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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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万引き被害者威迫事件 第28回
一蹴された遅延工作 

 矢野が控訴状を提出したのは平成17年8月10日である。民事訴訟法では、控訴提起から50日以内に控訴理由書を提出しなければならない。ところが、矢野が控訴理由書を相被控訴人である「東村山通信クラブ」発行人の代理人に送ってきたのは控訴提起から89日後、平成17年11月8日に開かれた第1回口頭弁論の前日であり、代理人をつけていなかった私が受領したのは口頭弁論期日当日のことだった。

 最近の民事訴訟では、控訴審はよほど複雑な事件でないかぎり、1回の口頭弁論で終結させるのが裁判所の基本方針となっている。通常の裁判では、控訴人は控訴から50日以内に控訴理由書を裁判所と被控訴人に送付し、被控訴人は遅くとも第1回口頭弁論期日の1週間前にはそれに対する答弁書を提出する。裁判所は控訴人、被控訴人双方の主張を確認した上で、弁論を終結するか継続するかの判断をするわけである。

 しかし、口頭弁論期日の前日に控訴理由書を渡されたのでは、被控訴人が口頭弁論期日までに答弁書を提出することはきわめて困難であり、当日法廷で手渡された私に至っては、どうがんばっても当日、答弁書を提出しろというのは無理な話である。するとその後、どういう進展が予測されるかといえば、裁判官が1カ月か2カ月先に次回期日を指定し、被控訴人に対してそれまでに答弁書を提出するように命じ、それを見た上で終結か継続かの判断をするということになろう。つまり、矢野がそれを意図したのかどうかは別にして、その日の口頭弁論はまったくの徒労となり、判決は確実に1カ月ないし2カ月、先延ばしになるということである。

 朝木明代の自殺後、長女の朝木直子(現東村山市議)とともに「明代が着せられた万引き犯の汚名を晴らす」と公言し、平成15年には直子とともに「万引き冤罪」と「他殺」を主張する『東村山の闇』を出版までした矢野がこんなことでいいのだろうか。東京地裁八王子支部の判決によって、万引き被害者に対する威迫行為が認定されたとまではいえないものの、少なくとも被害者の、矢野の伝言を脅しと受け止めたとする証言の信用性が認定された。これは矢野が法廷に提出した「会話記録」の信用性を否定するものであり、被害者に対する威迫の事実を疑わせ、明代の万引きの事実をより一層疑わせることになる。明代の万引きを否定する矢野は、自らの証拠隠滅の疑いのみならず、ほかならぬ明代の名誉を守るために、何をおいてもいち早く一審判決を覆さなければならなかったはずである。

 まして、明代の第1回目の取り調べ当日、矢野と明代が被害店に脅しに行ったかどうかは矢野自身の経験したことであり、反論・反証にそれほど時間がかかるとも思えなかった。するとやはり、矢野が控訴理由書を第1回口頭弁論の本当にギリギリまで提出しなかったのは、結論の先延ばしをはかったと疑われても仕方あるまい。

 では、第1回口頭弁論期日ギリギリに提出した控訴理由書で矢野はどんな主張をしていたのか。前日に「東村山通信クラブ」発行人の代理人は矢野が裁判の引き延ばしを狙って控訴理由書の提出を遅らせたと判断し、前日の午後から急遽答弁書を作成して口頭弁論に間に合わせた。代理人は短時間で矢野の控訴理由書を詳細に分析し、的確に反論しているので、その一部を紹介しよう。

〈(矢野の)控訴第1準備書面には、原審の審理経過に関して虚偽の事実が記載されている。すなわち、控訴人(矢野)は、平成17年6月7日に行われた第9回口頭弁論期日において、あたかも原告第4準備書面に引用した書証の申出が斥けられたかのごとく記載しているが、そのような事実は全く存在しない。そもそも、同日の口頭弁論において、控訴人は甲第5号証以降の書証を提出してはいないし、もちろん被控訴人らもこれらの書証を受け取っていない。同口頭弁論期日において、裁判長が弁論を終結するにあたっても、控訴人及び控訴人代理人は、何らの異議も述べていない。

 また、原審において、「本件録音テープ」を準文書として提出し、本件録音テープを鑑定等行うことを求めたが、原審はこれを認めなかった」という記載も全くの虚偽である。控訴人は、そもそも録音テープを準文書として提出などしていないし、鑑定を申請した事実もない。このように、原審の審理経過について、明らかな虚偽の事実を記載し、これを控訴の理由とすることは、民事訴訟法第2条の定める訴訟上の信義則に違反している。〉

 矢野の提出した控訴理由書は23ページに及んだが、新たな主張といえるのは、発行人の代理人が指摘した虚偽の事実に基づき原審の訴訟指揮を批判した部分を含む5ページ分ぐらいのもので、あとは一審で提出した準備書面をコピーし貼り付けたものだったのである。分厚い書面を提出したことも、反論を遅らせるためだったのだろう(長ければそれだけ分析に時間がかかり、答弁が遅れる可能性が高い)。発行人の代理人は貼り付けた部分を赤でマーキングし、矢野の控訴理由にいかに新しい主張がないかを明示し、弁論の終結を求めた。素人にはちょっと真似のできない厳しい追及だった。 

 裁判が始まった当初から、この裁判は直接的には威迫発言の有無を争うものではあるが、結局のところ、それによって明代の万引きの事実を争うものであり、それまで幾多の裁判で否定された「冤罪」の主張を蒸し返すものにほかならないと考えていた。威迫発言の事実を争えば、当然、最終的にパート店員や被害者の尋問も考えられた。しかし、とりわけすでに被害者は、何の罪もないにもかかわらず矢野と朝木直子から提訴され、法廷に引きずり出された。これ以上、被害者に負担をかけることだけは避けなければならなかった。もちろん、発行人の代理人もそのことをよく理解しており、だからこそ矢野がギリギリに提出した控訴理由書に素早く対応し、矢野の控訴理由書の内容と提出期限を徒過していることなどを理由にただちに弁論を終結するよう求めたのである。

 これに対して矢野は、録音テープを準文書として証拠提出するとか、一審ではパート店員や被害者に対する尋問が行われていないから証人申請したいなどとし、裁判の継続を求めた。しかしそう主張しながら、矢野は録音テープを持参しておらず、また証人申請に必要な証拠申出書さえも準備していなかった。

 矢野は、たんに威迫発言をしていないことについて主張・立証すればよいと思われるが、なぜ原審の経過に関して虚偽の事実まで並べる必要があったのか。また、1日も早く明代の「万引き犯の汚名」を晴らしたいのなら、第1回弁論期日に必要な書類を準備すべきだったろう。矢野がそれをしなかったのはなぜなのか。

 これらの事実はどう見ても、矢野の側にはすでに有効な反論も立証材料もないことを示しているとしか見えなかった。東京高裁は矢野の言い分を聞き終わると結審を宣言、判決は12月15日に言い渡されることとなった。


(第29回へつづく)

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テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

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