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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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「重要容疑者」事件 第9回
 平成7年9月1日午後9時19分、朝木明代は自宅から事務所にいた矢野に「ちょっと休んで(から事務所に)行きます」という電話をかけた。明代は午後10時ごろ、東村山駅前のビルから転落、死亡したが、矢野によれば、9時19分の電話のあと明代は事務所には立ち寄っていないという。

 しかし、この矢野の説明は事実なのか。当初矢野が主張していた「事務所からの拉致説」を自ら否定した事実、その後「自宅からの拉致説」に変遷した事実、警察の捜査では拉致を裏付ける事実は発見されていないこと、明代の自宅から自殺現場に向かう途中には矢野のいた「草の根」事務所があること、明代は「事務所に行く」といっていたことなどを総合すると、明代は実際には自殺直前に事務所に立ち寄っていたのではないかという疑いをぬぐいきれない。

一審判決を変更

 矢野と明代は万引き容疑で東京地検の取り調べを数日後に控えていた。自殺直前に明代が事務所に立ち寄っていたとすれば、万引き容疑で東京地検の取り調べを数日後に控えていたという背景から矢野と明代の間で何かがあった可能性があるのではないか――この点について柳原はブログにおいて、

〈おそらく、このビルにたどりつく前にだれかと争った可能性も考えられるが、本人が死亡した以上、そのことを確定させることは困難と見られる(ただしそれは事件性の有無と結びつくものではなく、この件ではむしろ矢野は重要容疑者の一人)。〉

 と記載した。この記載をめぐり東村山市議の矢野穂積が提訴していた裁判で東京高裁は平成23年11月17日、一審から減額したものの、柳原に対し20万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 一審判決では記事全体について〈朝木議員の転落死の原因が、明らかな自殺にあることを示す記述とはなっていない。〉などとし、最終的に「重要容疑者」との文言について〈原告が、何らかの犯罪行為、すなわち、自殺幇助のみならず、殺人、傷害致死、過失又は重過失致死等といった容疑を含む行為を引き起こしたとして、捜査機関の嫌疑を受けている「重要容疑者」である事実を指摘する表現であるといわざるを得ない。〉と結論付けた。

 では、これに対して東京高裁は「重要容疑者」についてどんな判断をしたのか。東京高裁はこう述べた。



 ④(筆者注=『この件ではむしろ矢野は重要容疑者の一人』とある部分)を除く部分において述べられている内容を要約すると、……本件記事は、朝木議員の転落死は自殺であろうけれども、この自殺には同議員の背後にいる被控訴人が関与しており、被控訴人には何らかの方法で自殺に関与した犯罪の嫌疑があるとの事実を暗に摘示したと見るのが相当であり、同議員が転落死する原因に関する控訴人の意見を表明した論評にとどまるものではない。



 本件記事に対する理解において大きく異なるのは、一審の東京地裁が「明らかな自殺であることを示すものではない(「他殺」の含みもある)としているのに対し、東京高裁は「自殺であるとする記述である」としている点である。しかしそれでも東京高裁は、「被控訴人には何らかの方法で自殺に関与した犯罪の嫌疑があるとの事実を暗に摘示したと見るのが相当」とした。判決内容の変更はこの違いによるもののようである。

明白な事実誤認

 すなわち東京高裁は、明確には判示しないものの、「重要容疑者」との文言について記事全体の意味内容を検討した上で「何らかの方法で自殺に関与した犯罪の嫌疑がある」との趣旨であると判断したとものとみられる。ただ、東京高裁は「この件ではむしろ矢野は重要容疑者の一人」とある部分を除く部分について検討したと述べるが、現実的にそのようなことが可能なのだろうかという疑問もないではない。

 やはり東京高裁も、「この件ではむしろ矢野は重要容疑者の一人」との文言を意識しているがゆえに記事全体の趣旨について〈被控訴人には何らかの方法で自殺に関与した犯罪の嫌疑があるとの事実を暗に摘示した〉ものと理解したということはあり得ないのだろうか。

 仮にその可能性があるとすれば、控訴審判決には今回の判断に重大な影響を与えたかもしれない明白な事実誤認がある。東京高裁は「この件ではむしろ矢野は重要容疑者の一人」とする文言について次のように述べている。



 本件記事のうち、『この件ではむしろ矢野は重要容疑者の一人』とある部分(④)と上記摘示事実(筆者注=「何らかの方法で自殺に関与した犯罪の嫌疑がある」との摘示事実)との関係は必ずしも明らかではなく、④の記述だけを取り上げれば、朝木議員が転落現場のビルに赴く前に何者かと争った可能性もあり、その相手が被控訴人であった可能性が高いと読むことも不可能ではないが、仮にそうであれば、『この件ではむしろ矢野は重要容疑者の一人』との部分にわざわざアンダーラインを引いて強調する必要はない……



 柳原がブログで「この件ではむしろ矢野は重要容疑者の一人」との文言にアンダーラインを引いた事実はない。矢野が提訴の際、ブログ記事のコピーを甲1とし、ブログ記事をコピーして貼りつけたものを甲2として提出したが、甲2の「この件ではむしろ矢野は重要容疑者の一人」との箇所にアンダーラインを引いていた。東京高裁はこれをブログのコピーと勘違いしたのだった。明白な事実誤認である。

 東京高裁はこの明白な事実誤認の上で、さらに次のように断定している。



 控訴人は、この部分を強調することによって、被控訴人が『重要容疑者』であるとのイメージを読者に植え付け、そのことで、朝木議員の自殺についての被控訴人の関与が犯罪を構成するものであり、被控訴人が捜査機関の嫌疑を受けた人物であると印象づける効果を狙ったと解するのが相当である。



 つまり、東京高裁のこの部分の認定は明白な事実誤認に基づく重大な認定の誤りにほかならない。この事実誤認に基づく誤った認識が、記事全体を読むにあたって影響を与えなかったと言い切れるのかどうか。

 東京高裁は「重要容疑者」の文言だけなら〈朝木議員が転落現場のビルに赴く前に何者かと争った可能性もあり、その相手が被控訴人であった可能性が高いと読むことも不可能ではない〉と述べた上で、アンダーラインを引いているという理由で控訴人の主張を否定した。アンダーラインを引いているという明白な事実誤認がなければ、この部分に関する控訴人の主張は認容されたわけである。その場合でも記事全体の読み方に変わりはないといえるのだろうか。

(了)
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