ブログマガジン エアフォース
ブログで興味深い記事を公開していきます。
著書紹介

民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

最近の記事

カテゴリ

プロフィール

プールマン

Author:プールマン

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク

QRコード

QR

FC2カウンター

万引き被害者威迫事件 第16回
裁判長を怒らせた矢野尋問

 被害店への訪問目的に関して被害者本人に対する最後の尋問が行われたのは平成12年2月23日(被害者が提訴していた『東村山市民新聞』裁判=東京地裁八王子支部)である。裁判の争点は「明代の万引きの事実はあったか」であり、被害者側代理人による主尋問では「万引き犯をどうして朝木明代と認識したのか」という点に尋問の大半が割かれ、平成7年6月19日の出来事についての尋問はされなかった。

 続いて矢野側代理人と矢野本人による反対尋問が行われたが、その後半で被告である矢野本人が被害者に対する尋問に立った。一連の朝木事件関連裁判の中で矢野が自ら尋問したのはこれが最初で最後である。矢野本人による万引き被害者に対する尋問を見よう。

矢野  あなたは別件の裁判(『聖教新聞』裁判)で、矢野とか朝木議員があなたのお店に3回来たというふうに証言されてますが、いかがですか。

被害者  いかがですかというか、それは本当ですかということですか。

矢野  間違いありませんかということです。

被害者  3回というのがですか。

矢野  はい。

被害者  3回という記憶が正しいかどうかというのは、1つは朝木さんと矢野さんが、たぶん警察から呼び出された日の夜だったと思いますけれど、パートさんのいるときに二人でみえて、外で朝木さんが待ってらして、矢野さんがパートさんに「店長はいるか」ということを聞いて、その次に、たまたまいなかったものですから、その日のうちの時間をずらして、何分かわかりませんが、もう1回来たということを話していました。その後矢野さんが来たということは聞いてないし、私も確認しておりません。もう一つは、朝木さんが、いつだったか忘れましたが、お礼参りというんですか、に来まして、男の方と朝木さんと、私が一人で立っているときにお店の中に入ってきて、にたっと笑って1周回って帰っていったということがありましたので、それで3回です。

矢野  3回来たのかと聞いたんです。

被害者  矢野さんが3回来たということはないと思います。

矢野  1日ということですか。

被害者  1日に2回。

矢野  朝木さんは何回ですか。

被害者  お店に来たのが、パートさんの話を聞けばそのときの2回。それから私のときに1回と、傘をさしてお店の前まで来たのが1回です。

矢野  朝木議員は何回なんですか。

被害者  4回来てます。

矢野  朝木議員は4回来ているんですか。

被害者  矢野さんと2回一緒に来て、お礼参りに1回来て、それから傘をさして時間をはかったかのように時計を見てお店の前まで来てまた帰っていきました。

矢野  私が1日に2回来たのと、朝木議員が4回だということですね。

被害者  はい。

矢野  私があなたの店に行ったときのお話ですが、パートさんから取材で来たというふうには聞いてませんか。

被害者  それはわかりません。

矢野  覚えてないんですね。

被害者  はい。
 
 実はこの尋問の前に1つ、記録に残っていない尋問がある。弁護士から引き継いだ矢野が最初の質問をしたときのことである。被害者が答える前に裁判長が介入して、矢野にこう聞いた。

「その質問は本件と何の関係があるんですか? 質問の意図は何ですか」

 矢野は裁判長に向かってこう答えた。

「原告(被害者)の人間性を明らかにしようと思いまして」

 矢野が被害者の「人間性」を問おうとしたとは驚きだが、矢野はまず相手を困惑させて動揺させ、自分のペースに引き込むつもりでもあったのだろうか。しかし、矢野の返答を聞いた裁判官は即座に厳しくこういった。

「法廷は人間性を問う場所ではありませんよ」

 矢野はただちに質問を撤回したが、この時点で裁判長は矢野の尋問全体の意図と方向性を見抜いていたのでないだろうか。

 さて、この裁判の争点は矢野と明代が『東村山市民新聞』で、万引き被害者が万引き事件を捏造し、根拠もなく明代に万引き犯の濡れ衣を着せたかのような報道をしたことに違法性があるか否かという点にあった。矢野が明代の無実を主張するのなら事実に基づいて被害者を追及すればよいのであり、とりわけ明代の死後、明代の万引き犯の汚名を晴らすと言い続けてきた矢野が、明代の万引きを主張する当事者との直接対決の場という絶好の機会を前にして、事件とは無関係の話を持ち出すヒマなどあるまい。要するに矢野は、被害者の主張を正面から突き崩す事実的根拠を持ち合わせていないがゆえに本筋から離れたところで被害者の主張の信用性を低下させようとしたのだろう。

 最初の質問を撤回したあとの矢野の尋問の内容も、まさに本質を離れた部分で「脅し」発言の存在を否定しようとする狡猾きわまるものというほかない。矢野がこの尋問の中で、被害者がパート店員から聞いた矢野の「脅し」発言の内容ではなく、来訪回数のみを執拗にただしているのは事前に十分計算されたものである。

 パート店員の証言によれば、平成7年6月30日、矢野と明代が被害店に来たのは3回で、うち最後の1回は矢野だけが店内に入り、明代は外で待っていた。7月2日に店にやって来たのは明代だけである。事件から4年半がたち、しかも法廷という場所で、この間さんざんビラで立て続けに「根拠もなく朝木明代に万引きされたとして被害届を出した」などと誹謗され、直接は関係のないメディアの裁判でも「虚偽の証言」をしたとして相次いで提訴してきた矢野本人と直接対峙し、被害者がすべてを自分が体験したわけではない訪問回数について混乱が生じたとしても無理はない。

 被害者は1年前の『聖教新聞』裁判での尋問で明代の訪問回数について「全部で、朝木さんが3回、私は確認してます」と答えている。被害者の記憶の中でこの「3回」とは、おそらく6月30日に店に入ってきた2回と7月2日の1回を合わせたものだったのだろう。矢野は『聖教新聞』裁判での被害者の供述をふまえながらまず、「矢野とか朝木議員があなたのお店に3回来たというふうに証言されてますが、いかがですか」と聞いた。矢野の質問には被害者の供述にはなかった「矢野とか」という文言がいつの間にか入り込んでいた。おそらく矢野は、その後に明代が1回行っていることを前提にこう聞いたのだろう。そうなれば、明代も矢野も6月30日には2回しか行っていないことになり、少なくとも回数に関しては、矢野の提出した「会話記録」の信憑性が裏付けられることになるわけである。これが矢野の狙いであり、この尋問の場においては、矢野は被害者を自分の土俵に引き込むことに成功した。

 矢野と明代の発言の順序にしてもパート店員の証言とは食い違っている。事件発生後、矢野と明代、さらには彼らの支持者である小坂渉孝らによる執拗な嫌がらせを受けてきた被害者にとって、矢野と明代の記憶はできれば脳裏から消し去りたいものにほかならなかった。矢野と明代によるお礼参りに関する主要な事実は矢野が被害者に対して「証拠もないのに訴えると罪になる」という威迫発言をしたことで、その他は枝葉の話にすぎない。被害者が矢野の威迫発言以外の部分について記憶が混乱していたとしても矢野と明代の行動に関する評価にはなんら影響がないし、細部に関する被害者の記憶の混乱を誰も責められない。

 一方矢野は、「私が1日に2回来たのと、朝木議員が4回だということですね」と最後に念を押し、「はい」という供述を引き出した。このやり取りで矢野は、尋問の目的を達したと考えたにちがいない。それが判決に影響するかどうかは別にして、矢野は一応、訪問回数の上では「威迫発言は存在しない」と主張できる根拠を得たことになったのである。

(第2部 了)

(第17回へつづく)

関連記事

テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

TOP