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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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万引き被害者威迫事件 第17回
記録されていなかった発言

『東村山市民新聞』の記事によって名誉を傷つけられたとして万引き被害者が矢野と朝木直子を提訴していた裁判で、東京地裁八王子支部は平成12年11月29日、矢野と朝木に対し連帯して100万円の支払いを命じる判決を言い渡した。その後、矢野と朝木は控訴したが平成15年7月31日、東京高裁が矢野らの控訴を棄却し、終結している(この裁判の詳細についてはあらためて書く機会があろう)。

 しかし、矢野と明代による被害者に対する威迫の事実関係については直接の争点ではなく、一審、二審とも判決文の中では触れられていない。矢野の側からすれば、敗訴はしたものの、威迫の点においてはわずかに、明代が万引き犯であると主張する側の傍証を否定する材料だけは残すことができたということになるのだろう。しかも矢野はこの裁判で、被害者の口から「矢野が来たのは2回」だったという供述を引き出し、矢野が提出した「会話記録」が正確であると主張できる言質を取ったかたちとなった。

 ところが一方、被害者は一貫して矢野が「『無実の人を訴えると罪になる』と言い残していった」と証言している。「行ったのは2回だ」とする矢野の主張と、会話記録には存在しない発言が「あった」とする被害者の主張の根本的な食い違いをどう理解すべきか。パート店員の証言が勘違いだったのか、その報告を受けた被害者の思い込みにすぎないのか。あるいは、そのどちらでもないとすれば、矢野の提出した反訳に偽造があることになる(矢野自身が4度の尋問で「会話記録は反訳のとおり」と供述している以上、たんなる誤りではあり得ない)。

 そこで私は、矢野が「正確」に反訳したと称するテープ(矢野がダビングして証拠提出したもの)によって、矢野反訳の正確性を検証してみることにした。「許さない会」裁判までは威迫発言の有無が直接的な争点ではなかったため、それまで誰もテープを聞き直すことによって反訳の正確性を検証したことはなかったのである。テープを直接聞くことによって、反訳の正確性だけでなく、平面的にしか再現できない反訳からはうかがい知れない言葉の調子や語気の強弱などといった、矢野と明代による「取材」の全体的な雰囲気も感じ取ることができるだろうとも考えた。

 私が店員との会話を録音したテープを聴いたのは平成14年10月のことである。同年10月3日、「許さない会」裁判で矢野が提出したものである。この日の尋問でやはり矢野は、会話は反訳のとおりであり、被害店に行ったのは2回であると供述している。では、実際にこの録音テープを聴いた結果はどうだったか。

 まず、矢野がいう1回目の訪問時の記録からみていくと、1回目については反訳のとおりだった(本連載第12回参照)。その口調も店員を責めるようなものとはあまり感じられなかった。しかし、その内容をみると、矢野が「失礼ですけど、どなた様ですか?」と聴かれた際、「ちょっと、取材」と答える様子は、やはり話をそらして名乗らなかったという雰囲気であることは否定できない。また、店に入った矢野の最初の問いかけである「こちらの方は?」という発言も、断定はできないものの、見方によっては、相手が被害者本人ではないことを矢野と明代が認識していたことを示しているようにも聞こえよう。なお、矢野がいう1回目の訪問時に明代が店の営業時間について「何時まででしたっけ」と聞き、「8時」までであることを確認していることにご注意いただきたい。

 矢野のいう2回目の訪問時の会話記録では、二人の口調とそれぞれの姿勢に若干の変化が感じられた。最初は矢野が口火を切るかたちで話しかけているのは1回目と同じだが、途中から明代が積極的、主導的に質問するようになり、口調も最初は穏やかだが、しだいに問い詰めるような調子に変化している。たとえば矢野が提出した会話記録の最後半の「お話ぐらいは聞いてるんじゃないですか? こういうことがあったという……」や「店長が『こういうことがあったのよ』ぐらいのことは……」という明代の発言には、「何も知らない」としか答えない店員に対するなにか苛立ちのようなものさえ感じられた。このあたりになると、矢野は詰問調になってきた明代の質問に割って入り、むしろ双方のなだめ役になっている。

 このしだいに高揚してきた感のある明代の発言の中に1カ所だけ明らかな「記録漏れ」があった。テープを聞くと、本連載12回目の※と※の間には次のような明代の発言があった。

「おかしな人たちですね」

 その口調は低く強く、どう聞いても店員を責めているようにしか聞こえない。続いて矢野が「へぇーっ」と、明代の詰問をなんとか中和しようとしたのか、小さく意味不明の声を上げている。

「どういう事情かわからないから取材に行った」という明代が、万引きの話は何も聞いていないという店員の話を聞いて、何度も確認するというのならまだわかる。しかし、店には店の事情というものがあり、店主がパート店員に万引き事件のことを話していなかったとしてもさほど不審なことではないし、店員が「聞いていなかった」ことについて仮に明代が不審を持ったとしても、いきなり「おかしな人たちですね」とまで飛躍し、非難する理由はあるまい。少なくとも明らかに冷静さを欠いた発言であり、被害店に対して明代が特別の感情を抱いていたと思われかねない発言である。だから矢野は、反訳で注意深く削除したのではないかと推測できた。

 つまり、明代が被害店に対して特別な感情を抱いていたということになれば、矢野がこれまで法廷で供述してきた「身に覚えがなく、どういうことなのかを確認するために行った」、すなわち中立的な立場で「取材に行った」とする趣旨の主張に大きな疑問符がつくことになる。矢野が意図的にこの発言を反訳から削除したのは明らかだった。この点について、私が作成した新たな反訳に基づいて行われた「許さない会」の尋問(平成14年11月28日)で矢野は、

「これはたぶん、発言がだぶっているので、十分に聞こえなかったので、反訳のときには起こしてないんだと思いますが、こういう部分があったとしてもおかしくないと思いますけども」

 と答えている。しかし、明代の語尾のあたりで矢野の「へぇーっ」という意味不明の声がわずかにかぶっているものの、明代の発言は明瞭に録音されていたのである。


(第18回へつづく)

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テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

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