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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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元市議名誉毀損事件 控訴審判決(速報)
 元東村山市議の山川昌子が政治宣伝ビラ『東村山市民新聞』に掲載された記事によって名誉を毀損されたとして、同紙を発行する現職東村山市議の矢野穂積と朝木直子(いずれも「草の根市民クラブ」)を提訴していた裁判の控訴審で、東京高裁は平成28年12月7日、矢野と朝木に対し、連帯して50万円の支払いを命じる判決を言い渡した。一審の東京地裁は矢野らに対して15万円の支払いを命じたが、東京高裁は賠償額を増額したことになる。

 控訴審判決では損害賠償額が増額されただけでなく、記事内容についても山川が主張していたとおり、〈「1860万円詐欺、元公明市議らが関与」などの見出しと相まって、被控訴人(筆者注=山川)が詐欺まがいの行為の仲介のような役割を果たしているという趣旨のもの〉と認定。

 その上で矢野らが被害者の証言に基づいて主張した真実性を否定し、さらに〈控訴人ら(筆者注=矢野ら)は、被控訴人に対して取材して、その反論を聴取することすらして(いない)〉などと述べて相当性も否定した。

(了)

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元市議名誉毀損事件 第41回
 平成28年12月7日、東京高裁511号法廷では午後1時15分から7件の判決言い渡しが予定されていて、静まり返った法廷では山川の他に2組の当事者が開廷を待っていた。一審判決を不服として控訴した矢野穂積と朝木直子の姿は見えない。

 開廷時刻が近づき、書記官が傍聴席に向かって当事者がいるかどうかを聞き、当事者席に着くかどうかを確認した。山川ともう1人の当事者が入廷して判決を聞くと答えた。間もなく3人の裁判官が入廷し、ただちに開廷が告げられた。

 本件に対する判決言い渡しは5番目ということだった。次々に判決言い渡しが進み、書記官が本件の事件番号を読み上げ、「山川さん、お入りください」と山川に入廷を促した。山川が被控訴人席に着いたのを確認すると、裁判官は「それでは判決を言い渡します」と述べ、主文を読み上げた。



主文

 本件附帯控訴に基づき、原判決主文1項及び2項を次のとおり変更する。

 控訴人らは、連帯して、被控訴人に対し、50万円及びこれに対する平成27年11月1日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 本件控訴をいずれも棄却する。

 訴訟費用は、第1、2審を通じこれを2分し、その1を被控訴人の負担とし、その余を控訴人らの負担とする。

 この判決は、2項に限り、仮に執行することができる。



 主文を聞き終わると、山川は退廷の前、裁判官に頭を下げた。裁判長は山川の方を向き、黙礼を返したように見えた。

 その時点では判決理由はわからないものの、主文を聞く限りにおいては、矢野らの控訴が棄却され、山川の附帯控訴における請求がほぼ100%認められたということだった。一審での認容額が300万円の請求に対して15万円だったことからすれば、請求額を50万円に減縮していたとはいえ、まさかそれがそのまま認められるとは考えていなかった。矢野にしても、そこまでは想定していなかったのではあるまいか。

 そういえば、控訴審第1回口頭弁論の終了後、法廷前の廊下で矢野と朝木は山川に向かって、大声で新たな名誉毀損とも思えるような罵詈雑言を浴びせていった。その声が法廷の中まで聞こえたのか、書記官の女性が廊下に出てきてあたりを見回したほどである。矢野らのめったに見ることのできない荒れようは、控訴審に対する認識の裏返しでもあったのだろうか。判決を聞き終えて法廷を出ると、2カ月前の山川を罵る矢野らの声が、誰にも相手にされない負け犬の遠吠えのように思い出された。

 一審判決を聞いた直後の山川は、勝訴したけれどもなにか納得できないという様子だった。しかしこの日の判決によって、そんなわだかまりも少しは払拭できたのではないかという気がした。

東京高裁が認定した「本件記事の読み方」

 では、東京高裁が今回の判決を言い渡すに至る具体的な理由はいかなるものだったのか。

 山川は附帯控訴においてまず、原判決はそもそも本件記事の読み方を誤っていると主張していた。本件記事の見出しと本文は以下のとおりである。



(本件記事1)

(見出し)


〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉〈創価、元市議らが仲介して〉〈言葉巧みに、一般市民から、借りて1860万円も返さず〉

(本文)

〈山川元公明市議は口では被害者女性の味方になってお金を取り戻すそぶりをしていたが、結局はお金を巻き上げる連中の口ききでしかなかった。〉

(本件記事2)

(見出し)


〈勝手は許さない〉〈本山破門「ご本尊」放棄の政治集団化の先は、「詐欺師集団?」〉〈新興宗教の衣を脱ぎ捨てた集団〉

(本文)
〈少なくとも仲介のような役割を果たした山川元公明党市議も1860万円を変えそうとしていないことについて、知らん顔をしています。 元議員の立場で、貸金の仲介者のような役割を果たしながら、山川元市議は「知らん顔」、あきれた人たちです〉



 上記のような本件記事について一審の東京地裁は、一般読者は次のように読むと認定した。



(一審が認定した「本件記事の読み方」)

〈塩田(筆者注=被害者から借金をした本人)が被害者女性から約2140万円を借り、うち1860万円を返しておらず、この行為が詐欺まがいの行為であり、市議会議員である原告(筆者注=山川)が松田(筆者注=塩田の姉)を被害者女性に紹介し、松田が妹の塩田を被害者女性に仲介したことにつき、原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、上記行為について、仲介のような役割を果たしており、上記貸金が返済されないことについて、知らん顔をしているあきれた人だと述べていると読むことができる。〉



 上記原判決の認定について、山川は附帯控訴状で「記事1」と「記事2」を一括りに判断していること、また〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉などの見出しがまるで考慮されていない点が不十分であると主張。その上で山川は、「記事1」については〈「1860万円詐欺」「元公明市議らが関与」「創価、元市議らが仲介」といずれも断定しているから、一般読者は「(山川は)借金をして1860万円を返さないという詐欺事件に元公明市議が仲介という形で関与した」と理解する〉とし、「記事2」については原審が認定した「読み方」に加えて〈(一般読者は)「やはり山川は『詐欺師集団』の一員で詐欺まがいの行為を仲介したから、返済されなくても『知らん顔』をしているのだ」と理解する〉と主張していた。

「一般読者がどう読むか」は、名誉毀損の有無と立証対象が何であるかの前提となる基本的な認定、判断である。この点について東京高裁は、上記の一審判断の中に(「一般読者の……」の前)、〈「1860万円詐欺、元公明市議らが関与」、「創価、元市議らが仲介して」、「言葉巧みに、一般市民から、借りて1860万円も返さず」という見出しと併せて読むと〉とする文言を加える、という判断を示した。

 一審の認定に〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉などの断定的な見出しが加わると、以下に続く「口きき」や「仲介」といった文言が「詐欺」という文言と結びつき、より悪質性を帯びてこよう。いずれにしても、少なくとも上記の判断は、本件記事を一般読者がどう読むかについては見出しを含めて考慮すべきあるという東京高裁の基本的な考え方を示したものであると理解できた。山川が主張したように、東京高裁もまた一審判決が見出しに対する考慮を欠いていると判断したのだろう。
 
(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第42回
改めて記事の趣旨を認定

 一般読者が本件記事をどう読むかについて、東京高裁は一審の認定に〈「『1860万円詐欺、元公明市議らが関与』、『創価、元市議らが仲介して』、『言葉巧みに、一般市民から借りて1860万円も返さず』という見出しを併せて読むと、」を加え〉るとした。その上で、一審同様に、本件記事は山川の社会的評価を低下させるものであると認定している。

 記事による名誉毀損裁判において次に検討されるのは、記事に公共性と公益性があるかどうか、また真実であることの証明(真実性)あるいは記事作成側において記事の内容を真実と信じるに相当の理由があったか否か――である。本件記事に公共性、公益性があり、真実性あるいは矢野らに記事の内容を真実と信じるに相当の理由があったと認められる場合には、違法性が阻却される。

 さて、本件記事の公共性、公益性について一審の東京地裁は次のように判断していた。



(一審における公共性、公益性判断)

 本件記事は、本件新聞発行時(筆者注=平成27年7月31日付)において市議会議員であった原告が詐欺行為に関係したか否かについてのものであるから、一応公共の利害に関する事実に係るものであり、そうであれば本件記事の掲載は一応公益を図る目的でなされたものと推認される……



 これに対し山川は附帯控訴状で、平成23年に市議会議員を引退しているから、本件新聞発行時も議員であるとの理由で公共性を認め、同様の理由によって公益性を認めた原判決は誤りであり、本件記事には公共性も公益性も存在しないと主張していた。

 山川の主張に対して東京高裁は公共性、公益性について一審の認定を次のように改めた。



(東京高裁の公共性、公益性判断)

 本件記事は、控訴人ら(筆者注=矢野ら)が市議会議員を務める東村山市において、一般市民が詐欺まがいの行為の被害者となり、当時市議会議員であった被控訴人が関与していたというものであるから、一応公共の利害に関する事実に係るものであり、そうであれば本件記事の掲載は一応公益を図る目的でなされたものと推認される……



 山川としては原審の認定の前提事実に単純な誤認があったため公共性、公益性を否認したが、「当時、市議会議員であった」という理由で公共性、公益性が認定されることは想定していた。それよりもむしろ驚きだったのは、一審が〈(本件記事は)市議会議員であった原告が詐欺行為に関係したか否かについてのものであるから〉と、本件記事について「山川は詐欺行為に関与したとするもの」と断定していないのに対し、東京高裁が〈一般市民が詐欺まがいの行為の被害者となり、当時市議会議員であった被控訴人が関与していたというものである〉と、ずばりと本件記事に対する認識を示したことだった。

 控訴審の判決文が一審を丸ごと破棄するのではなく改めるという方法で書かれているせいか、東京高裁が示した「一般読者の読み方」(本連載第41回)では、一審が示した「読み方」の前に〈「1860万円詐欺、元公明市議らが関与」、「創価、元市議らが仲介して」、「言葉巧みに、一般市民から借りて1860万円も返さず」という見出しを併せて読むと、〉との文言を加えたものの、東京高裁が端的に本件記事がどう読めると考えているのか、やや不明確な印象をぬぐえなかった。

 しかし、公共性、公益性判断において〈(本件記事は)「当時市議会議員であった被控訴人が関与していたというものである〉とする認識を示したことによって、「一般読者の読み方」の認定において「見出しを併せて読むと」との文言を加えた意味が明確化したといえる。東京高裁は本件記事が、山川が主張したとおり「山川は詐欺(まがいの)事件に関与した」とするものであると認定したということだった。

矢野らの主張に沿う供述

 では、本件記事の真実性・相当性について東京高裁はどう判断したのだろうか。一審の東京地裁は認定した「一般読者の読み方」の中でも「山川が被害者を松田(筆者注=矢野らが詐欺グループの一員と主張する人物)に紹介するなど、仲介のような役割を果たした」などとする部分を重視し、「山川が被害者を松田に紹介したかどうか」について検討した。その結果、東京地裁は「山川が被害者を松田に紹介した」とする事実についてはこれを認めるに足りる証拠がなく、矢野らがそう信じたことに相当の理由もないと結論付け、本件記事の名誉毀損を認定した。

 矢野らは控訴にあたり、一審で山川が提出していた被害者の陳述書とは別に、新たな被害者の陳述書を提出し、本件記事の相当性を主張した。矢野らが控訴理由書で被害者の新たな陳述書における「証言」を根拠に最初に主張していたのが「松田を被害者に紹介したのは山川である」とする事実だった。その主張が控訴審で認められれば、相当性を否定した一審判決を覆すことができると矢野らは考えたのだろう。しかも、被害者に新たな陳述書を依頼したのが奏功したのかどうか、被害者はその陳述書で「松田を紹介したのは山川だ」とする趣旨の供述をしていた。

避けたかった事態

 一審における「山川が被害者を松田に紹介し、松田が妹の塩田(筆者注=被害者から直接借金をした人物)を被害者女性に仲介したことにつき、原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、仲介のような役割を果たしており」などとする「一般読者の読み方」を前提とし、また被害者の新しい陳述書における上記供述が事実と認められれば、一審判決は覆ったかもしれない。しかし東京高裁は「一般読者の読み方」について〈「1860万円詐欺、元公明市議らが関与」などの見出しと併せて読むと〉との文言を加えただけでなく、〈(本件記事は)一般市民が詐欺まがいの行為の被害者となり、当時市議会議員であった被控訴人が関与していたというものである〉と明言している。

 したがって、東京高裁の本件記事の「読み方」についての認定からすれば、本件記事が真実性、相当性を認められるには「山川は詐欺まがいの行為に関与していた」とする事実を立証しなければならないことになる。「被害者に松田を紹介したのは山川である」とする事実は、山川が塩田と通牒していたなどの事実が証明されて初めて重要な証拠として意味を持つのであって、それ自体としては付随的な意味を持つにすぎない――山川は当初からそう主張していた。

 たんに「紹介したかどうか」という事実と「詐欺行為に関与したかどうか」という事実が別次元の事実であることは明らかだろう。一審が認定した「一般読者の読み方」に見出しを加えるとした東京高裁の認定によって、重要な立証対象が「山川は詐欺まがいの行為に関与していた」という事実へと変わったのである。矢野にとっては、はなはだまずい流れだった。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第43回
「紹介」に関する矢野らの主張を否定

 一審の東京地裁が〈原告が松田を寺澤に紹介したことについては、これを認めるに足りる証拠がなく〉などとして記事の真実性、相当性を否定したことに対し、矢野らは控訴審で「山川から松田を紹介された」とする趣旨の供述を含む被害者の新たな陳述書を提出した。しかし東京高裁の本件記事に対する「一般読者の読み方」に対する認定は、一審の認定に〈「1860万円詐欺、元公明市議らが関与」、「創価、元市議らが仲介して」、「言葉巧みに、一般市民から、借りて1860万円も返さず」という見出しを併せて読むと〉との文言を加えるというものだった。

 また、公共性、公益性の認定においては〈本件記事は、……一般市民が詐欺まがいの行為の被害者となり、当時市議会議員であった被控訴人が関与していたというもの〉と明確に本件記事に対する認識を示していた。その時点で、本件記事の立証対象は「松田を被害者に紹介したのは山川だとする事実」ではなく「山川は詐欺まがいの行為に関与したとする事実」へと変わっていたといえる。

 では、被害者が陳述書で「山川から松田を紹介された」とする趣旨の供述をし、矢野がその供述に基づいて一審判決を否定したことに対し、東京高裁はどんな判断を示したのか。東京高裁は次のように述べた。



(「山川が松田を紹介した」とする事実に対する東京高裁の判断)

 控訴人らは、本件記事の内容は真実であると主張し、○○(筆者注=被害者)の陳述書を新たに提出するところ、同陳述書には、平成18年から19年ころに、自宅に洋服のお客さんなど知人数人が来ている時に被控訴人が「この人はマッサージをやっているのでよろしく。」と言って松田を連れて来た旨の陳述部分がある。

 しかしながら、本件記事は、既に述べたとおり、「1860万円詐欺、元公明市議らが関与」などの見出しと相まって、被控訴人が詐欺まがいの行為を行っている人物を被害者に紹介し、詐欺まがいの行為の仲介のような役割を果たしているという趣旨のものであるところ、○○の上記陳述書からは、被控訴人が松田の妹の塩田が詐欺まがいの行為を行っているのを知った上で、その口ききのために松田を○○に紹介したとの内容とはなっておらず、本件記事の真実性を裏付けるものではない。



 一審の判決理由からして、矢野らは被害者の上記供述を最も重要な部分と考えていただろう。しかし、ただ紹介したというだけでは、「山川が塩田の詐欺まがいの行為の口きき」をしたとの事実を裏付けるものとはならないとして、最初からあっさり否定されてしまった。

 矢野らはこの点について、被害者に新たな陳述書を依頼しただけでなく、その供述とそれまでの山川の供述を細かく比較検討した上で、論理性には欠けるが、一応それまで出ていた材料から最後はかなり強引な形で被害者の供述の方が信用できると結論付けていた。その努力も意味がないといわれたも同然だった。

「記載の時期を争う」と主張

 その上で、東京高裁は「被害者に松田を紹介したのが山川だったのか否か」をめぐる双方の主張について検討していた。

 被害者は新たな陳述書で〈平成18年から19年のころだったと思いますが、自宅に洋服のお客さんなど知人数人が来ている時に、山川さんが「この人はマッサージをやっているのでよろしくね。1時間でも2時間でも安くやってくれるわよ。」と言って、松田美枝さんを連れてきました。〉と主張。それに対して山川は答弁書で「私は松田から被害者を紹介されたのであって、松田を被害者に紹介したのは私ではない」と主張し、調べ直した結果、松田から被害者を紹介された時期も「平成12年8月15日」だったと主張していた。

 山川は控訴審の第1回口頭弁論で、松田から被害者を紹介された際のメモが記録されている平成12年度の東村山市議会手帳を証拠として提出した。山川はその際、その後に被害者宅に行ったことが記録されている平成13年と平成15年の市議会手帳も提出していた。平成12年度のものと記載内容を対比させるためだった。

 これに対して朝木直子は、「一部の記載はボールペンで書かれているから、これは絶対におかしい」として「記入の時期については争う」と主張した経緯があった。つまり矢野らは、「手帳は平成12年のものかもしれないが、記入したのは当時ではない可能性がある」と主張したのだった。

 山川が矢野らの主張に対する反論を提出したのは控訴審第1回口頭弁論の1週間以上前である。「被害者に松田を紹介したのが山川だったのか否か」について、山川は被害者の主張を真っ向から否定する主張をするとともに、手帳のコピーを送付していた。コピーでは「ボールペンで記入された箇所」があることがわからなかったとしても、日時については被害者が「平成18年から19年のころ」と供述しているのに対し、山川は「平成12年8月15日」と主張しているのだから、大きな開きがあることは確認できたはずである。

 第1回口頭弁論までにはまだ1週間以上あった。被害者の陳述書によれば、山川が松田を連れてきたとする時期だけでなく、山川の発言や「自宅に洋服のお客さんなど知人数人が来ているとき」という具体的な状況まで供述しているから、山川から手帳のコピーが提出されたあと、朝木は当然、あらためて被害者から事情を聞くべきではなかっただろうか。あるいは、聞いたけれども、陳述書以上の回答が得られなかったのだろうか。

 いずれにしても矢野らは、第1回口頭弁論で被害者から再確認した内容を主張すべきだったのではあるまいか。ところが矢野らは、時期の具体的内容に踏み込んだ反論はいっさいせず、「ボールペンで記入している」といい、「記載の時期を争う」としか主張しなかったのである。予定の日時までに、新たな予定が入るたびに予定が加えられることはあり得るのであり、筆記用具が変わったとしてもなんら不自然ではない。

 被害者から新たな供述を得ていたにもかかわらず、「山川から松田を紹介された」とする時期について矢野らはなぜ具体的な反論をしなかったのか。そのことの方がむしろ不可解だったのである。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第44回
「手帳」の信用性

 矢野らは控訴理由書で「詐欺グループの一員である松田を被害者に紹介したのは山川だ」と主張し、一審判決は破棄されるべきと主張していた。控訴にあたって朝木から新たな陳述書を作成するよう依頼された被害者はその中で「平成18年から19年ころに山川から松田を紹介された」と供述していた。これに対して山川は答弁書で、保管していた東村山市議会手帳を調べたところ、平成12年に松田が被害者から紹介されたことを示す記録をみつけ、「松田を被害者に紹介したのは私ではない」と反論し、手帳のコピーを証拠として提出。

 第1回口頭弁論で裁判官2名と控訴人の矢野らおよびその代理人が手帳の原本を手にとって確認を行った。裁判官から山川に対して特段の質問はなかったが、矢野らは「記載の時期を争う」として弁論を終結したのだった。

 この点について東京高裁はどう判断していたのか。東京高裁は次のように述べた。



(「山川が松田を被害者に紹介した」とする矢野らの主張に対する判断)

 被控訴人(筆者注=山川)が市議会議員当時に使用していた手帳であり、その記載内容の信用性が認められる甲第9ないし11号証の各3(筆者注=山川が証拠として提出した市議会手帳)によれば、平成12年8月15日の欄には、「レナウン 1:30 松田さんと」との、平成13年12月20日の欄には、「洋服 ○○(筆者注=被害者名)宅へ ○○さん(筆者注=本件とは無関係の山川の知人)と」との、平成15年5月20日欄には、「レナウン○○(筆者注=被害者名=以下同))宅」との各記載があることが認められ、これらはいずれも被控訴人が当該日に○○宅を訪れたことを記したものと認められるところ、これらの記載及び弁論の全趣旨によれば、平成12年8月15日には、単にレナウンと記載したのみで、○○の名がなく、あわせて、松田の名が書かれていることは、被控訴人は、当時○○の名を知らず、松田にレナウンの洋服を扱っている人と紹介され、同人と○○宅に行ったことを意味するものと認められる。



 矢野らは「記載の時期を争う」として山川の手帳の記録の信用性を争ったが、東京高裁はその信用性を認めるとし、2回目と3回目の訪問の際には被害者の名前が明記されているのに対し、最初の訪問の際には「松田さん」の名前はある一方で被害者の名前はなく、その代わりに「レナウン」と被害者が扱っている洋服のブランド名が書かれていただけだったことから、山川は松田から被害者を紹介されたこと、またその時期は平成12年8月15日だったと認定したのである。「松田を被害者に紹介したのは山川ではない」と認定したということだった。

 その上で、東京高裁は被害者の供述内容についてこう述べた。

〈平成18年から19年ころに被控訴人から松田を紹介されたとの○○の上記陳述部分は上記事実に反し信用できない。〉

 被害者は平成24年11月5日付けで警視庁に提出した松田らに対する告訴状の中で「平成18年から19年ころ、告訴人は友人の紹介で松田と知り合った」と記載している。しかし「山川の紹介で」とは書いていない。この告訴状を提出した際には山川も被害者を支援して陳述書を提出している。被害者は山川に信頼を置いていたということである。

「友人」との記載に合理的理由

 この告訴には弁護士もついていた。捜査機関に事件の背景等を理解してもらうためにも、告訴状には知っている事実をありのままに幅広く記載しておく必要があるから、弁護士もそう指導しただろう。したがって、告訴状で被害者が松田と知り合ったきっかけや関係を説明するにあたっても、松田を山川から紹介されたのなら、そう正直に記載しない理由はない。

 また当時、山川は協力者として被害者のそばにいたのだから、松田を紹介したのが山川だったとすれば、そのことを被害者が思い出さないはずもない。つまり被害者は、当時、松田を紹介したのが山川以外の友人であることを十分に自覚していたから、「友人の紹介で松田と知り合った」と記載したのである。

 松田を紹介されたとする時期は、実際には、山川が松田から被害者を紹介されたのが平成12年8月だったのだから、被害者はそれより以前に松田と知り合っていたことになる。事実とは相当の開きがあった。しかし告訴の時点でそれは重要な問題ではなく、被害者のおおまかな記憶で書いたのだろう。「友人」も告訴とは無関係だったから、紹介された時期について確認する必要もなかった。だから告訴状には、松田に関して誤った記憶がそのまま残ったものと推測できた。

 時期はともかくとして、はたして被害者が朝木に対して本当に「松田は山川から紹介された」と説明したのだろうか。いずれにしても、矢野らが平成27年7月31日付『東村山市民新聞』第186号に本件記事を掲載した時点で、「松田は山川から紹介された」ことになったのだった。

詳しくなっていった説明

 それがさらに、平成28年1月12日付朝木陳述書では、たんに「山川から紹介された」から〈原告山川が「マッサージができる人」として松田を連れて自宅に一緒にやってきた〉となり、被害者の新しい陳述書では〈平成18年から19年ころのことだったと思いますが、自宅に洋服のお客さんなど知人数人が来ている時に、山川さんが「この人はマッサージをやっているのでよろしくね。1時間でも2時間でも安くやってくれるわよ。」と言って、松田美枝さんを連れてきました。〉と、その説明は徐々に詳細になっていった。

 ところが東京高裁が信用性を認めた山川の手帳の記録によって、山川は平成12年8月15日に松田から被害者を紹介されたことが証明された。それによって、被害者が説明する「松田を紹介された」とする時期も、〈山川さんが「この人はマッサージをやっているのでよろしくね。1時間でも2時間でも安くやってくれるわよ。」と言って、松田美枝さんを連れてきました。〉とする事実も、すべてが事実に反するものであることが明らかとなった。

 事実に反するというよりも、存在しない事実を「あった」と主張しているのだから、事実の捏造という方が適当なのではあるまいか。ただし、それが本当に被害者が朝木にそう説明したものなのかどうかは定かではない。

完膚なきまでに否定

 東京高裁は上記判断の最後で、口頭弁論の際に矢野らが「手帳の記載時期について争う」と主張した点についても触れ、次のように述べた。

〈控訴人らは、被控訴人の手帳の平成12年8月15日欄の記載のうち、「レナウン」との記載は他の記載と異なり、ボールペンで記載されていることから、その頃に記載されたものであることを争うが、同手帳には、他にもボールペンで記載された部分があることは当該証拠の原本の取調べによって当裁判所に顕著な事実であることに照らし、控訴人らの主張する事実によって、上記判断は左右されるものではない。〉

「山川が詐欺グループの一員である松田を被害者に紹介した」とする矢野らの主張は、東京高裁によって完膚なきまでに否定されたといえるのではあるまいか。

(つづく)
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