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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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元市議名誉毀損事件 第45回
具体的根拠を欠いた主張

 矢野と朝木が「山川は詐欺事件に関与した」とする主張の根拠として、「松田を被害者に紹介した」とする事実と並ぶ重要な事実として主張していたのが、「山川は被害者が一人暮らしになったという情報を(詐欺グループの一員である)松田に話した」とする事実だった。これに対して山川は、仮にそのような事実が存在したとしても、「被害者が一人暮らしになったと松田に話したこと」がただちに詐欺に関与したとする事実の裏付けとなるには、山川と松田、塩田との間で事前に打ち合わせがなされているなどの共謀関係が立証されないかぎり、「詐欺に関与した」とする事実の裏付けとはならないと主張していた。

 この点について、矢野らは控訴理由書で改めて次のように主張していた。

〈「被控訴人(筆者注=山川)が、○○(筆者注=被害者の実名=以下、同)から聞いた『(夫と別居し)一人暮らしになった』という情報を、松田に話してしまった」ことが、松田の○○宅への再訪のきっかけとなり、ひいては本件詐欺まがいの行為を導く結果となったことは明白であり、これは、被控訴人が、本件詐欺まがいの行為について、塩田らと○○の両方の間に立ってつなぐ仲介のような役割を果たしたものと評し得る……。

 控訴人ら(筆者注=矢野、朝木)が本件記事を掲載した本件新聞を発行した時点において、○○を取材することにより同人から聴取済みであった内容及び同人から入手済みであった資料からすれば、控訴人らが、少なくともこの事実を真実と信ずるについて相当の理由がある。〉

 矢野らの主張には相変わらず、「松田が被害者宅を再訪した」とする事実の背景や理由も、また塩田による詐欺まがいの行為に山川がどう関ったというのか、なんら具体的な根拠は示されていない。仮に相当性を主張するにしても、山川と塩田の間に通牒関係があったことをうかがわせる具体的な事実を示さなければならないが、控訴理由書でそのような事実はいっさい示されてはいなかった。

被害者の供述に対する反論

 しかし、被害者が控訴審で提出した新たな陳述書には次のような記載があった。

〈(山川さんは松田に対して)もっと強く私への返金を促してくれてもいいのではないかという思いから、「あなたが松田さんに私のことを話したからこんなことになった」と何度か責めたことがありました。〉

 矢野らは被害者の主観的な供述によって客観的な根拠の代わりにしようとしたようにみえた。少なくとも、会話の流れを無視して被害者の上記供述だけを切り取れば、「被害者が一人暮らしになったことを山川が松田に話したこと」が詐欺事件のきっかけになったとする矢野らの主張に沿うものであることは確かなようにみえる。

 このため山川は被害者の上記供述に対して次のように反論した。

〈○○は告訴状(筆者注=塩田らに対する告訴状)においても塩田を提訴した際の陳述書においても、そのような主張は一切していない。それどころか○○は上記陳述書において、「そのような借金の申し入れは断れば良かったのですが、松田さんの紹介であったことや、……被告塩田や松田さんらに色々とお世話になっていたこともあり、断り切れず」と記載している。つまり○○は「一人暮らしだから」塩田らの借金の申し入れを断りきれなかったとは考えていなかったのである。……○○の主張は、自分を直視できなくなった者の八つ当たりというほかない。〉

 では、「被害者が一人暮らしになったことを山川が松田に話したこと」が詐欺事件につながったとする矢野らの主張に対して東京高裁はどう判断したのか。東京高裁は次のように述べた。



(「被害者が一人暮らしになったことを山川が松田に話したこと」が詐欺事件につながったとする矢野らの主張に対する判断)

 ○○の陳述書には、○○が被控訴人に対して、「あなたが松田さんに私のことを話したからこんなことになった」と何度か責めたことがあるとの陳述部分があるが、同部分は、○○が塩田らからの貸付金の回収が奏功しないことに対する不満を、○○の推測を交えて被控訴人に述べた記載にすぎないことはその記載内容に照らし明らかである上、○○が塩田らに対して貸金の返還を求める訴えを提起した際に作成した陳述には、そのような記載はなく、かえって、塩田や松田に色々と世話になっていたこともあって断り切れなかったと記載していたことからすれば、○○においても、被控訴人が○○が一人暮らしになったことを話したことが詐欺につながったとは考えていなかったことがうかがわれるのであって、上記陳述部分も本件記事の内容が真実であることを裏付けるものではなく、……



 東京高裁は山川の主張を全面的に認めるかたちで矢野らの主張を否定し、その根拠として被害者の新たな陳述書ではなく、山川が提出した被害者の最初の陳述書や告訴状の内容を重視したことがわかる。矢野らが一審では「提出する必要がない」として被害者の陳述書を提出しなかったにもかかわらず控訴審になって提出したこと、また松田と知り合った経緯についても矢野らの主張には沿っているものの、客観的事実に反する供述をしていることなどから、東京高裁は被害者の新たな陳述書に対して全面的に信用することを警戒したのではあるまいか。当初は何もいっていなかったにもかかわらず、矢野らが提訴されるや、急に山川を責めるような主張をするようになるというのは、やはり不自然と受け取られてもやむを得まい。

証人申請を却下した理由

 控訴審の第1回口頭弁論で山川は被害者に対する尋問を申し立てたが、東京高裁は「その必要ないと思います」と述べ、山川の申し立てを却下した。山川は控訴審答弁書の末尾で、尋問の主な内容は〈被控訴人が松田を○○に紹介した」とする事実とその時期、及び塩田からの返済が滞った後の被控訴人に対する○○の認識等〉であると説明している。このうち「塩田からの返済が滞った後の被控訴人に対する○○の認識等」とは、とりわけ被害者が新たな陳述書で〈「あなたが松田さんに私のことを話したからこんなことになった」と何度か責めたことがありました〉と述べ、あたかも山川が詐欺グループの一員であるとの矢野らの主張を支持するかのような供述をしていることを指している。山川は主張が対立しているとして、証人尋問を申請したのである。

 東京高裁は「必要がない」として山川の申し立てを却下した。そのとき、裁判官の本心をうかがい知ることはできなかった。しかし今なら、その理由を推し量ることができよう。裁判官は山川が提出した主張および証拠と被害者の陳述書の内容を比較し、少なくとも争点となっている部分について被害者の供述は信用できないと判断していた――だから、あえて出廷を求める必要はないと判断したのだ、と。

(つづく)
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