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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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「セクハラ市議」名誉毀損事件 最高裁判決後(その1)
主体の不明確な放送

 東村山市議だった薄井政美が東村山市議の矢野穂積と朝木直子、多摩レイクサイドFMらを提訴していた裁判で、矢野らの代理人は薄井の代理人に対して、最高裁判決に基づき平成25年1月28日と29日の両日、多摩レイクサイドFMにおいて謝罪放送を行う旨を連絡してきたという。東京高裁が命じた謝罪放送の内容は指定されているが、同放送局が本当に「謝罪」の趣旨どおりの放送を行うのか、確認する必要があると私は考えていた。

 放送時間は矢野がパーソナリティを務める「『ニュースワイド多摩』の放送に近接する広告放送の時間帯に、40秒のCM放送の中で」と判決文に指定されている。名誉毀損が認定された放送は「ニュースワイド多摩」の中で矢野によって行われたものだからである。

 多摩レイクサイドFMでは通常、「ニュースワイド多摩」の前に広告のような放送がある。その時間帯に謝罪放送が行われる可能性もあると思ったが、放送内容に変化はなかった。そのまま「ニュースワイド多摩」を聴いていると、いつもは10時までの同番組が9時30分過ぎに終了した。その直後、「ニュースワイド多摩」でそれまで幅広い知識を披瀝していた矢野ではなく、女性アナウンサーの声で次のような放送が流れた。



 この番組は、昨年、2012年12月18日に最高裁第3小法廷が東村山市の議会や行政にとってきわめて重要な意味を持つ事件に関して決定をしましたので、この時間は「特集 エロキャスター裁判を考える」と題して、経過を整理し、前代未聞のこの裁判が明らかにした問題やこの最高裁決定の持つ意味などを、リスナーのみなさんと一緒に考えていきたいと思います。

 なお、スポットのCMの時間帯がありませんので、このような番組の形式とさせていただきました。



 よくわからないが、「エロキャスター裁判」という文言からすると、最高裁判決に関連した放送のようだった。しかし「エロキャスター裁判」なるものはそもそも「ニュースワイド多摩」における矢野の発言が問題となったもので、矢野が表に出ないのは何か不自然である。ここまでの時点で、放送の主体が誰なのかも明確ではない。

 また「謝罪放送を行う」というのならわかるが、「特集」とはどういうことなのか。東京高裁は「謝罪放送」について「『ニュースワイド多摩』の放送に近接する広告放送の時間帯に、40秒のCM放送の中で」と指定しているし、判決で指定された謝罪文を読み上げるだけなら40秒あれば十分のはずである。

 そもそも〈なお、スポットのCMの時間帯がありませんので、このような番組の形式とさせていただきました。〉などと聴取者に釈明する必要はない。私にはこれが、額面通りの謝罪放送ではなくなることの言い訳のようにも聞こえた。

 この「特集」は9時33分ころに始まり、「40秒」どころかたっぷり午前10時まで2、3名の女性アナウンサーがひたすら原稿を読み続けた。はたしてその内容も、とうてい「謝罪放送」といえるようなものとはとうてい思えなかったのである。原稿を執筆したであろう矢野はついに一度も登場しなかった。

事実に反する主張

 平成24年12月18日に最高裁が矢野らの上告を受理しない決定を行ったことで確定したのは東京高裁判決である。その東京高裁判決についてまず放送は次のように説明した。



 東京高裁第22民事部の加藤新太郎裁判長は東京地裁立川支部の判決のうち、薄井さんの言動は「『性風俗マニア』、『超セクハラ市議』、『エロ・ライター』に当たる」と認定した第一審通りの判決を言い渡し、矢野穂積議員や朝木直子議員の指摘を認めました。市議会議員だった人物が裁判所から、その言動は「『性風俗マニア』『超セクハラ市議』『エロ・ライター』に当たる」と認定され、これが最高裁で確定したのですからこれだけでも大事件ということができます。



 薄井の言動が「性風俗マニア」「超セクハラ市議」「エロ・ライター」に当たると認定されたと放送は主張するが、東京高裁はそのような認定はしていない。東京高裁は次のように認定したのである。



(「性風俗マニア」等に対する東京高裁の認定)

「エロ・ライター」「風俗マニア」という意見表明については、被控訴人(筆者注=薄井)が主張するとおり、被控訴人は勤務先であるクリエイターズ社の仕事として本件ネット動画に出演していたものであること、被控訴人はキャスターとして与えられた原稿を読み上げていたものであり、自ら原稿を書いていたものではないことに照らせば、「風俗マニア」、「エロ・ライター」という意見表明の相当性には疑問なしとしない。



 東京高裁はこう述べた上で、議員任期開始後も薄井が出演して〈相当に過激な性的発言等をしている本件ネット動画がネット公開されていた事実に照らせば、「風俗マニア」、「エロ・ライター」という表現が意見表明としての域を超えるとまではいい難い。〉と認定したにすぎない。東京高裁はむしろ相当性に疑問を呈しこそすれ、この放送がいうように薄井の言動が「性風俗マニア」「超セクハラ市議」「エロ・ライター」に当たるなどと認定したわけではないのである。つまり、上記の放送内容は事実に反するということになる。

 続いて放送は、矢野と朝木が薄井のアダルト動画サイトにおける言動に関して東村山市男女共同参画条例に違反すると主張した点について、〈(東京高裁は)「名誉毀損ではない」としました。〉と、あたかも彼らの主張が認められたかのように説明した。しかしこの説明も東京高裁の判断を正確に伝えたものとはいいがたい。東京高裁は次のように認定したのである。



(「東村山市男女共同参画条例に違反する」との主張に対する東京高裁の判断)

 東村山市男女共同参画条例2条(3)号は、セクハラについて「性的な言動により当該言動を受けた相手方の生活環境を害すること又は性的な言動を受けた相手方の対応によりその者に不利益を与えることをいう。」と定義しているところ、……本件ネット動画における被控訴人の性的な言動は、受ける側がアクセスしない限り、その者の耳目に触れないものであるから、上記条例2条(3)号には該当しない。



 東京高裁はこう述べて矢野と朝木の主張を否定しているのである。ただし意見の表明は保護されるべきで、〈控訴人矢野及び控訴人朝木が、被控訴人の性的な言動を録画、録音した本件ネット動画のネット公開を……セクハラを禁止する東村山市男女共同参画条例に違反すると誤り考えたことをもって、意見表明の域を逸脱したものということはできない。〉として、名誉毀損の成立を否定したにすぎない。たんに東京高裁が名誉毀損の成立を否定したことのみを説明し、その判断に至った理由に触れないのはきわめてアンフェアである。

 放送が始まって5分が過ぎ、10分が過ぎてもまだ「謝罪放送」はされなかった。このように判決を曲げて矢野と朝木の主張を正当化させようとする「特集」の流れの中で、いったいどんなかたちで「謝罪放送」が行われるのか、この時点で私にはとうてい想像がつかなかった。

 なお東京高裁は矢野と朝木に対して75万円、多摩レイクサイドFMに対して25万円の支払いを命じているが、薄井によれば、計100万円と遅延損害金はこの放送の時点ですでに振り込まれていたという。

(つづく)
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