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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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「重要容疑者」事件 第8回
どさくさに紛れた主張

 ところで準備書面で矢野は、一審判決の正当性を主張する過程で独自の妙な主張を紛れ込ませていた。その一節をみよう。



(一審の東京地裁は)当該記述(「重要容疑者」)部分の前後の文脈を含めた本件記事全文を詳細に検討した上で、次のように判示認定している。

「被告は、本件記事中で、朝木議員の転落死の原因が、同議員の自殺であることは明確に記されていると主張するが、第10段落では、むしろ朝木議員の身辺の異変、すなわち同議員が『自殺』するかもしれないという結末を、原告が知っていたかのように記述しているのであって、それが単なる自殺でないこと、要するに自殺を装った事件もしくは事故であることを示すように受け取れる表現が用いられているのであるし、第3段落で、朝木議員が、発見直後に自ら救急車の手配を断るなど、何者かからの襲撃を受けたとは思えないような行動をしていたと記述する点は、同議員が自ら死を選ぼうとしたことを暗に指摘していると解する余地があるけれども、逆に見ず知らずの何者かに襲われたのではなく、親しい知人との争いの結果として、自分では意図せずに転落し、その何者かをかばおうとしたものと受け取る余地もあるのであって」、と判示し、本件朝木明代議員転落死事件が、単なる「自殺」とはいえないと認定しているのである。



 一審の東京地裁はあくまで柳原の記事を一般読者がどう読むかについての判断をしたのであって、「自殺か他殺か」の事実認定をしているわけではない。まして東京地裁は「(読者は柳原の記事を)『自殺』と解する余地はあるけれども、逆に争いの結果として意図せずに転落したものと受け取る余地もある」と述べたにすぎないことは明らかである。これをどう読めば、明代の自殺事件が「単なる『自殺』とはいえない」と認定したことになるのか、かなりの主観的飛躍があるというほかない。

 矢野がここでいう「単なる『自殺』とはいえない」とは「何者かとの争いの結果、自分では意図せずに転落した」という意味である。「何者かとの争い」と「意図せず転落」が重なれば、すなわちそれは「他殺」と言い換えることもできる。裁判長の発言の様子から逆転敗訴を覚悟した矢野は、どうせ請求が棄却されるのなら、一審では明代の自殺が「単なる『自殺』ではない」=「他殺」と認定されたことにしようというところだったのではないかと私はみている。見上げた執念というべきだろうか。

交代した裁判長

 こうして平成23年9月27日、第2回口頭弁論を迎えた。矢野は開廷10分前に入廷し、開廷直前には朝木も入廷した。朝木は今も自殺直前に明代は事務所に立ち寄っていないとする矢野の説明を信じているのか、あるいはすべての事実を知った上で矢野に従っているのか。

 余談だが、10年ほど前、東京地裁の控室で私は朝木に聞いたことがある。

――もういい加減に嘘をつくのをやめてはどうか。まだ若いんだから、いくらでもやり直しはできる。

 すると朝木は床に視線を落としたままこういった。

朝木  私ももう、若くないから……。

 もう若くないから、やり直す時間はないという意味であると理解できた。それは明らかな誤りであるものの、何かに対する正直な告白であると私は受け止めた。朝木は自分自身にそう言い聞かせているようでもあった。

 このやりとりをそばで聞いていた矢野の心中は穏やかではなかっただろう。朝木がまともな部分を見せたのはそれが最後だった。

 さて、柳原は矢野の準備書面に対する反論を提出していたが、双方の書面のやりとりは前回口頭弁論における裁判長の指示に基づくものだった。ところが第2回口頭弁論の終了間際になって、どうもこれらのやりとりはほぼ無駄なものになったような印象を受けた。

 冒頭、裁判長は裁判長が交代したことを告げ、双方が提出した準備書面を確認した上で結審した。しかしその後、裁判長は判決言い渡し期日を平成23年11月17日午後1時15分と指定したあと、双方に和解を勧告したのである。

 前回、裁判長は矢野に対して別に名誉毀損箇所があれば指摘するように言い渡した。その時点で、東京高裁は「重要容疑者」との表現に名誉毀損は成立しないとの判断に傾いているのではないかとみられた。少なくとも第1回口頭弁論後の書面のやり取りは、「重要容疑者」との文言には名誉毀損性がないという判断を前提とするものだったと考えられた。

 和解を勧告するのなら、最初から書面のやり取りは必要ない。つまり、裁判長が交代したことで判断の内容にもなんらかの変化があったことをうかがわせた。

 和解協議では「重要容疑者」とする表現が矢野の社会的評価を低下させたかどうかだけでなく、記事の他の部分についても明代の転落死に矢野が関与していたと読めるかどうかという点も焦点になるものと思われた。しかし最終的に和解は成立せず、平成23年11月17日午後1時15分、判決が言い渡されることになった。

 一審判決が維持されるのか、なんらかの変更がなされるのか。確かなのは、最も重要な「明代が自殺直前に事務所に立ち寄り、矢野と会っていた可能性」が否定されることはないだろうということである。

(「判決後」につづく)
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