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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第11回

給料に名を借りた「資金洗浄」

 続く質疑をみよう。


井村  償還期間は10年ですか。

高野  一応、10年です。10年ちょっとか10年に足りないぐらいの幅です。

井村  それは完済しなければ、高野先生の本来の財産にはならないわけですか。

高野  ええ、そういうことですね。

井村  そういうことも考えられますね。

高野  そういうことです。

井村  ということは、今現在、その土地・建物は、金融機関の抵当物件であるということですね。そうしますと、1億3500万円を10年で返済できるというふうな見込みを考えられたわけですが、その根拠をお聞きしてもいいですか。

高野  ええっとー、あの、協議のときに最初から銀行さんが入っておりました。で、こんなこといっていいのかな、あの、入っておりました。で、あの、できる範囲の償還計画に対しても、東京都さんのこと細かな指示がありました。それで、あのー、まったくこちらの収入というのは、ほとんどといっていいほどありません。でも、保育にかける情熱はまったく衰えておりません。そんなところでお答えになるかどうかわかりませんが。

井村  企業の場合、これだけの借入をする場合、返済期間はだいたい20年というのが普通ですね。そういうことで、非常にちょっと無謀な返済計画だな、ということは逆にいえば、金融機関は魅力があったわけですね。そういうふうに思います。つまり、安定的な収入がある、それは何ですかと考えたときに、安定的な補助金、いってみればそれを担保に取るというふうな考えがあったのかもしれません。ただし、補助金ですから、それをそのまま返済に充当することはできないというところまで金融機関が判断したのかどうか。いずれにしても、金融機関側としては、補助金を担保に取ったのかもしれません。

(このとき朝木が傍聴席から)
「わけのわからないこといって」


 高野が最初に「土地も建物も自費で」と申し出たとき、東村山市と東京都はそのすべてが銀行融資によるものであると明確に認識していたのかどうかはわからない。しかし東村山市も東京都も、たましんが融資を決定した時点で、高野には保育園を開設するために必要な個人資産と呼べるものはないことだけは認識したはずである。

 井村委員が述べたとおり、厚生労働省通知「保育所の設置認可等について」は社会福祉法人以外の者から認可申請があった場合の審査基準の1つとして、

ア 保育所を経営するために必要な経済的基礎があること
イ 経営者が社会的信望を有すること

 と規定している。公益施設である保育園には継続性がなければならない。そのためには一定の経済的基礎が必要とされているのである。すると行政は1億3500万円の融資決定をもって高野には必要な個人資産があると判断したことになるが、その判断は正当なものといえたのか。

監査委員も「公金による私財形成のおそれ」と指摘

 また用地については自前で用意することとされており、土地代金に対する補助金は支弁されない。従来、寺院や個人の篤志家が保育園を経営している例は多い。その場合はいずれも十分な土地を保有しており、その基礎の上に保育園を経営している。仮に保育園の土地が差し押さえられるような事態になれば、保育園の運営自体が脅かされる。そうならないためにも、個人が保育園を経営する場合には土地は自前で用意するのが原則なのである。「土地は自前」の原則には憲法上の理由もある。憲法89条は公金の私的利用を禁じており、土地の取得に関しては補助金はいっさい出ないことになっている。井村が行ったこの質問は、厚生労働省が規定する「経済的基礎」の問題のみならず用地取得に関する憲法上の問題を含むものだった。

 高野の答弁の中で注目されたのは、「協議のときに最初から銀行さん(多摩中央信金)が入っていた」ことを明らかにした点である。たましんにとっての最大の関心は、どこまで確実に補助金が支払われるか、貸付金が無事返済されるのかという点だったのは疑いなかろう。補助金さえ確実かつ永続的に支払われるのなら返済が滞る心配はない。保育園の運営が適正に行われることが前提であるとはいえ、補助金の支払いを保証するのは行政である。たましんは順調に認可が下りるかどうか、また認可後に一定程度補助金の支払いが補償されるのかどうかを確認したかったのだろう。

 高野は「こんなこといっていいのかな」などと前置きした上でたましんが協議に立ち会っていた事実を明らかにしたが、これもいわば、事実上、融資の保証をしたのが行政である、すなわち行政も今回の契約に深く関与していることを公の場で念を押したということではあるまいか。

 たましんの融資1億3500万円に対し、土地の担保価値はせいぜい6000万円である(上物はゼロに等しい)。したがって、たましんは担保価値を超える額を融資するわけだが、それには相当の補償がなければなるまい。井村のいうように、それが認可(つまり補助金)だったと考えるのはきわめて自然なのではないか。とすれば、現実に存在しないものを担保にしたこの融資契約が正常なものだったといえるのか。また、補助金を原資にして土地・建物の融資を返済することが憲法89条の理念に反するものとはいえないのか。

 井村の発言に対して朝木は「わけのわからないことをいって」と野次を飛ばしたが、高野とたましんの間の契約であるにもかかわらず、その担保は補助金だったとしか考えられず、すなわち民民の融資契約に官が事実上一定の担保補償を行ったという特異な契約の実情を十分に理解していたのだろう。

 憲法89条との関係で土地代は補助金による返済が禁止されているため、返済計画では土地代は高野の給料から返済することになっている。給料をどう使うかは個人の自由だから問題なしとするのが行政の見解である。

 しかし、融資契約成立の前に補助金額が確認されていること、社会通念上の制限はあるとはいえ、高野の給料を決めるのは高野自身であること、高野の給料が返済計画の段階ですでに土地代金として計上されていることなどを総合的にみれば、高野の給料の実体は補助金そのものであり、この計画は給料に名を借りたマネーロンダリングを容認するものなのではないか。高野の場合、土地購入以前から継続的に受領していた通常の給料から土地代金を支払うというのとはわけが違おう。

 のちに監査委員会が「公金による私財形成のおそれがある」と述べたのは、監査委員からみても、明らかに違法とまでは断定できないものの、100%肯定できるものではないと感じたからにほかならない。日本には給料の性質までを規定する法律は存在しないのである。


(第12回へつづく)
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テーマ:社会 - ジャンル:政治・経済

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