ブログマガジン エアフォース
ブログで興味深い記事を公開していきます。
著書紹介

民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

最近の記事

カテゴリ

プロフィール

プールマン

Author:プールマン

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク

QRコード

QR

FC2カウンター

元市議名誉毀損事件 第25回
第1回口頭弁論期日が決定

 元東村山市議の山川昌子が東村山市議の矢野穂積と朝木直子(いずれも現職=「草の根市民クラブ」)が発行する政治宣伝ビラ『東村山市民新聞』の記事によって名誉を毀損されたとして矢野と朝木を提訴していた裁判の控訴審第1回口頭弁論が、平成28年10月17日午前10時30分から東京高裁で開かれることになった(511号法廷)。矢野らは、彼らに15万円の支払いを命じた一審判決を不服として控訴していた。

 山川が「名誉を毀損された」として提訴したのは4面からなる『東村山市民新聞』の1面に掲載された〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉〈創価、元市議らが仲介して〉〈言葉巧みに、一般市民から、借りて1860万円も返さず〉とする見出しの記事(以下=「記事1」)と、2面の〈勝手は許さない〉〈新興宗教の衣を脱ぎ捨てた集団〉〈本山破門「ご本尊」放棄の政治集団化の先は、「詐欺集団?」〉とする見出しの記事(以下=「記事2」)の2本の記事である。

原審における原告の主張

 記事1では、本文の冒頭で〈山川昌子・元公明市議の紹介で……〉と記載して、〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉とする見出しの「元公明市議」が山川のことであることを明らかにし、その上で〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉とする見出しの具体的内容を〈山川元公明市議は口では被害者女性の味方になってお金を取り戻すそぶりをしていたが、結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかった。〉と説明している。「お金を巻き上げる連中の口きき」であるとは、まさに「詐欺に関与した」ということなのではなかろうか。

 記事2では、本文の冒頭部分に〈公明党元市議らが仲介した創価学会信者らが、高額のお金を借り、そのまま返さないという、詐欺まがいの行為を繰り返している……〉との文言から、見出しの〈新興宗教〉〈「詐欺集団」〉との文言が「創価学会」を意味するものであることがわかる。公明党市議が創価学会員であることは周知の事実だから、冒頭の〈元公明党市議〉は「(創価学会という)詐欺集団」の一員であるということと理解できる。

 さらに本文には、「1860万円の被害がそのまま返済されていない」とする趣旨の記載に続いて次のような記載がある。

〈元議員の立場で、貸金の仲介者のような役割を果たしながら、山川元市議は「知らん顔」、あきれた人たちです。〉

 普通の感覚でこの記事を読むと、山川元市議は「1860万円を借りて返さないという詐欺事件に仲介の役割を果たしたにもかかわらず、知らん顔をしている」という趣旨であると理解できよう。しかし、見出しには〈「詐欺集団」〉という文言があるから、やはり「山川元市議はこの詐欺事件に仲介役として関与した。だから知らん顔をしているのだ」という記事であると読み取ることができるのではあるまいか。

 原告の山川は上記記事1、2についていずれも「原告(山川)が詐欺事件に関与した」との虚偽の事実を摘示するものであると主張していた。

一審の判断 

 原告の主張に対して被告の矢野と朝木は、「詐欺グループの一員であるMを被害者に紹介したのは山川だ」、「被害者が一人暮らしになったことを原告が詐欺グループの1人に話したことが詐欺事件のきっかけとなった。したがって、山川が詐欺事件に関与したことは間違いない」などと主張し、記事には真実性・相当性があると主張した。

 双方の主張に対して東京地裁は、まず記事1、2について次のように述べた。



(東京地裁の記事の読み方)

 本件記事は、一般読者が普通の注意を払って読んだ場合、塩田(筆者注=詐欺事件の首謀者)が被害者女性から約2140万円を借り、うち1860万円を返しておらず、この行為が詐欺まがいの行為であり、市議会議員である原告がMを被害者女性に紹介し、Mが妹の塩田を被害者女性に仲介したことにつき、原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、上記行為について、仲介のような役割を果たしており、上記貸金が返済されないことについて、知らん顔をしているあきれた人だと述べていると読むことができる。



 東京地裁はその上で、〈本件記事は原告の社会的評価を低下させるものというべきである。〉と述べた。東京地裁は、記事は山川の名誉を毀損するものであると判断したのである。

 ただ、記事が他人の名誉を毀損するものであったとしても、記事に公益性あるいは公共性が認められ、真実性・相当性があると認められれば不法行為は成立しない。この点について東京地裁はこう述べた。



(公益性・公共性)

 本件記事は、本件新聞発行時において市議会議員であった原告が詐欺行為に関係したか否かについてのものであるから、一応公共の利害に関する事実に係るものであり、そうであれば本件記事の掲載は一応公益を図る目的でなされたものと推認できる……。



 東京地裁は真実性・相当性判断の前に以下の各事実について事実認定した。

①原告が平成10年頃、Mと知り合ったこと

②被害者が友人の紹介でMと知り合ったこと

③Mが塩田を被害者に引き合わせたこと

④塩田が平成21年頃以降、被害者から合計2140万円を借りたこと

⑤被害者が平成22年1月頃山川に相談し、山川は弁護士を紹介するなど被害者の貸金の回収に協力したこと

⑥被害者が平成22年、塩田らに対して貸金返還訴訟を提起したこと

⑦東京地裁が塩田に2140万円の返済義務があることを認め、和解が成立したこと

⑧しかし、塩田はそのうち1860万円を返済していないこと

 ――続けて、東京地裁は記事の真実性・相当性について次のように認定した。



(真実性・相当性)

 原告がM(筆者注=判決は実名)を被害者(同)に紹介したことについては、これを認めるに足りる証拠がなく、被告らが原告が松田を被害者(同)に紹介したと信じたことに相当の理由があることを認めるに足りる証拠もない。



 その上で、東京地裁は本件記事の名誉毀損性について次のように結論付けた。

〈本件記事のうち、原告がMを被害者に紹介したとの事実を摘示して、原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、上記行為について仲介のような役割を果たしており、上記貸金が返済されないことについて、知らん顔をしているあきれた人だと述べる部分については、事実を摘示して原告の名誉を毀損する内容である〉

 矢野と朝木はこのような一審判決を不服として控訴したのである。控訴するには相当の理由と根拠がなければならないが、彼らは控訴審でどんな主張・立証をするのだろうか。

(つづく)
TOP
元市議名誉毀損事件 第26回
山川が附帯控訴

 東村山市議の矢野穂積と朝木直子(いずれも「草の根市民クラブ」)が発行した彼らの政治宣伝ビラ『東村山市民新聞』第186号(平成27年7月31日付)に掲載された記事によって名誉を毀損されたとして元東村山市議の山川昌子が彼らを提訴していた裁判の控訴審第1回口頭弁論が、平成28年10月17日、東京高裁で開かれた。

 一審の東京地裁立川支部は矢野と朝木に対して15万円の支払いを命じた。この判決を不服として矢野らが控訴していた。第1回口頭弁論期日までに、控訴人である矢野、朝木側が控訴状と控訴理由書を提出。原告の山川からは控訴状・控訴理由書に対する答弁書及び、一審判決の認定内容と損害賠償認容額が不十分であるとして附帯控訴状が提出され、さらに矢野側からこれに対する答弁書が提出されていた。

 控訴理由書によれば、一審で矢野らはかつて共闘関係にあった「行動する保守」Aや西村修平など「行動する保守」一派の代理人を務めた田中平八弁護士に弁護を依頼していたが、控訴審では田中弁護士ではなく、矢野が理事長を務めるりんごっこ保育園の顧問でもある福間智人弁護士を代理人として選任していた。この日、矢野側は矢野、朝木の当事者2名と福間弁護士が出廷。弁護士が裁判官寄りに座るのは当然として、その隣に朝木、傍聴席側に矢野が座った。この席次が、なにかこの裁判に対する関与度を物語っているようにも感じられた。

 被控訴人である山川は、控訴審も本人訴訟で臨むという。なおこの日、一審では一度だけ傍聴に現れた「行動する保守」Aの姿をみかけることはなかった。

注目された2つの判断

 第1回口頭弁論では注目点が2点あった。1つは、矢野らの控訴だけでなく、山川から提出された附帯控訴を東京高裁がどう扱うのかという点だった。山川の附帯控訴の内容を端的にいえば、一審の判断は「記事の読み方」についての認定が不十分だから、見直してほしいというものだった。

 もう1点は、矢野らの控訴に対する反論の中で、山川が申し立てていた被害者に対する証人調べについて裁判官が必要性を認めるのかどうか。矢野らは控訴に際して被害者の新たな陳述書を提出していた。その供述内容は、裁判の本筋においてはともかくとして、少なくとも矢野らの主張において重要な部分で山川の主張とは食い違いがあった。だから山川は、直接の尋問を請求したのだった。はたして裁判官は、山川の申し立てを採用するのかどうか。

山川が市議会手帳を提出

 午前10時30分、3名の裁判官が入廷し、控訴審第1回口頭弁論が始まった。まず裁判長は控訴人(矢野と朝木)に対して控訴状、控訴理由書、附帯控訴に対する答弁書の陳述を、被控訴人(山川)に対して控訴に対する答弁書と附帯控訴状の陳述を確認し、双方とも同意した。さらに裁判長は一審における口頭弁論の内容について確認を行った。一審で提出した主張の内容について間違いがないかどうかの確認と思われた。これに対しても双方同意した。すなわち、この日までに提出したすべての主張について、双方が陳述したことを確認したということである。

 次に裁判官は控訴審に際して双方から提出されている書証の確認を求めた。控訴人が提出した書証は本件詐欺事件の被害者による新たな陳述書と、それが被害者本人によるものであることを証明すると称して提出された被害者本人の印鑑証明書、さらには朝木直子の2度目の陳述書である。控訴人の書証については原本はワープロ書きの原稿と東村山市が発行した印鑑証明書の原本だから、原本確認に時間はかからなかった。

 やや手間取ったのは被控訴人が提出した書証だった。実は、矢野らは「被害者は詐欺グループの一員である松田を山川から紹介された」と主張し、被害者の新たな陳述書の中でその具体的な日付を提示していた。それに対して被控訴人の山川は、かつての議会手帳を探したところ、予定表の中に被害者が「山川から松田を紹介された」とする日時および主張内容を否定する記録を発見したため、そのコピーを事前に提出していた。この日の法廷では、手帳の原本を提出し、事前に提出されていたコピーが原本と相違がないかどうかの確認を行ったのである。

 手帳の予定表の欄はひと月分が見開きになっていて、1日の予定はその中の1行分しかない。提出された手帳は平成11年と12年、14年のものとかなり古く、文字もかなり薄れている上に、当時市議会議員だった山川の手帳には1日分のスペースに何件もの予定が細かな字でびっしりと書き込まれていた。

 その原本の記載内容が、山川が提出した証拠説明書に記載された内容と同じものであるかどうか、東京高裁は2名の裁判官が確認を行った。もちろん、その確認の中には最近書き込まれたものでないかどうか、明らかな偽造や捏造がないかどうかの確認も含まれていたのではないかと思う。明らかな偽造や捏造が発見された場合には心証がよくなるはずがない。

「記載日に疑問」と主張

 確認を終えた裁判長は、手帳の原本を今度は控訴人側代理人に渡し、確認を求めた。弁護士が確認したものを朝木に手渡し、さらに朝木が入念にチェックしていたが、傍聴席から見ていると、朝木は証拠として提出されたコピーの該当部分以外のページもめくっているように見えた。そのうち朝木は弁護士に小声でこう話しかけた。

「あとから書いてるんじゃないの? 鉛筆で書いてあるところとボールペンで書いてあるところ、おかしいですよ、誰が見たって」

 朝木はどうやら、山川が主張の辻褄を合わせるために、「最近になって書き込んだのではないか」といっているようだった。ひととおり3冊の手帳を確認し終えた弁護士は立ち上がり、裁判長に発言の許可を求めた。以下はその後のやりとりである(趣旨)。

矢野側代理人  原本を見ましたが、記載日については争います。記載された時期について争うということです。

裁判長  どういうことですか、説明してください。

代理人  甲9号はボールペンで書いてあります。

裁判長  見せてください。『レナウン』というところはボールペンのような気がする。

代理人  ですから、記載日については争います。

 矢野側代理人は「手帳に書き込まれたメモがいつ書き込まれたか」については疑問があるといっているらしい。「手帳の記載には信用性に疑問がある」とする主張といってもよかろう。予定表だから、その日の前なら、書き加えることもあろうし、鉛筆がボールペンになることもあるから、それだけで信用できないとは断定できないのではあるまいか。その「予定」と称する記載がいつ書き込まれたのか、「予定日」後あるいは直近に記載されたのではないか――という疑問も、明らかに筆跡が新しいとか、明らかに筆跡が異なるなどの場合はともかく、たんに「記載日については争う」と主張したところでやや説得力に欠けよう。

 裁判長は代理人の申し立てに応じ、控訴人側が手帳の記載の「信用性については争う」とする意思表示をしたことを調書に残すことにし、双方から提出された証拠の確認を終えた。

 次に裁判長が言及したのが、山川が申し立てていた被害者に対する証人尋問についてだった。これについて裁判長は、矢野側代理人に意見を聞くこともなく、山川に向かって「裁判所では必要がないものと判断して却下します」と申請を退けた。

 矢野らは「松田を被害者に紹介したのは山川である」と主張するために被害者の新たな陳述書を提出した。これに対して山川は、手帳を提出することによってその主張が事実に反するとする主張・立証を行った。

 しかし、そもそも本件記事は「山川は詐欺事件に関与した」とするもので、「誰が松田を被害者に紹介したか」は本筋ではない。したがって、被害者の証人尋問を申請はしたものの、却下されることも十分にあり得ると山川は考えていた。

 さて、裁判長は山川にそう告げると、こう述べた。

「判決は平成28年12月7日、午後1時15分からこの法廷で行います。これで閉廷します」

 東京高裁は、一審からこの日までで双方の主張は十分に尽くされたと判断したようだった。

 控訴審第1回口頭弁論で注目された2つの論点のうち、山川が申し立てた被害者に対する証人申請は却下された。もう1点の山川の附帯控訴に対する判断は判決で示されるということだった。
 
(つづく)
TOP
元市議名誉毀損事件 第27回
判決理由を覆すことに全力

 では、双方は第1回口頭弁論までに提出した書面で具体的にどんな主張をしていたのだろうか。

 控訴人の矢野らは、控訴理由書で原判決の判決理由を示し、それを覆すための具体的な主張を行っていた。原判決は山川が問題とした記事について、次のように読めると認定した。

〈本件記事は、一般読者が普通の注意を払って読んだ場合、塩田が被害者女性から約2140万円を借り、うち1860万円を返しておらず、この行為が詐欺まがいの行為であり、市議会議員である原告が松田を被害者女性に紹介し、松田が妹の塩田を被害者女性に仲介したことにつき、原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、上記行為について、仲介のような役割を果たしており、上記貸金が返済されないことについて、知らん顔をしているあきれた人だ。〉

 東京地裁は上記記載が山川の社会的評価を低下させるものと認定した上で、〈原告(筆者注=山川)が松田を○○(筆者注=被害者)に紹介したことについては、これを認めるに足りる証拠がなく、被告らが原告が松田を○○(同)に紹介したと信じたことに相当の理由があることを認めるに足りる証拠もない。〉と述べ、次のように結論付けている。

〈本件記事のうち、原告が松田を○○(同)に紹介したとの事実を摘示して、原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、上記行為について、仲介のような役割を果たしており、上記貸金が返済されないことについて、知らん顔をしているあきれた人だと述べる部分については、事実を摘示して原告の名誉を毀損する内容であるから、かかる記事が記載された本件新聞の発行は原告の名誉を毀損する行為であるというべきである。〉

 東京地裁は「原告が松田を被害者に紹介したとする証拠がなく、そう信じたことに相当の理由もない」という理由で、本件記事の上記部分は名誉毀損の不法行為が成立すると認定した。したがって、原審の判決理由によれば、「原告が松田を被害者に紹介したとする証拠」あるいは「そう信じたことについて相当の理由があったこと」を証明できれば、不法行為は成立せず、矢野らに15万円の支払いを命じた一審判決は覆ることになるのである。

一審での主張に固執

 なお矢野らは、東京地裁が認定した上記本件記事の読み方のうち、「原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり」とする部分については、〈本件記事の記載は「結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかった」というものであって、原判決が「原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり」とした点は誤りであり、「原告が、結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかったのであり」とするのが正しい。〉と主張していた。「口ききでしかなかった」とする表現を「『ただの口きき』という意味で、『口きき』よりも弱い表現だ」という主張と思われた。

 しかし、日本語の意味としては「口ききであり」も「結局は口ききでしかなかった」も、表現の仕方が異なるだけで「口きき」いっていることに変わりはない。むしろ「結局は……でしかない」という表現は、矢野らの主張とは逆に、たんに「口きき」というよりも読者に対してより「口きき」であることを印象付けているのではあるまいか。

 いずれにしても、その上で矢野らは、一審の判決理由を覆すため、「松田を被害者に紹介したのは山川だ」とする事実の主張・立証に全力を傾注していた。

 本件は、山川が矢野らによって「山川が詐欺事件に関与した」とする記事を掲載されたことによって名誉を毀損されたと主張して損害賠償を請求しているものである。したがって、山川が主張するように、仮に本件記事が「山川が詐欺事件に関与した」とするものと認定されれば、仮に山川が松田を被害者に紹介していたとしても、そのことと詐欺事件の間に直接的な因果関係があることが立証されなければ、「山川が松田を被害者に紹介したかどうか」について検討することには意味がないことになる。

 しかし一審判決は、本件記事について「原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、上記行為について、仲介のような役割を果たしており、上記貸金が返済されないことについて、知らん顔をしているあきれた人だ」という記事であると認定した。そのために、矢野らの控訴においては「山川が松田を被害者に紹介したかどうか」が最大の争点となったのである。

 山川の本来の主張とはかなりのズレがあった。しかしそれがいかに不本意なものであっても、裁判所が判決で作った流れである以上、無視することはできなかった。

「『友人』とは山川だ」と主張
 
 矢野らは控訴理由書において、「被害者を詐欺グループの一員である松田を被害者に紹介したのは山川である」とする事実を主張・立証するにあたり、具体的にどんな主張をしていたのか。

 一審判決は、被害者が「友人の紹介で松田と知り合った」ことについては認めている。被害者自身、矢野側が一審で提出した「告訴状」(被害者が塩田らを告訴しようとして警視庁に提出したもの=平成24年作成)では〈平成18年から19年ころ、告訴人(筆者注=被害者)は友人の紹介で被告訴人松田と知り合った〉と述べ、原告が一審で提出した被害自身の陳述書(平成23年、被害者が塩田らに対して貸金の返還を求めて提訴した際に作成したもの)では〈今(筆者注=平成23年)から数年前に、私の友人の紹介で松田美枝さんと知り合いました〉と供述している。被害者が供述する「松田を紹介された時期」については、その範囲においてはほぼ矛盾がない。

 被害者は2つの書面で「友人の紹介で松田と知り合った」と供述しているが、「山川の紹介で知り合った」とは供述していない。しかし朝木の陳述書によれば、朝木は被害者から「『服飾関係の仕事をしていた関係から山川と知り合い、山川が松田を連れて自宅にやってきた』と聞いた」と供述している。

 つまり、朝木の陳述書の段階において、平成23年時点で被害者が陳述した「友人の紹介で松田と知り合った」の「友人」とは山川であるとかなりの確率で推測できると考えても、あながち不合理とはいえないように思える。被害者が朝木に対して本当にそう話し、またその内容が事実とすれば、すなわちこの「友人」が山川を指しているということが立証されれば、状況はがぜん矢野有利に転じる可能性がないとはいえなかった。

(つづく)
TOP
元市議名誉毀損事件 第28回
「知り合った」時期

「『詐欺グループの一員』である松田を被害者に紹介したのは山川だった」とする矢野らの主張に信憑性があるのかどうか――。

 山川は一審で、〈平成15年頃、原告は松田から、当時衣料品を販売していた○○(筆者注=被害者)を紹介され〉(平成28年1月8日付陳述書)と供述し、また〈原告が東村山市議となってから数年後〉に「松田から被害者を紹介された」と供述していた(平成28年4月4日付陳述書)。山川は本件記事が「山川が詐欺事件に関与した」とするものと主張しており、被害者が塩田に多額の金を貸した平成21年よりもはるか以前に「松田から被害者を紹介されたこと」が重要な争点になるとは認識していなかった。このため「松田を被害者に紹介したのは自分ではない」という記憶については鮮明に残っていたが、その時期については資料にあたるなど裏付けを取ってはいなかったようだった。

 そこで改めて一審時点での山川と被害者の陳述書の記載を照らすと、双方の主張には明らかな食い違いがあることがわかる。被害者は「松田を友人から紹介されたのは平成18、9年ごろ」と供述しているから、それが事実とすれば、それまで松田を知らなかったことになる。

 ところが一方、山川は「平成15年ごろ、松田から被害者を紹介された」「東村山市議となって数年後に紹介された」と供述している。山川が東村山市議になったのは平成7年、朝木直子の母親である朝木明代が万引きで書類送検され、自殺を遂げた年の5月である。矢野らは控訴理由書で双方の食い違いに着目し、次のように主張している。

〈(被害者による上記供述がなされたのは)未だ被控訴人(筆者注=山川)が○○(筆者注=被害者の実名。以下、同)に協力的な態度を示していた当時に作成されたものであり、○○が意図的に事実と異なることを述べる理由は何らない。そして、これらの書面が作成された時期も「平成18年から平成19年頃」から然程遠くない時期であり記憶が薄れる程の年数経過はないのであるから、単純に事実そのままが記載されていることに疑いはない。〉

 矢野らはこう述べて「松田と知り合ったのは平成18年から平成19年頃」であるとする被害者の記憶には信用性があると主張している。被害者の供述を裏付ける確かな証拠はなく、矢野らの主張はすべて推測にすぎない。しかしかといって、強引なこじつけともいえない。

 さらに矢野らは、山川の「東村山市議となって数年後に紹介された」とする供述について、〈被控訴人が市会議員となったのが平成7年であることからすればその数年後は平成10年頃となり、……被控訴人自身が述べていること(筆者注=山川の別の陳述書に記載された「平成15年頃に紹介された」とする供述)の間に矛盾がある〉と指摘。その上で〈松田が被控訴人に対して○○を紹介するには、それ以前に○○と松田が知り合っていなければならない〉と、山川の説明内容が成立する条件を示し、「上述のとおり○○が松田と知り合ったのは平成18年から平成19年頃であることは優に認められる」から、「それ以前に松田から被害者を紹介された」とする被控訴人の主張は信用できないと結論付けた。

 被害者が松田と知り合ったとする時期については、なんら裏付けとなる資料はない。しかし、被害者が松田と知り合ったとする時期に関する供述には、一応、一貫性がある。一方、山川の供述には変遷があった。矢野らは被害者の供述には信用性があるとし、こう主張した。

〈被控訴人(筆者注=山川)が原審において「松田から○○を紹介された」と強弁する態度こそが、○○が被控訴人の紹介で松田と知り合ったことの証左である。〉

 それまで一応論理的に被害者供述の信用性を主張してきた矢野が、ここに至ってなぜいきなり強引な決め付けに出たのかはわからない。しかしその上で矢野らは、〈「市議会議員である被控訴人が松田を被害者女性に紹介し」との事実は真実であり、少なくとも真実と信ずるについて相当の理由がある。〉と主張していた。 

矢野の主張を追認した被害者

 矢野らは控訴理由書の提出に合わせて新たに被害者の署名捺印がなされた陳述書(平成28年9月7日付)を提出していた。その中で被害者は、上記の点について次のように供述していた。

〈平成18年から19年ころのことだったと思いますが、自宅に洋服のお客さんなど知人数人が来ている時に、山川さんが「この人はマッサージをやっているのでよろしくね。1時間でも2時間でも安くやってくれるわよ。」と言って、松田美枝さんを連れてきました。〉

 平成23年作成の陳述書と平成24年作成の告訴状では「友人から松田を紹介された」と供述していた被害者は、最新の陳述書では「平成18年から19年ころ、山川から松田を紹介された」と述べた上に、山川が被害者に話したという具体的な会話まで再現していた。

 なぜ告訴状の当時は松田を紹介したのが「友人」で、矢野らが提訴されたあと「山川」に変わったのか。その点に関する説明は一言もなかった。

 しかし少なくとも、矢野らの控訴理由書が提出された時点で、〈原告(筆者注=山川)が松田を○○に紹介したことについては、これを認めるに足りる証拠がなく、被告ら(筆者注=矢野と朝木)が原告が松田を○○に紹介したと信じたことに相当の理由があることを認めるに足りる証拠もない〉という一審の判決理由が大きく揺らいだことだけは確かなようだった。

(つづく)
TOP
元市議名誉毀損事件 第29回
 一審判決は本件記事について、一般読者は〈塩田が被害者女性から約2140万円を借り、うち1860万円を返しておらず、この行為が詐欺まがいの行為であり、市議会議員である原告が松田を被害者女性に紹介し、松田が妹の塩田を被害者女性に仲介したことにつき、原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、上記行為について、仲介のような役割を果たしており、上記貸金が返済されないことについて、知らん顔をしているあきれた人だと述べている〉と読むものと認定した。

 すると、上記認定内容について真実性あるいは相当性が認められれば不法行為は成立しないことになる。そこで矢野らはまず、一審が否定した「山川が(詐欺グループの一員である)松田を被害者に紹介した」とする部分について真実性・相当性があるとする主張を行った(前回)。

「口きき」の相当性

 矢野らが続いて論点としたのが、一般読者の読み方に関する上記認定のうち「原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、上記行為について、仲介のような役割を果たし」とする部分に関してだった。なお、矢野らは控訴理由書で、一審の上記認定のうち「仲介のような役割を果たし」については受け入れたが、「原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり」については「誤り」で〈「(山川は、)結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかったのであり」とするのが正しい〉とした上で、それぞれの相当性について主張していた。

 矢野らは一審でも、山川が松田に対して「○○さん(筆者注=被害者)が一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことが詐欺事件のきっかけとなったとし、詐欺グループへの「口きき(でしかなかった)」、「仲介のような役割を果たした」との記載は客観的真実と一致すると主張していた。矢野らは控訴理由書でも、「山川が松田を被害者に紹介し、知り合うきっかけを作ったことは「『仲介のような役割を果たした』ものと評し得る」と主張した上、「山川が仲介のような役割を果たした」ことについては、山川が松田に対して「○○さん(筆者注=被害者)が一人暮らしになっちゃったのよね」と話したことが「より重要である」と主張していた。

 矢野らが上記主張を初めて行ったのは、本件裁判の提訴(平成27年10月9日)から3カ月後、第2回口頭弁論においてだった。第1回口頭弁論(平成27年11月30日)の際には「事実は記事に記載したとおりである」と主張するのみだった。ところが、それから2カ月後の第2回口頭弁論で上記の主張を始めたのだった。

 山川が松田に対して「○○さん(同)が一人暮らしになっちゃったのよね」と話した事実については、被害者が塩田らに対する告訴状を提出した際に山川が被害者に協力して提出した陳述書で供述していた。被害者はその陳述書を保管していた。矢野らは被害者からその陳述書のコピーをもらい受け、乙第5号証として平成28年2月4日付(第3回口頭弁論)で提出したのである。

相当性を強調

 それほど「重要」と考える事実なら、第1回口頭弁論で主張してしかるべきである。矢野らはなぜ、そのような「重要」な事実を示さなかったのか。実は、その根拠である山川の陳述書を朝木が入手したのは第1回口頭弁論以降だったのではないか――第三者からはそうみられても不自然ではない。

 また本件記事が、「原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、上記行為について、仲介のような役割を果たした」と読み取れるとされ、矢野らに真実性の証明ができず、相当の理由(根拠)があったかどうかが問われる局面になった場合、たんに「被害者から話を聞いた」というだけでは伝聞にすぎず、相当性の根拠としてはきわめて弱い。すなわち、「被害者から話を聞いたというだけでは、相当性も認められる可能性が低いのである。

 だから、資料を入手したのが提訴されたあとではないことを主張しておく必要があると考えたのか、矢野らは次のように主張して、記事には相当の理由があったことを強調していた。

〈(「原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、上記行為について、仲介のような役割を果たした」とする記載が)仮に真実であるとまでは認められないとしても、控訴人ら(矢野ら)が本件記事を掲載した本件新聞を発行した時点において、○○(筆者注=被害者の実名)を取材することにより同人から聴取済みであった内容及び同人から入手済みであった資料からすれば、控訴人らが、少なくともこの事実を真実と信ずるについて相当の理由がある。〉

 いやしくも〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉〈創価、元市議らが仲介して〉などと、少なくとも「詐欺に関与した」と断定的な見出しを付ける以上、たんに「被害者から話を聞いた」というだけではない、見出しの根拠となる相応の資料を入手しているのは当然だろう。ところが、矢野らはそのことについてわざわざ、〈本件新聞を発行した時点において、……入手済みであった資料〉などと強調していた。

 なお、この資料の入手時期については、「詐欺グループの一員である松田を被害者に紹介したのは山川だ」と主張した際にも同様に、「入手済みの資料により」と主張している。それならなぜ、一審の第1回口頭弁論においてそう主張しなかったのかと、かえって疑念が生じてしまう。

(つづく)
TOP
元市議名誉毀損事件 第30回
「わざと出ない」という主観 

 矢野らが次に論点としていたのが、一審が一般読者の読み方として認定した「貸金が(被害者に)返金されないことについて、知らん顔をしているあきれた人だ」とする部分についてである。被害者が塩田らに対して返金を求めて提訴した裁判で和解が成立した後、しばらくして返済が途絶えた。それに対して当然、貸金の回収のためになんらかの努力をすべきであるにもかかわらず、「山川は知らん顔をしているあきれた人だ」と矢野らは主張しているのである。

 山川はこの点について一審で、返済を促す目的で被害者を伴って松田の家に行くなど支援したのであって、「知らん顔」をしていた事実はないと反論していた。同じ内容は、矢野らが〈本件新聞を発行した時点において、……入手済みであった資料〉に含まれる山川自身の陳述書にも記載されている。

 ところが、矢野らが控訴に際して提出した被害者の新たな陳述書にはこんな記載があった。

〈(山川は)刑事告訴が不受理になったあたりから、次第に態度が変わり、電話をしても出てくれなかったり、出てくれてもつっけんどんな態度をとるようになりました。〉

 被害者のこの供述をどう受け取るべきだろうか。そもそもこの供述は客観的なものではない。「出てくれない」といっても被害者が事実を確認したわけではないし、「つっけんどんな態度」というのも主観にすぎない(むしろ、山川は「被害者から相談の電話を受けたときには必ず親身になって聞いてあげた」といっている)。1860万円もの貸金が返ってくる見通しが立たなくなった被害者が疑心暗鬼に陥っていたとすれば、電話がつながらないのを「わざと出てくれない」と思ってしまったとしても不思議はない。

 山川は、被害者が塩田に多額の金を貸し、それが返済されなくなった時点で初めて「どうすればいいか」と相談を受けて事態を知り、被害者を伴って東村山署に相談に行き、弁護士を紹介するなどした。その際、山川は自分ができる範囲の協力をしただけである。あわただしい議員活動の中で、頼まれて協力したにすぎない。それを「次第に態度が変わった」とか、「電話に出てもつっけんどんな態度をとるようになった」などとは思い違いもはなはだしいのではあるまいか。

弁護士の見解にも不信感

 被害者が塩田を提訴した民事訴訟で和解が成立してからしばらくして返済が滞り、さらに塩田が別件で逮捕・収監されたころ、山川は被害者から相談を受けたという。山川はその際、塩田の財産の差し押さえも困難な状況で(弁護士の説明)、「返金を待つしかない」と話したことがあったとも、準備書面で記載していた。

 矢野らはその記載が、〈(山川は)刑事告訴が不受理になったあたりから、次第に態度が変わり〉とする被害者の供述を裏付けていると主張し、また朝木は陳述書で被害者から聴取した話として、被害者は〈山川は「(返金を)待つしかない」などと言い、……被害は放置された〉といっているとして山川を非難している。

 金を借りた側が収監され、財産の差し押さえも困難という客観状況において「待つしかない」と判断し、あるいは被害者にそう伝えることがただちに「(回収を)放置した」ということといえるのかどうか。山川は被害者に対してただ「待つしかない」といったのではなく、弁護士の見解を説明している。そこまで説明を聞けば、普通なら、「待つしかない」が「早急にすべての貸金を回収したいが、相手が収監されるなど、強制的に回収できない状況にある」という意味だと理解できるのではなかろうか。

断片的な発言を「根拠」と主張

「山川は知らん顔をしているあきれた人だ」とする記載の相当の理由を、矢野らはさらにもう1つ挙げていた。山川が松田に対して被害者が「一人暮らしになっちゃったのよね」と話したこと、およびそのことに関する山川と被害者のやりとりである。山川は準備書面で、被害者が一人暮らしになったことを松田に話したことについて被害者から、「山川さんが松田にそんなことを話したからこんなことになった」といわれたことがあったことを認めた上で次のように述べている。

〈「松田があなたの事情を知っていたとしても、そのことと金の貸し借りは関係がない。あなたが貸さなければよかった」といさめたのである。「自分(筆者注=山川)は金の貸し借りには関係ない」といったなどという事実も存在しない。〉

 ところがこれに対して矢野らは、上記の山川の発言を捉えて〈(被害者を)突き放した態度をとった〉と主張し、山川が被害者に対して、「電話に出なくなった」という被害者の主張、「返金は待つしかない」といった事実と合わせ、それらが「山川は知らん顔をしているあきれた人だ」とする記載の相当の根拠であると主張していた。

 しかし、山川が被害者に対して「あなたが貸さなければよかった」といったとしても、これは会話の中の断片にすぎない。またそれまで被害者が山川を信頼し、山川もまた被害者を支援していたという両者の関係からすれば、山川は被害者があらぬ方向に原因を求めることは被害者自身のためにもならないと率直な意見を述べたとみるのが自然である。それを被害者が「突き放した」と受け取ったとすれば、もはや逆恨みという以外にあるまい。 

 なおこの部分の主張においても、〈控訴人ら(筆者注=矢野ら)が本件記事を掲載した本件新聞を発行した時点において、○○(筆者注=被害者実名)を取材することにより同人から聴取済みであった内容及び同人から入手済であった資料からすれば、控訴人らが少なくともこの事実を真実と信ずるについて相当の理由がある。〉と、「十分な資料に基づく記事である」とする主張を付け加えていた。他人が詐欺事件に関与したかのようなタイトルの記事を掲載する以上は当然の話なのだが。

(つづく)
TOP
元市議名誉毀損事件 第31回
立証のハードルを低下させる試み

 矢野らが控訴理由書の最後で主張していたのは、一審判決が「本件記事の一般読者の読み方」として認定した部分のうち、「原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり」とした認定を否認し、〈(原告が)結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかった(と読むべきだ)〉と主張していた点に関してだった。本件記事の記載も、矢野の主張のとおりの記載である。

 普通の読解力をもって「口きき」と「口ききでしかない」を比較すれば、むしろ後者の方がより「口きき」の意味を強調して伝えようとしているように感じられる。つまり文言だけをみれば意味する内容に変わりはない。したがって、一般読者の普通の注意と読み方からすば、上記部分は一審判決のとおり、「原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり」と読むとみるのは妥当な判断であると思う。

 ところが矢野らは、2つの事実を理由に一審の読み方を否定していた。1つは、山川が松田に対して「(被害者が)一人暮らしになっちゃったのよね」と話した事実だった。この事実について矢野らは、〈被控訴人(筆者注=山川)が、お金を巻き上げる連中の口きき(=仲介のような役割)を果たしたと評し得る事実〉であると主張している。ここで矢野らは「口きき」にカッコ付きで(=「仲介のような役割」)とわざわざ注釈を入れている。どうやら矢野らは、それによって「口きき」を「『関与というほどでもない』もの」として定義付けようとしているように感じられる。

「山川が松田に対して『(被害者が)一人暮らしになっちゃったのよね』と話したこと」について、それが直接塩田の詐欺事件に結び付いたと判断するには、たとえば松田に被害者の情報を提供することによって塩田が被害者に対して詐欺行為を実行することを山川が事前に知っており、それが詐欺行為のための情報提供であることを自覚していたことを裏付ける事実が存在しなければならない。その立証はきわめて困難、あるいはそもそも不可能であることが矢野にはわかっていた。だから、それが裁判官に通じるかどうかは別として、ことさら〈「口きき」(=「仲介のような役割」)〉と定義付けることで、立証のハードルを下げようと試みたのではあるまいか。

「口きき」の妥当性

 矢野らが〈(原告が)結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかった(と読むべきだ)〉とするもう1つの根拠として主張しているのは、「被害者の貸金が返済されないことについて、山川が知らん顔をしていたと評し得る態度をとった」とする事実だった。その上で矢野らは、

〈被控訴人が、結局は被害者○○(筆者注=実名)への協力を拒み、むしろお金を巻き上げた松田らが○○(同)に返済しないままを放置したという意味において「結局は口ききでしかなかった」と評し得るものである〉

 と主張し、〈(原告が)結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかった〉とする部分について相当の理由があると主張していた。つまりここで、矢野は「貸金が返済されないことについて、『(山川が)知らん顔をしていた』と評し得る一連の態度をとった事実は、(山川が)最終的に被害者への協力を拒み、詐欺グループが借金を返済しないことを放置した」という意味で、「詐欺グループの口ききだった」といえるのだと主張していることになる。「詐欺グループの口ききだった」とは、「詐欺グループの共犯」と言い換えることができよう。

 しかし、被害者に対する塩田の返済が滞ったあと、山川が被害者への協力を拒んだ事実もなく、したがって返済されないことを放置した事実が存在しないことは、矢野らが被害者から受け取ったという山川自身の陳述書からも明らかだった。また仮に矢野らが主張するように、山川が被害者への協力を拒んだ事実があったとして、そのことをもって山川について「(詐欺グループの)『口きき』」という文言で表現することが妥当なのかどうか。これが矢野らの主張が提示した論点といえるのではあるまいか。

 前述のとおり、「口ききでしかない」とは「口きき」と同義であり、本件記事に記載されている〈お金を巻き上げる連中の口きき〉とは「詐欺グループの共犯」と主張しているに等しい。矢野らは控訴理由書で、「(山川が)最終的に被害者への協力を拒み、詐欺グループが借金を返済しないことを放置した」ことが山川について「(詐欺グループ)の口きき」と評した理由であると述べている。

 一方、山川に関する事実関係をみると、山川は被害者から貸金が返してもらえなくなった時点で相談を受けただけで、そもそも塩田が被害者から多額の借金を重ねたことに関係もなければ、被害者から相談されるまでその事実さえ知らなかった。詐欺グループとのつながりもいっさい存在しない。その時点で、仮に山川が被害者への支援を拒んだとしても、詐欺グループが被害者に借金を返済しないことを放置したとしても、なんら責任を問われるいわれはないとみるのが常識的な判断だろう。

 それでもなお、最終的に「待つしかない」といった山川に対して「支援を拒んだ」とか「詐欺グループが借金を返済しないことを放置した」と非難することは、筋違いである上にかなりの曲解と誤解ではあるものの、表現としてはあり得ないことともいえないのかもしれない。しかし仮にそう曲解したとしても、山川を「詐欺グループの共犯」を意味する「口きき」とまで表現することに妥当性があるのだろうか。

 矢野らのかなり偏った理解を前提にしても、「口きき」はかなりの飛躍があるのではあるまいか。〈(山川が)最終的に被害者への協力を拒み、詐欺グループが借金を返済しないことを放置した」という意味で、「詐欺グループの口ききだった」といえるのだ〉とする矢野ら主張は、かなり無理のある言い訳のような気がしてならない。

 いずれにしても、以上が、一審判決に対する矢野らの反論だった。

(つづく)
TOP