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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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「セクハラ市議」名誉毀損事件 最高裁判決(その1)
 東村山市議(当時)の薄井政美がビラやインターネットホームページの記載、並びにラジオの放送によって名誉を毀損されたとして同市議の矢野穂積と朝木直子(「草の根市民クラブ」)を提訴していた裁判は平成24年12月18日、最高裁が矢野と朝木の上告申立を受理しない決定を行い、矢野と朝木に対して計100万円の支払いと謝罪放送を命じた東京高裁判決(平成23年3月16日)が確定した。

 問題となったのは、平成19年4月に行われた東村山市議選後に、矢野と朝木が薄井に対して「セクハラ市議」「風俗マニア」「職業安定法違反」「薬事法違反」などと宣伝してきた10件以上にのぼる記載や放送である。

 なお上記のような宣伝の一方で、朝木は「薄井が出演した放送によってセクハラを受けた」などと主張して東村山市長に対して東村山市男女共同参画苦情等申出書を提出している。しかし審査を行った東村山市は平成19年12月27日、「セクハラの事実はない」と結論付け、この申立を棄却している。そもそも放送で薄井が朝木を名指ししたわけでもなく、当然、物理的接触などあり得ようもない。客観的根拠を欠いたきわめて恣意的な申立だったとみるのが常識的な見方なのではあるまいか。

「セクハラ」の主張を否定

 では、最高裁が追認した東京高裁の判決内容を確認しておこう。

 東京高裁は矢野と朝木が薄井に対して行った表現行為について「表現行為A」(「セクハラ」、「条令違反」、「エロ・ライター」、「風俗マニア」)と「表現行為B」(「職業安定法違反」、「薬事法違反」)に分け、それぞれについて判断している。

「表現行為A」について矢野らは、議員任期が始まったあともインターネット上に薄井が出演した動画が公開されていたことを前提事実として、それが「セクハラ活動」だから薄井は「セクハラ市議」、「セクハラ活動家」であり、セクハラを禁じる東村山市男女共同参画条例に違反するから、「表現行為A」は意見表明の域内にあると主張していた。

 これに対して東京高裁はまず、矢野らの意見表明の内容の成否を検討し、次のように述べている。



(「セクハラ市議」などの表現の成否に関する東京高裁の認定)

 本件ネット動画は、被控訴人が市議会議員に当選し、その任期が開始した後も、平成19年6月25日ころまでネット公開されていたことは、争いのない事実等(15)のとおりである。しかし、本件ネット動画は、……視聴者の方からアクセスしなければ見たり聴いたりすることはできず、視聴者がその意に反して見たり聴いたりすることを強要されるものではない。

 したがって、被控訴人が本件ネット動画で性的な言動をしても、それは、被害者(視聴者)の意に反する性的な言動という「セクハラ」の一般的な定義に該当しないから、セクハラには当たらないというべきである。したがって、これを「セクハラ」であるとする控訴人矢野及び控訴人朝木の意見表明は、独自の見解であるというべきである。



 東京高裁はこう述べて、薄井が動画に出演していたことを理由に「セクハラ活動」などとした矢野と朝木の主張を否定している。

「東村山市男女共同参画条例に違反している」とする主張についてはどうか。東京高裁は次のように述べた。



(「東村山市男女共同参画条例違反」との主張に対する東京地裁の認定)

 東村山市男女共同参画条例2号(3)号は、セクハラについて「性的な言動により当該言動を受けた相手方の生活環境を害すること又は性的な言動を受けた相手方の対応によりその者に不利益を与えることをいう。」と定義しているところ、前記のとおり、本件ネット動画における被控訴人の性的な言動は、受ける側がアクセスしない限り、その者の耳目に触れないものであるから、上記条例2条(3)号前段には該当しない。

 また、同後段は、性的な言動をした者が、それを受けた相手方の対応を不満とすること等により、地位の優越等を利用して相手方に対し不利益を与えることをいうものであるから、本件ネット動画における被控訴人の性的な言動は、本件条例2条(3)号後段にも該当しない。



 ここで東京高裁が東村山市男女共同参画条例には違反しないと判断した重要な根拠は、朝木に対して薄井が強制的に動画を見せたり、薄井と朝木の間に直接的かつ具体的に接触した事実が存在しなかったという点にあろう。すなわち、矢野と朝木が薄井に対して行った「セクハラ市議」「セクハラ活動家」などという宣伝は常識的にはあり得ない評価ということなる。朝木が「セクハラを受けた」として東村山市男女共同参画条例に基づく苦情申立を行ったことに対して東村山市が「セクハラはなかった」と結論付けたのも同じ理由によるものとみられる。

 しかし東京高裁は、「セクハラ市議」などとした矢野と朝木の論評もまた、論評である以上〈少数説や独自の見解の表明、さらには誤った意見ないし論評の表明もまた保護されるべき〉として次のように結論付けた。



(「セクハラ市議」との表現に関する東京高裁の結論)

 控訴人矢野及び朝木が、被控訴人の性的な言動を録画、録音した本件ネット動画のネット公開を「セクハラ」に該当すると誤り考え、さらに、セクハラを禁止する東村山市男女共同参画条例に違反すると誤り考えたことをもって、意見表明の域を逸脱したものということはできない。



 また「表現行為A」のうち「エロ・ライター」、「風俗マニア」についても「意見表明」であるとした上で、これらの「意見表明」について次のように評価している。



 被控訴人(筆者注=薄井)は勤務先であるクリエイターズ社の仕事として本件ネット動画に出演していたものであること、被控訴人はキャスターとして与えられた原稿を読み上げていたものであり、自ら原稿を書いていたものではないことに照らせば、「風俗マニア」、「エロ・ライター」という意見表明の相当性には疑問なしとしない。



「エロ・ライター」、「風俗マニア」との表現について東京高裁は相当性に疑問を呈した。しかし議員任期開始後も当該動画がネット公開されていた点を重視し、〈意見表明としての域を超えるとまでは言い難い〉と述べ、名誉毀損の成立は否定したのである。

 こうして東京高裁は「表現行為A」について名誉毀損は成立しないと結論付けた。しかし東京高裁が「セクハラ」、「条令違反」については〈「セクハラ」の一般的な定義に該当しないから、セクハラには該当しない〉として矢野の主張は「独自の見解」「誤り」であると認定し、「エロ・ライター」、「風俗マニア」については相当性に疑問を呈したことはきわめて重要であると思う。矢野と朝木は最初に記載した時点ではやむを得ない思い込みがあったとしても、裁判を通じてすでに事情を理解したはずである。したがって、裁判後に同様の宣伝をした場合には法的評価もおのずと異なってくると思われるからである。

(つづく)
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