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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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少年冤罪事件 第8回
1回で審理を打ち切った東京高裁

 ではなぜ矢野は、ここまでして少年を暴行犯に仕立てようとしたのだろうか。

 矢野が少年を提訴した平成10年という年は、矢野と朝木が『聖教新聞』と『潮』を提訴し、また『週刊現代』の記事をめぐって創価学会から提訴された裁判の最中だった。明代の万引きによる書類送検とそれを苦にした自殺ののち、矢野はメディアに対して「『草の根』に対してはそれ以外にも様々ないやがらせ事件が起きていた」とし、万引きも転落死もその延長線上に起きたものであるかのような主張を繰り返していた。実際、矢野のいう「様々な事件」―はいずれも書類送検後に発生している。その最初の「事件」がこの「暴行事件」なのだった。いずれの事件も、矢野がそう主張するのみで立件されるに至っていないのは不思議なことというほかない。

 それがなぜなのかについては確定的な理由を示すことはできない。しかし確かなのは、矢野がいずれも立件されていない「様々な事件」について、他の裁判で「明代の転落死が他殺と推認できる」根拠として主張していたということである。その過程で多くの被害者を生んできた。明代の万引きの被害者であるブティックの女性店員、明代の自殺当夜、たまたま明代の自宅近くに車を停めていた男性、ビルから転落して苦しんでいる明代を心配して声をかけたハンバーガー店の女性アルバイト店員――それらの人々はいずれも、矢野が「万引き捏造説」「明代の他殺疑惑」を喧伝するため、すなわち明代の死が自殺であり、その背景には万引き事件における矢野と共謀したアリバイ工作とその破綻があったという事実を糊塗するために利用されたのである。少年もまた、判決文をみるかぎり、矢野の情報操作の材料として暴行犯に仕立て上げられたとみるのが自然だった。

 だからこそ矢野は、請求が棄却された一審判決を素直に受け入れるわけにはいかなかった。もともと劣勢である上に、少年事件が冤罪だったとなれば、他の裁判に悪影響を与えかねないと矢野が判断したとしても不思議はなかった。だから、矢野はただちに控訴した。控訴したという事実によって、一審判決の確定時期を遅らせるという現実的効果もある。あれだけ厳しい判決を突きつけられれば、普通は控訴を断念してもおかしくないが、いかなる状況の変化があろうと、一度主張したことは絶対に非を認めないのが矢野のたぐいまれな特質である。矢野はなおも少年が「暴行犯」であるとして東京高裁に控訴したのである。

 東京高裁で控訴審の第1回弁論が開かれたのは平成12年10月2日。この年の6月26日には、朝木明代の「他殺」と「万引き冤罪」を主張した『聖教新聞』裁判の一審判決で矢野と直子は敗訴。同8月29日、あたかも創価学会が明代を殺したかのような記事を掲載して創価学会から提訴されていた『東村山市民新聞』裁判では矢野の本人尋問が予定されていたが、矢野が「めまい」を理由に欠席し、11月14日に延期になるという出来事もあった。矢野と朝木にとって重要な裁判が続く中での控訴審弁論だった。法廷には控訴人席に矢野と代理人弁護士、被控訴人席には少年の代理人弁護士、傍聴席には朝木直子の姿があった。

 控訴審では、控訴人は控訴状のほかに第1回口頭弁論期日の前に控訴理由書(控訴に至った理由を詳細に説明した文書)を提出しなければならない。当然、この裁判でも矢野側からどんな内容の控訴理由書が提出されるのか注目していた。はたして矢野は、高裁に一審判決を再検討させるだけの説得力のある理由を示せるのだろうか、と。ところが、開廷直後の裁判長と矢野代理人とのやりとりから、矢野がまだ控訴理由書を提出していないことがわかったのである。

裁判長 代理人、何かいいたいことはありますか。

矢野代理人 目撃者(「逆恨みされる」として証言を拒否した若者)に対する証人尋問を申請します。

裁判長 控訴人の方からは控訴理由書が出ていないようですが、何をご主張されたいわけですか? 一審判決の「本件訴訟に顕れた証拠によっては、未だ被告が本件暴行に及んだ犯人であるとは認められない」という箇所が不服ということですか?

代理人 はい。

裁判長 当裁判所としては、一審で十分に調べていると思いますので、これで判断したいと思うんですが。

 裁判長の言葉は、一回の口頭弁論をもって結審したいという趣旨である。しかも、「一審で十分に調べている」とは、これ以上調べることはないということで、高裁が一審判決を追認する方針であることがうかがわれた。矢野ももちろんそう受け取ったのだろう。矢野は代理人になにやら強い調子で指示を出した。矢野としては、自己に不利な結論は可能なかぎり先延ばしにしなければならない。しかし、控訴理由書も提出していないのでは引き延ばそうにも説得力のある理由を見つけることは困難だった。最後に残っていたのは、矢野のいう「目撃者」に対する証人調べである。これならかろうじて、一審で取り調べが行われていないという理由らしきものはある。裁判長は「一審で十分に調べていると思います」といっているものの、気が変わらないともかぎらない。裁判官がこの取り調べは不可欠と考え直せば、優に2カ月は結論を先延ばしにすることができる。矢野は可能性が低いことはわかっていても、強い口調で代理人にそう主張するよう求めたのである。裁判官から結審をほのめかされてから時間にして10秒前後ののち、矢野の指示を受けた代理人が裁判官に向かって口を開いた。

代理人 目撃証人の証人尋問をお願いします。

 矢野側の再度の証人調べの申し立てに対して裁判長は、まさに間髪を入れずこう回答した。

裁判長 証人申請は却下します。それではこれで終結ということで、次回に判決を言い渡します。

 もちろん矢野側は黙って裁判長の裁定を聞くだけだった。裁判長はこの口頭弁論で、矢野代理人に対して最初はにこやかに話しかけていた。しかし、再度の証人申請を却下したとき、裁判長の顔はもう笑っていなかった。東京高裁も矢野が証人を申請した若者が「逆恨みされる恐れがある」とした相手が、当の矢野であることをとうに見極めていたのだろう。もともと根も葉もない事件であることは一審の裁判資料を見れば歴然である上に、控訴理由書も提出しないのでは1回の口頭弁論で終結となるのも当然と思えた。


(第9回へつづく)

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