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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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「セクハラ市議」名誉毀損事件 最高裁判決後(その3)
矢野の解説に違法性を認定

 一審は実際に放送がいうような判断経路(「『犯罪の存在』を摘示しているか『犯罪の疑いの存在』を摘示しているかを判断した上で、名誉毀損の有無を判断するという経路」=前回参照)をたどったのだろうか。この裁判で問題となった主な表現を確認しておくと以下のとおりである。



(「東村山市民新聞」)

ア 「問題は『犯罪』関与の疑惑に進展!」

イ 「調査の結果薬事法や職業安定法の違反をしているのではないか、という疑惑まで出ている。」

ウ 「薄井氏、セクハラどころか、ついに犯罪の疑惑が」

(「多摩レイクサイドFM」)

ア 「調査の結果、薬事法や職業安定法の違反をしているのではないか、という疑惑まで出ています。」
イ 「薬事法68条は、無許可医薬品の効能効果または性能に関する広告をしてはならないと定めています。薄井氏、セクハラどころかついに犯罪の疑惑が浮上しました。」

上記放送に加えて、上記放送を受けて矢野が、「薄井が無許可医薬品である姫アグラの広告を実質的に行っている」とする趣旨の解説をした部分



 一審は「薬事法違反」(あるいはその「疑い」)と「職安法違反」(あるいはその「疑い」)とする矢野の主張に対して、まず問題となった表現が「事実摘示」か「論評」(あるいは意見表明)かの判断を行い、「論評」と認定できる場合には論評の前提に真実性・相当性があるかどうか、「事実摘示」と認定した場合に真実性・相当性があるかどうかを検討した上で、名誉毀損の存否を決するという考え方をたどっている。「論評」と認定した場合、その前提に真実性・相当性が認められれば「論評としての域を逸脱していない」ものと認定され、違法性はないと判断される。

 たとえば「薬事法違反」について東京地裁は、FM放送以外については「法的見解の表明」であり「論評の枠内」であるとして違法性を否定した。またFM放送のアシスタントによる放送部分(〈無許可無承認薬品「姫アグラ」の効能にまで触れて、薄井氏が宣伝をしていたのです。薬事法68条は、無許可医薬品の効能効果または性能に関する広告をしてはならないと定めています。薄井氏、セクハラどころかついに犯罪の疑惑が浮上しました。〉)についても〈論評としての域を逸脱していない〉として違法性を否定した。

 しかしFM放送のうち、矢野の解説部分に対する認定は異なる。矢野の解説部分とは以下の内容である。

〈……一種こう紹介記事風の形はとっていますが、……これを使えばこういう効き目があるんだよ、という風にまさにこの薬事法が禁止しているですね、そういう性能じゃなくて効能っていうんですよね、を宣伝をしている。広告を実質的に行っている、ということがわかったわけなんですね。〉

 上記部分について東京地裁は、

〈「紹介記事風の形で薬事法違反になることを逃れようとしているが、実際の意図は姫アグラの効能を宣伝することにある」との事実を摘示しており、……その事実の存在を摘示していると認定せざるを得ないものである。〉

 と認定している。その上で東京地裁は〈実際の意図が姫アグラの効能を宣伝することにあったことを推認することもできない。〉などと述べて真実性・相当性を認めず、矢野の解説部分について名誉毀損が成立すると結論付けた。

 今回の放送は、一審がFM放送の矢野の解説部分について名誉毀損の成立を認定したことに放送の冒頭近くで1度触れたものの、その後に何度も「一審はインターネット版を含めた『東村山市民新聞』の記事については名誉毀損を認めなかった」と主張しており、私には名誉毀損を認めなかった部分をより強調しようとする意図のように感じられてならなかった。

一審の判断経路

 また矢野の主張する「職安法違反」(あるいはその疑い)が「事実摘示」か「論評」かについて東京地裁は、

〈原告がシーズ社で求人誌ユカイライフの取材又は編集の業務に関与していた疑いがあること(筆者注=矢野の主張)は、論評の前提事実であり、それが職安法違反に当たること、又はその疑いがあること(筆者注=同)は、法的見解である。〉

 と認定し、その上でその法的見解に違法性があるかどうかを検討している。

 まず「原告がシーズ社で求人誌ユカイライフの取材又は編集の業務に関与していた疑いがある」との前提事実について東京地裁は次のように述べた。

〈(矢野らが提出した証拠は)原告が求人誌ユカイライフの取材又は編集の業務に関与していた疑いがあることが真実であることや、そのように信じたことに相当の理由があることを基礎付けるものではない。〉

 東京地裁はこう述べて前提事実の真実性・相当性を認めず、「職安法違反」(あるいはその疑い)とする意見表明について名誉毀損の成立を認定したのである。

 こうみてくると、東京地裁は①「事実摘示」か「論評」か→②真実性・相当性の存否――という最高裁判例に沿った名誉毀損裁判における通常の判断経路をたどっていることがわかろう。

 ここまでの東京地裁の判断の中であらためて注意すべきは、「職安法違反」(の疑い)とする「法的見解」(すなわち論評)の前提に真実性・相当性がないと述べて名誉毀損を認定したことである。

 放送はあたかも矢野の主張が「犯罪の疑い」の指摘だったと認定した結果、インターネット版を含めた「東村山市民新聞」の記事について「論評の域を出ていない」と認定したかのように主張している。しかし、「犯罪」の指摘か「犯罪の疑い」の指摘かによって違法性の有無が判断されるわけではない。

 放送がいうように一審判決は「指摘した犯罪の疑いがあるとの事実の立証対象は犯罪の疑いの存在であり、犯罪の存在自体を証明する必要はないと解される」と述べた。これは「犯罪の疑いがある」と指摘した場合には「犯罪の疑いの存在」を立証しなければならないというだけであって、この最高裁判例はあくまで真実性・相当性の立証責任の範囲を示すものにすぎない。一審は「職安法違反の疑い」の真実性・相当性を検討した結果、名誉毀損を認定したのである。

(つづく)
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