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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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万引き被害者威迫事件 第23回
見られていた矢野と明代

 私には平成7年6月30日、矢野と明代が被害店を訪れたのが「3回」であるという確信はあった。本質的に重要なのは回数ではなく、矢野が平成7年6月30日に店員に対して「オーナーに、証拠もないのに人を訴えると罪になると伝えて下さい」と言い残したか、あるいはそのような事実はなかったのかということである。したがって、矢野が訴状で、裁判所に提出した「会話記録」の信憑性を問題にしている点においてこの裁判そのものが論点のすり替えであることがわかる。

 しかし、事実がそのとおりであったとしても、裁判で「2回」だったということになれば、矢野が提出した「会話記録」の正確さが認定されることになる。それはすなわち「威迫発言は存在しなかった」と認定されるに等しく、その認定が「事実」として定着してしまうことは避けられない。矢野にとって、すでに一連の裁判のすべてでその主張が排斥されているとはいえ、「威迫発言は存在しなかった」と認定されれば再び「冤罪」を主張する大きな材料を得ることになるのは間違いなかった。

 一方、「2回」であるという矢野の主張が否定され「3回」だったという事実が認定されれば、矢野の威迫行為の事実および明代の万引きの事実が確かに存在したことがあらためて確認されることになる。この提訴に際して矢野がどこまで自信を持っていたのかはわからないが、私はこの裁判を絶対に負けてはならない裁判と考えるとともに、明代の万引きの事実を裏付ける絶好のチャンスと受け止めていた。その根拠は、パート店員の警察での証言と、パート店員から報告を受けた被害者の「矢野さんが『なにか訴えられるぞ、みたいなことをいった』という証言である。2人の証言には事件から10年たってもまったくブレがないということがなにより心強かった。

 そのパート店員の証言をもう1度確認してみよう。パート店員は平成7年7月4日、東村山署の事情聴取で矢野と明代が来訪したときの状況について次のように供述している。

⑴平成7年6月30日、矢野と明代は①午後5時20分ごろ②午後7時少し前③午後7時45分ごろ――の3回、被害店を訪れた。

⑵3回目に男が1人で入ってきて、「オーナーはまだ帰ってきてませんか。今日は帰りますけど、オーナーに、無実の人を訴えると罪になると伝えてください」と言い残していった。

 これがパート店員が経験した矢野と明代の行動だが、実はこの夜、被害店にはもう1人の来訪者があった。パート店員は当初、矢野と明代が身元を明かさなかったために、2人が誰なのかについて薄々は感じていたものの、確信を持つには至らなかった。しかし店員は、もう1人の来訪者によって2人が誰であるかを教えられていたのである。

 そのもう1人の来訪者とは被害店のすぐ隣の不動産屋の社長だった。社長は矢野と明代が2回目に来て、出ていったすぐあとにやって来ると、パート店員にこういった。

「今の2人は問題の議員さんだね。2人は隣のラーメン屋に入ったぞ」

 矢野と明代はすでに被害店の営業時間が午後8時までであることを知っている。午後7時過ぎに並びのラーメン屋に入ったという2人の行動を普通に考えれば、夕食を取りながら店主の帰りを待っていたものと理解できる。言い換えれば、午後7時過ぎに1軒隣のラーメン屋にいた矢野と明代が、食事を終えたあと被害店に行かない方がむしろ不自然であるともいえるだろう。

 この点に関する矢野のきわめて興味深い供述がある。平成14年11月28日に行われた『許さない会』裁判で、被害店への来訪目的と回数を問われた尋問に続く部分である。

「許さない会」代理人  この日、あなたのお話では、(被害店に)7時とか8時とかに行ってるわけですね。食事、この日してますか。

矢野  してると思いますけどね。私のほうは夕食はすごい遅いときが多いですから、だいたい10時とか11時で普通ありますからね。だから、そんなことをお聞きになってもあんまり意味がないと思いますけど。

代理人  この日、どこかで食事をして待ってたとか、そういう記憶はありませんか。

矢野  たぶん、事務所に戻ったんじゃないかと思いますよ。案外近いところだから。食事とは関係ないと思いますよ。

代理人  全然記憶はないってこと、もしくは事務所に戻ったっていう記憶があるってこと。

矢野  だから、事務所ではないかという記憶です。

代理人  ぼんやりした記憶ということね。

矢野 さきほど申し上げたとおりです。

 この一見なんでもない短いやりとりの中には、ギリギリの駆け引きが凝縮していた。「許さない会」の代理人が来訪目的とは本来は無関係の夕食のことについてなぜ聞くのか、矢野はその意味を瞬時に理解したはずである。1軒隣のラーメン屋で食事をしたといえば、当然、被害者の帰りを待っていたのではないかと問われるのは間違いない。矢野はラーメン屋に入ったのを見られたことを悟り、「事務所に戻った」ことにしたのである。公の場ではなかなかボロを出さないこのあたりの矢野のとっさの機転は、常人にはとうていマネのできない特異な才能というほかない。

 ただ、とっさのごまかしや言い逃れで相手の追及をかわす矢野の特異な才能も、ウラを取られていなければの話だった。万引き事件でレストランからまんまと他人のレシートを入手して画策したアリバイ工作がウラを取られて簡単に見破られたのと同じように。

 裁判中の平成16年9月16日、私はパート店員の証言の裏付けを取るために不動産屋の社長を訪ねた。すると社長は、「被害店に教えに行ったこと」は覚えていなかったものの、「2人の議員がラーメン屋に入ったことは確かに記憶している」と答えた。パート店員は「2人がラーメン屋に入った」という情報を社長から聞いたと証言しており、それ以外にこの情報を知る機会はなかった。つまり、私に対する社長の証言はパート店員の証言を十分に裏付けるものと判断できた。矢野が1人で店に入ってきてパート店員に「無実の人を訴えると罪になる」という伝言を残していったのは社長が教えにきたあとのことであり、このときの状況はパート店員の記憶により鮮明に残ったのである。


(第24回へつづく)
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テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

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