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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第29回(最終回)
                             ★第1回から読みたい人はこちら

                             ★第1部から読みたい人はこちら


生かされなかった附帯決議

 平成17年3月17日、予算特別委員会においてりんごっこ予算は可決され、25日の本会議でも議決されることが確定的となった。では、裁判を取り下げるかどうかは議会の動向を見てから判断するとして3月24日に弁論期日を指定した矢野は、その日にどんな結論を出したのか。矢野は結論を出さなかった。その日矢野は、「明日(25日)の本会議での議決を待ってから」として、またも取り下げを保留したのである。

 取り下げたとたんに予算特別委員会の結果が覆り、本会議で否決される可能性があると考えたのか。裁判を駆け引き材料とし、議会をたんに自己利益を実現させる場としか考えていないらしい矢野にしかできない判断だった。

議決の3日後にやっと取り下げ

 3月25日の本会議は予算特別委員会での採決通りの結論となった。しかし、「草の根」を除く市議会としては、予算が可決されるのはやむを得ないとしても、りんごっこ保育園の現状を容認しているわけではなかった。平成17年度予算が可決された直後、民主党から「りんごっこ保育園に関する附帯決議の議決を求める動議」が提出され(提案者は「草の根」を除く全会派=自民党、公明党、民主党、生活者ネット、共産党、希望の空)、「草の根」を除く全会一致で議決されたのである。提案内容は以下のようなものだった。

1. 東村山市は、高野博子氏に対して、和解のための合意書に基づき、速やかに訴えを取り下げさせること。

2. 東村山市は、新年度を迎え、りんごっこ保育園に対し、都がいう新規申請ということから、東村山市私立保育所設置指導指針(ガイドライン)に基づいた園庭の確保、設備の改善など、子供が主人公の園づくりを速やかに行うよう、強く指導すること。そして、何らの改善も見られない場合は、東京都に対して認可の再考を働きかけること。その際は、次年度以降の予算も含め、市議会としても厳しい対応をせざるを得ない。

3. 東村山市は、りんごっこ保育園に対して、個人立から速やかに法人化するよう強く指導すること。

4. 東村山市は、各保育園の保育内容や運営をチェックするために、第三者評価制度を創設すること。

 改善内容も含め、実質的な期限付きという意味で高野にとってはかなり厳しい内容である(もちろん、東村山市議会が現実に附帯決議どおりの断固とした意思を持っていればの話だが)。保育環境の問題について矢野は当初から「国基準を満たしている以上、その必要も義務もない」と主張してきた。したがって、矢野の主張を真っ向から否定する附帯決議付きでは、予算は認められたとはいえ、はたして高野が提訴を取り下げるかどうかは微妙とみられていた。しかし決議から3日後の3月28日、高野は矢野、朝木とともに和解協議に出席し、「取り下げ」の意思を明らかにしたのだった。

 附帯決議にもかかわらず提訴を取り下げたということは、矢野は予算を認めた議決内容を附帯決議も含めて一応は評価したということだろうか。あるいは附帯決議など形式的なものにすぎず、一度予算さえ通ってしまえばあとはどうにでもなるとタカをくくったのだろうか。

議決と現実のはざま

 いずれにせよ、高野が提訴を取り下げ、議会が予算を承認したことで、その後の注目は東村山市行政が附帯決議の内容に沿った指導をし、高野がどの程度行政の指導に従うのか、また議会が具体的な改善の進行をどう監視していくかという点に移った。附帯決議は市民の代表である議会(「草の根」を除く)の決議であり、市民に対する誠実義務を負う行政は決議の内容を無視することはできない。これまで行政は「裁判中」を理由に「指導ができない状態にある」と言い続けてきたが、今後はその言い訳も通用しない。

 あるいは矢野は、附帯決議には法的拘束力がないことを見越して、国基準を満たしている以上、改善の必要はないとして行政の指導を拒否できると軽視し、取り下げに応じたのかもしれなかった。そもそも矢野は、国基準を満たして認可されている以上、議会が予算を付けるのは当然の義務であるかのような主張を繰り返してきたのである。つまり、高野は附帯決議にある「訴訟の取り下げ」には応じたが、その他の部分について議会の要求に応じる可能性はきわめて低いとみられた。

 しかし高野の対応はともかく、議会としては附帯決議に法的拘束力がないという理由でその後の改善についてチェックできないという言い訳はできない。議会は附帯決議後の経過を見届けなければなるまい。行政や高野だけでなく、議会もまた議会自身が行った附帯決議について重い責任を負ったということである。

 ただその一方で、どんなかたちであれ平成16年10月1日に開園したりんごっこ保育園には現実にすでに70名を超える園児通っている。その保育内容や職員待遇など細かな部分を無視すれば、東村山市がりんごっこ保育園の開園によって70名を超える待機児を解消したという現実、その分の家庭が市の子育て支援の恩恵を受けているという現実を無視することはできなかった。少なくとも当時、りんごっこ保育園内部から、あるいは保護者からはなんらの不満や不安の声も洩れてきてはいなかった。そのような状況下において、仮に高野が附帯決議の要求に応じなかったとしても、議会として改善を求める以上の対応をすることは困難だったという見方もできよう。東村山市議会は平成18年度予算決議においても附帯決議を議決するが(*)、高野が歩み寄ることはなく、現実にはなんらの効果も発揮しないままとなった。

いよいよ露になってきた異常さ
 
 しかし、いかに現実に70名を超える園児が通っているからといって、それだけの理由で認可取消にはできないとする根拠にはならないし、ものには限度というものがある。すでに2度目の附帯決議が議決された当時、りんごっこ保育園では矢野と高野の批判をいっさい受け入れない特異な体質を露顕させるチーズキッス事件と食中毒騒動退園事件が相次いで起きていた。附帯決議をめぐる裁判で東村山市は一審で敗訴したが、りんごっこ保育園がいかに国基準をクリアしているとしてもなお「劣悪な保育園」であると評価されてもやむを得ない背景事実があったのである。

 不調を訴える子供を病院に連れて行って医師に事情を説明しただけの保護者に対して、逆にそれを「意図的な虚偽情報」を伝えたなどとして責め立て、事実上退園に追い込んではいけないなどとは国基準には書いていない。もちろんだからといって、いかに反道義的行為が繰り返されていてもよいとは東京都も東村山市も考えてはいないだろう。

 とりわけ食中毒騒動の際には保健福祉部のみならず議会や市長宛に被害者から実情を訴える文書まで送付されていた。東京都と東村山市は、それでも結果としてなんらの対応もしなかった。議会も附帯決議は行ったものの、その後は何もしていないに等しかった。

 行政はいったい何を守ろうとしているのだろうか。平成14年に高野が朝木をともなって保健福祉部に認可相談に行っていた当時、担当者はすでに高野の背後に矢野がいることを知っていた。その高野に認可保育園を任せればどういうことになるか、担当者もあらかた見当はついていた。しかし行政は、行政手続法上、適法な認可申請を断ることはできなかった。

「認可申請を拒否すれば、今度はこっちがやられる」

 担当者はそういった。もちろん、保育という公共事業の委託をめぐり、申請を断ればただちに「やられる」という言葉が出ること自体、保育に携わっている人からみればかなり違和感のある反応と受け取られるかもしれない。申請者や申請内容について行政の側に不十分と考えられる点があれば話し合いによって歩み寄ればよいのではないか、というのが普通の感覚だろう。

 実際に、それまで東村山ではそうやってきた。しかし、高野と矢野にかぎっては通常の判断は通用しないと担当は考えていたということである。それでも、認可後に東村山市が負うことになる多大なリスクを考えれば、東村山市は仮に提訴されても高野の申請を拒否すべきだった。事実、多くの市民の懸念はすでに現実となった。

 自らの利害のためなら形式上違法でなければ(あるいは違法が発覚しなければ)何をしてもよいと考えている者と、行政がそれに対して正面から闘おうとせず、市民ではなく自分たちの立場を守ることを優先することを選んだ結果、りんごっこ保育園は認可された。さらに認可した側はその後、監督責任を問われることから逃れるために相次ぐ不祥事に目をつぶっているようにみえる。りんごっこ保育園は、行政の自己保身と責任放棄、それにつけ入り利用しようとする者が生み出したいびつな行政決定の、市民にとってきわめて不幸な実例ということになろうか。

 矢野と高野が住む久米川東住宅には広々とした園庭を持つ認可保育園がある。その保育園では秋の陽差しの中で園児が園庭を元気に駆け回り、歓声があふれていた。

(了) 

*高野が名誉を毀損されたとして提訴したのは平成18年度予算決議における附帯決議
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テーマ:社会 - ジャンル:政治・経済

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