目指す会」のウェブサイトに掲載された記事に対して、捜査を指揮した当時の東村山警察署副署長千葉英司が西村を提訴していた裁判で、最高裁が平成23年3月15日、西村の上告申し立て(平成22年11月10日)を受理しない決定をしていたことがわかった。

 これにより、西村に対して10万円の支払いを命じた東京高裁判決(平成22年10月28日)が確定するとともに、以下の認定判断が確定した。



① 亡朝木明代は転落当時、明瞭な意識がありながら、発見者に対して被害事実を訴え、救護を求めることはなく、逆に「大丈夫です」と答え、救急車を呼ぶことすら拒否しているのであり、これは計画的な殺害の被害にあった者が被害直後に第三者に発見されたときの行為として理解することは困難なものである。

② 亡明代に認められた両下肢及び右胸部の重篤な傷害の状況、司法解剖鑑定書は左右足部への強力な鈍体の作用及び胸部への強力な鈍体の作用を指摘する判断を示していること、本件外階段の5階と6階の間の踊り場にある手すりの外壁側に手をかけた形の手の痕跡が残されているという客観的事実によれば、亡明代は手すりに外側から手をかける形でぶら下がり、その状態から手を離して落下したとの転落状況を想定するのが最も整合性があると考えられるところ、この転落状況が計画的な殺害によって生じたというのは困難であるといわなければならない。

③ 転落死当日、朝木直子は自宅に第三者が侵入した痕跡を認めていないこと等の事実を考え合わせると、当夜に録音された亡明代の音声に相当なる精神的緊張状態を推定しうる特徴が認められるとしても、これをもって計画的な殺人を裏付ける証拠とすることはできず、鍵束の発見状況についてもそれ以外の状況がまったく明らかではない下では上記と同様、計画的な殺人を裏付ける証拠とすることはできないのであり、結局、本件において亡明代は計画的に殺害されたものであるとの事実の真実性の証明はないというべきである。

 上記判断に反する控訴人の主張は、証拠に基づかない主張か、証拠に反する主張である。
 
④ したがって千葉が、亡明代は計画的に殺害されたものである事実を知りながら、これを自殺事件に仕立て上げて隠蔽しようとしたこと、創価学会が亡明代の謀殺事件に関わっており、千葉は創価学会員である2名の検察官と結託して上記隠蔽に加担する不正を行ったとの各事実についても真実性の証明はない。なお、創価学会が本件転落死事件に関わっている事実及び千葉が創価学会員である検察官2名と同類のものである事実も認められない。

⑤ 千葉が、亡明代が万引きをしたという虚偽の事実を捏造したという余地はなく、控訴人の主張は証拠に基づかない主張か、証拠に反する主張である。



 西村は矢野穂積と朝木直子の全面的な支援によって書証を提出し、真実性・相当性の主張を行った。したがってこの東京高裁の認定判断は、矢野と朝木の主張もまた「証拠に基づかない主張か、証拠に反する主張」であると認定したに等しいということになる。

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「行動する保守」事件 第10回
 第5回口頭弁論が開かれた3月2日、「行動する保守」Aは東京にいたにもかかわらずブログ上で早々に「出廷しない」と告知していた。そのためか、法廷に支援者らしき姿は1人もなかった。

 前回の口頭弁論で裁判長は、原告被告双方に対して「次回口頭弁論終了後に1時間ほど時間を取っておいてください」と通告していた。なんらかの非公開での話し合いを持ちたいという意向のようだった。非公開での話し合いとは通常、和解勧告とそれに基づく協議とみるのが自然である。

 裁判官は当初から「行動する保守」Aに対して真実性・相当性の主張・立証を行うよう促してきた。ところが「行動する保守」Aは前回口頭弁論までの段階で真実性・相当性の主張をしなかった。裁判官には今後もこのまま推移する可能性があるとみえたのだろう。しかも「行動する保守」Aの主張を待つ間にすでに3カ月を浪費していた。

 裁判所としては「行動する保守」Aが真実性・相当性の主張をする必要があると考えているものの、かといって正当な理由なく裁判を遅延させることは一方的に原告の利益を損なうことであり、これ以上「行動する保守」Aの都合によって裁判を遅延させることには抵抗があった。「行動する保守」Aに真実性・相当性を主張する意思がないのなら、それが確認できた時点で話し合いによる解決を勧告しようと考えていたのではないかとみられていた。

なくなった和解協議

 しかし2月28日、「行動する保守」Aが一応相当性の主張を行ったことで状況は変わった。それが認容されるかどうかは別にして、「行動する保守」Aが相当性の抗弁を主張する意思表示をしたことで、裁判所としては判決という形の決着をつけるだけの条件が一応整ったと判断したようである。

 この日、裁判官は双方に対して提出書面の確認をしたあと、「行動する保守」Aの代理人に対して、一応相当性の主張を行った今回の書面以上の主張があるかどうかを聞いた。すると代理人は一応これで主張は尽くしたとする趣旨の回答を行った。その上で裁判官は代理人に対して、相当性についての具体的な「根拠」を提出するよう求めた。

「行動する保守」の主張する相当性の根拠とは週刊誌の記事だけで、代理人はその趣旨を並べただけだった。裁判官の要請に対して代理人は「週刊誌記事の原本がありますので、次回までに提出する」と答えた。この弁護士は相当性の根拠が週刊誌の記事であるというが、少なくとも私は週刊誌の記事が相当性の根拠になるという判例を知らない。この弁護士がコピーではなく「原本を提出する」と強調することに何の意味があるのだろうか。

 弁護士ともあろう者が、週刊誌記事が相当性の根拠になり得ると認識しているとも思えない。「行動する保守」Aが代理人に示した抗弁の根拠なるものが週刊誌しかなかったということだろうか。「東村山署は殺人事件を隠蔽して自殺として処理した」とする「内部告発」があるとして一躍朝木明代転落死事件の「真相究明活動」に乗り出した「行動する保守」Aが真実性の立証をいっさい行わず、ひたすら週刊誌報道に依拠して相当性のみを主張するとは不可解である。

 右翼Mは「行動する保守」Aが一行を東村山デマに引き込んだきっかけである「内部告発」について「調査中」であると述べていた。週刊誌報道に基づく「相当性」しか主張しないということは、「内部告発」の件はまだ「調査中」なのか。それとも右翼Mも、「行動する保守」Aから適当にごまかされていたということだろうか。

 いずれにしてもこうして裁判所は、現段階では和解を勧告する状況にはないとして話し合いに関する提案は行わない方針を示し、「行動する保守」Aに対して相当性の証拠および記事掲載に至る事情などを記載した陳述書を提出するよう命じ、和解についてはその可能性があるようなら検討しておくよう求めるに止めた。「行動する保守」Aに和解の可能性を探る寛容さがあるようなら、「行動する保守」一行をデマの泥沼に引きずり込んだことに対してとっくになんらかの責任を取っているだろう。この指導者は、いい年齢であるわりにはまともな話し合いを期待できるような人物ではないと考えた方がいいように思える。

千葉が提出した求釈明

 さて「行動する保守」Aは「準備書面3」において、相当性の根拠として列挙した事実は、

〈「週刊現代」平成7年9月23日号、同年9月30日号、同年11月25日号、「週刊ポスト」同年9月22日号、同年10月13日号、「週刊実話」同年10月12日号等に記載された朝木市議関係の記事から知ったものである。〉

 としている。ただ上記の相当性に関する事実のうち、具体的にどの項目がどの週刊誌に掲載されたものなのかについて「行動する保守」Aは詳細には述べていない。

 もちろん項目別に具体的に示したところで相当性の根拠と認められる保証はないし、むしろこの重鎮が「相当性の根拠」として挙げた週刊誌記事の内容は、「行動する保守」Aがブログに記載するはるか以前に裁判(「聖教」裁判等)でことごとく否定されているという客観的事実がある。たとえば「行動する保守」Aが千葉の捜査活動等を非難している点について東京高裁は次のように判示している(「聖教」事件判決)。



 千葉副署長は、東村山署の広報担当官として、本件窃盗被疑事件については検察官送致をなした段階で、また本件死亡事件については初動捜査を終え、警察内部で討議を了した段階で、公式取材を申し込んだ報道機関を相手に、予め署長の許可を得て用意した広報案文に基づいて、本件各事件の捜査進行状況につき客観的事実経過を広報したものであって、本件各事件につき実施された捜査の内容、広報時点で把握できていた状況証拠等の客観的状況からみても、広報をすべき時期の選定を含め、千葉副所長(ママ)のした本件窃盗広報及び本件死亡広報には、その職務を執行するについての注意義務に違反したと認めるべき事由は存せず、したがって、千葉副所長(ママ)が本件窃盗広報及び本件死亡広報をしたことをもって違法ということはできない。



 したがって「行動する保守」Aが相当性を主張するなら、週刊誌記事を否定した判決を覆すだけの「材料」がなければならなかった。それが「内部告発」なのだという主張ならまだ理解できよう。ところが「行動する保守」Aは「内部告発」にはなんらの言及もしなかったのである。

 そこで千葉は3月2日付準備書面で次のような求釈明を行った。



 被告瀬戸が、朝木事件の真相解明活動を開始した動機は、現職警察官による朝木市議殺害犯人を特定したとの内部告発情報を入手し、朝木事件は謀殺であると100%確信したと断言したことである。

 そして、……被告瀬戸の本件裁判での立証のあり方に強い関心が寄せられている。

 よって、被告瀬戸は、朝木事件の真相解明のため、そして、内部告発情報の顛末を注視する人々のためにも、本裁判で内部告発情報の詳細を公表すべきである。



「行動する保守」Aは(それが事実なら)「内部告発」の詳細について自ら率先して述べるべきだった。しかし仮に、千葉に促されてもなお具体的に触れないということになれば、「内部告発」なるものこそ大嘘だったということになるのではあるまいか。

 裁判長は第6回口頭弁論期日を4月20日と指定し、終結の可能性があることを示唆した。これに対して「行動する保守」Aの代理人は3月31日までに陳述書と週刊誌記事の「原本」を提出すると述べた。

(「第6回口頭弁論後」につづく)

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西村・細川事件 第6回
 ブログに掲載した記事をめぐり千葉英司元警視庁東村山警察署副署長が「主権回復を目指す会」代表の西村修平と元側近を提訴していた裁判の西村に対する第3回口頭弁論が平成23年3月3日、東京地裁立川支部で開かれた。西村は前日の3月2日に第2準備書面を提出している。

 私は午後1時45分ごろ、法廷前に到着した。周知のとおり、「行動する保守」関連裁判では、傍聴人は開廷5分前にならなければ入廷を許されない。法廷入口には5名ほどの職員が警備にあたっている。

 法廷前にはすでに西村が来ていた。傍らには女傑Mがいる。そのほか、最近になって西村の裁判や街宣に参加するようになったメンバー2名もいた。第1回口頭弁論では傍聴にやってきた「行動する保守」Aの弟子の姿はない。私はそばのベンチに腰を下ろした。右翼Mがいないせいか、西村を含む4名のメンバーにいきり立った様子は見えず、比較的静かに開廷を待っているようにみえた。細川と弁論を分離したことと裁判所の厳重な警備態勢の効果だろうか。

 しばらくすると右翼Mが大股で歩いてきて、どういうつもりか私の隣にドスンとベンチを揺るがして座った。しかし右翼Mもまた、これまでよりは冷静なようにみえた。すでに右翼Mも千葉に敗訴しているから、内心ではすでに「朝木明代は殺された」とする主張の真実性・相当性が裁判所から認められる可能性はほとんどないと感じているのかもしれなかった。それなら正常な感覚である。

かなり異なる現実認識

 西村は前日の3月2日に第2準備書面を提出していた。今回の書面も体裁、主張内容、文体のいずれをとっても右翼Mが千葉との裁判に提出した書面に酷似している。

 さて、前回口頭弁論で裁判長は西村に対し、「朝木明代さんの万引き事件、万引きをでっち上げたといわれている元千葉英司副署長」とする表現についての主張とウェブサイトの管理権限について口頭で確認するとともに、ウェブサイトの管理権限については第3回口頭弁論までに明確にするよう求めていた。これらの点について西村は第2準備書面で次のように主張していた。



①「朝木明代さんの万引き事件、万引きをでっち上げたといわれている元千葉英司副署長」とする表現について

 不法行為にはあたらない。

②ウェブサイトの管理権限について

(西村は)ウェブサイトの管理者ではなく、管理する技法を持たず、且つウェブサイト(本件記事)の内容を指示する立場にない被告西村においては一切の責任を問われるものではない。



 このうち、①については「『いわれている』との間接的な表現をしたにすぎない」とする趣旨のようにも読めるが明確ではない。そこでこの日の口頭弁論で裁判官は、口頭で「仮定抗弁しますか」と確認した。「朝木明代さんの万引き事件、万引きをでっち上げたといわれている元千葉英司副署長」とする表現が読者に対して実質的に「千葉は万引き事件をでっち上げた」とする印象を与えるものであるとすれば、それに対する真実性・相当性の抗弁をするかどうかという問いである。

 これに対して西村は、「真実性・相当性を主張する」と答え、さらに裁判官に対して次のように述べた。

「真実性・相当性については、西村の主張が認められた判決があります」(趣旨)

 西村は街宣によって名誉を毀損されたとして同じく千葉から提訴された裁判で10万円の支払いを命じられており、その裁判では真実性も相当性もことごとく否定されている(「西村修平事件」最高裁判決)。西村はこの判決のどこに「認められた」部分があるというのだろうか。政治団体を名乗る団体の代表の言葉とはとうてい思えなかった。

 裁判官がこれをどこまで真に受けたかは別にして、西村が「真実性・相当性の主張をする」と述べた上、「真実性・相当性が認められた判決がある」というのなら西村は次回提出の準備書面で具体的に主張しなければならないだろう。判決のどこに「真実性・相当性を認められた」箇所があるというのか、西村の次回準備書面を待ちたい。

元側近退会後に写真を削除

 もう1点、西村に対して裁判官が確認したのはウェブサイトの管理責任についてだった。「主権回復を目指す会」の代表である西村修平が「主権回復を目指す会」のウェブサイトについて責任を持たないという主張が常識的かつ対外的に通用するとは思えない。「ウェブサイトの管理者ではない」とする西村の主張に裁判官がすんなり納得できなかったとしても不思議はない。

 西村は千葉の提訴後、問題となった写真等を削除している。その時点で元側近はすでに退会していて、ウェブサイトにいっさいタッチしていないようである。すると「ウェブサイトの管理者ではなく、管理する技法を持た(ない)」西村が、どうやって写真等を削除することができたのかという疑問が出てこよう。

 仮に第三者がその作業を行ったのだとしても、西村の許可や指示なしにはできないとみられる。西村が第三者に指示してやらせたのだとすれば、ウェブサイトの管理権限は西村にあるということになるのではないか。千葉はその点について明らかにするよう釈明を求めていた。

 西村は第1準備書面において「過去3年間におけるインターネットの動画配信等の作業は被告西村の同意があった」とも述べている。裁判官は西村がここで述べた「同意」の意味についても次回準備書面であらためて明確に述べるよう求めた。この間の経緯を見ると、裁判官はやはり、ウェブサイトの管理責任に関する西村の主張には疑問を持っているように思える。

 裁判官は西村に対して上記2点について確認すると、西村に対する次回口頭弁論を4月22日と指定し、4月4日までに準備書面を提出するよう求めた。裁判官は当初、4月15日を打診したが、西村は「4月10日から18日は用事がある」とのことだった。

(つづく)

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西村・細川事件 第7回
「矢野も朝木もおかしい」

 余談だが、この日の開廷前、隣に座った右翼Mから興味深い話を聞くことができた。いい機会なので私は、右翼Mにこう話しかけた。

――Mさんさあ、あなた、矢野から騙されてる、利用されたとは思わないの?

 これに対して右翼Mはいったん「矢野絢也か」ととぼけた。右翼Mにとってあまり好ましい質問ではなかったのかもしれない。しかし私が「矢野穂積に決まってるじゃないの」とたたみかけると、右翼Mは「週刊現代」裁判を引き合いに出しながら、意外にも比較的正面から私の質問に答えた。



右翼M 「週刊現代」裁判では一審は勝訴したが、二審では敗訴したように矢野と朝木にもおかしいと思うところはある。だが、朝木さんの転落死事件が謀殺によるものであるというのは自分なりに考えた結果だ。

 それに朝木事件は創価学会追及の一部にすぎない。



 この右翼は、「一部にすぎない」のなら、不特定多数に対して事実に基づかない主張をしても許されるといっているのだろうか。そうでないなら、「一部にすぎない」などという逃げ口上は最初からしない方がよい。

 さて「週刊現代」裁判で朝木直子は裁判開始から1年後、「明代は創価学会に殺された」とするコメントはしていないと証言を翻して「週刊現代」のハシゴをはずし、講談社を驚愕させ、激怒させた(講談社側が激怒したことについて私は、「当然」という同意の思いとともに「身勝手な論理」だという反発の思いを禁じ得ない)。

 右翼Mが「週刊現代」裁判の判決結果を知っているということは当然、朝木が180度証言を覆した経過ぐらいは知っているのだろう。右翼Mがいった「矢野と朝木にもおかしいところ(がある)」とはこの部分のことと思われた。

 平成7年当時、朝木は矢野に従ってマスメディアに向かって「創価学会疑惑」を喧伝していた。朝木が本当に「週刊現代」の取材を受けていないのなら、裁判当初から「『週刊現代』のコメントは捏造されたもの」と主張すればよかったはずである。

 また矢野と朝木が「明代は創価学会に殺された」とする主張に確かな裏付けを持っていたのなら、「真相を明らかにする」と公言していた朝木は提訴された直後にその「裏付け」を提示すべきだったろう。いずれにせよ、コメントを否定するのに提訴から1年も待つ必要はない。

 つまり、朝木が「コメントはしていない」と態度を翻したことにはたんに損害賠償の責任を免れようという意図だけでなく、そもそも「明代は創価学会に殺された」とする主張にはなんらの根拠もなかったことを示したものであるという2つの意味があった。右翼Mのいう「おかしいと思うところ(がある)」とはそういうことだろうと私は理解している。

珍しいセンスと「プライド」

 右翼Mはそこまで理解していながらなお、「自分なりに考えた結果」、明代の転落死は「他殺」であると判断したというのである。これは大変なことというべきだろう。なぜなら、「週刊現代」は複数の記者を取材に送り込んだもののなんら独自の証拠は得られず、記事のすべての「根拠」を朝木父娘のコメントに依拠していた。

 裁判に際しても講談社は、「コメント」の存在について朝木に念を押すことで朝木に責任を押しつけようとするだけで、講談社が独自に「コメント」の中身すなわち「明代は創価学会に殺された」とする事実の内容についていっさい主張・立証することはなかった。「週刊現代」は「明代は殺された」とする証拠などなんらつかんではいなかったということだった。

 同時に「週刊現代」は裁判を通じて、「明代は殺された」とする矢野と朝木の主張にはなんらの裏付けもないことを知った。ところが右翼Mはこの裁判の結果を知りながらなお、最終的に「独自の判断」で朝木の転落死は「他殺」であると結論付けたというのである。矢野も朝木も「週刊現代」もつかんでいなかった「他殺の証拠」を、右翼Mはつかんでいるというのか。

 しかし右翼Mがなんらの証拠も持っていないことは、平成23年2月16日に10万円の支払いを命じられたM自身の裁判からも明らかである。すると右翼Mはいまだに「行動する保守」Aのいう「内部告発」の存在を信じているということだろうか。

 その「行動する保守」Aは、自分の裁判でもいまだ「内部告発」について一言も触れさえしない。この事実を右翼Mはどうみているのだろう。それでも右翼Mが疑問を持たないというのなら、第三者からこれ以上、口の出しようもない。よほどのプライドでもあるのだろうか。

――Mさんなりに考えて結論を出したのなら仕方ないね。

 右翼Mの回答を聞いた私はこう応えるほかなかった。「他殺」を否定する多くの客観状況はあってもなお、右翼Mは自分の判断で「他殺」と判断したという。要するに自己責任だが、その尻拭い(カンパ)を堂々と支援者にお願いするとは珍しいセンスである。

――でもねMさん、いつになったら本当のことをわかってもらえるのかなー。

 これには右翼Mは何も答えなかった。内心では右翼Mも、すでに事態を理解しているのではないかと私は受け止めた。ここで会話が途切れたが、入廷許可はまだ出ない。そこで私は右翼Mに重要な確認をした。西村の準備書面についてである。

――ところでMさん、西村さんの準備書面はあなたが書いてるの?

 右翼Mは表情を緩めて口の中で何かごもごもいっていたが、明瞭には聞き取れなかった。言い訳でもしようとしていたのだろう。確かなのは、「自分ではない」と否定しなかったことである。

――いや別に、Mさんが書いてても問題ないんですよ。

 私がこういうと、右翼Mはもう言い訳はしなかった。右翼Mは4月4日までに、「朝木明代さんの万引き事件、万引きをでっち上げたといわれている元千葉英司副署長」とする表現についての真実性・相当性の主張を盛り込んだ準備書面を提出しなければならないことになったわけである。

(「次回口頭弁論」以降につづく)

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