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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

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佐藤ブログ事件 第13回
2 超党派事件

 平成4年から平成6年にかけて、東村山市議会自民党、公明党、社会党(当時)、生活者ネット、共産党の「草の根市民クラブ」を除くすべての会派が、会派の利害を超えて「超党派でつくる新聞」というビラを発行した。たとえばその第3号には次のような記載があった。



(「超党派でつくる新聞」第3号の記載)

〈東村山市民新聞代表者(筆者注=矢野穂積)は裁判ごっこマニア?〉

〈これらは朝木議員(筆者注=明代)、又は社会教育団体として登録されている「東村山市民新聞」の代表者らが訴えたもので、現在係争中の事件を除いて、すべて、棄却、取下げ、和解(1件)となっています。このように、朝木議員、または「東村山市民新聞」の代表者は、いたずらに裁判を起こし、実際、何か自分達を批判する者は「裁判するぞ」と脅かしたりしているようです。〉

〈新聞販売店の店主は平成3年8月に、「貴社発行紙には他人を中傷誹謗する記事が掲載されることがあり、新聞に折り込むには不適当なものがある」と同矢野代表に書面をもって回答しています。〉

〈脅しに裁判を利用する矢野氏〉



「超党派でつくる新聞」とは、東村山市議会および東村山市議会議員に関して誹謗中傷を含む一方的宣伝を繰り返していた「東村山市民新聞」に対抗して、市民に正しい情報を提供しようとする趣旨で発行されたものである(平成4年に第1号)。異なる政治グループが3年以上にわたり思想信条を超えて共同でビラを発行するなど、そうあることではあるまい。

 それほど朝木明代と矢野(当時は傍聴席から不規則発言を繰り返していた)の特異性は尋常ではなかったということと理解していいのではあるまいか。矢野と明代(訴訟は遺族が承継人となった)は上記を含む「超党派でつくる新聞」の記載によって名誉を毀損されたとして提訴したのである。

 しかし東京地裁は上記論評の真実性・相当性を認めて矢野の請求を棄却、東京高裁も次のように述べて矢野の請求を斥けている。

〈(「超党派でつくる新聞」には)……矢野が、「裁判ごっこマニア?」であるとか、いたずらに裁判を起こし、また、自分たちを批判するものを「裁判するぞ」と脅かしたりしているとの記載がある。

 たしかに控訴人矢野は、……自分と意見が対立する者に対して、裁判を起こすなどと言っていたことが認められるのであって、上記の記事がその主要部分において、事実の基礎を欠くものということはできない。〉

〈もっとも、「ごっこ」とか「マニア」とはいかにも侮蔑的な要素を含む表現であって、……かなり行きすぎの面を含むものである。しかし、……その市民新聞においては、かねてから市議会議員らの個人攻撃とみられるような記事が掲載されていたことなど……を考慮すれば、……直ちに政治的な表現の自由の行使として許容される範囲を逸脱しているとは認め難い。〉

 東京高裁は「超党派でつくる新聞」の表現には必ずしも適切とはいえない側面があるものの、「東村山市民新聞」の表現に対する反論としては許されると判断したということだろう。佐藤は上記判決を証拠として提出し、東京地裁は本件コメントの真実性・相当性の根拠として認めたのである。

「蒸し返し訴訟」

 ところでこの裁判の被告には25名の東村山市議以外にもう1人、かつて「東村山市民新聞」の新聞折込を請け負っていた新聞販売店主(以下=「K」)が含まれていた。「新聞販売店に関する記述はいずれもKと矢野との間でしか知り得ない事実であるから、Kが情報提供したことは明らか」というのだった。その上で矢野は、「『超党派でつくる新聞』は亡明代および矢野を攻撃するために作成したいわゆる『ビラ』の類で、取材に基づく事実報道を行うものではないから、店主と作成者が共謀して作成したものである」などと主張していた(判決文)。
 
 Kと市議が共謀したとする根拠がどこまであったかは定かではないが、Kに対する矢野のこだわりもまた尋常ならざるものがあった。Kはかつて矢野の「東村山市民新聞」の新聞折込を請け負っていたが、ある出来事をきっかけに折込を断ったことから紛争が生じたのだった(矢野は当時、新聞折込によって「東村山市民新聞」を市内に配布していた)。

 折込を断ったことに対して矢野が撤回を求めるとKは、矢野のビラには「他人を中傷誹謗する記事が掲載されることがあり、新聞に折り込むには不適当なものがある」と回答。Kがビラの折込を拒否したことに対して矢野は平成4年、Kが折込を拒否したことが違法であるなどとして提訴したが平成6年7月14日、最高裁で矢野の敗訴が確定している(=第1次訴訟)。

 その後の平成6年8月ころ矢野は、今度は平成3年に折込を依頼した「東村山市民新聞」(平成3年7月24日付)の返還を求めて再びKを提訴したものの平成6年10月26日、第2回口頭弁論において訴えを取り下げている(=第2次訴訟)。なお矢野はこの裁判に併合して「東村山市民新聞」の印刷を依頼していた印刷会社に対して折込代金の返還を請求しており、この裁判は弁論が分離された上で、同期日に印刷会社が代金を返還する内容の和解が成立している(遅延損害金を含めて9858円)。

 Kに対する第2次訴訟の終結から1カ月もたたないうちに、矢野は「東村山市民新聞」(平成6年11月16日付)に〈本紙折込代金返還で実質勝訴〉と題する記事を掲載した。ところが本文では〈被告○○(筆者注=K)が、同紙の記事が他人を中傷誹謗したなどと根拠のない言いがかりをつけて折込みを拒否、折込み代金も返還しないので裁判を提起したところ、被告側(印刷会社)が代金を返還して和解が成立した〉(趣旨)と記載されていたのである。

 つまり矢野は、「東村山市民新聞」において性質の異なる2つの裁判を1つの裁判だったかのように記載し、Kに勝訴したことにしているのだった。そもそも新聞折込に関する限り印刷会社の立場は矢野の代理なのであって、K側ではないのである。とうてい尋常な記事とはいえまい。

 上記の「東村山市民新聞」の記事についてKの代理人は超党派事件における準備書面で次のように述べている。

〈原告らは、このような記事を「取材に基づく事実報道」というのであろうか。

 一方でこのような記事を平然と掲載しながら、「超党派でつくる新聞第3号」……程度の記述を理由に、被告○○(店主)に対し本件訴訟(筆者注=Kに対する3度目の提訴)に及んだ原告らの行動は、誠に理解することが困難である。〉

 その後、東村山市内の新聞販売店は市民からの抗議が相次いだこともあって「東村山市民新聞」の折込をしなくなった。これに対して矢野は市内の新聞販売店を提訴したが、この裁判でもKを提訴したのである。4度目の提訴だった。これに対してKは答弁書で次のように主張している。

〈本訴は確定判決の存在する事件(筆者注=折込拒否に関する判決)についての2度目の蒸し返し訴訟である。その度に応訴させられる被告の迷惑は極めて大きいものである。〉

 平成16年、東京地裁八王子支部は「販売店の側には折込契約を締結するしないの自由があり、『東村山市民新聞』の折込契約を締結すべき法的義務を認めることはできない」などと述べ、矢野と朝木の請求を棄却した。きわめてまっとうな判断である。

 この裁判を最後にKに対する矢野の提訴は終息したが、Kに対する提訴内容からも「矢野と朝木はパーソナリティ障害等を有する」とするコメントの真実性・相当性を認めた本件判決の正しさが十分に納得できるのではあるまいか。

(了)
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「セクハラ市議」名誉毀損事件 最高裁判決(その1)
 東村山市議(当時)の薄井政美がビラやインターネットホームページの記載、並びにラジオの放送によって名誉を毀損されたとして同市議の矢野穂積と朝木直子(「草の根市民クラブ」)を提訴していた裁判は平成24年12月18日、最高裁が矢野と朝木の上告申立を受理しない決定を行い、矢野と朝木に対して計100万円の支払いと謝罪放送を命じた東京高裁判決(平成23年3月16日)が確定した。

 問題となったのは、平成19年4月に行われた東村山市議選後に、矢野と朝木が薄井に対して「セクハラ市議」「風俗マニア」「職業安定法違反」「薬事法違反」などと宣伝してきた10件以上にのぼる記載や放送である。

 なお上記のような宣伝の一方で、朝木は「薄井が出演した放送によってセクハラを受けた」などと主張して東村山市長に対して東村山市男女共同参画苦情等申出書を提出している。しかし審査を行った東村山市は平成19年12月27日、「セクハラの事実はない」と結論付け、この申立を棄却している。そもそも放送で薄井が朝木を名指ししたわけでもなく、当然、物理的接触などあり得ようもない。客観的根拠を欠いたきわめて恣意的な申立だったとみるのが常識的な見方なのではあるまいか。

「セクハラ」の主張を否定

 では、最高裁が追認した東京高裁の判決内容を確認しておこう。

 東京高裁は矢野と朝木が薄井に対して行った表現行為について「表現行為A」(「セクハラ」、「条令違反」、「エロ・ライター」、「風俗マニア」)と「表現行為B」(「職業安定法違反」、「薬事法違反」)に分け、それぞれについて判断している。

「表現行為A」について矢野らは、議員任期が始まったあともインターネット上に薄井が出演した動画が公開されていたことを前提事実として、それが「セクハラ活動」だから薄井は「セクハラ市議」、「セクハラ活動家」であり、セクハラを禁じる東村山市男女共同参画条例に違反するから、「表現行為A」は意見表明の域内にあると主張していた。

 これに対して東京高裁はまず、矢野らの意見表明の内容の成否を検討し、次のように述べている。



(「セクハラ市議」などの表現の成否に関する東京高裁の認定)

 本件ネット動画は、被控訴人が市議会議員に当選し、その任期が開始した後も、平成19年6月25日ころまでネット公開されていたことは、争いのない事実等(15)のとおりである。しかし、本件ネット動画は、……視聴者の方からアクセスしなければ見たり聴いたりすることはできず、視聴者がその意に反して見たり聴いたりすることを強要されるものではない。

 したがって、被控訴人が本件ネット動画で性的な言動をしても、それは、被害者(視聴者)の意に反する性的な言動という「セクハラ」の一般的な定義に該当しないから、セクハラには当たらないというべきである。したがって、これを「セクハラ」であるとする控訴人矢野及び控訴人朝木の意見表明は、独自の見解であるというべきである。



 東京高裁はこう述べて、薄井が動画に出演していたことを理由に「セクハラ活動」などとした矢野と朝木の主張を否定している。

「東村山市男女共同参画条例に違反している」とする主張についてはどうか。東京高裁は次のように述べた。



(「東村山市男女共同参画条例違反」との主張に対する東京地裁の認定)

 東村山市男女共同参画条例2号(3)号は、セクハラについて「性的な言動により当該言動を受けた相手方の生活環境を害すること又は性的な言動を受けた相手方の対応によりその者に不利益を与えることをいう。」と定義しているところ、前記のとおり、本件ネット動画における被控訴人の性的な言動は、受ける側がアクセスしない限り、その者の耳目に触れないものであるから、上記条例2条(3)号前段には該当しない。

 また、同後段は、性的な言動をした者が、それを受けた相手方の対応を不満とすること等により、地位の優越等を利用して相手方に対し不利益を与えることをいうものであるから、本件ネット動画における被控訴人の性的な言動は、本件条例2条(3)号後段にも該当しない。



 ここで東京高裁が東村山市男女共同参画条例には違反しないと判断した重要な根拠は、朝木に対して薄井が強制的に動画を見せたり、薄井と朝木の間に直接的かつ具体的に接触した事実が存在しなかったという点にあろう。すなわち、矢野と朝木が薄井に対して行った「セクハラ市議」「セクハラ活動家」などという宣伝は常識的にはあり得ない評価ということなる。朝木が「セクハラを受けた」として東村山市男女共同参画条例に基づく苦情申立を行ったことに対して東村山市が「セクハラはなかった」と結論付けたのも同じ理由によるものとみられる。

 しかし東京高裁は、「セクハラ市議」などとした矢野と朝木の論評もまた、論評である以上〈少数説や独自の見解の表明、さらには誤った意見ないし論評の表明もまた保護されるべき〉として次のように結論付けた。



(「セクハラ市議」との表現に関する東京高裁の結論)

 控訴人矢野及び朝木が、被控訴人の性的な言動を録画、録音した本件ネット動画のネット公開を「セクハラ」に該当すると誤り考え、さらに、セクハラを禁止する東村山市男女共同参画条例に違反すると誤り考えたことをもって、意見表明の域を逸脱したものということはできない。



 また「表現行為A」のうち「エロ・ライター」、「風俗マニア」についても「意見表明」であるとした上で、これらの「意見表明」について次のように評価している。



 被控訴人(筆者注=薄井)は勤務先であるクリエイターズ社の仕事として本件ネット動画に出演していたものであること、被控訴人はキャスターとして与えられた原稿を読み上げていたものであり、自ら原稿を書いていたものではないことに照らせば、「風俗マニア」、「エロ・ライター」という意見表明の相当性には疑問なしとしない。



「エロ・ライター」、「風俗マニア」との表現について東京高裁は相当性に疑問を呈した。しかし議員任期開始後も当該動画がネット公開されていた点を重視し、〈意見表明としての域を超えるとまでは言い難い〉と述べ、名誉毀損の成立は否定したのである。

 こうして東京高裁は「表現行為A」について名誉毀損は成立しないと結論付けた。しかし東京高裁が「セクハラ」、「条令違反」については〈「セクハラ」の一般的な定義に該当しないから、セクハラには該当しない〉として矢野の主張は「独自の見解」「誤り」であると認定し、「エロ・ライター」、「風俗マニア」については相当性に疑問を呈したことはきわめて重要であると思う。矢野と朝木は最初に記載した時点ではやむを得ない思い込みがあったとしても、裁判を通じてすでに事情を理解したはずである。したがって、裁判後に同様の宣伝をした場合には法的評価もおのずと異なってくると思われるからである。

(つづく)
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「セクハラ市議」名誉毀損事件 最高裁判決(その2)
 では「表現行為B」についての東京高裁の判断はどうか。問題とされたのは以下のウェブ版「東村山市民新聞」の記事4本と「多摩レイクサイドFM」の放送1本(『ニュースワイド多摩』)である。



1 ウェブ版東村山市民新聞平成19年8月6日

〈ついに薄井問題に決定打!〉

〈法律家の方々から貴重な助言をうけました。薄井氏には速やかに辞職されるよう強く勧告します。〉

2 ウェブ版東村山市民新聞平成19年8月7日

〈法律家・研究者の方々の応援により急展開!〉

〈照準は、はっきりと、違法行為、犯罪既遂の事実です。〉

〈1 ソープ(本番=売春)は勿論、「性風俗」は全部「有害業務」(確定判決)
 2 「有害業務」の宣伝(求人など)は職業安定法63条2号違反の犯罪(懲役刑)〉

〈法が否定する「有害業務」を「職業」などと叫んだ薄井氏及び薄井擁護派は、これで完全に破綻です。それどころではありません。犯罪の疑いまで出てきたのです。〉

3 東村山市民新聞第158号(平成19年8月29日付)

〈問題は「犯罪」関与の疑惑に進展!〉

〈調査の結果薬事法や職業安定法の違反をしているのではないか、という疑惑まで出ている。〉

〈薄井氏、セクハラどころか、ついに犯罪の疑惑が〉

4 「ニュースワイド多摩」平成19年9月5日放送分

〈調査の結果、薬事法や職業安定法の違反をしているのではないか、という疑惑まで出ています。〉

〈薬事法68条は、無許可医薬品の効能効果または性能に関する広告をしてはならないと定めています。薄井氏、セクハラどころかついに犯罪の疑惑が浮上しました。〉

5 東村山市民新聞第159号(平成19年12月15日付)

〈薄井氏が特殊性風俗宣伝のネット動画で「違法ドラッグ」を紹介したことなど、薄井氏の言動について違法の可能性がある〉



 こう並べてみると、平成19年に矢野と朝木が行った薄井攻撃の執拗さがあらためて実感できるのではあるまいか。

「職業安定法違反」との主張に違法性を認定

 上記1~5の記載及び放送に対して東京高裁はどんな判断を行ったのか。

 まず1について東京高裁は、これだけでは〈被控訴人が職業安定法63条2号に違反する行為をした疑いがあるという事実の摘示にも、同旨の意見表明に当たるとはいい難い。〉と述べて名誉毀損の成立を否定した。しかし、上記2以降についてはいずれも名誉毀損の成立を認定している。

(「表現行為B」の2について)

 2について東京高裁は、〈上記記載は、被控訴人が職業安定法63条2号違反の犯罪行為をした疑いがあるという法的な見解を表明するものである。……法的な見解の表明は、事実を摘示するものではなく、意見ないし論評の表明の範ちゅうに属するものというべきである(前記最高裁平成16年7月15日判決)。〉とした上で、名誉毀損性について〈前記意見表明は、被控訴人が職業安定法違反の犯罪行為をした疑いがあるとし、かつ、これに基づいて被控訴人に市議会議員としての適格性はないと論じるものであるから、被控訴人の社会的評価を低下させるおそれがあることは明らかである。〉と認定している。

 意見表明が他人の名誉を毀損するものだったとしても、公共性・公益性があり、その前提に真実性・相当性が認められた場合には違法性は阻却される。この点について東京高裁は次のように述べた。

〈控訴人矢野及び控訴人朝木は、……前提事実を掲げることなく、公然と、被控訴人が職業安定法違反の犯罪行為をしているという意見表明をし、これにより、被控訴人の社会的評価が低下するおそれを発生させた。

 ……本件訴訟において控訴人矢野及び控訴人朝木が上記意見表明の前提事実として主張した事実の重要な部分が真実であるとは認められず、また、控訴人矢野及び控訴人朝木がこれを真実であると信じるについて相当の理由を認めるに足りる証拠もない。〉

 東京高裁はこう述べて、「表現行為B」の2について名誉毀損の成立を認定したのである。

(「表現行為B」の3について)

 3について東京高裁はいずれも「意見表明」であるとし、「薬事法違反」と「職業安定法違反」(の疑い)とする主張について検討している。

「視聴者の誘引」を否定

 まず「薬事法違反」については〈前記意見表明は、被控訴人が薬事法違反の犯罪行為をしたとし、かつ、これに基づいて被控訴人に市議会議員としての適格性はないと論じるものであるから、……被控訴人の社会的評価を低下させるおそれがあることは明らかである。〉として名誉毀損性を認定し、その上で真実性・相当性について次のように述べている。

〈被控訴人は、姫アグラの流行と効能に言及しているものの、それを超えて、本件ネット動画の視聴者を誘引し、姫アグラを購買する意欲を昂進させる意図が明確であるとまでは認められない。したがって……被控訴人が姫アグラの「広告」(宣伝)をしたという事実が認められない以上、……控訴人矢野及び控訴人朝木の上記主張を採用することはできない。〉

 東京高裁はこう述べて、3の「薬事法違反」について名誉毀損の成立を認定した。

「職業安定法」についても上記「表現行為Bの2」と同様、〈被控訴人の社会的評価を低下させるおそれがあることは明らかである。〉と述べた上で真実性・相当性を否定し、名誉毀損の成立を認定した。

「表現行為Bの4」「表現行為Bの5」はいずれも「薬事法違反」であると主張するものだが、東京高裁はいずれも上記3と同じ理由によって名誉毀損の成立を認定している。この結果、東京高裁は平成23年意3月16日、矢野と朝木に対して計100万円の支払いと、「表現行為Bの4」の「ニュースワイド多摩」放送分については謝罪放送を命じる判決を言い渡したのである。

 なお、東京高裁が命じた謝罪放送の具体的内容は以下のとおりである。



謝罪放送

 これから謝罪放送を行います。

 本局の番組「ニュースワイド多摩」は平成19年9月5日、東村山市議会議員の薄井政美氏が同年2月10日にアダルト動画サイト「マンゾクTV」でした「姫アグラ」の紹介は薬事法に違反する旨の放送を行いました。しかし、上記放送内容は根拠が不十分であり、上記放送は同氏の名誉を傷つけるものでした。

 よって、本局は、上記放送内容を取り消すこととし、同氏に対し、謝罪いたします。

特定非営利活動法人多摩レイクサイドFM

理事長 岡部 透

放送条件

 上記謝罪放送は、2日間連続して、番組「ニュースワイド多摩」の放送(1日4回)に近接する広告放送の時間帯に(合計8回)、40秒のCM放送の中で、聴取者が明確に聞き取ることができる速度で行うこと。



 東京高裁判決後の平成23年3月23日、矢野と朝木はウェブ版東村山市民新聞で〈「エロライター」裁判で、薄井市議が、東京高裁でまた敗訴!〉とするタイトルのもと次のような記事を掲載し、現在もほぼ同じ状態で残っている。

〈……市民新聞が「まるでエロライター、市議としての適格性がない」と厳しく批判したことを、薄井市議は「名誉毀損だ」として提訴した裁判で、地裁に続き、東京高裁は3月16日、この裁判の根幹である「まるでエロライター」等の記事は名誉毀損にはあたらないとして薄井市議の請求を棄却した。〉

 敗訴部分についてはわずかに〈高裁判決は、薄井市議の薬事法違反等の疑いについては認めなかった〉と触れただけで、100万円の支払いと謝罪放送が命じられたことには言及していない。矢野と朝木の敗訴であるにもかかわらず、事情を知らない市民が読めばまるで彼らが勝訴したと勘違いしてもおかしくないような一面的な記事である。

 この時点ではまだ確定判決でないとはいえ、誹謗目的ではなく真摯な問題提起だったのなら、「セクハラ」や「エロライター」との意見表明に対して東京高裁が疑義を呈した事実を明らかにすべきところだろう。また東京高裁判決が確定したのだから、いまだウェブ上に残っている記事も削除するのが常識的な対応といえるのではあるまいか。

 その矢野と朝木が判決確定に基づき、1月28日と29日に謝罪放送を行うという。「東村山市民新聞」事件で謝罪広告を命じられた矢野は、謝罪広告の隣にその内容を打ち消す内容の記事を配置した。その前歴からすれば今回、矢野が趣旨どおりの謝罪放送を行うかどうかは保証の限りではない。

(了)
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「セクハラ市議」名誉毀損事件 最高裁判決後(その1)
主体の不明確な放送

 東村山市議だった薄井政美が東村山市議の矢野穂積と朝木直子、多摩レイクサイドFMらを提訴していた裁判で、矢野らの代理人は薄井の代理人に対して、最高裁判決に基づき平成25年1月28日と29日の両日、多摩レイクサイドFMにおいて謝罪放送を行う旨を連絡してきたという。東京高裁が命じた謝罪放送の内容は指定されているが、同放送局が本当に「謝罪」の趣旨どおりの放送を行うのか、確認する必要があると私は考えていた。

 放送時間は矢野がパーソナリティを務める「『ニュースワイド多摩』の放送に近接する広告放送の時間帯に、40秒のCM放送の中で」と判決文に指定されている。名誉毀損が認定された放送は「ニュースワイド多摩」の中で矢野によって行われたものだからである。

 多摩レイクサイドFMでは通常、「ニュースワイド多摩」の前に広告のような放送がある。その時間帯に謝罪放送が行われる可能性もあると思ったが、放送内容に変化はなかった。そのまま「ニュースワイド多摩」を聴いていると、いつもは10時までの同番組が9時30分過ぎに終了した。その直後、「ニュースワイド多摩」でそれまで幅広い知識を披瀝していた矢野ではなく、女性アナウンサーの声で次のような放送が流れた。



 この番組は、昨年、2012年12月18日に最高裁第3小法廷が東村山市の議会や行政にとってきわめて重要な意味を持つ事件に関して決定をしましたので、この時間は「特集 エロキャスター裁判を考える」と題して、経過を整理し、前代未聞のこの裁判が明らかにした問題やこの最高裁決定の持つ意味などを、リスナーのみなさんと一緒に考えていきたいと思います。

 なお、スポットのCMの時間帯がありませんので、このような番組の形式とさせていただきました。



 よくわからないが、「エロキャスター裁判」という文言からすると、最高裁判決に関連した放送のようだった。しかし「エロキャスター裁判」なるものはそもそも「ニュースワイド多摩」における矢野の発言が問題となったもので、矢野が表に出ないのは何か不自然である。ここまでの時点で、放送の主体が誰なのかも明確ではない。

 また「謝罪放送を行う」というのならわかるが、「特集」とはどういうことなのか。東京高裁は「謝罪放送」について「『ニュースワイド多摩』の放送に近接する広告放送の時間帯に、40秒のCM放送の中で」と指定しているし、判決で指定された謝罪文を読み上げるだけなら40秒あれば十分のはずである。

 そもそも〈なお、スポットのCMの時間帯がありませんので、このような番組の形式とさせていただきました。〉などと聴取者に釈明する必要はない。私にはこれが、額面通りの謝罪放送ではなくなることの言い訳のようにも聞こえた。

 この「特集」は9時33分ころに始まり、「40秒」どころかたっぷり午前10時まで2、3名の女性アナウンサーがひたすら原稿を読み続けた。はたしてその内容も、とうてい「謝罪放送」といえるようなものとはとうてい思えなかったのである。原稿を執筆したであろう矢野はついに一度も登場しなかった。

事実に反する主張

 平成24年12月18日に最高裁が矢野らの上告を受理しない決定を行ったことで確定したのは東京高裁判決である。その東京高裁判決についてまず放送は次のように説明した。



 東京高裁第22民事部の加藤新太郎裁判長は東京地裁立川支部の判決のうち、薄井さんの言動は「『性風俗マニア』、『超セクハラ市議』、『エロ・ライター』に当たる」と認定した第一審通りの判決を言い渡し、矢野穂積議員や朝木直子議員の指摘を認めました。市議会議員だった人物が裁判所から、その言動は「『性風俗マニア』『超セクハラ市議』『エロ・ライター』に当たる」と認定され、これが最高裁で確定したのですからこれだけでも大事件ということができます。



 薄井の言動が「性風俗マニア」「超セクハラ市議」「エロ・ライター」に当たると認定されたと放送は主張するが、東京高裁はそのような認定はしていない。東京高裁は次のように認定したのである。



(「性風俗マニア」等に対する東京高裁の認定)

「エロ・ライター」「風俗マニア」という意見表明については、被控訴人(筆者注=薄井)が主張するとおり、被控訴人は勤務先であるクリエイターズ社の仕事として本件ネット動画に出演していたものであること、被控訴人はキャスターとして与えられた原稿を読み上げていたものであり、自ら原稿を書いていたものではないことに照らせば、「風俗マニア」、「エロ・ライター」という意見表明の相当性には疑問なしとしない。



 東京高裁はこう述べた上で、議員任期開始後も薄井が出演して〈相当に過激な性的発言等をしている本件ネット動画がネット公開されていた事実に照らせば、「風俗マニア」、「エロ・ライター」という表現が意見表明としての域を超えるとまではいい難い。〉と認定したにすぎない。東京高裁はむしろ相当性に疑問を呈しこそすれ、この放送がいうように薄井の言動が「性風俗マニア」「超セクハラ市議」「エロ・ライター」に当たるなどと認定したわけではないのである。つまり、上記の放送内容は事実に反するということになる。

 続いて放送は、矢野と朝木が薄井のアダルト動画サイトにおける言動に関して東村山市男女共同参画条例に違反すると主張した点について、〈(東京高裁は)「名誉毀損ではない」としました。〉と、あたかも彼らの主張が認められたかのように説明した。しかしこの説明も東京高裁の判断を正確に伝えたものとはいいがたい。東京高裁は次のように認定したのである。



(「東村山市男女共同参画条例に違反する」との主張に対する東京高裁の判断)

 東村山市男女共同参画条例2条(3)号は、セクハラについて「性的な言動により当該言動を受けた相手方の生活環境を害すること又は性的な言動を受けた相手方の対応によりその者に不利益を与えることをいう。」と定義しているところ、……本件ネット動画における被控訴人の性的な言動は、受ける側がアクセスしない限り、その者の耳目に触れないものであるから、上記条例2条(3)号には該当しない。



 東京高裁はこう述べて矢野と朝木の主張を否定しているのである。ただし意見の表明は保護されるべきで、〈控訴人矢野及び控訴人朝木が、被控訴人の性的な言動を録画、録音した本件ネット動画のネット公開を……セクハラを禁止する東村山市男女共同参画条例に違反すると誤り考えたことをもって、意見表明の域を逸脱したものということはできない。〉として、名誉毀損の成立を否定したにすぎない。たんに東京高裁が名誉毀損の成立を否定したことのみを説明し、その判断に至った理由に触れないのはきわめてアンフェアである。

 放送が始まって5分が過ぎ、10分が過ぎてもまだ「謝罪放送」はされなかった。このように判決を曲げて矢野と朝木の主張を正当化させようとする「特集」の流れの中で、いったいどんなかたちで「謝罪放送」が行われるのか、この時点で私にはとうてい想像がつかなかった。

 なお東京高裁は矢野と朝木に対して75万円、多摩レイクサイドFMに対して25万円の支払いを命じているが、薄井によれば、計100万円と遅延損害金はこの放送の時点ですでに振り込まれていたという。

(つづく)
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