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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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「セクハラ市議」名誉毀損事件 最高裁判決後(その2)
最高裁決定は「判例違反」と主張

 放送の大半を占めたのは、薄井に対して行った「薬事法違反」「職安法違反」(あるいはその「疑惑」=ウェブ版を含む「東村山市民新聞」と多摩レイクサイドFM)とする批判に対して東京高裁が損害賠償と謝罪放送を命じ、最高裁がその判断を追認した点についてだった。まず「薬事法違反」に関する東京高裁の判断について放送は次のように批判した。



(東京高裁は)「薄井さんとクリエイターズ社が表面的にはニュースのかたちをとりながら、実際には姫アグラの販売者から金銭を受け取るなどして姫アグラの宣伝をしていることもあり得ないことではない」として……薄井さんの言動には薬事法違反の疑いがあることを報道したインターネット版を含む「東村山市民新聞」の記事については、第一審の東京地裁立川支部の判断を大きく書き換えてしまったのです。

 第一審は曲がりなりにも最高裁の判例をふまえ、「犯罪の疑いがあるとの事実の摘示をした場合の立証対象は犯罪の疑いの存在であり、犯罪自体の存在を証明する必要はないと解される」との判断を示し、インターネット版を含めた「東村山市民新聞」の記事については、薄井さんが「『マンゾクTV』において姫アグラの紹介をしたことおよび違法ドラッグであることを知りながら紹介をしたことは真実である」として論評の域を出ていないとして名誉毀損は成立しないと判決しました。

 しかし東京高裁加藤新太郎裁判長は、第一審が最高裁の判例をふまえ、「指摘した犯罪の疑いがあるとの事実の立証対象は犯罪の疑いの存在であり、犯罪の存在自体を証明する必要はないと解される」との判断を無視して、「犯罪の疑いの存在であろうが犯罪の存在自体であろうが、姫アグラに関する報道はインターネット版を含めた『東村山市民新聞』の記事およびFM放送について名誉毀損は成立する」としたのです。



 放送は一審が判例をふまえた判断をしたのに対して、東京高裁は最高裁判例を無視したと主張している。これは当然、高裁判決もそれを追認した今回の最高裁決定も誤りだと主張していることになるが、この主張は判決内容を正しく伝えたものといえるのだろうか。

 さらに放送は次のように続けた。



 しかしここできわめて重大な問題は、矢野、朝木両議員は、そもそもインターネット版を含めた「東村山市民新聞」の記事や「多摩レイクサイドFM」の放送の中でも、一度も薄井さんの言動が薬事法違反に当たるとは断定していないのです。矢野、朝木両議員が新聞やラジオの放送の中で指摘しているのは「薄井さんの言動は薬事法違反の疑いがある」、つまり「薬事法違反の疑いがある」と、「犯罪の存在自体」を指摘しているのではなく、「犯罪の疑いの存在」を指摘しているだけなのです。

「薬事法に違反している」と犯罪自体の存在を断定した場合と、「薬事法違反の疑いがある」と犯罪の疑いの存在を指摘したのとでは証明する対象が違ってくることはすでに紹介したとおり、最高裁には昭和41年判決がありますので、違いはないというわけにはいきませんが、この点を東京高裁第22民事部の加藤新太郎裁判長は最高裁判例を無視し、まったく区別しないで、「矢野、朝木両議員は薬事法に違反していると発言した」として判断を下しているのです。



 放送がいうこの昭和41年判決とは「公職候補者に経歴詐称の疑い」とする新聞記事をめぐり、最高裁が「『経歴詐称』の事実の存在そのものの証明がなくても、右報道の時点を基準にして、『経歴詐称』についての合理的な疑いの存在を証明すれば、真実性の証明があったものと解すべき」とした判決である。

 放送は一審が判例をふまえた判断をしたのに対して、東京高裁は「薬事法違反」について「矢野は疑惑があるとしただけで断定していないにもかかわらず、この点を無視して判決したもので、高裁判決は誤りだ」と主張しているものと理解できる。

誤解を誘引する主張

 しかし、昭和41年判決が述べているのは立証対象の問題にすぎない。論評であれ事実の摘示であれ、立証対象を確定させる前提には、裁判所がたとえば当該記事が総合的に何を主張していると認定、判断するかという問題がある。立証対象は裁判所の判断に応じて必然的に変わってこざるを得ない。

 ここまでの放送内容によれば、一審が「犯罪の疑いがあるとの事実の摘示をした場合の立証対象は犯罪の疑いの存在であり、犯罪自体の存在を証明する必要はないと解される」とした最高裁判例を基準とした上で、それを根拠にインターネット版を含めた「東村山市民新聞」の記事について「論評の域を出ていない」と判断して名誉毀損の成立を否定したかのように聞こえる。

 この放送内容を素直に受け取ると誤解を生じよう。一審は「薬事法違反の疑い」を主張したインターネット版を含めた「東村山市民新聞」の記事について「論評としての域を逸脱したものではない」と認定して違法性を否定した。しかし「薬事法違反の疑い」の存在を矢野が立証し、それを裁判所が認めたというわけではないのである。〈原告がマンゾクTVにおいて姫アグラの紹介をしたこと、及び違法ドラッグであることを知りながら紹介をした〉という論評の前提が真実であると認定した結果にすぎない。

 薬事法66条1項は「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。」と規定し、同法68条は、「何人も、第14条第1項又は第23条の2第1項に規定する医薬品又は医療機器であって、まだ第14条第1項若しくは第19条の2第1項の規定による承認又は第23条の2第1項の規定による認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならないと規定。同法68条にいう「広告」とは「顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること」が要件となっている。

「東村山市民新聞」が記載した「薬事法違反の疑い」とする論評の前提である〈原告がマンゾクTVにおいて姫アグラの紹介をしたこと、及び違法ドラッグであることを知りながら紹介をした〉事実を上記薬事法の規定に照らせば、薬事法違反が疑われる要件にはとうてい該当しないことがわかろう。一審は「薬事法違反の疑い」の存在を認めたがゆえに、「薬事法違反の疑い」とする論評の違法性を否定したわけではないのである。

(つづく)
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