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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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「セクハラ市議」誹謗中傷事件 第6回(最終回)
「『セクハラ』は独自の見解」

 東京高裁は「セクハラ」や「風俗マニア」などの文言は意見表明であり、薄井の社会的評価を低下させるが、その前提事実は薄井が出演したアダルト番組が議員任期開始後もネット上に公開されていたことであると認定した。

 その上で東京高裁は、①「セクハラ」「条令違反」②「エロ・ライター」「風俗マニア」に分けて、矢野と朝木の主張が正当なものであるか否かについて判断を示している。

 まず①「セクハラ」「条令違反」について東京高裁は次のように述べた。

(「セクハラ」とする主張について)

〈控訴人らは、被控訴人は市議会議員に当選し、任期が開始した後も本件ネット動画をネット公開していることを前提事実として、それは「セクハラ活動」であり、被控訴人は「セクハラ市議」、「セクハラ活動家」であり、セクハラを禁じる東村山市男女共同参画条例に違反するから、……(控訴人らの)意見表明は、その枠内にあると主張する。

 そこで判断するに、本件ネット動画は、被控訴人が市議会議員に当選し、その任期が開始した後も、平成19年6月25日ころまでネット公開されていたことは、争いのない事実……である。しかし、本件ネット動画は、通常のネット動画と同様、視聴者の方からアクセスしなければ見たり聴いたりすることはできず、視聴者がその意に反して見たり聴いたりすることを強要されるものではない。したがって、被控訴人が本件ネット動画で性的な言動をしても、それは、被害者(視聴者)の意に反する性的な言動という「セクハラ」の一般的な定義に該当しないから、セクハラには当たらないというべきである。したがって、これを「セクハラ」であるとする控訴人矢野及び控訴人朝木の意見表明は、独自の見解であるというべきである。〉

(「条例違反」とする主張について)

〈東村山市男女共同参画条例2条⑶号は、セクハラについて「性的な言動により当該言動を受けた相手方の生活環境を害すること又は性的な言動を受けた相手方の対応によりそのものに不利益を与えることをいう。」と定義しているところ、前記のとおり、本件ネット動画における被控訴人の性的な言動は、受ける側がアクセスしない限り、その者の耳目に触れないものであるから、上記条例2条⑶号には該当しない。また、同後段は、性的な言動をした者が、それを受けた相手方の対応を不満とすること等により、地位の優越等を利用して相手方に対し不利益を与えることをいうものであるから、本件ネット動画における被控訴人の性的な言動は、本件条例2条⑶号にも該当しない。〉

 東京高裁は矢野と朝木が薄井の言動等に対して宣伝した「セクハラ」との主張は「独自の見解」で、「条例違反」も「『条令違反』にも該当しない」と結論付けた。いずれもきわめて常識的な結論である。

 では名誉毀損についてはどうか。東京高裁は次のように述べて、①「セクハラ」「条令違反」についての名誉毀損の成立を否定した。

〈意見ないし論評を表明する自由は、民主主義社会に不可欠な表現の自由の根幹をなすものであるから、少数説や独自の見解の表明、さらには誤った意見ないし論評の表明もまた保護されるべきであり、これに対する反論、反撃は言論の場において行われるべきである。したがって、控訴人矢野及び控訴人朝木が、被控訴人の性的な言動を録画、録音した本件ネット動画のネット公開を「セクハラ」に該当すると誤り考え、さらに、セクハラを禁止する東村山市男女共同参画条例に違反すると誤り考えたことをもって、意見表明の域を逸脱したものということはできない。〉

 動画の公開について、矢野と朝木の記載は誰が主体だとしているのかという論点もあった。この点について東京高裁は、矢野と朝木の記述からは動画の公開について「『薄井が主体的に関与した』と断定したとまではいえない」と判示した。そう断定したと判断されていれば名誉毀損に関する判断も変わった可能性がある。

 誤った意見を内心で抱くことと、それをすぐ不特定多数に対して断定的に公表することとは別のようにも思うが、議員任期開始後も、薄井が出演した動画がインターネット上に公開されていたという事実に照らせば、矢野と朝木が薄井に対する認識を誤ったとしてもやむを得ない側面があるという判断なのだろう。

「『エロ・ライター』『風俗マニア』の相当性には疑問」

②「エロ・ライター」「風俗マニア」について東京高裁は次のように述べた。

〈被控訴人は勤務先である○○社の仕事として本件ネット動画に出演していたものであること、被控訴人はキャスターとして与えられた原稿を読み上げていたものであり、自ら原稿を書いていたものではないことに照らせば、「風俗マニア」、「エロ・ライター」という意見表明の相当性には疑問なしとしない。〉

 薄井に対する「風俗マニア」「エロ・ライター」という意見表明の内容は相当ではないという判断である。

 しかし東京高裁はここでも、薄井の意思とは無関係であるとはいえ、動画がネット公開されていた事実を重視し、薄井に対する「エロ・ライター」、「風俗マニア」とする表現については「相当」とは認めなかったものの、〈意見表明としての域を超えるとまではいい難い。〉と結論付けた。

異なるニュアンス

「セクハラ」「条令違反」「エロ・ライター」「風俗マニア」とする意見表明に関する東京高裁の判断を改めて整理すると次のようになる。



①議員任期開始後も、薄井が出演していた動画がネット公開されていたことは事実である。

②「セクハラ」「条令違反」「エロ・ライター」「風俗マニア」とする矢野と朝木の意見表明は「独自の見解」であるか「相当ではない」。

③しかし、いずれも意見表明の域を超えるとまではいえない。



 平たくいえば、矢野と朝木の薄井に対する「セクハラ」などという宣伝は、名誉毀損をかろうじて免れただけで、誤りだったと認定されたということになろう。意見表明の内容は否定されたが名誉毀損は認定されなかったという点において、この部分は佐藤裁判の結論とよく似ている。

 矢野と朝木は政治宣伝ビラ「東村山市民新聞」170号とウェブ版「東村山市民新聞」で〈任期後も出演した「アダルト動画」が公開されている以上、「エロライター」「性風俗マニア」等と批評されても仕方がないと断定〉と記載している。しかし東京高裁は動画がネット公開されていた事実は認めているものの、彼らの意見表明を「誤った見解」「相当ではない」と明確に認定しているのであり、「(東京高裁が)……と批評されても仕方がないと断定」とする矢野の記載とはだいぶニュアンスが異なろう。「見解としては誤りとしたが、意見表明の域を逸脱していないと認定した」とすべきだが、自らの非を絶対に認めない矢野と朝木の特異性においては容認できなかったということだろうか。

 いずれにしても、ネット動画の公開に関して薄井が関与を否定し、矢野と朝木も関与を立証できていない(東京高裁は「関与はない」と認定した)。動画も4年前に削除されている。したがって矢野と朝木にはすでに、薄井に対して新たに「セクハラ」「条令違反」「エロ・ライター」「風俗マニア」などと「意見表明」する根拠はないということになる。

(了)
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テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

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