ブログマガジン エアフォース
ブログで興味深い記事を公開していきます。
著書紹介

民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

最近の記事

カテゴリ

プロフィール

Author:プールマン

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク

QRコード

QR

FC2カウンター

朝木明代転落死・鍵隠蔽事件 第32回
矢野が明代の本心を知った時間

 東京地検の取り調べが週明けに迫り、矢野は明代が弱気になっていることを感じ取ってはいたものの、警察に行って自ら罪を認めるとまでは考えていなかったのではないか。また明代に警察への出頭を許すぐらいなら、矢野がわざわざ都内まで弁護士に会いに行くこともない。おそらく矢野は、自分が弁護士と会っている時間に明代が万引き現場に行くほど精神的に追い詰められているとは思っていなかったのだろう。

 明代が万引き現場に行ったということは、少し間違えればその場で万引きを認めて謝罪した可能性もなかったとはいえないということである。そのときはまだ、ぎりぎりのところで踏ん切りがつかなかったにすぎない。明代が警察に行って自白するかどうかという点において、矢野はまだ楽観視していたのではあるまいか。だから矢野は、弁護士との打ち合わせを終えて東村山に帰ってきたあとも、明代を置いて多摩湖町で行われた自治会長会議に出席している。

 明代がすぐにも警察に行く可能性があると矢野が感じていたとすれば、これほど長時間にわたって明代を独りにしておくことも考えられない。なぜなら、明代が万引きを認めれば矢野自身のアリバイ主張もまた嘘だったことが露顕するからである。

 さらに午後9時10分ころに事務所に帰ったあと明代から電話がかかってきた際、矢野は明代がそこまで追い詰められた状態にあることを前提にした言葉をなんら発していない。このことからも、矢野が明代についてそこまで深刻に考えていなかったことがうかがえる。矢野は明代からかかってきた電話に対して「話し中」「はい、はい」としか応答していないし、特に明代の精神状態を気遣う様子もない。矢野はその時点で、明代が謝罪したいとまで思い詰めているとは考えていなかったということと理解できるのではあるまいか。その時点で明代の精神状態を最も知っていたのは「虫の知らせ」まで聞いていた長女の朝木だけだったのだろう。

 では矢野が、明代が「警察に行くかもしれない」ことを知ったのはいつなのか。午後9時19分に明代が矢野に電話した際にはまだ矢野はそのことを知らなかった。また明代も矢野に対して「(事務所に)ちょっと休んで行きます」とはいったが「警察に行く」とはいっていない。その事実については矢野自身が公表した録音テープが証明してくれる。

衝突した方針

 すると矢野が、明代が「警察に行くかもしれない」ことを知ることができたのは、明代が矢野に電話をかけた午後9時19分から自殺を遂げる午後10時までの間しか残っていない。やはり明代は9時19分に矢野に電話したあと、「草の根」事務所に行ったということである。

 東京地検の取り調べは週明けに迫っている。明代は矢野に、「もう嘘は通用しないから、警察に行って罪を認めたい」と相談をもちかけたのだろう。明代はすでに東村山署でアリバイを崩されている。その明代に、検察官に対してもう1度嘘をつけというのも酷な話である。明代にはもう嘘をつき通すことはできないという思いがあったとしても不思議はない。

 明代が警察に行ってすべてを話して楽になりたいと考えていたのなら、明代は矢野には黙って警察に行ってもよかった。しかし明代は、その前に矢野に相談する道を選んだ。明代が事務所に行ったということは、警察に行って謝罪したいと考えていることを矢野にわかってもらおうとした、あるいは了承を得ようとしたということではあるまいか。

 ただ明代は、矢野がこの事件で非を認めるつもりは毛頭ないこと、また矢野の方針に逆らうことの難しさを経験上よく知ってもいる。矢野に電話した明代が極度に緊張していたとすれば、それは矢野に対する緊張感だった可能性もあると私はみている。

 それでも明代が警察に行く前に事務所に行ったのは、矢野に警察に同行してもらいたいという気持ちがあったのかもしれない。いずれにしても自宅から事務所に行くまでの時点で、明代はまだ前向きに人生をやり直そうと考えていたことがうかがえる。

 結果として明代は警察には行くことなく自殺の道を選んだ。明代の死後、事務所にはバッグと靴が残されたままだった。明代はバッグも持たず、靴も履かずに事務所を飛び出したという異常な状況だったということである。この事実から推測できるのは、矢野が明代の意思表示を受け入れなかったのではないかということである。

 それまでは万引き容疑を否認するということで矢野と明代の方針は一致していた。ところが取り調べが週明けに迫り、明代の心境は罪を認める方向に変化した。事務所に行った明代は矢野に「警察に行って謝罪したい」という本心を告白した。しかし矢野はそれに反対した。いわば明代の意思と矢野の方針が衝突したということではないだろうか。「警察に行って罪を認めたい」という明代の相談に矢野が容認する方向で応じていたなら、明代はビルから飛び降りる必要はない。

「警察に行って罪を認めたい」という明代に、矢野が具体的にどんな言い方で反対したのかはわからない。しかし「警察に行きたい」という明代に対する矢野の言葉はかなり厳しいものだったのではないかという推測が成り立とう。明代は矢野が同意してくれないことを悟り、裸足で事務所を飛び出したのだろう。

(つづく)
関連記事

TOP