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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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「セクハラ市議」名誉毀損事件 最高裁判決後(その5)
「疑いの存在」の立証が必要

 放送は何度も「犯罪の疑いがあるとの事実の摘示をした場合の立証対象は犯罪の疑いの存在であり、犯罪自体の存在を証明する必要はないと解される」とした最高裁判例を強調し、東京高裁はこの判例を無視したと主張した。しかし問題とされる表現が「犯罪の疑い」を主張するものと認定されても、その表現が相手方の社会的評価を低下させると判断された場合には、「犯罪自体」の証明は必要とされなくても、「犯罪の疑いの存在」の真実性・相当性は立証しなければならない。その表現が「犯罪の疑い」を主張するものだったとしても、その根拠を立証しなくていいということではないのである。「犯罪の疑いの存在」の真実性・相当性が立証できなければ違法性は阻却されない。

 東京高裁は「薬事法違反」と「職安法違反の疑い」(東京高裁の認定)とする表現に対して違法性を認定したが、それぞれ理由は以下のとおりである。



1 インターネット版「東村山市民新聞」(平成19年8月7日配信分=表現内容は前回参照)

(「職安法違反の疑い」とする意見表明に対して)

〈本件訴訟において控訴人矢野及び控訴人朝木が上記意見表明の前提事実として主張した事実(被控訴人がシーズ社で求人誌ゆかいライフの取材又は編集の業務に関与していたこと又はその疑いがあること)の重要な部分が真実であるとは認められず、また、控訴人矢野及び控訴人朝木がこれを真実であると信じるについて相当の理由を認めるに足りる証拠もない。〉

2 平成19年8月29日付「東村山市民新聞」158号

(「薬事法違反の犯罪行為」とする意見表明に対して)


〈(矢野と朝木は薄井が動画で姫アグラに関する「宣伝」「広告」を行ったことが薬事法に違反すると主張したが)効能を紹介しただけで直ちに「広告」に当たり、薬事法に違反すると解することができないことは明らかである。そうすると、控訴人矢野及び控訴人朝木が、被控訴人は本件ネット動画について姫アグラの「広告」をしたことを真実であると信じるについて相当の理由あったと認めることもできない。〉

(「職安法違反の疑い」とする意見表明に対して)

〈控訴人らは……前提事実として被控訴人はシーズ社の求人誌ゆかいライフの取材又は編集の業務に関与していた疑いがあると主張するが、……これを認めるに足りる証拠はない。また、これを真実であると信じるについて相当の理由を認めるに足りる証拠もない。〉

3 多摩レイクサイドFM「ニュースワイド多摩」平成19年9月5日放送分

(「薬事法違反の犯罪行為」とする意見表明に対して)

〈被控訴人が姫アグラの広告、宣伝をしたとは認められないから、前提事実の真実性を論じる前提を欠く。また、これを真実であると信じるについて相当の理由があったと認めるに足りる証拠もない。〉

4 平成19年12月15日付「東村山市民新聞」159号

(「薬事法違反の犯罪行為」とする意見表明に対して)

〈被控訴人が姫アグラの広告、宣伝をしたとは認められないから、前提事実の真実性を論じる前提を欠く。また、これを真実であると信じるについて相当の理由があったと認めるに足りる証拠もない。〉



 以上が違法性に関する東京高裁の判断である。東京高裁が「犯罪の疑い」(職安法)についても「疑い」の真実性・相当性を検討した上で違法性を認定していることよくわかろう。東京高裁は放送のいうように最高裁判例を無視したわけではないのである。放送は、今回の東京高裁判決とそれを追認した最高裁決定は最高裁判例を無視しているから違法だと印象づけたいということと理解するほかない。

単なる「謝罪命令の紹介」

 平成25年1月21日、矢野の代理人は薄井の代理人に対して「平成25年1月28日と29日」に「謝罪放送」を行う旨、書面で連絡してきた。当然、平成25年1月28日に放送された「特集 エロキャスター裁判を考える」で「謝罪放送」が行われるものと考えた。

 しかし、同放送が始まって25分が経過しても「謝罪放送」が行われる気配はまったくうかがえなかった。それどころか放送は〈最高裁判例に違反した東京高裁判決は民事訴訟法318条第1項によって本来上告の手続きの中で最高裁で判断が変更され、矢野、朝木両議員は逆転勝訴となるはずであることを指摘しておかなければなりません。〉などとさえ主張していた。

 この放送の流れで、いったいどんなかたちで「謝罪放送」を行うのだろうか。そんなことを思っていると、放送はあらためて最高裁が「きちんと審理しているとはいえません。」と批判したあと、唐突に〈そこで東京高裁がFM放送で放送するように判決で求めたのが、次に読み上げる内容です。〉と述べた。東京高裁は正確には、「求めた」のではなく「命じた」のだが、矢野のプライドにおいては「謝罪放送を命じられた」と認めるのは忍びがたかったものとみえた。

 さらに命じられた「謝罪放送」を読み上げる直前には、放送は次のように述べた。



 しかしその間違いはすぐにわかりますが、FM放送では矢野、朝木両議員がまったく発言していないにもかかわらず、このようにいっています。「薄井さんがした姫アグラの紹介は薬事法に違反する旨の放送を行いました」と、まったく事実に反する内容になっておりますし、最高裁判例をもふまえていない「謝罪放送」となっています。事実ではありませんが、12月18日の最高裁の決定ですので、次に読み上げてみましょう。



 謝罪文の内容について放送は「薬事法違反」と断定したのではなく「薬事法違反の疑い」と述べただけだから事実に反すると強弁しているが、いずれにしても違法の断定も「疑惑」も「違反する旨」に含まれよう。続けて放送は、「最高裁判例をふまえていないもの」と、「謝罪放送」の内容が違法、不当なものであると念を押し、放送局として謝罪の意思などまったくないことを明確に示した。その上で次のように、最高裁が認めた謝罪文を読み上げた。



〈これから謝罪放送を行います。

 本局の番組「ニュースワイド多摩」は平成19年9月5日、東村山市議会議員の薄井政美氏が同年2月10日にアダルト動画サイト「マンゾクTV」でした「姫アグラ」の紹介は薬事法に違反する旨の放送を行いました。しかし、上記放送内容は根拠が不十分であり、上記放送は同氏の名誉を傷つけるものでした。

 よって、本局は、上記放送内容を取り消すこととし、同氏に対し、謝罪いたします。

特定非営利活動法人多摩レイクサイドFM
理事長 岡部 透〉

 以上が、東京高裁が求めた謝罪放送です。



 これは〈東京高裁が求めた(「命じた」ではない)謝罪放送〉のたんなる紹介にすぎず、謝罪の意を示す謝罪放送とはいえまい。その証拠にこの直後、放送はさらに次のように主張して最高裁決定を批判したのである。



 すでに紹介したとおり、最高裁には昭和41年の判決がありますので、「薬事法に違反している」と犯罪自体の存在を断定した場合と「薬事法違反の疑いがある」と犯罪の疑いの存在を指摘した場合とでは証明する対象が違ってきますので、どちらでも同じで違いがないというわけにはいきません。東京高裁もこれも追認した最高裁第3小法廷も否定することができない過去の最高裁判例を無視してしまったという大きな誤りを犯してしまったのです。



〈東京高裁が求めた謝罪放送〉を読み上げる前後に限っても、それぞれ「謝罪文」と同等かそれ以上の文言を費やして東京高裁、最高裁批判を繰り返していることがわかろう。放送全体を見ても、約30分の放送のうち「謝罪文」の朗読はわずか数十秒であるのに対し、それまでの30分近くは全編にわたって判決批判を行い、さらに「謝罪文」朗読後も同じ批判を繰り返した。

 これでは聴取者の耳に「謝罪文」の内容など残るはずがない。また私にはそういう工夫を凝らした構成だったように思えてならない。素直に謝罪放送を行うだけなら数十秒ですんだのだし、たっぷり30分間分にわたる原稿を作成する必要もなかった。しかしそれでは非を認めることになる。謝罪文が埋もれてしまうような趣向をここまで凝らす執念とエネルギーは尋常とも思えないが、「非を認めたわけではない」ことをどうしても主張したかったものとみえた。そのこと自体がきわめて特異というほかない。

 判決における謝罪広告命令はたんに謝罪広告の表示を命じるだけで「謝罪の意思」(内心)までをも強制するものではないとされているようである。しかしそれにしても(この放送が矢野の代理人が予告してきた「謝罪放送」として放送したものであるとすればの話だが)、これほどあからさまにその内容を否定する文言で包囲した「謝罪放送」が「謝罪放送」として容認されていいものだろうか、という疑問は拭えない。

(つづく)
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