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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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「重要容疑者」事件 第6回
強かった文言へのこだわり

「重要容疑者」という文言の字義的解釈および〈全体として、朝木議員の転落死の原因が、明らかな自殺であることを示す記述とはなっていない。〉〈原告には、朝木議員に死んでもらいたいと考えるだけの動機があったように読み取れる〉とする理解の上で東京地裁は、本件記事における「重要容疑者」という表現について次のように認定した。



(「この件ではむしろ矢野は重要容疑者の一人」の中の)「この件」という表現は、むしろ朝木議員の転落の原因となった事件そのもののことを指すと考える方が自然である。……「重要容疑者」という表現の持つ意味とその強烈さ、また前示のように、原告が、朝木議員の「自殺」の結末を知っていた等とする指摘があることを考えると、前記「争い」の内容自体が、原告による朝木議員に対する自殺の教示、強要等といった自殺幇助罪に相当し得る犯罪行為を想起させる表現であるといわざるを得ない。



「重要容疑者」の文言を含む一節の最後に柳原は「ただしそれは事件性の有無と結びつくものではなく」とただし書きを加えている。明代がビルから転落する直前に事務所で矢野と会い、なんらかの諍いが起きていたとしても、(「この件」は)転落に関わる事件性の有無とは関係がないという趣旨のように読み取れる。

 したがってその意味では、「重要容疑者」という文言も、「犯罪の重要容疑者」という通常の意味で使用されたものではないように思える。それでも東京地裁は、文言の持つイメージの強烈さやそれまでの記事全体に対する印象(理解)から、「争い」の内容について〈原告による朝木議員に対する自殺の教示、強要等といった自殺幇助罪に相当し得る犯罪行為を想起させる〉とした。

 つまり裁判所が考える「重要容疑」とは〈自殺の教示、強要等といった自殺幇助罪に相当し得る犯罪行為〉ということになろう。ただ、一般読者が「容疑者」の法律的な意味を含め、裁判所がここで挙げた罪名あるいはそれらの罪名に「相当し得る」とまで考えるだろうかという疑問はある。

 しかし東京地裁は「この件ではむしろ矢野は重要容疑者の一人」とする表現に対する一般読者の読み方について次のように結論付けた。



(「重要容疑者」)という文言に対する東京地裁の結論

「この件ではむしろ矢野は重要容疑者の一人」という表現は、一般読者の注意と読み方をもってすれば、朝木議員の転落死について、原告が、何らかの犯罪行為、すなわち、自殺幇助のみならず、殺人、傷害致死、過失又は重過失致死等といった容疑を含む行為を引き起こしたとして、捜査機関の嫌疑を受けている「重要容疑者」である事実を指摘する表現であると解さざるを得ない。



 こうして東京地裁は矢野の主張を認め、記事の名誉毀損を認定したのである。真実性・相当性については、被告側はそもそも矢野が何らかの犯罪に関与した「重要容疑者」であるとする原告側主張を否認しているから当然、その点に関する真実性・相当性の立証をしていない。このため東京地裁は、真実性・相当性の証明もないとして被告に対し30万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 当初から「重要容疑者」という文言に対する東京地裁の心証は芳しいものではなかったと聞く。最後まで裁判所の「重要容疑者」という文言に対する字義的、法律的解釈へのこだわりは強かったようにも思われた。

見覚えのある顔ぶれ

 これに対して柳原は控訴し、控訴審第1回口頭弁論は平成23年7月19日に開かれた。控訴審においても、「重要容疑者」をどう解釈するかが焦点になるとみられた。

 東京高裁は「重要容疑者」という文言について字義どおりの判断をするのか、あるいは控訴人(柳原)が主張するように、犯罪とは無関係の出来事に関与した疑いという程度の文言として捉えるのか。柳原は一審判決について字句にとらわれた解釈であると主張していた。

 裁判長は開廷を告げるとすぐ、被控訴人に向かってこういった(発言内容は趣旨)。



裁判長  原判決は「重要容疑者」という文言に引きずられてると思うんですよね。具体的に何の犯罪の容疑と書いてあるわけではありませんしね。



 裁判長はこういうと、矢野に対して次回期日までに「もう1回やりますので、被控訴人はそのほかに名誉毀損箇所があれば挙げてください」と言い渡し、閉廷した。裁判長の発言の趣旨は、「重要容疑者」に関する東京高裁の見解は少なくとも原審と異なり、名誉毀損は成立しないということのようだった。

 だから「重要容疑者」という文言を問題とするだけでは名誉毀損にならないから、ほかに名誉毀損となる記載があれば主張してほしいと東京高裁はいう。しかし私には、これはかなりの無理難題のように思えた。なぜなら、そもそも「重要容疑者」以外に名誉毀損と主張する記載は存在しないからである。

 第2回口頭弁論は9月27日に開かれる。はたして矢野は「重要容疑者」以外の名誉毀損記述を挙げることができるのかどうか。仮に矢野の主張に一定の理由があると認めた場合には、控訴人に対してさらに反論を求める可能性もないとはいえないが、その可能性はきわめて低いのではないかと私はみている。

 余談だが、控訴審で合議する3人の裁判官のうち、裁判長ともう1人の裁判官は別件事件でみたことのある顔だった。2人とも朝木関連裁判を担当したことがあり、朝木事件で矢野がどのようなことをしてきたかについても熟知する人物だったのである。とりわけ陪席裁判官はかつて東京地裁で矢野が被告となった事件を担当し、矢野に170万円の支払いを命じたことがあった。

(「第2回口頭弁論後」につづく)
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