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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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久米川駅東住宅管理費等不払い事件控訴審判決(その1)
 東京・東村山市の久米川駅東住宅管理組合が、同住宅に居住する東村山市議の矢野穂積と、矢野と同居する認可保育園・りんごっこ保育園理事長の高野博子らに対して管理費等の支払いを求めていた裁判の控訴審で東京高裁は平成22年1月20日、管理組合の請求を認容した一審の東京地裁(八王子支部)判決を支持、矢野と高野に対して76万円余の支払いを命じる判決を言い渡した。

 管理組合が矢野らに請求していたのは組合員(住民)が毎月収めている長期修繕積立金1万円と管理費7000円(以下、「管理費等」)。矢野と高野は組合が発足した平成15年10月以降、管理費等を1度も支払っていなかった(請求範囲は平成15年10月分から提訴の時点である平成19年9月までの48カ月間)。

 一審で矢野は、管理費等を決定した総会の成立そのものが不適法で、管理費7000円とした決議も無効、管理費は3000円が妥当などと主張。また、平成15年10月以降の管理費等については平成16年3月から毎月1万3000円を法務局に供託しているから支払い義務はないなどと主張したが、平成20年9月24日、東京地裁八王子支部は矢野の主張をすべて退けていた。(宇留嶋瑞郎)

供託はしても支払わない奇怪さ

 一審判決後、矢野は理解しにくい行動に出た。矢野は平成20年10月8日控訴したが、控訴自体はまだわからないではないとしても矢野は同時に月額4000円×1年分と月額1万7000円×3年分の管理費等を法務局に供託したのである。月額4000円とは、管理組合側が矢野の供託金がそもそも不足していると主張し、東京地裁がその主張を認めた金額である。

 つまり矢野は、管理費等が1万7000円であることについては管理組合の主張を認めたようにみえるし、矢野が供託したということは矢野に支払いの意思があるということでもある。とすれば、矢野はなぜ目と鼻の先にある管理組合に直接支払いの意思表示をせず、往復2時間以上かけて東京法務局府中支局まで行き、わざわざ供託の手続をしたのだろう(平成16年以降、矢野は毎月法務局に行き、供託を繰り返していた)。このあたりが矢野の、常人の理解を超えるところである。

 矢野の行動を追跡する過程で、いつまでたっても消えることのない深い靄のようなものに突き当たるのは初めてのことではない。そのたびに私は何度も立ち止まったが、たいていの場合は一定の地点で引き返し、それ以上の追跡と探索を打ち切った。引き返せなくなるのではないかという恐れを感じることもあったが、何より体力的にもたなかった。

 さて、管理費等の供託をめぐる、普通に考えれば合理的理解の難しい矢野の行動は、矢野の思考の中でどう整合していたのか。

 矢野は一審で供託によってすでに管理費等の支払い義務は履行している旨主張していた。一方、管理組合側は、金額も不足しており、矢野が管理組合に対して管理費等の支払いの意思表示をしたこともなく、管理組合が受領を拒否した事実もないとして供託は無効と主張していた。しかし管理組合は、矢野と高野ら3世帯を除くすべての居住者が遅滞なく管理費等を支払っている事実および管理実務上の問題から矢野が供託していた1万3000円の最初の15カ月分19万5000円については受領し、管理費等に充当していた。

 供託が有効とされるのは、自分が支払いの意思を表示しているにもかかわらず相手方が受領を拒否している場合である。支払おうとしている相手方が供託を無効と主張している場合でも、その供託金を受領した場合には供託の有効性を認めたものと判断された判例もないことはない。矢野は控訴理由書で次のように主張している。



 被控訴人(管理組合)は、2005(平成17)年2月21日に、被供託者である被控訴人が供託所に前記供託を受諾する旨の書面を提出した上で「支払うべき額の一部として供託を受諾する」等の条件は一切付すことなく、異議なく前記供託を受諾し還付をうけた。

 前記事実は、被控訴人が「原告は、平成17年2月23日被告矢野が供託した合計19万5000円について支払を受けたので、これを平成15年10月分から平成16年12月分までの各滞納管理費と対等額で相殺すると、……」と自認していることからも明らかであって、この結果、控訴人(選定当事者=矢野)は、仮に本件管理費等を支払う義務があるとしても、適法に弁済供託をし、すでに被控訴人は還付を受けているから、有効な前記弁済供託により(平成15)年10月分から2004(平成16)年12月分までの控訴人の全ての債務は消滅した。



 矢野がここで主張しているのは、「管理組合は供託金の一部受領に際してなんらの条件も付けていないから、当該期間の管理費等について1万3000円と認めた」ということである。管理組合は1万3000円でよいと認めたわけではなく、その間の供託金を「対等額と相殺する」といっているにすぎない。管理費等が組合総会で1万7000円と決定されたことの適法性は一審で認められているのであり、また普通の住民なら管理組合が団地管理のためにやむなく供託金を受領したことにつけ込むような真似はしない。要するに矢野は、管理組合が管理義務を果たそうとしたことを理由として、不足分を踏み倒そうとしていたことになろう。

たぐいまれな自己正当化

 ただ、管理費等の額は1万3000円が正当とする矢野の主張からしても、今度は控訴後に4000円×1年分と月額1万7000円×3年分を供託したことと辻褄が合わなくなるのではないか。この点について矢野は次のように主張している。



 弁済供託が適法になされ、被控訴人も前記期間の本件管理費等の金額が1万3000円であるとして異議なく前記供託を受諾したことから、控訴人は、その後、一貫して本件管理費等の金額は月額1万3000円であるとして、2005(平成17)年10月分から平成19年9月分までの期間、弁済供託を行った。
――略――
 にもかかわらず、原判決は……事実誤認により、法令解釈を誤り、本件管理費等は1戸あたり月額1万7000円であると判示しているので、控訴人は、その差額4000円に、各弁済期から遅れたことによる年5%の遅延損害金1万3084円を付して、7万3084円を弁済供託した。

 この結果、控訴人は、仮に本件管理費等を支払う義務があるとしても、2003(平成15)年10月分から2007(平成19)年9月分の債務につきすでに遅延損害金を含めその全額を適法に弁済供託をしたから、被控訴人が主張する当該期間の控訴人に関する全ての債務は消滅した。



 矢野の主張をまとめると、管理組合は当初1万3000円の供託金を異議なく受諾したから、矢野は管理組合が管理費等は1万3000円でよいと認めたと判断して、以後、管理費等として1万3000円を供託し続けた。すなわち管理組合の受領以後、矢野が管理費等を1万3000円しか供託しなかったのは管理組合が供託を受諾したためである。しかし一審は「事実誤認により、法令解釈を誤り」管理費等は1万7000円であると判示したので、念のため受諾分の不足分として月額4000円と法定利息およびその後の管理費等1万7000円を供託したから、矢野はすでに(余分に)管理費等を支払ったことになる、ということになろう。

 矢野の供託の経緯をみると、矢野が管理組合総会の決議を無視して管理費等を支払わず、管理組合発足から1年も遅れて管理費等に満たない額を法務局に供託したことをもって「支払った」ことにしようとしたにすぎないように思える。ところが矢野の主張によれば、問題の発端は矢野が正規の管理費等を支払わなかったことにあるにもかかわらず、平成17年10月分以降1万3000円しか供託しなかったこともいつの間にか管理組合の責任であるかのようにすり替えられていることがわかる。その上で矢野は、1万3000円しか供託しなかった原因は管理組合にあるが、一応1万7000円を供託したから債務はないと主張しているのである。

 たぐいまれな自己正当化であり自己中心的論理であると思うが、控訴審はその後、矢野が主張する「管理組合による供託の受諾」の存否をめぐり、1年以上の審理が続けられることとなった。

(つづく)
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