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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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「越境通勤市議」事件 第3回
表現の違法性を認定

 東京地裁の「真実性」(生活の本拠の問題)までの事実認定は裁決取消訴訟における最高裁の判断と同じである。しかし、ある表現をめぐる名誉毀損にあっては、表現の自由も尊重されなければならない。本件裁判はあくまで表現に違法性があるかどうかをめぐるものだから、まず表現が原告の名誉を毀損するものであるかどうか、さらに表現に「真実性」及び「相当の理由」があったどうかも違法性判断の基準となる(「真実性」については本連載第2回で記載したとおり)。

 では、平成18年9月以降、矢野と朝木が佐藤に対して行ってきた「越境通勤市議」「公選法違反」などの記事や放送の文言に対する東京地裁の判断をみよう。



(名誉毀損性)

 これらの表現は、原告が、生活の本拠を東村山市内に有しないにもかかわらず、形式上、同市内に住民票を移転して、15年選挙の選挙権及び被選挙権を取得した上、同選挙に立候補して当選するとともに、選挙人として同選挙に投票し、さらには、これらの事実を追及されることを恐れて、逃げ回っているという事実をえん曲ないし間接的に摘示した上で、更に、このような事実が、公選法に規定する詐欺登録罪及び詐欺投票罪に該当するとの意見ないし論評を表明したものというべきであり、単に法的見解を表明したもので、事実を摘示したものではないとはいえない。

 そして、本件記事、本件サイト記事及び本件発言(筆者注=多摩レイクサイドFMにおける矢野の発言)は、その内容に照らしていずれも現職の東村山市議会議員である原告の社会的な評価を低下させるものであることは明らかであり、……被告矢野及び被告朝木は、本件記事、本件サイト記事により、原告の名誉を毀損したものであり、また、本件発言は、本件番組でのことであるから、被告法人の事業の執行についてなされたものである。



 東京地裁はこう述べて、矢野と朝木の個人的なビラとウェブサイトの記載だけでなく、総務省の認可を受けた公共性の高いFM放送における矢野の発言についても名誉毀損を認定している。

一定時期までの相当性を認定

 ただし、表現に名誉毀損性があっても、それが人身攻撃に及ばず、公共性・公益性があり、かつ真実性・相当性が認められれば違法性は阻却される。東京地裁が「真実性」を否定したことはすでに述べた。では、表現の「相当性」についてはどうか。東京地裁は次のように述べた。



(相当性1)

 本件転入届の際、原告の生活の本拠が東村山市内になかったとは認められないことは上述したとおりであるが、本件転入届は、平成15年4月27日に執行された15年選挙の選挙権及び被選挙権を得るための要件である3カ月前から引き続き東村山市内に住居を有している要件を満たすには10日しか余裕がない平成15年1月17日にされたものである上に、転入先はそれまで原告が日野市内から通勤をしていた当時の原告の勤務先である本件保育園の園舎の一部であった○○(アパート名)であり、外形的に明らかなこれらの事実だけからすれば、……被告矢野及び被告朝木において、原告が、15年選挙の被選挙権を得るために東村山市内に居住の実態がないにもかかわらず本件転入届に及んだのではないかという疑念を抱くことには合理的な理由がある。



 そのような「外形的事情があった」と認定する一方、続けて東京地裁は佐藤の側の対応にも触れて次のように述べた。



(相当性2)

 他方、本件転入届当時、○○(アパート名)が原告の生活の本拠たる実体を具備していたことについて、積極的にこれを裏付ける客観的証拠はなく、原告も、……原告のプライバシーに属する問題であったこともあって、19年選挙に関する裁決取消訴訟において平成20年3月21日に行われた本人尋問及びこれに先だって提出された陳述書に至るまでその詳細を明らかにしてこなかったことからすれば、被告らが疑念を抱き続けたことには合理的な理由がある。



 東京地裁は、「外形的事情」(相当性1)に加え、佐藤が「陳述書に至るまで詳細を明らかにしてこなかったこと」を理由に表現の相当性を容認したのである(「相当性1、2」の整理は筆者)。

なくなった「合理的な理由」

 しかしこれは言い換えれば、佐藤が平成20年に陳述書を提出したあと、あるいは遅くとも本人尋問終了後(尋問の法廷には矢野も朝木も出廷していた)に同じ表現行為を行えば、相当性も認められないと述べたに等しかろう。

 佐藤が陳述書を提出する前まで矢野は、どんな調査をしたのか、佐藤が東村山で借りていたアパートは「ワンルーム」と主張していて、裁決取消訴訟においても佐藤に対する尋問の直近に提出した58ページにおよぶ準備書面で、「佐藤が東村山で賃借しているアパートはワンルームで狭いから、日野の家財道具は運び込めない。よって東村山のアパートは生活の本拠とはいえない」(趣旨)と主張するなど、準備書面全体が東村山のアパートが「ワンルーム」であることが前提になっていた。

 当時、佐藤が東村山で借りていたアパートは2DKである。矢野は佐藤の東村山のアパートが単なる「居場所」であるという思い込みからそれが「ワンルーム」だと決めつけたのだろうか。

 いずれにしてもその後、矢野と朝木から「ワンルーム」の主張は消え、本件裁判では佐藤が当初東村山で借りていたアパートが「ワンルーム」だったなどとはいっさい主張しなかった。佐藤が明らかにしたことによって間違いだったと気がついたということだろう。

 この「ワンルーム」をめぐる矢野と朝木の主張の変化は、時期的にも〈19年選挙に関する裁決取消訴訟において平成20年3月21日に行われた本人尋問及びこれに先だって提出された陳述書に至るまでその詳細を明らかにしてこなかったことからすれば、被告らが疑念を抱き続けたことには合理的な理由がある。〉とした東京地裁の判断と一致している。彼らは「合理的な理由」がないと判断したがゆえに「ワンルーム」の主張をあっさり捨てたのである。

 すると佐藤の本人尋問以後、とりわけ、

〈佐藤の証人尋問における供述や陳述書の記載に証拠を総合すれば、……平成15年1月17日ころ、本件保育所が園舎の一部建替えのため賃借していた2DKのアパート……を佐藤の住居と定めてその日常生活の場とし、……同年(平成19年)5月に自ら賃借人となり、……佐藤は、本件選挙の期日の3カ月以上前から引き続き東村山市内の同室に生活の本拠を有していたというべきである。〉

 と認定した平成20年4月30日の東京高裁判決、あるいはどんなに譲歩してもこの東京高裁判決を追認した平成12月5日の最高裁判決後に佐藤を「越境通勤市議」などと呼ぶことについても「ワンルーム」と同様に「合理的な理由」はないということになるのではあるまいか。

 しかも裁決取消事件で東京高裁が佐藤の「平成15年1月時点での生活の本拠」の認定にあたり、その根拠として〈佐藤の証人尋問における供述や陳述書の記載に証拠を総合すれば〉としてまず〈佐藤の証人尋問における供述や陳述書の記載〉を挙げていることは、東京高裁が佐藤の供述を最重要視していたことをうかがわせる。この認定が最高裁で確定したという事実はきわめて重いというべきだろう。
 
 本件における相当性の判断にあたり、東京地裁が〈19年選挙に関する裁決取消訴訟において平成20年3月21日に行われた本人尋問及びこれに先だって提出された陳述書に至るまでその詳細を明らかにしてこなかったことからすれば〉と述べたのも、裁決取消訴訟における事実認定の経過を十分に意識したものと思う。したがって上記説示の趣旨からすれば、本件各表現の相当性が認められるのは陳述書の提出から本人尋問までと理解するのが自然なのではあるまいか。

おそろしい発想

 本件各表現の中には、「本人尋問」以後のものが含まれており、控訴審ではその部分については判決が覆る可能性もあるという判断もあった。しかし佐藤は、「平成15年1月当時、佐藤の生活の本拠は東村山にあった」とする事実認定を評価して控訴せず、平成23年2月9日、判決は確定した。

 朝木によれば、平成18年秋に開始した佐藤に対するネガティブキャンペーンは「やられたことをやり返している」つまり「仕返し」だったとのことである。「仕返し」という発想は、議席譲渡事件について彼らが何の反省もしていないことの表れである。わざわざレンタカーを借り、さらには駐車場まで契約して張り込んだ執念深さはなかなか真似のできないことと思うが、それも復讐の念を反映した一面もあったと考えれば納得もできよう。

 最高裁で繰り上げ当選が無効とされ、矢野が議会を追われたことの屈辱は十分に想像できる。しかしあれほど市政を混乱させたにもかかわらず、反省どころか逆に復讐の炎を燃やし続けていたところに矢野と朝木の本当のおそろしさがある。

(了)
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