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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

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「右翼の弟子」事件 第6回
名誉毀損性を認定

 平成26年8月31日、「行動する保守」Aが東村山駅東口で「朝木明代は殺されたのだ」とする街宣を行った際、私と千葉英司(東村山警察署元副署長)が周辺で取材および右翼らが洋品店(朝木明代による万引き被害者)に行くのを警戒していたことについて、「行動する保守」Aの弟子はブログでわれわれが「集団ストーカー行為をした」などと掲載した。この記事をめぐり私と千葉が弟子を提訴していた裁判の第2回和解協議が平成27年3月2日午前11時から東京地裁立川支部で行われた。

 東京地裁は前回の和解協議において、和解内容について①「集団ストーカー」などとの表現は名誉毀損を免れないから、被告は原告らに対して遺憾の意を表明する②掲載期間が3日間と短期間でもあるので、被告は印紙代等の訴訟費用を原告らに支払う――という大枠を示した。これに対して原告、被告ともに、裁判所の見解を受け入れることで合意していた。

 弟子は答弁書で、「ストーカー」との文言は法律上、恋愛感情によるつきまとい等を示すから、原告らの行為を「集団ストーカー行為」と表現しても「ストーカー行為等の規制等に関する法律」に抵触するものではなく、また「『集団ストーカー行為の一形態といえるのではないか?』と疑問形で感想を述べたに過ぎない」から名誉毀損は成立しないなどと主張していた。しかし裁判所は、これらの主張を否定したことになる。

 さて、具体的に和解条項を作成するにあたり、この日の第2回和解協議で私と千葉が求めたのは主として以下の3点だった。



和解協議での原告側の要求

①弟子は、原告らが「集団ストーカー行為をした」と記載したことについて名誉毀損を認めて謝罪すること。

②弟子は千葉について〈退官した後も東村山にこだわる理由はない〉〈(朝木明代の転落死=自殺=が)まるで自殺でなければ困る、自殺での死亡のままにしておけと言わんばかりの執拗な付きまといっぷり〉などと記載して、千葉があたかも「謀殺事件を自殺として処理した」かのように記載している。

 弟子は平成21年から21年にかけても、「行動する保守」Aとともに、「朝木明代の転落死は殺人事件であるにもかかわらず、千葉はこれを隠蔽して自殺として処理した」とする記事を掲載したが、裁判では遺憾の意を表し、今後は誹謗中傷しないことを確約する旨の和解が成立している。にもかかわらず弟子は本件記事においてこの和解条項に違反し、千葉が不当な捜査を行ったとする趣旨の記事を掲載した。

 したがって本件和解においては、朝木事件に関して弟子は今後、千葉が違法、不当な捜査を行ったなどと記載してはならない旨を明記すること。

③被告は印紙代等を負担すること。



 弟子側からは具体的な要求はなかった。

裁判所が示した和解案

 裁判官は原告側の主張を聞いたあと、裁判所が考える和解条項案を双方に提示した。その内容は以下の通りである。



(裁判所による和解条項案)

1 被告は、原告らに対し、当庁平成22年(ワ)第1298号事件(筆者注=千葉が弟子と「行動する保守」Aを提訴した事件)において原告千葉に対し今後誹謗中傷しないことを確約する旨の和解をしたにもかかわらず、自己の運営するウェブサイトにおいて原告らの行為を「集団ストーカー行為」と記載したことにつき、遺憾の意を表明する。

2 原告ら及び被告は、手段・方法を問わず、相手方の名誉、信用を毀損する一切の言動をしないことを相互に確約する。

3 原告らは、被告に対するその余の請求をいずれも放棄する。

4 原告らと被告は、原告らと被告との間には、この和解条項に定めるもののほかに何らの債権債務がないことを相互に確認する。

5 訴訟費用は、そのうち原告らが支出した本訴提起手数料等1万6000円を被告の負担とし、その余を各自の負担とする。



 第1項をみると、裁判所が弟子の和解条項違反を重視していることがうかがえた。ただ和解条項は法律の文章で、素人にはなかなか具体的な意味内容が理解しにくいところがある。私と千葉はこのうち1項と2項について、自分たちの要望が反映されたものであるかどうか裁判官に確認を行った。

「集団ストーカー」には名誉毀損の恐れ

 まず、第1項には被告が「名誉毀損を認めた」という文言がない。これをどう理解すればいいのか。この点について裁判官は即座にこう答えた。

「『遺憾の意を表明する』ということは、『名誉毀損を認めた』ということなんですよ」

 相手が誰であるにせよ、具体的な根拠が乏しいのに「集団ストーカー」などと表現すれば名誉毀損となること、および弟子自身もそのことを認めたということである。弟子は今後、「集団ストーカー」という文言を使う際には十分に気をつけた方がよかろう。 

千葉に対する表現にもクギ刺す

 第2項については、私と千葉が聞く前に裁判官の方から次のような説明があった。

「原告が主張された千葉さんに関する表現の問題は第2項に含まれています。具体的には『千葉は明代の転落死に際して違法な捜査をした』などという表現をすれば、和解条項違反ということになります」

 そこで私はこう念を押した。

「朝木事件に関して今後被告が『千葉は違法な捜査をした』という表現をしてはダメだということですね」

 すると、裁判官は迷いなく「そういうことです」と答えた。ここまで具体的な表現に踏み込んで確認できたことは、弟子が再び和解条項違反を犯さないためにもきわめて有益だったのではあるまいか。

 裁判官の説明を聞き、私と千葉は裁判所が示した和解案を了承した。この間、弟子からも弟子の代理人からも反対意見はいっさい出ず、和解が成立した。

 ところで、師匠である「行動する保守」Aは本件の当事者ではない。しかし和解条項の第2項については、「行動する保守」Aもほぼ当事者であることを自覚する必要があろう。

(つづく)
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「右翼の弟子」事件 第7回
 平成27年3月2日に合意した和解調書(3月6日付)が送達された。前回、裁判官が提示した和解案の内容を報告したが、あらためて正式な和解調書に記された和解条項を記載しておこう(なお、「被告」は「行動する保守」Aの弟子、「原告ら」は私と千葉である)。



和解条項

 被告は、原告らに対し、当庁平成22年(ワ)第1298号事件(※)において原告千葉英司に対し今後誹謗中傷しないことを確約する旨の和解をしたにもかかわらず、自己の運営するウェブサイトにおいて原告らの行為を「集団ストーカー行為」と記載したことにつき、遺憾の意を表明する。

 原告ら及び被告は、手段・方法を問わず、相手方の名誉、信用を毀損する一切の言動をしないことを相互に確約する。

3 原告らは、被告に対するその余の請求をいずれも放棄する。

 原告らと被告は、原告らと被告との間には、この和解条項に定めるもののほかに何らの債権債務がないことを相互に確認する。

 訴訟費用は、そのうち原告らが支出した本訴提起手数料等1万6000円を被告の負担とし、その余を各自の負担とする。被告は、原告らに対し、上記訴訟費用1万6000円を、平成27年3月末日限り、原告らの指定する下記銀行口座に振り込んで支払う。なお、振込手数料は被告の負担とする。

平成22年(ワ)第1298号事件……弟子と「行動する保守」Aは朝木明代が万引きを苦に自殺した事件に関して、捜査を指揮した千葉に対して「大嘘つきの千葉英司元副署長」「にも拘らず捜査の指揮をとった東村山警察署の千葉英司副署長(当時)は強引に自殺として処理」「この男こそが13年前、自殺事件にすり替えた張本人・千葉英司だと分かった。警察を退職した今でも創価学会シンジケートで繋がり、店主を装って用心棒を演じていたとは」などと記載したため、千葉が提訴した事件。平成23年4月25日、「行動する保守」Aらは千葉に対して遺憾の意を表するとともに10万円を支払い、和解が成立した。

 なおこの裁判で「行動する保守」Aは、それまで主張していた「内部告発」(=明代の転落死について「現場で怪しい3人が目撃されていた」とする話)が「伝聞の伝聞」、すなわち話の出所さえ追及できない与太話にすぎないものだったことを自白している。)



 以上である。

 前回も説明したように、第2項の〈被告は、手段・方法を問わず、相手方の名誉、信用を毀損する一切の言動をしないことを……確約する〉の「相手方の名誉、信用を毀損する言動」には、「原告千葉は、明代が謀殺されたにもかかわらずその証拠を隠蔽し、自殺として処理した」などと主張することが含まれることを裁判官に確認している。つまり裁判官は「千葉は殺人事件を隠蔽し、自殺として処理した」と主張することは千葉の名誉を毀損すると判断しているということを意味する。

 第2項は、直接的には本件の被告である弟子に対して今後「千葉は殺人事件を隠蔽し、自殺として処理した」などと主張しないことを確約させるものだが、弟子以外の誰かが千葉に対して同様の表現をしても、やはり名誉毀損が認定される可能性が高いということと理解できよう。

「行動する保守」Aは前回の和解で千葉を誹謗中傷しないことを確約させられているから、上記のような表現をすることはできない。

「千葉」の名前を出せない「行動する保守」A

 ただ当然、「行動する保守」Aが主張した「内部告発」の内容が事実であると立証できた場合には話はまた別である。「行動する保守」Aは平成26年8月31日に行った街宣で、「東村山警察は(明代の転落死について他殺の事実を隠蔽し)朝木が万引きをして自殺したと処理した」などと主張したが、千葉の名前は出さなかった。千葉の名前を出せば名誉毀損になるということは理解しているのだろう。だから、「千葉」ではなく「東村山警察」とすることで誹謗中傷の対象を曖昧にしたということと理解できる。

 しかしかつては千葉を名指しした「行動する保守」Aがもう千葉の名前を出せないということは、「明代は殺された」とする裏付けなどないといっているに等しいということである。「行動する保守」Aは卑怯者なりに、「千葉が殺人事件を隠蔽し、自殺として処理した」とする事実を立証できないことだけは理解しているものとみえた。

「行動する保守A」が「東村山署」ではなく「千葉」の名前を堂々と出して「殺人事件を隠蔽し、自殺として処理した」と主張するためには、やはり「内部告発」なるものが事実であることを立証する以外にないのだろう。「行動する保守」A自身も「伝聞の伝聞」であるにもかかわらず平成26年に行った街宣ではいまだ「内部告発」に未練があるような口ぶりだった。 このとき、「行動する保守」Aは香川大学教授が「内部告発」に近い話を聞いたと述べている(やはり「伝聞の伝聞」)ことを紹介し、9月に行った街宣でも教授の話に触れたが、それっきりである。

最初の情報発信者

 ところで、最初に「4人の男に現場のビルに連れ込まれるのを見た」という「目撃情報」を公表したのはほかならぬ東村山市議の矢野穂積である(平成8年4月18日付『週刊宝石』)。その矢野は「明代は殺された」と主張しているにもかかわらず、「行動する保守」Aの主張する「内部告発」話にはまったく興味を示さなかった。なぜなのだろう。

 確かなのは、矢野は平成8年以後、1度たりとも「目撃情報」なるものを公の場に持ち出したことはないということである。「情報」の出所も明らかではない。すると、最初の情報発信者である矢野自身が「情報の出所」である可能性を否定できないということになる。

 いずれにしても、香川大学教授の伝聞話と「行動する保守」Aの「内部告発」の内容には、矢野が最初に公表した「目撃情報」と重なる部分があることは確かである。「行動する保守」Aは、香川大学教授だけでなく矢野にも情報の出所を含めて、情報の信憑性はどうなのかじっくり聞いてみる必要があるのではなかろうか。

(了)
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「議席取り戻し」事件 第11回
やり残した質問

 東村山市議会平成27年3月定例会の一般質問に際して、「草の根市民クラブ」の矢野穂積が事前に提出した質問通告書の4には〈越境通勤市議はゆるされるか〉という項目があった。しかし一般質問で矢野は、宅地開発をいったん中止した東村山市内にある急傾斜地を「墓地公園化できないか」とする質問に時間を割いてしまい、予定していた〈越境通勤市議〉に関する質問をしなかった。理由はよくわからないが、矢野にとって、予定の質問ができなくなっても、墓地開発についての質問をする方がよほど重要だったということらしい。

 しかし矢野がこの3月議会で〈越境通勤市議〉に関する質問をもうしなくていいと考えていたのかといえば、そうではなかった。矢野は同年3月17日に行われた予算特別委員会の質疑に立ち、〈越境通勤市議〉について取り上げた。

 矢野のいう〈越境通勤市議〉とは、「他の自治体に居住していて、そこから東村山市議会に通勤している市議であり、東村山市内には生活の本拠がない市議。つまり本来は東村山の被選挙権がないにもかかわらず東村山市議として違法な活動している者」という意味である。

 この質問が来年度予算といったいどんな関係があるのかよくわからないが、矢野は4月に行われる市議選までに議会の場でどうしても〈越境通勤市議〉を取り上げておきたかったものとみえた。議員の質疑は議事録に残るだけでなく、動画でも配信しているから、取り上げることによってなんらかの宣伝効果を期待したのかもしれない。

ヤブヘビを警戒か

 ただその内容は、前年12月に発行した『東村山市民新聞』184号(=矢野と朝木直子の政治宣伝ビラ)に比べればかなり緩慢なものだった。ビラでは矢野が〈越境通勤市議〉であるとして批判しようとする議員を名指しした上で〈また公選法違反! 4年前にも「越境通勤市議」が大問題に〉と記載していた。その議員は東村山に生活の本拠はなく、公選法に違反していると断定していたのである。

 しかし予算委員会では矢野のいう〈越境通勤市議〉の氏名も出さず、公選法の住所要件について一般論を述べ、当該議員が住民票を置いていると思しき東村山市内の町名を挙げただけだった。矢野はこう述べた。



〈公選法の継続居住要件というのはですね、生活の本拠がそこになきゃいけないんですよ……。3カ月選挙の前に引き続いて住んでればいいっていう問題じゃないの、しっかり覚えてて下さいよね。〉

〈判例はですね、……本人が住んでるからいいんだとかいってるようじゃダメなわけですよね。〉



「住所」とは実質的な生活の本拠でなければならない。住民票を置き、「そこに住んでいる」と主張しただけではダメであることは、議席譲渡事件で矢野と朝木自身が最高裁から指摘されたことである。したがって、あまりその点を追及しては、朝木が千葉県松戸市に生活の本拠を移したと虚偽の主張をして矢野を繰り上げ当選させた議席譲渡事件という過去をかえって思い出されることになりかねない。だから矢野も、非難しようとする議員の住所問題に深入りせず、「住所」の一般的な定義を述べるにとどまったのではないか――私にはそう思えた。

「独自の見解」を披露

 なお矢野はこの質問の中で、住民票を置いた住所が本当に生活の本拠であるためには、

〈住居、職業、生計を一にする配偶者その他の親族の生活、資産の所在等が、客観的事実に基づいて、そこに一緒に住んでいるということになんなきゃいけない〉

 と述べている。矢野はビラ184号で、住所をめぐって追及しようとする当該議員が家族を隣町に残したまま東村山に単身で住んでいることも、東村山が生活の本拠とはいえない理由として挙げている。だから、「配偶者その他の親族……がそこに一緒に住んでいる」ことが「生活の本拠」である条件であるかのように主張したのだろうか。

 他の自治体から移転してきた議員が、家族をそれまでの住所に残したまま単身で住んでいるという外形は、選挙民にとってきわめてわかりやすい状況であることにちがいあるまい。矢野の説明する「住所」の要件に「配偶者その他の親族が一緒に住んでいる」ことが含まれるというのが事実とすれば、少なくともそう信じ込んだ市民からはただちに、当該議員は東村山の被選挙権がなく、すなわち東村山市議の資格もないと判断されかねない。

 しかしそもそも公選法は、「住所」の要件に「配偶者その他の親族が一緒に住んでいる」ことを要求しているのかどうか。ちなみに議席譲渡事件で朝木直子の住所移転が否定され、矢野の繰り上げ当選が無効と断定された最高裁判決によれば、「住所」の定義について次のように述べている。



(「住所」に関する最高裁の見解)

〈住所とは、生活の本拠、すなわち、その者生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心を指すものであり、一定の場所がある者の住所であるか否かは、客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものと解するのが相当である(最高裁昭和29年(オ)第412号同年10月10日大法廷判決)。〉



「配偶者その他の親族が一緒に住んでいる」ことも「生活の本拠たる実体」を具備する要素には含まれよう。しかし最高裁は、具体的に「配偶者その他の親族が一緒に住んでいる」ことが住所の要件であるとまでは述べていない。問題はあくまで本人の生活実体だろう。

 当然、事情によって「配偶者その他の親族」とは別居する場合も現実にはあり得よう。また逆に、「配偶者その他の親族が一緒に住んでいる」ことによって、ただちに本人の生活実体があると判断されるとすれば、それもまたおかしな話である。

 少なくとも、私が調べた限りにおいて、法が「住所」の要件として「配偶者その他の親族が一緒に住んでいる」ことを要求しているとする事例を発見することはできなかった。矢野が予算委員会で述べた「住所」に関する主張はあくまで矢野の「独自の見解」にすぎないとみるべきなのではあるまいか。

(つづく)
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「議席取り戻し」事件 第12回
予算審議の場で他人を誹謗

 なお質問(平成27年3月議会予算特別委員会)の最後で矢野は、ビラ184号と同様にやはりもう1人の(むしろ最も)非難しておきたい市議について触れた。

〈この問題に関しては、越境通勤、越境通勤市議か、という名前を私は編み出しましたが、何回も同じことやるようじゃダメですよね、この町も。それをよくいっておきますが、おかげで前にやった人は、また有名になっちゃって、また話題の主になっちゃったじゃないですか。ということをいっておきたいと思います。〉

「話題の主」とは誰なのかこれだけではわからないが、平成26年の末から矢野が急に問題にし始めた市議と、矢野がいうもう1人の市議は何の関係もない。無理やり関連づけ、「問題」なるものを蒸し返そうとしているのは矢野自身である。しかし、「また話題の主になっちゃった」といっているにもかかわらず、矢野はなぜその人物の個人名を出さないのだろう。

 最初に矢野が「越境通勤市議」なる文言を使用して騒いだのは佐藤真和に対してである。東京地裁は佐藤に対するこの論評が名誉毀損であることを認定し、真実性を否定した。しかし矢野がそう信じたことについては相当の理由(相当性)があったとして、矢野に対する不法行為責任は認めなかった。したがって、矢野が再び佐藤に対して〈越境通勤市議〉と断定すれば、今度は名誉毀損が認定される可能性が高い。だから矢野は名指ししなかったのではあるまいか。

 朝木直子はかつて佐藤を〈越境通勤市議〉と呼んで追及していた際、市民に対して「(議席譲渡事件の際に)私たちがやられたことをやり返しているのよ」といったという。「私たちがやられたこと」とは、平成7年に行われた東村山市議選で、次点で落選した矢野に当選を譲るために朝木が松戸に住民票を移したことに端を発する議席譲渡事件を指している。その際、朝木に松戸での生活実体があるのかどうか市民が調査し、最終的にその住民登録は虚偽だったと判断された。その結果、矢野の繰り上げ当選は無効となり、議席譲渡の企みは敗北に終わった。

 朝木は自分が追及されたことを根に持っており、それに対して「やり返している」といっているのだった。議席譲渡事件は民意を愚弄する行為としてマスコミからも批判を浴びた。しかし「やり返しているのよ」という言葉からは、朝木と矢野が市民に対して謝罪するどころか、なんら反省の気持ちも持ち合わせていないことがわかる。

 矢野が今もなお佐藤に対して、個人名を出さないまでも〈越境通勤市議〉と呼んで誹謗しているのも「やられたことをやり返している」ということになろうか。しかし、佐藤についてはすでに裁判所から〈越境通勤市議〉ではないと断定されている。にもかかわらず、なおも佐藤を〈越境通勤市議〉と呼ぼうとしているのは、すでに公的に否定された事実を議会という公的な場を利用して蒸し返し、ネガティブな宣伝をしようとしていると判断されても仕方があるまい。

 矢野の予算特別委員会における質問は、実質的にもなんら質問ではなく、矢野のきわめて個人的な意見を発表しただけに終わった。その内容も独自の見解と裁判所から否定された文言を蒸し返すものにすぎなかった。予算質疑の場で、とうてい来年度予算と関係があるとも思えないだけでなく、質問ではなく他人を貶めることを目的としているとしか思えない意見を垂れ流すとは、これこそ予算(議会経費)の無駄遣いにほかならない。

朝木が行った虚偽の住民登録

 佐藤を視野に入れた〈越境通勤市議〉という呼称に対する執着ぶりは、かつて自分が繰り上げ当選を無効とされ、議席を逐われたことに対する矢野の屈辱感の深さを表しているようにも思える。もともと、裁判所から否定されてもなお、いったんいい出した主張を決して引っ込めないのは矢野の特異性である。決して非を認めないこととも共通していよう。

 平成7年の東村山市議選後に矢野と朝木が起こした議席譲渡裁事件で、朝木は当選したにもかかわらず、次点で落選した矢野に議席を譲ることを目的として千葉県松戸市に住民票を移した。矢野を繰り上げ当選させるためには当選人のうちの1人が当選を失えばよかった。だから朝木は千葉県松戸市に架空の住民登録を行い、東村山における被選挙権すなわち自らの当選を喪失させようとはかったのだった。市議になるために立候補したはずの者が自らの当選を放棄するなど、東村山市民に対する裏切り行為であるだけでなく、市民にとっても行政にとって想像もしない、通常では起こるはずのない出来事だった。

 当時、朝木だけでなく母親である朝木明代も「朝木直子は現実に松戸で暮らし、生活している」と主張する一方、それが矢野を繰り上げ当選させるためであることを否定しなかった。しかし裁判で矢野と朝木は、真っ向から「矢野に議席を譲るために住民票を移した」と(正直に)主張するのは不利と考えたようだった。

 住民の直接選挙の結果を党派や候補者間の都合で覆すことは民主主義社会では容認されないか、少なくとも裁判官の心証はよくないと判断したものと思われた。朝木は裁判で、松戸における「生活実体があった」と裁判官に思わせるためか「松戸に転居したのは父親の介護のためだった」と主張した。朝木はそこまで苦心して松戸に生活の本拠を移したことを主張したのである。しかし最高裁は、松戸における朝木の生活実体を否定し、矢野の繰り上げ当選を無効と結論付けた。

 最高裁判決後、東村山市選挙会は朝木の当選も認めない決定を行った。これに対して矢野と朝木はただちに反論した。しかしその主張が特異に思われたのは、彼らはもう、議席譲渡事件で主張していた当初の松戸での生活実体を認定しなかった最高裁の判断を否定しなかったことである。当初の住民登録が生活実体のないもの、すなわち虚偽登録だったことを事実上、認めたのだった。

 他人の住所をとやかくあげつらうのなら、まず自分たちが過去に行った虚偽登録を認め、市民に対する裏切り行為を謝罪してからにすべきではあるまいか。

(つづく)
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「議席取り戻し」事件 第13回
戻ってこなかった矢野穂積

 東村山市議会平成27年3月定例会は、同年3月26日、最終日を迎えた。私は所用で傍聴できなかったが、聞くところによるとその日の午後、午前中までは議場にいて議案の採決に参加していた「草の根市民クラブ」の矢野穂積が、昼の休憩後、議場に戻ってこなかったということである。

「草の根」の矢野と朝木が会議中に席を立ったり、遅れて来たりするのは珍しいことではない。しかし、重要な採決事案が続く議会最終日に本会議場からいなくなるとはどういうことだろうか。

 最終日の数日前、矢野と朝木は政治宣伝ビラ平成27年3月15日付『東村山市民新聞』第185号を発行している。ビラでは相変わらず他の議員に対する誹謗中傷を繰り広げているが、個人のビラを発行できても公務である議会採決に参加しないというのでは、場合によっては、市議会議員としての資質を問われても仕方がないのではあるまいか。

したたかな主張

 さて、議席譲渡事件で矢野の繰り上げ当選を無効とした最高裁判決後、朝木の当選も認定しなかった選挙会決定(平成9年9月2日)に対して矢野らが行っていた異議申出に対して、平成9年11月26日、東京都選管は東村山市選管に続いてこれを棄却する決定を行った。この異議申出において矢野らは、「最高裁判決は、朝木は平成7年5月29日以降、松戸に生活の本拠を移したと認定しているから、矢野が繰り上げ当選となるべきである」と主張していた。東京都の棄却決定後、矢野らはただちに東京高裁に決定の取り消しを求めて提訴した。

 矢野らは矢野の議員資格を主張する一方で、「矢野の繰り上げ当選を無効とした最高裁判決は平成7年5月1日の時点で朝木直子は東村山市議の地位を得ていたとしており、議会は朝木の身分に関する議決をなんら行っていないから、朝木は東村山市議の地位にある」(趣旨)とも主張し、東村山市議会に対して自分を議員として扱うよう要求した。2年前の東村山市議選後には自らの当選を辞退するといって議会や行政をさんざん混乱させておきながら、矢野の繰り上げが無効とされたとたん「やっぱり自分は議員だ」と平気で手の平を返すとは、やはり並大抵の神経ではなかった。

 しかし東村山市議会は、選挙会が「当選人を決めることができない」とする決定を行ったため、朝木の要求を拒否した。これに対して朝木は東村山市議会が朝木の議員としての業務遂行を妨害しているとして、平成9年9月11日、東京地裁八王子支部に業務妨害を禁止する仮処分命令を求める申し立てを行っていた。

 東村山市議会に議員としての業務を妨害しないよう求める理由として朝木は次のように主張していた。

〈最高裁判決は、……矢野穂積の繰上当選を無効と判断する理由として、債権者(筆者注=朝木直子)は右5月1日にはすでに議員の身分を得ているから、その身分を失わせるには議会の議決を要し、それを経ていない選挙会による繰上当選の手続きには瑕疵があり、その決定は無効であるとした。

 従って、右議決をしていない現時点において債権者は東村山市議会議員である。〉

 朝木が最初に東村山から千葉県松戸市に住民票を移した際、選挙会はその時点で朝木の生活の本拠は松戸に移ったと誤認した。「朝木の生活の本拠は松戸にある」という朝木や明代の主張を信じたのである。その結果、選挙会は誤った繰り上げ手続きを行ってしまった。

 つまり東村山市選管にそのような誤った判断をさせ、「瑕疵ある繰り上げ手続き」をさせた責任は朝木ら自身にある。しかし朝木は松戸に虚偽の住民登録をしたことにはいっさい触れず、たんに「最高裁は選挙会が行った繰り上げ当選手続きには瑕疵があり、その決定は無効であるとしたから、自分は東村山市議会議員である」と主張していた。自分に不利な材料はいっさい明らかにせず、すべての責任が選挙会にあるかのように主張するとは、なかなかのしたたかさである。

東京地裁の判断

 一方、東村山市議会が「議員として扱え」とする朝木の要求を拒否した根拠は同年9月2日に選挙会が行った決定にあった。これに対しても朝木は申立書で、最高裁判決後に選挙会が行った「当選人を定めることができない」と決定したこと自体が違法であると主張し、それに基づく議会の対応は最高裁判決に背くものであると批判していた。

 議会の対応は選挙会の決定に従ったもので、議会が朝木の身分を単独で判断したわけではない。是非はともかく現実的に、議会として行政の判断に真っ向から反するような対応はしにくいだろう。この議会の対応を東京地裁はどう判断したのだろうか。

 平成10年2月12日、東京地裁八王子支部が言い渡した決定は朝木の申し立てを「却下する」というものだった。通常、原告や申立人の請求の中身を審議した上で請求を退ける場合は「棄却」となる。「却下」とは請求の中身を吟味する以前に訴え自体が成立しないという趣旨である。どういう判断だったのか。

衆院選立候補を重視

 東京地裁は議席譲渡事件の経緯(平成7年4月23日に行われた東村山市議選で朝木は当選し、矢野が次点で落選したこと。その直後に朝木が矢野に議席を譲る目的で千葉県松戸市に住民票を移したことで東村山市の被選挙権を喪失したとみなされ、矢野が繰上当選人となったこと。朝木が平成8年10月8日告示の衆院選に立候補の届出を行ったこと――等)と最高裁判決後の選挙会決定などな経緯をふまえた上で、主たる争点は「朝木が公選法90条により議員としての身分を喪失したか(衆院選の立候補)」であるとした。

 この点について議会側は、〈債権者が市議会議員の地位を取得したとしても、債権者は、その後衆議院選挙に立候補しているから、……議員の身分を当然に喪失している。〉と主張。一方朝木は、〈債権者が市議会議員として在職したのは、平成9年8月25日の最高裁判所判決によってであるから、それ以前に衆議院議員選挙に立候補しても公職選挙法90条により市議会議員の資格を失わない。〉と主張していた。

 この点について東京地裁は次のように述べた。

〈債権者が本件申し立ての前提として主張する市議会議員の地位は、第1決定(筆者注=市議選直後に行われた選挙会の決定)により取得したとするものであるところ、債権者は、その後衆議院議員選挙に立候補の届出を行っており、公職選挙法90条により当然に議員たる身分を喪失していることは明らかである(この点についての債権者の主張は独自の見解であり採用できない。)。

 したがって、債権者の申し立ては、その余の点について判断するまでもなく理由がないから、これを却下することとする。〉

 平たくいえば、「自分で衆院選に立候補しておいて、いまごろ何いってるの」といったところだろうか。「棄却」でなく「却下」とは、「衆院選に立候補した以上、その後の最高裁判決などの経緯は関係ないでしょ」という趣旨のようだった。東京地裁もまた、自ら当選を放棄しておきながら、最高裁で矢野の繰り上げが否定されたとたん「やっぱり自分は議員だ」と騒ぐ朝木に強い違和感を覚えたのかもしれない。

(つづく)
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