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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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「セクハラ市議」名誉毀損事件 最高裁判決後(その6)
奇怪な三段論法

 放送は「謝罪放送」の内容を紹介し終えると、東京高裁判決とそれを追認した最高裁決定について〈東京高裁もこれを追認した最高裁第3小法廷も否定することができない過去の最高裁判例を無視してしまったという大きな誤りを犯してしまったのです。〉と断定し、聴取者に対して判決の不当性を改めて訴えた。

 その上で放送は、平成23年に行われた東村山市議選で薄井が落選し、一方で矢野と朝木が当選したことを引き合いに出した。本件とは無関係と思われるが、何がいいたいのだろうか。放送は次のように述べた。

〈矢野、朝木両議員による薄井さんに対する厳しい批判について東村山市民多数はこれを支持し、同調したことがはっきりしたわけです。〉

 続けて放送は今回の裁判について次のように総括したのだった。

〈アダルト動画サイトで流された薄井さんの言動は、「性風俗マニア」「超セクハラ市議」に当たり、「エロライター」というよりも「エロキャスター」に当たるから矢野穂積議員や朝木直子議員の批判はむしろ正当だったこと、そしてインターネット上のアダルト動画サイトで流された薄井さんの言動は、少なくとも選挙で選出され、任期の始まった市議会議員の言動としては適切ではない旨をはっきりと判決書に書いて断罪し、このことが最高裁で確定したのです。

 薄井さんは名誉毀損などといって自分でわざわざ裁判を起こして矢野、朝木両議員を訴えたのですが、最も重要なことは、事実上、薄井さんは市議会議員の資格がないと裁判所に宣告されたのと同じ結果になったということです。結局、薄井さんは再選を目指そうとしましたが、東村山市の有権者がこれを認めず落選してしまいました。長くなりましたが、このような経過で問題に決着のついた裁判だったということができるでしょう。〉

 事実関係と論理性はともかく、放送は次のように主張しているものと理解できよう。

①「東村山市民の多数は薄井に対する矢野・朝木の『エロライター』『薬事法違反』『職安法違反』などとする批判を正当なものと判断した」

②「裁判所は薄井に対する『セクハラ市議』などとする矢野・朝木の批判は正当だったとし、動画サイトにおける薄井の言動は、市会議員の言動としては適切でないとはっきり判決書に書いて断罪し、これが最高裁で確定した」

③「裁判所は薄井には市議会議員の資格がないと宣告した」

 これも三段論法の一種だろうか。この放送の原稿を作成したのが誰かは断定できないが、作成者の思考の中では判決書の内容と選挙の結果が有機的に融合し、「裁判所は薄井には市議会議員の資格がないと宣告した」という結論にたどり着いたらしい。私には都合のよい思い込みとかなり飛躍した判決解釈に基づく我田引水の主張のように思える。

 ①の選挙結果が矢野・朝木による薄井攻撃に「東村山市民多数」が同調したことによるとする主張にはなんらの客観的根拠もない。また②の「アダルト動画サイトで流された薄井さんの言動は、「性風俗マニア」「超セクハラ市議」に当たり、少なくとも選挙で選出され、任期の始まった市議会議員の言動としては適切ではない」などと裁判所が「はっきり判決書に書いて断罪」し、これらの判断が「最高裁で確定した」という事実もない。

 したがって③のような結論が帰結される客観的根拠はなく、「特集」の結論は現実の選挙結果と判決の独自の解釈によって構築された虚構ということになる。

 どうすればこのような現実と非現実をごちゃ混ぜにした論理を組み立てることができるのか、尋常な認識力においては理解不能というほかない。あるいはこれを詭弁と言い換えることもできよう。裁判所が薄井に対して「市議会議員の資格がないと宣告した」などという事実はなく、現実の判決は矢野と朝木らに対して100万円の支払いと謝罪放送を命じたのである。この「特集」とは、評価は別にして、実は裁判所から命じられた謝罪放送を履行するものだが、その事実を聴取者になんとか悟られまいと虚偽、事実の捏造などあらゆる手段、技巧を尽くしたものといえるだろう。
 
明らかな虚偽

 平成24年12月18日、最高裁が矢野らの上告を受理しない決定を行ったことによって確定したのは東京高裁判決である。一般に一審と二審の判断が大きく違わない場合には二審の判決文に一審判決の一部を引用することがよくあり、その場合には一審判決のその部分に限っては確定判決となりうるが、この裁判において一審判決は東京高裁判決においていっさい引用されていない。したがって本件裁判を論じるに際して、一審判決の内容についてはあくまで参考として紹介することはできても公定力のある判断として扱うことはできない。

 そのことを念頭に改めてこの「特集」を振り返ると、上記②③以外にも確定判決(東京高裁判決)には記載されていないにもかかわらず、「確定判決で記載されている」と誤解を与えかねないかたちで、あるいは明らかな虚偽内容が放送された箇所がある。まず冒頭近くでは上記②とほぼ同趣旨の主張が行われている。

〈第一審の東京地裁立川支部は薄井さんの提訴に対して、「インターネット上の言動は『性風俗マニア』『超セクハラ市議』に当たり、『エロ・ライター』というよりも『エロキャスター』に当たるから、矢野穂積議員や朝木直子議員の批判は名誉毀損ではない」と判決し、選挙で選出された市議会議員のすることではない旨をはっきりと判決書に書いて断罪しました。自分でわざわざ裁判を起こして矢野、朝木両議員を訴えたのですが、事実上、薄井さんは「市議会議員の資格がない」と裁判所に宣告されたのと同じ結果になりました。このことだけですでに問題の決着は着いているのです。〉

「このことだけですでに問題の決着は着いているのです。」と述べたことで、その前提として述べた、東京地裁が「インターネット上の言動は『性風俗マニア』『超セクハラ市議』に当たり、『エロ・ライター』というよりも『エロキャスター』に当たるから、矢野穂積議員や朝木直子議員の批判は名誉毀損ではない」と判決したとする事実が、あたかも確定判決となったように聞こえる。少なくとも東京地裁判決が確定判決ではないという注釈がいっさいなされない点からは、聴取者が地裁判決が確定判決となったものと誤解してもかまわないという放送であると理解できよう。

「エロ・ライター」「風俗マニア」などとする表現に関して、さらに次の箇所に至ると、明らかに東京地裁判決が確定したと伝える内容になっている。

〈東京高裁第22民事部の加藤新太郎裁判長は東京地裁立川支部の判決のうち、薄井さんの言動は「『性風俗マニア』、『超セクハラ市議』、『エロ・ライター』に当たる」と認定した第一審通りの判決を言い渡し、矢野穂積議員や朝木直子議員の指摘を認めました。市議会議員だった人物が裁判所から、その言動は「『性風俗マニア』『超セクハラ市議』『エロ・ライター』に当たる」と認定され、これが最高裁で確定したのですからこれだけでも大事件ということができます。〉

〈市議会議員だった人物が裁判所から、その言動は「『性風俗マニア』『超セクハラ市議』『エロ・ライター』に当たる」と認定され、これが最高裁で確定した〉と断定していることがわかろう。

 最高裁で確定したのは東京高裁判決である。東京高裁は東京地裁判決をいっさい引用せず独自の判断を下している。東京高裁の「エロ・ライター」「風俗マニア」などの表現に対する判断は以下のとおりだった。



(「エロ・ライター」「風俗マニア」などの表現に対する東京高裁の判断)

 被控訴人はキャスターとして与えられた原稿を読み上げていたものであり、自ら原稿を書いていたものではないことに照らせば、「風俗マニア」、「エロ・ライター」という意見表明の相当性には疑問なしとしない。しかし、被控訴人の市議会議員としての任期が開始した後も、被控訴人が相当に過激な性的発言等をしている本件ネット動画がネット公開されていた事実に照らせば、「風俗マニア」、「エロ・ライター」という表現が意見表明としての域を超えるとまではいい難い。



 確定判決は、薄井に対する「風俗マニア」「エロ・ライター」などの表現が意見表明としての域を逸脱するものではないとしたにすぎず、「『性風俗マニア』『超セクハラ市議』『エロ・ライター』に当たる」などと認定をしたわけでないことは明らかである。上記放送内容は虚偽ということになる。

(つづく)
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