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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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『聖教新聞』事件 第58回
ぎりぎりのタイミング

『週刊現代』の記事をめぐり朝木が提訴された時期はまだ、「明代は創価学会に殺された」とする矢野らの主張を無批判に受け入れ、宣伝に寄与する反創価学会ジャーナリストやメディアは多かった。最も矢野らに近い存在だった乙骨はとりわけ『週刊新潮』とも近い関係にあった。

 そんな状況で朝木が「『週刊現代』にコメントはいっさいしていない」などと表明すれば、それまで彼らを信用していたメディアに不信感を与えかねず、「他殺疑惑」宣伝も尻すぼみになる可能性がある。当時、自民党は亀井静香(=当時の自民党組織広報委員長)を中心として創価学会・公明党攻撃を繰り返しており、朝木事件も「他殺疑惑」として政争の具に利用しようとしていた。提訴から1カ月後の平成7年11月、自民党の代議士が国会で事件を取り上げ、「事件性は薄い」と広報した副署長の千葉を名指しで批判した。他人が勝手に「他殺疑惑」ムードを煽ってくれている時期に、「『週刊現代』にコメントはしていない」などと主張するのは得策ではないと矢野は判断したのだろう。

 また、だから矢野は、平成8年8月7日まで『聖教新聞』に対する提訴(すなわちすべての責任を『週刊現代』にかぶせるという態度の表明)を引き延ばした。これは『週刊現代』裁判においても、彼らの方針を明らかにするぎりぎりのタイミングでもあったようにみえる。

 いずれにしても、こうして『週刊現代』裁判と『聖教新聞』裁判は、いずれも「朝木父娘のコメントがあったかどうか」が重要な争点の1つとなり、一方の判断がもう一方の判断に少なからぬ影響を与えるという関係となった。

思いもかけない判決

 先に判決が出されていたのは『週刊現代』裁判の方である。平成11年7月19日、一審の東京地裁は『週刊現代』を発行する講談社に対して200万円の支払いと謝罪広告の掲載を命じる判決を言い渡した。当時の名誉毀損の慰謝料としては高額の慰謝料だけでなく、謝罪広告の掲載を命じたところに、東京地裁が本件を重大な名誉毀損と受け止めていたことがうかがえた。

 しかしその一方で、東京地裁はきわめて意外かつ不可解な判断を下し、講談社側関係者や傍聴人を驚かせた。裁判のもう1つの重要な争点である『週刊現代』に掲載された朝木父娘のコメントの有無について、東京地裁は「取材さえ受けていない」とする朝木らの主張を排斥してコメントの事実を認定した。

 ここまでは妥当な判断と思われた。ところが東京地裁は、朝木父娘が『週刊現代』の取材に応じて記載されたとおりのコメントをしたとしても、それを記事に採用するかどうかを判断する権限は編集部にあるとして、朝木父娘の責任を認めなかったのである。

 朝木父娘のコメントの事実が認められれば、当然、彼らの責任も認められるものと誰もが予想していた。ところが、コメントの事実を認めながら責任は認めないという判断があり得るとは考えていなかった。その意味で、『週刊現代』裁判の一審判決はきわめて意外なものだった。

 裁判はそれぞれの担当裁判官の独立性が保証されており、形式的には他の裁判官の判断に影響されないことになっている。しかし『週刊現代』事件と『聖教新聞』事件のように背景事情も当事者も密接に重なっており、当事者が一方の判決を持ち出せば、現実的には裁判官も無視することはできないだろうと思われた。

あくまで「コメントしていない」と主張

『聖教新聞』に対する訴状で矢野と朝木は、「『週刊現代』から取材は受けておらず、掲載されたコメントはいっさいしていない」と主張していた。ところがその『週刊現代』裁判で、「コメントはしていない」とする主張は否定された。別の裁判であるとはいえ、『聖教新聞』で創価学会会長の発言が名誉毀損であるとする彼らの主張の根拠の1つは否定されたことになる。

 しかし「『週刊現代』にコメントをしていた」とは認定されたものの、東京地裁はコメントを掲載したことについて朝木父娘の責任を否定している。すると、『週刊現代』の記事に対して創価学会会長が発行元を批判するのは合理性があるとしても、「朝木父娘はコメントの掲載に関与していない」ということになれば、朝木父娘に対する批判は合理的な根拠を欠くという判断もあり得ないことではない--こんな見方も成り立とう。『週刊現代』裁判の判決は『聖教新聞』裁判の判断に影響しないとは言い切れなかった。

 平成12年4月17日に提出した最終準備書面で朝木は改めて次のように主張している。



(『聖教新聞』裁判における矢野側の主張)

 原告大統及び同直子が「週刊現代」への発言をしていないにもかかわらず、括弧書き引用の各発言をしたと決めつけられたことは、全く事実に反し、原告大統及び同直子の品性、名声、信用等に対する社会的評価を低下させるものである。

 すなわち……これら発言をしたと断定されることは、同人らが何らの根拠もなくデタラメな誹謗中傷を行う人物であると断定されるに等しく、かかる印象を一般人に抱かせ、同人らの品性、信用等に対する社会的評価を低下させるものであることは明白である。



 矢野は一度主張したことを自ら撤回することはけっしてない。だから『週刊現代』裁判で朝木父娘の責任が否定されても、コメントの事実を認定されたことを受け入れたわけではなかった。したがって、裁判上は彼らに有利な判断ではあるにもかかわらず、掲載に対する責任を否定した『週刊現代』裁判の判決を『聖教新聞』裁判には援用しなかったもののようにも思えた。

 なぜなら矢野も朝木も、そもそも「コメントはしていない」という主張を引っ込めるつもりはなかった。もはや手遅れかもしれないが、いまさらコメントの事実を認めれば、保身のためなら主張も変えれば、どんな嘘をつくこともいとわない人物であることを自ら認めることになるからである。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第5回
「詐欺に関与した」とする記事によって名誉を毀損されたとして元東村山市議の山川昌子が同市議の矢野穂積と朝木直子(いずれも「草の根市民クラブ」)を提訴している裁判の第3回口頭弁論が平成28年2月10日、東京地裁立川支部で開かれた。

「個人情報を漏洩した」と主張

 前回第2回口頭弁論で、被告の矢野と朝木は準備書面と朝木の陳述書を提出している。矢野らは準備書面で、

〈東村山市民新聞186号の「1860万円詐欺、元公明市議らが関与、創価、元市議らが仲介して言葉巧みに一般市民から借りて1860万円も返さず」は、事実であって……〉

 と真実性を主張。さらに、〈原告……は、……高齢で相当な資産家である被害者の独居女性が一人暮らしをしている旨原告に話した直後、懇意のM(筆者注=準備書面では実名)(詐欺グループの一員)にその個人情報を漏らしたため〉詐欺事件が発生した、「原告がMに上記被害者の情報を漏らした」ことは〈詐欺行為を仲介したもの〉と主張していた。

 また朝木は陳述書で、被害者から取材した内容として、原告が「詐欺事件に関与した」とする主張の「根拠」をより詳細に主張していた。上記準備書面は朝木の陳述書に基づいて作成されたものだった。

 上記準備書面における主張を要約すれば、「原告は被害者である高齢女性が資産家であり、一人暮らしをするようになったとする情報を詐欺グループの一員であるMに報せた。このことが詐欺に関与したとする根拠である」と主張していた。すなわち詐欺グループは、原告から「被害者には資産があり、一人暮らしである」という情報を得たことによって、被害者を詐欺の標的として狙いを定め、実行に移したのだ――という主張である。

 朝木は「原告は市民相談で得た個人情報を詐欺グループに漏らした」とも主張しており、これは「原告が個人情報保護法に違反した」と主張しているものと理解できた。今回の口頭弁論で、原告はこれらの主張に対する反論を提出することになっていた。

「新たな名誉毀損」

 原告は2月8日付けで上記被告らの準備書面に対する反論を提出。主張の骨子は2点だった。

 第1点は、被告らが「原告は市民相談で得た被害者の、資産家であること、一人暮らしになったという個人情報を詐欺グループの一員に漏洩した」と主張している点に対する反論である。原告は「上記主張は『原告が個人情報保護法違反の犯罪を犯した』と主張するもので、これは原告に対する新たな名誉毀損である」と主張、第3回口頭弁論終了までに撤回するよう求めた。

 第2点は、「原告は詐欺グループの一員であるMに被害者の個人情報を報せた」とする主張を含め、朝木が陳述書で述べている内容に対する具体的な反論である。朝木は陳述書で、原告がMに被害者の個人情報を報せ、その後、被害者が原告に「貸した金を返してもらえない」と相談し、原告が被害者とMを伴って東村山署に相談に行った際にも、原告は被害者に対して「外部にしゃべらないよう口止め」したなど、原告が実は詐欺グループ側の人間であると思わせるような言動を繰り返した――などとし、あたかも原告が詐欺グループの一員であるかのように主張していた。

朝木陳述書に反論

 これに対して原告は、朝木の陳述書における原告に関する記載のうち12カ所にわたり記載事実を否定し、それに対して逐一事実を示した上で、次のように主張した。

〈上記朝木の主張する各事実は、原告が詐欺事件に関与したとの被告らの主張、並びに、原告が個人情報保護法第54条違反の行為をしたとの被告らの主張に信憑性を持たせるために被告らが捏造したものである。

 よって、……被告ら準備書面(1)における「(原告は被害者の)個人情報を漏洩したことによって詐欺事件に関与し、あるいは詐欺行為を仲介した」とする主張にも、なんらの根拠もない。〉

 また、被告らは答弁書においても第2回口頭弁論で提出した準備書面においても「原告は詐欺事件に関与した」とする事実について、「原告は詐欺グループの一員であるMに対して被害者の個人情報を漏洩した」とする理由によって真実性は主張したが、「そう信じるに足りる相当の理由があった」とする相当性の主張はいっさいしていない。このため原告は、「相当性の主張をしていない以上、記事には相当性も認められない」と主張した。

被告側が新たな証拠を提出

 原告が上記の準備書面2を提出したのは口頭弁論2日前の2月8日である。ところがそれと入れ違いに、被告側も新たな主張とA4用紙100枚を超える膨大な枚数の書証を提出した。そもそも被告側は第3回口頭弁論に際して書面の提出を命じられていない。にもかかわらず分厚い書類を提出したのは、急いで提出しておく必要があると判断したのだろう。あるいは被告側は、第3回口頭弁論で結審する可能性があると感じていたのだろうか。

 書証の中には、矢野と朝木が期末手当の一部を「返上」してきたことを証明する書類すべてが含まれていた。「自分たちはお手盛り値上げ分を返上するなど、清廉な議員活動を行っている」とアピールしたかったようである。「だから、市民に対して根拠のない誹謗中傷などするはずがない」と。もちろん、期末手当をどれだけ「返上」していようが、今回の記事とは何の関係もない(「返上」が議員として称賛される行為である理由もない)。

 しかし書証の中には、矢野と朝木が『東村山市民新聞』に記載した「詐欺事件」の真相に関わる2点の重要な証拠が含まれていた。前回の準備書面における矢野らの主張の骨子は「原告は詐欺グループの一員であるMに被害者の個人情報(「一人暮らしで資産家である」というもの)を提供した。これが詐欺事件への関与だ」というものだった。彼らはその主張を立証するために、新たに2点の重要な証拠を提出したのである。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第6回
告訴していた被害者

 第3回口頭弁論を前に被告らが提出した重要な証拠とは、被害者が加害者らを①民事提訴した際の和解調書、被害者が②警察に提出した告訴状、その告訴に際して原告が提出していた③「陳述書」(筆者注=本件裁判の原告陳述書と区別するため、告訴の際に提出したものはカッコ付きの「陳述書」と表記する)の3点だった。

 この和解調書は、貸した金を返してもらえなくなった被害者が東京地裁立川支部に提訴し、被告らが月々決まった額を返済するという内容の和解が成立したことを立証するもの。しかし、和解が成立したものの相手方からの返済は滞った。このため被害者は相手方を告訴しようとした。

 その告訴状を本件裁判に証拠として提出したのである。告訴の相手には、「原告が被害者の『一人暮らしである』『資産家である』という個人情報を漏洩した相手」と矢野らが主張しているMも含まれた(民事提訴の際には、Mが直接借りた証拠(借用証等)がないと弁護士が判断したため被告には含まれていない)。

 この告訴状提出の際、原告は被害者(あるいは被害者の代理人弁護士)に求められて「陳述書」を提出していた。Mとの関わりや和解までの経緯、和解後の対応などを述べたもので、記載内容のすべてが被害者の側に立ったものであることが明らかだった。矢野と朝木はそれをこの裁判で、「原告が詐欺事件に関与した」とする証拠として提出したのである。

 被害者の側に立った「陳述書」であるということは、普通に考えれば、原告には逆に有利な証拠であるように思えた。矢野には何か、特別の狙いでもあったのか。

新証拠を提出した理由

 原告の準備書面と入れ違いに送付されてきた準備書面には、上記告訴状と原告の「陳述書」を証拠として提出した理由についてこう主張していた。

〈(和解後も返金がなされないため、被害者は)Mら4名を被告訴人とし、高井戸警察に刑事告訴をしようとしたが、……告訴状の受理には至らなかった。〉

 原告は上記事件について「民事で和解が成立したものであって、刑事上の詐欺事件ではなく民事上の返金問題として決着している問題であり、『詐欺事件』と記載することは刑事事件として扱われた事件と認識させるもので誤りである」と主張していた。矢野らはこの告訴状を提出することで、この事件は「和解」によって解決したものではなく告訴しようとしたもので、原告も「陳述書」を提出しているから「詐欺事件」として認識していた――こう主張するために告訴状を提出したもののようだった。

 しかし原告はすでに、これが「仮に『詐欺事件』だったとしても、原告が関与した事実はない」と主張している。本件で問題となるのは「原告が事件に関与したかどうか」であって、仮にこれが刑事事件としての「詐欺事件」だったとしてもその本質には影響しないのではないかと思える。

 もう1つの重要な証拠である原告の「陳述書」についてはどうか。矢野らは「原告は詐欺グループの一員であるMに被害者の『一人暮らしである』『資産家である』という個人情報を漏洩した。その結果、詐欺事件が起きた」と主張。それに対して原告は「そのような事実は存在しない」と主張していたが、「陳述書」には原告がMに「(被害者が)一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことがあるとの記載があった。矢野らはこれが「原告が個人情報を漏洩した」とする主張の裏付けであるとし、〈(原告)がこの事件に関して、結果的に仲介し関与したことは明らか〉などと主張していた。

 つまり矢野らは、原告が「詐欺グループの一員であるM」に対して、被害者が「一人暮らしになったこと」を話したとする主張には根拠があることを立証するために原告の「陳述書」を提出したとみられた。しかし、原告がMに対して被害者が「一人暮らしになった」と話したからといって、原告が「詐欺に関与」したことの証拠といえるのだろうか。かなり強引なこじつけのようにも思える。

相当性の主張も追加

 矢野らはまた、第2回口頭弁論の時点まではいっさい主張していなかった「相当性」の主張も行っていた。矢野らはまずこう主張している。

〈本件記事は原告山川が詐欺を働いたという記載ではなく「結局口ききでしかなかった」という記載内容である。〉

 したがって、原告が刑事告訴の際に提出した「陳述書」には「(被害者が)一人暮らしになっちゃったのよね」とMに話したとする記載があるから、「口きき」をしたと記載したことには真実と信じるに足る相当の理由があったと主張しているのである。

 矢野らは本件記事について次のように述べて名誉毀損の成立そのものも否定している。

〈「結果的に口ききとしての役割を果たしたに過ぎない」と批評しているのであって、原告山川が直接的に詐欺を働いたと読み取れる箇所はない。……原告山川の「役割」について結果を批判的に述べているに過ぎず、名誉毀損は成立しない。〉

 本件『東村山市民新聞』の記事をあらためて確認すると、〈結果的に口ききとしての役割を果たしたに過ぎない〉とする記載は〈山川元公明市議は口では被害者女性の味方になってお金を取り戻すそぶりをしていたが〉に続くものであり、原告が被害者の支援をしたことを否定する趣旨の文言にほかならない。つまりこの一節は「詐欺に関与」の見出しを裏付ける事実として記載されているのであって、たんに「『口きき』だったといっている」と読み取るのは難しいのではあるまいか。

 原告は準備書面の提出と入れ違いに送付されてきた被告らの上記の準備書面に対して、被告らの主張の根拠である告訴状と原告の「陳述書」が、原告が詐欺事件とは無関係であることを証明するものであること、さらに〈本件記事は「結局は口ききでしかなかった」という記載内容である〉とする被告らの主張に対する反論等を記載した準備書面を提出した。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第7回
原告に有利と思える証拠

 ところで、矢野らが今回提出した告訴状とその際に原告が提出した「陳述書」には、原告が「詐欺事件」になんらかの関与をしたことがうかがえる記載がいっさい存在しない。たとえば告訴状には、「告訴の理由」として「M(「詐欺グループの一員」で、原告が個人情報を漏洩した相手と矢野らが主張している人物)がマッサージの過程で顧客の家族関係や財産関係を聞き出し、その情報を詐欺の実行行為者に伝えて、被害者から多額の借金をし、詐取した」(趣旨)と記載されているだけで、詐欺行為が実行されるまでの経過の中で原告が何らかの関与をしたとする記載は存在しない。原告が本件詐欺に関与しているなどとは、被害者もまたいっさい認識していなかったことがわかる。

 また原告が告訴に協力して提出した「陳述書」には、原告が被害者から相談を受けて以後、警察に相談に行き、弁護士を紹介し、和解成立後に返済が滞った後にも被害者を伴ってMの家を訪ねたことなども記載されている。このことは原告がいかに被害者に協力してきたか、また被害者が原告を頼っていたかを物語っている。

 つまり、矢野らが提出した告訴状も「陳述書」も、原告が「詐欺事件に関与」どころか、関与などいっさいしていないことを立証するものと判断できるのではあるまいか。「詐欺事件」が受理はされなかったものの告訴された事件であること、「(被害者が)一人暮らしになっちゃったのよね」とMに話したことがある(「陳述書」に記載されている)ことは事実らしいが、全体的にみればむしろ原告に有利な証拠のように思える。

 この2つの証拠を提出するにあたって、矢野にはそれなりの理由があったはずである。しかし私には、矢野がなぜこのような証拠を提出したのか理解することができなかった。

主張の一部を削除

 さて第3回口頭弁論で、裁判長はまず双方に対して準備書面の提出を確認した。するとその直後、矢野ら代理人の田中平八弁護士が立ち上がり、準備書面の一部箇所を「削除したい」と申し立てた。矢野らが提出した2月3日付け準備書面には次のような一節があった。

〈本件は、原告山川が「○○(筆者注=被害者)という高齢の女性が、……一人暮らしをしており、この女性が相当高額の資産を持っている」旨の○○(同上)に関する個人情報を……詐欺グループの一員であるMに漏洩したことにより……〉

 上記記載のうち、田中弁護士は「〈おり、この女性が相当高額の資産を持って〉の箇所を削除したい」というのだった。裁判官はこれを認めた。その結果、詐欺犯にとって最も重要な情報である「相当高額の資産を持っている」という情報が消えてなくなり、上記記載部分は以下のようなものとなった。

〈原告山川が「○○(同上)という高齢の女性が、……一人暮らしをしている旨の○○(同上)に関する個人情報を……詐欺グループの一員であるMに漏洩したことにより……〉

「高齢の女性が一人暮らしをしている」という程度の話が個人情報の漏洩とまでいえるのかどうかはともかくとして、「一人暮らしをしている」という情報を聞いたというだけで詐欺グループに狙われるということになるのだろうか。

 本件の場合、10万円という比較的小さな額から始まり、被害者は様々な理由で1回の額を数百万円単位で10回近くに分散するかたちで合計2600万円を貸している。したがって、「詐欺グループ」はこの高齢者が一定の資産を持っているというアタリを付けた上で接近したものように思える。矢野が証拠として提出した告訴状でも次のように記載している。

〈被告訴人ら(筆者注=「詐欺事件」の実行者ら)は、(被告訴人M)をして……告訴人が……相当の資産を抱えていることを探らせた上……〉

 つまり、「詐欺グループ」はたんに「一人暮らし」という情報のみに基づいて被害者に近づいたのではないということである。また、その旨を記載した告訴状を提出したということは、矢野らもそのことを認めているということにほかならない。

「原告がMに漏洩した」とする情報のうち、「被害者が相当高額の資産を持っている」という部分を矢野らが準備書面から削除したのは、告訴状の記載と矛盾しないように辻褄を合わせたということだろうか。真意は定かでない。しかしそうすると、矢野らが「原告がMに漏洩した」と主張している個人情報のうち、「被害者が相当高額の資産を持っている」とする部分を削除すると、なんら詐欺行為につながる「情報漏洩」などとはいえなくなってしまうのではあるまいか。

 一人暮らしの高齢者は少なくない。通常、一人暮らしだからという理由だけで、本件のようなかたちの詐欺を仕掛けることは、常識的には考えにくい。あるいはこれは、被告の「原告は個人情報保護法違反を犯した」とする趣旨の主張に対して原告が「新たな名誉毀損である」として撤回を求めたことに対する対応でもあったのだろうか。

本人尋問を求めた朝木

 被告らは朝木直子の本人尋問を求める申立書を提出していた。これに対して原告は、「朝木に事実関係を聞いたところでしょせん伝聞にとどまる」という理由で、却下を求めた。裁判官は申し立てに対する態度を明らかにしなかったが、原告に対して尋問の希望があるかと聞いた。原告は書面で足りると答えた。

 裁判官は被告側がそれまで主張していなかった相当性の主張をしたこと、朝木が尋問の申し立てをしたことなどを考慮したのか、進行についてこう述べた。

「じゃあ、もう1回やりましょう」

 こうして原告はあらためて書面を提出することとなり、この日の弁論を終えた。

 次回弁論について裁判官は3月の上旬はどうかと聞いたが、双方に差し支えがあり、次回、第4回口頭弁論は4月11日午後1時10分となった。

(「第4回口頭弁論」以降につづく)
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右翼が再開した「東村山デマ」街宣  その12
地下食堂の珍客

 元東村山市議の山川昌子が矢野穂積と朝木直子(東村山市議=「草の根市民クラブ」を提訴している裁判の第3回口頭弁論が開かれた平成28年2月10日、東京地裁立川支部の地下食堂に天目石という武蔵村山市議がいるのに気がついた。朝木の支援者でもあるらしいこの人物は毎回傍聴に来ているから、今日も傍聴に来たものとみえた。

 この奇特な人物が、この日の裁判の傍聴に「行動する保守」Aを誘っているという情報を耳にしていた。そこで私は食堂に入ると「行動する保守」Aのブログを確認してみた。すると、本当にこんな記載があった。

〈甘目石(=ママ)要一郎武蔵村山市議からのものだった。久しぶりに会いたいという内容で、10日に立川市の裁判所で創価学会員に訴えられた朝木直子東村山市議の裁判が面白いから見に来ないか……という内容だった。〉

「行動する保守」Aによれば、この武蔵村山市議はこの裁判を「面白い」と思っているらしかった。誘いを受けて、「行動する保守」Aは福島に帰るのをわざわざ日延べして東京に1泊したという。

 しかしそうはいっても、本当に裁判所に来るのだろうか、どこまで本気なのかわからないというのが率直な思いだった。会うためなら、なにも裁判所である必要もない。

 また、「行動する保守」Aは平成26年8月31日に東村山駅前で行った街宣で、朝木直子と矢野穂積から縁切りを通告されたと受け取れる内容の発言をしている。ブログの記載からはこの裁判の内容を調べた様子もうかがえない。

 そんなブログをスマホで確認し、顔を上げると、だいぶ離れた食堂の奥の方で天目石が食事をしているのに気がついたのである。で、より注意深く見ると、その手前に、こちらから見ると向こう向きだが、天目石のテーブルを挟んで向かい側に白髪の人物が座っているのが確認できた。

「天目石から誘われた」とブログに書いた、「行動する保守」A本人だった。ブログに掲載している前日の街宣の写真そのままの服装だった。

「内部告発」の末路

 東京地裁立川支部は「行動する保守」Aにとって思い出深い場所のはずである。その端緒となったのが平成20年7月29日、JR八王子駅前で行った街宣だった。朝木明代の万引きを苦にした自殺をめぐり、「行動する保守」Aはこれを謀殺事件であると断定し、こう演説した。

「私がなぜこの事件を取り上げてこのような訴えに立ち上がったのか。それは内部告発です。現職の警察官から、『この事件をこのままにしておくことはできない。これは自殺などではなく殺人事件であり、3人の犯人と思われる人物の特定もなされていました。しかるに、創価学会の信者とみられる検察官からの捜査打ち切りによって真相は闇の中へと閉じ込められたのです』」

 こんな現職警察官による「内部告発」があったと。この街宣の影響力は大きく、多くの支援者を集めた。

 なおこのとき、「行動する保守」Aは矢野に共闘を求めたが断られている。それでも「行動する保守」Aは「内部告発」を信じ、街宣を挙行したのである。

「行動する保守」Aなりに、よほどの自信があったのだろう。「行動する保守」Aは「100%の確信をもってこの事件を取り上げた」とブログに記載している。

 東村山駅前で行った街宣活動では「行動する保守」らが捜査を指揮した元東村山警察署副署長、千葉英司に対して様々な誹謗中傷を行い、朝木明代の万引き被害にあった洋品店に押しかけ罵声を浴びせる騒ぎも起こした(「洋品店襲撃事件」)。「行動する保守」Aが開催したシンポジウムで東村山市議の矢野穂積が「洋品店に抗議の電話をかけるのが効果的」などと発言したことも「行動する保守」らの妄想をより拡大させた。こうして以後、洋品店は数年にわたり「行動する保守」の嫌がらせにさらされ、「行動する保守」が東村山で街宣するたびに閉店を余儀なくされたのである。

 その後、「行動する保守」Aの「内部告発」を信じた西村修平、右翼M、行政書士が相次いで提訴され、損害賠償金を支払わされる事態に追い込まれたが、「行動する保守」Aは「内部告発」をいっこうに「謀殺の証拠」として具体化しようとしなかった。そのはずだった。「行動する保守」Aは自分が千葉から提訴された裁判で、「内部告発」が「警察官から『そう聞いた』と聞いた」という「伝聞の伝聞」にすぎないものであることを自白したのである。

「行動する保守」Aが「聞いた」というのが事実としても、その「警察官」も誰かから「聞いた」というのだった。これでは仮にこの「警察官」がなんらかの「証言」をしたとしても、それもまた伝聞にすぎず、証拠能力はない。「警察官」が「聞いた」とする相手でさえ、実際に見たという保証もない。つまりこれは、いわゆる与太話のたぐいということになる。これがかつてブログで「100%の確信がある」と大言壮語した話の実態だった。

矢野のコメント内容に酷似

 これでは「内部告発」を証拠化することなどできるはずがない。「行動する保守」Aの認識はともかくとして、「行動する保守」らが何年にもわたって信じ切っていた「内部告発」とはこのような代物だった。矢野はこの「内部告発」が平成8年に自分自身が週刊誌にコメントした「目撃情報」に酷似していることがわかっていた。

 だから、その後この「目撃情報」についていっさい触れていない矢野は、最初から「行動する保守」Aの「内部告発」には近づこうとしなかった。いずれは矢野自身が追及されることになる可能性があることを察知したのではないかと私は推測している。

 矢野にとっても聞かれては困る話であるということにほかならなかった。「行動する保守」Aが突然主張し始めた「内部告発」によって、矢野のデマの1つがクローズアップされたと言い換えることもできようか。「行動する保守」Aの自白によって、改めて矢野のデマがどれほど人心を欺き惑わせてきたかがより鮮明となったのである。そんな矢野の事情を「行動する保守」Aがどこまで認識していたかは定かでない。

 その「行動する保守」Aは、平成15年8月と9月の2回にわたり、あたかも「内部告発」がまんざら嘘でもなかったことが証明される可能性があるかのような街宣を行っている。その話は、その後どうなったのだろうか。

(つづく)
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右翼が再開した「東村山デマ」街宣  その13(最終回)
帰ってきた重鎮

「内部告発」が立証不能の「伝聞の伝聞」すなわちたんなる与太話であることを自白した「行動する保守」Aが東村山に帰ってきて街宣を行ったのは、自白から3年半がたった平成26年8月31日だった。「行動する保守」Aはこの街宣で「内部告発」に触れ、「警察官の証言を引き出せなかったのはわれわれの敗北」と述べた。

「100%の確信をもって」と自分が言い出したにもかかわらず「私の責任」とはいわず、どさくさにまぎれて「われわれの敗北」などといつの間にか「行動する保守」全体に責任を転嫁してしまうとは、どこまで卑劣な男だろうか。この重鎮は、仲間を見殺しにしても自分のプライドだけは守りたいらしかった。

 その「行動する保守」Aが「内部告発」について、卑劣な言い方ではあるが、曲がりなりにも「敗北」という言葉で「他殺の根拠」にできなかったことを認めたことには、実は理由があったようだった。「行動する保守」Aは続けて、香川大学教授のTがブログに次のような趣旨の記事を書いていることを紹介したのである。

「創価学会から依頼されて朝木を脅していた暴力団員が、『朝木を転落させてしまった』と幹部に相談があった。幹部はすぐに逃げろと指示した。その幹部は今も在職していると」

 これが事実と立証されれば、「行動する保守」Aが主張した「3人の犯人と思われる人物の特定もなされていた」という「伝聞の伝聞」の「内部告発」が、まかり間違えば、どうにもならない与太話から「客観的裏付けを持った確かな証言」へと一気に格上げすることになる。

「行動する保守」Aとすれば、溺れる者は藁をも掴むの心境か、なんらの根拠もないものの、なにか心強い味方が現れたとでも思ったのか。あるいはこれによって失地回復も狙えると、またしても淡い期待を抱いたのか。

 少なくとも、「内部告発」は「伝聞の伝聞」だったが、「自分以外、それも香川大学の教授も似たような話を聞いたといっているではないか。何も自分だけが信じた話ではないのだ」とアピールしたかったのだろう。そうすることで、支援者たちに少しは「重鎮が信じたのも無理はない」と思わせようとしたのかもしれない。

 このとき「行動する保守」Aの応援に来ていたのが武蔵村山市議の天目石だった。よくわからないが、2人には何か共鳴し合うものがあるのだろう。

「恥の上塗り」の危機

 東村山で街宣を行ってから1カ月後(平成26年9月28日)、「行動する保守」Aは立川駅前で同じ内容の街宣を行い、今度はより踏み込んで、関与したとする「創価学会幹部」の実名まで挙げた。そこで、私は「行動する保守」Aにこう聞いた。

「当事者の名前が具体的に出たということは、今後は○○さん(「行動する保守」Aが名指しした「創価学会職員の名」)を引っ張り出して証言してもらうということですね」

「行動する保守」Aは私を追い払うしぐさをして、質問にはいっさい答えなかった。

 それを最後に、「行動する保守」Aから、香川大学教授が聞いたとする話(これも「伝聞の伝聞」)に関する情報はぱったり発信されなくなった。香川大学教授も、信憑性を確認した千葉の質問に対していっさい回答しようとはせず、「創価学会幹部から聞いた」とする「伝聞の伝聞」についてなんら「続報」を発信していない。どうしたのだろう。

 教授の話まで与太話だったということになれば、これを街宣で2度も持ち上げた「行動する保守」Aのメンツは丸潰れとなろう。またそうなれば、「行動する保守」Aの「内部告発」は2度目の敗北を喫することになる。「行動する保守」Aがどう思っているかは定かでないが、これはいわゆる恥の上塗りという事態にほかならないのではあるまいか。

開き直った重鎮

「行動する保守」Aに会うのは平成26年9月28日、立川で街宣をして以来である。その後、「行動する保守」Aの「真相究明活動」は進展があったのだろうか。街宣で名指しした創価学会幹部に直接取材をしたのか。そのことを確認するのに、これ以上のチャンスはない。思いもかけず訪れた幸運というべきだろう。

 開廷時刻が近づき、法廷前のロビーに行くと、奥に朝木直子と田中弁護士、その手前、少し距離を置いた席に「行動する保守」Aと武蔵村山市議の天目石がやや離れて座っていた。こんな機会はめったにないので、私は「行動する保守」Aに「ごぶさたしております」と声をかけた。すると「行動する保守」Aも挑戦的な目で「久しぶりだな」と返したので、さっそくこう聞いた。

「例の『内部告発』の話はどうなりましたか」

 すると「行動する保守」Aは、私からすっと視線をはずし、ややふてくされた風情で、ただこう答えた。

「関係ないよ」

 あれほど、「関与した」とする創価学会幹部と称する人物の実名まで挙げておいて、これはどういうことだろう。

「高倉先生に聞けばいいじゃないですか」

 と聞いても、「行動する保守」Aは視線を宙に向けたまま何も答えない。「聞くことは聞いたが、やはり与太話だったということなのかな」などと考えていると、千葉が私の後ろから、やや強い口調で割って入った。

「あんたがそういったから聞いてるんだよ。自分から言い出しておいて、『関係ない』はないだろ」

 口調はきついが、客観的にみてしごくまっとうな言い分である。現場で捜査を指揮した者として、捜査に関わった者全員の仕事を確かな根拠もなく愚弄されたという思いがあったのだろう。「行動する保守」Aは一瞬、千葉の方を振り向いたが、再びそっぽを向くと、開き直るように、ただこう答えた。

「関係ないよ」

「内部告発」について「伝聞の伝聞」であることを自白し、曲がりなりにも「敗北」を認め、2度にわたり香川大学教授の記事を持ち出してあたかも「内部告発」が立証される可能性があるかのように主張したあげくの答えが「関係ない」の一言とは、この状況をどう理解すればいいのだろうか。

 あるいは、これまで「行動する保守」Aを信じてついてきた支援者たちは、「内部告発」について聞かれて「関係ない」と開き直る重鎮の姿をどう感じるだろうか。

「内部告発」に決着

 千葉は「行動する保守」Aに向かってこういった。

「無責任なやつだなあ」

「行動する保守」Aはもう千葉の方を見向きもしなかった。

 そばにいた武蔵村山市議がこのやり取りをどう聞いたかは定かではない。彼にとって、そもそもそんなことはどうでもいいことなのかもしれない。裁判が終わり、気がつくと、もう「行動する保守」Aと武蔵村山市議の姿は法廷にはなかった。

「内部告発」と香川大学教授の「伝聞の伝聞」の話の件は、「関係ない」という「行動する保守」Aの回答によって、いずれもなんら根拠のない与太話だったということで決着がついた――そう理解していいのではないか。私の問いかけに千葉はこう答えた。

「一応、そう考えていいんじゃないでしょうか」

「内部告発があった」などといって仲間を煽動し、無実の市民を怯えさせ、多くの仲間を裏切った「行動する保守」Aは、「関係ない」という言葉によって2度目の敗北を認めたことになる。それだけではない。「行動する保守」Aは「関係ない」という言葉によって再び仲間を裏切ったのである。

(了)
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東村山市議会傍聴記(平成28年3月定例会--その1)
 平成28年2月22日、東村山市議会3月定例会が初日を迎えた。実は3月議会が始まるにあたり、気になっていることが1つあった。平成27年12月定例会の最終日、議事の最後に議長がこんな発言をしたのである。



議長  地方自治法第132条にかかる発言、事実関係がはっきりしない事柄、すなわち確定されていない事柄を私的判断によって発言した者等があった場合には、その発言の取り消しを議長において判断します。このことは当然、これからの議会運営委員会(以下=「議運」)での議論、調査を待つわけでありますが、この条項違反の発言がなければこれを取り消す必要はないわけで、あればこれを取り消していくという処置をとっていきたいと思います。



 地方自治法第132条は、〈普通地方公共団体の議会の会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。〉と定めている。議長がわざわざ地方自治法を持ち出して発言するということは、議運で検討すべき議題があるということである。

普通ではあり得ない発言

 議運関係者によれば、本会議終了後、議長が述べた問題を議題とする議運が開かれた。問題となったのは、「草の根市民クラブ」代表の矢野穂積が行った一般質問における発言だった。矢野は「昭和問題の諸問題」と題する質問の中で次のように質問した。



(平成27年12月議会本会議における矢野の発言)

矢野   昭和病院の職員とりわけ看護師なんですが、3階の病棟の男性看護師2名、それから名前は1人はわかってますが、女性の看護師が何をやったかというと、私が入院して10日ちょっとたったあたりの話ですが、私の、局部を、つかんで、非常に人権侵害的な行為をした。私が激しく抗議をして、ようやくやめたわけですが、局部を、つかんで、……

議長  ちょっと言葉を慎んでいただけますか。

矢野  局部というのが何が悪いんだ。それはそういうことをした看護師がいたからだ、ということをあえていっておきたいと思います。患者に対するこのような人権侵害を看護師がしていいのかということを、あえて明らかにした上で、見解をうかがっておきます。



 答弁に立った健康福祉部長は矢野の具体的な質問内容には触れず、いったん病院側が示している看護師の指針について答弁した。すると矢野はさらに次のように畳みかけた。



矢野   これは具体的な話ですから、「あなた、やったろ」といってもですね、素直に答える人はいないんですよね。で、質問として私が聞くのはこのへんでやめておきますが、所管としては、昭和病院に対して、きれいなパンフレットを作って宣伝をするだけじゃなくて、具体的な患者の人権を、守るように、きちんと指導をすべきであると思いますが、どうでしょうか。



 議長は健康福祉部長に対して「どうですか。答弁のしようがないでしょ」と一応、答弁をうながした。すると健康福祉部長は立ち上がり、「(人権侵害の)事実が確認できない中で、ご答弁いたしかねます」と答えた。賢明な答弁である。

訴えられる可能性

 一般質問にあたっては、議員は事前に質問内容を通告することになっている。12月の一般質問に際して、矢野の通告書をみると、〈3 昭和病院運営の諸問題〉とする項目があるが、そこには〈①職員(看護師)の資質について②患者に対する人権意識のありかた③職員研修はどのようになっているか。以上について総括的にうかがう〉と記載されているのみである。したがって、いきなり一方的に「局部をつかんで」などといわれても所管が答弁できるはずがない。矢野としてもなんらかの事情があって、通告書には詳細を記載しなかったものと推測される。

 いずれにしても、市議会の本会議場で、議員の口から「局部をつかんで」などという発言はめったに聞かれるものではあるまい。通常は、事実が存在したとしても「人権侵害があった」ぐらいで止めるだろうし、それが事実なら、「人権侵害とは具体的に何か」と聞かれて初めて具体的な主張をすればよかろう。「局部」などという具体的な主張をするのは本会議場である必要もない。

 昭和病院は東村山市を含む近隣8市で構成する組合が運営する公立病院だから、市議会の一般質問で同病院の問題を取り上げること自体は問題がない。しかし、取り上げるにしても、取り上げ方というものがあろう。

 また矢野は上記の行為を「人権侵害的な行為をされた」と主張しているが、これはその時点ではまだ一方的な言い分に過ぎず、客観的にそのような事実があったことが確認されているわけではない。矢野は「局部をつかんで」と具体的行為を特定し、さらに「3階の病棟の男性看護師2名、それから名前は1人はわかってますが、女性の看護師」と、調べれば簡単に当該の看護師が特定できる発言をしている。したがって、その事実が存在しなかった場合には、逆に矢野が本会議場で行った発言こそが当該看護師に対する人権侵害となろう。

 その発言は傍聴人のみならず、庁内放送(1回ロビーで視聴できる)やインターネットを通じて不特定多数の市民(市民だけとは限らない)が視聴できる状態にあった。仮に矢野の発言をめぐり昭和病院が提訴すれば、東村山市は相当の対応を迫られるのは避けられない。また当然、矢野の発言が黙認されることになれば、このまま議事録に残ることになる。東村山市議会としてはそれだけでも末代までの恥というほかなく、議会として看過できないと判断されたのは当然だったのではあるまいか。

(つづく)
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東村山市議会傍聴記(平成28年3月定例会--その2)
議運も「不適切」と判断

 平成27年12月21日、本会議の終了後、議会運営委員会(以下=「議運」)が開かれた。その席で議論されたのは、「草の根市民クラブ」の矢野穂積が12月議会の一般質問で行った発言の一部が不適切ではないかということだった。「(昭和病院の看護師が)局部をつかんで、非常に人権侵害的な行為をした」とする趣旨の発言部分である。

 議運は自民3、公明3、共産1、民主1、「ともに生きよう!ネットワーク」1、「草の根市民クラブ」1(=朝木直子)、市民自治の会1の計11人で構成されている。議運関係者によれば、議運では全会一致かどうかは定かでないが、矢野に対して問題部分の削除を求める方針になったという。

 本会議で議長が述べた「地方自治法第132条にかかる発言」すなわち「無礼の言葉を使用」した場合に該当すると判断されたということと理解できる。なおここでいう「削除」とは、具体的にはのちに作製される議事録から削除するという意味である。

病院側もすでに把握

 その前に事実関係はどうだったのかという問題があろう。おそらく健康福祉部は矢野の質問のあと、矢野が訴えたような事実が本当にあったのかどうかを昭和病院に確認したものと思われた。病院側も当然、すぐに矢野を担当した看護師から事情を聴いたのではあるまいか。

 なぜなら、この議運が開かれたあと、矢野が「昭和病院で人権侵害行為を受けた」と議会で発言した事実を知っているかどうかを病院側に確認すると、担当者はその事実は知っていると答えた。矢野の発言の事実を知った以上、病院の担当者が現場に事情を聴くのは当然だろう。

「人権侵害的行為があった」というのが事実なら、矢野から損害賠償を求められる可能性もないとはいえない事案である。病院側としても事実関係を確認する必要があると考えるのはきわめて自然な判断だろうと思われた。

支離滅裂な事態に

 平成27年12月21日に議運で矢野の問題発言の削除を求める方針が確認されてから2カ月、その扱いはどうなったのか。3月議会が始まる前に東村山市議会HPをみると、平成27年12月定例会の議事録はすでに公表されていた。すると、平成27年12月2日に矢野が行った一般質問のうち、次の箇所が消えてなくなっていた。



(矢野の一般質問のうち、議事録から消えていた箇所)

「昭和病院の職員とりわけ看護師なんですが、3階の病棟の男性看護師2名、それから名前は1人はわかってますが、女性の看護師が何をやったかというと、私が入院して10日ちょっとたったあたりの話ですが、私の、局部を、つかんで、非常に人権侵害的な行為をした。私が激しく抗議をして、ようやくやめたわけですが、局部を、つかんで、……」

「局部というのが何が悪いんだ。それはそういうことをした看護師がいたからだ、ということをあえていっておきたいと思います。患者に対するこのような人権侵害を看護師がしていいのかということを、あえて明らかにした上で、見解をうかがっておきます。」



 しかし、上記の矢野の質問に対して健康福祉部長が昭和病院の基本姿勢を述べることでかわした直後の、矢野の次の質問箇所は削除されていない。

〈これは具体的な話ですから、「あなた、やったろ」といってもですね、素直に答える人はいないんですよね。で、質問として私が聞くのはこのへんでやめておきますが、所管としては、昭和病院に対して、きれいなパンフレットを作って宣伝をするだけじゃなくて、具体的な患者の人権を、守るように、きちんと指導をすべきであると思いますが、どうでしょうか。〉

 さらに、

〈普通はですね、そんなことはないんじゃないかと思いますけどね、私もね、びっくりしましたよ。それで相当強い抗議をして、やめてもらいましたけど、一般の人だったら、こんなことですむのかなと思ったりするぐらい激しいやり方で、やられました。

 で、こういうことを一応お伝えしたわけですから、機会をみてですね、昭和病院に対してはきちんとね、調査をして、こういうことはやんないようにということを、きちんと指導をするようにしてもらいたいと思います。〉

 との最後の質問部分も残っている。しかし、この議事録を読んだかぎりでは、矢野は「昭和病院に患者の人権を守るようにきちんと指導すべきである」といっているようではあるが、何に対して「相当強い抗議をした」のか、「こんなことですむのかなと思ったりするぐらい激しいやり方で、やられました」、「こういうことはやんないように」とはなんのことをいっているのか、さっぱりわからない支離滅裂な事態である。

 残した部分もいっそのこと削除してしまった方が、よほどすっきりした議事録になったのではないかという気もするが、議運としては、肝心な部分が削除されて意味が通じなくなったから、それでよしという判断だったのだろう。「一部を削除したからこうなった」という事実を残す意図なら意味がないとはいえないかもしれない。いずれにしても、かなり恥ずかしい議事録である。

回答しなかった矢野

 議運関係者によれば、平成27年12月21日の議論を経て、平成28年1月中旬に開いた会議で、矢野から問題箇所の削除に応じる旨の回答を得たことが報告され、了承されたとのことである。なお、議運の委員に名を連ねている「草の根市民クラブ」の朝木直子がどんな態度だったのかは定かでない。

 朝木直子の母親で、万引きを苦に自殺した故朝木明代は、東村山市議だった当時、不適切な発言をして議事録から削除されることが多々あった。削除をめぐり提訴したこともある。では今回、矢野の発言を削除したことで矢野から提訴される可能性はないのだろうか。

 矢野は本当に削除に応じたのだろうか。東村山市議会3月定例会の初日、午前の会議を終えて矢野が控室から出てきたところに出会ったので、直接確認してみた。

――議事録の削除に応じたんですね。

 削除に応じたのでなければ、当然「そんな事実はない」と否定するだろう。ところが矢野からはいっさい否定の言葉は返ってこなかった。午後の再開前にも遭ったので、再び同じ質問をしたが、やはり矢野から否定する言葉はなかった。与えられた時間の中で行った質問の一部の削除に応じたということは、矢野は市民の税金で運営されている東村山市議会本会議の貴重な時間を浪費したということになろうか。

 議員の本会議での発言を議事録から削除するという作業は、簡単なことではない。発言の削除をめぐって議運も会議を開かざるを得なくなり、議事録の再構成にあたって本来は必要のないエネルギーが費やされ、行政もまた無駄な労力を強いられた。

 ところが、東村山市議会としては、本来なら議事録に収載されるはずの本会議での発言が削除されたことについて、議場等の公の場で市民に説明することはないらしい。リアルタイムで放送された本会議場での市議会議員の発言が、市民の知らない間に議事録から削除、すなわち事実上、最初からなかったことになってしまうというのはいかがなものだろうか。

 削除までに何があったのか、とりわけ今回のような悪質な発言の場合には、より市民に対してきちんと経過説明をしておく必要があろう。議運が矢野の発言を削除させたことは評価できる。しかしそれだけではまだ、ツメが甘いのではあるまいか。

(了)
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