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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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「朝木宅襲撃事件」 第13回
タイトル部分以外は不法行為を認定せず

 では、タイトル以外の争点に対する裁判所の判断はどんなものだったのか。東京地裁は次のように述べた。



(「朝木の被害届提出等に関する記述」に対する東京地裁の判断)

ウ 男が釈放されたこと、原告朝木が被害届を提出したことは、客観的な事実であると認められるが、原告朝木が男の「釈放を了承し」、あるいは「釈放に応じた」との部分は客観的な事実として明らかとはいえない。しかし、記述部分⑤の前に「通常、この種の事件で警察が釈放する場合には一応、被害者の了承を得る。つまり、男が釈放されたということは、直子も警察が男を釈放することについていったんは納得していたということであ」るとの記述があるから、被告宇留嶋は、かかる推測を前提にして男が「釈放」された理由として原告朝木の「釈放」の「了承」があったと考え、その結果、その旨を記述するとともに「事件は終わった」と記述したものと解することができる。

エ そして、「朝木宅襲撃事件」は原告朝木が被害者とされた事件であって、前記のとおり、被害者が被害届を提出するか否かは被害者の意思によるものであるから、被害届の有無、その時期の先後は被害者の名誉にかかわるものではない。また、原告朝木が男の「釈放」を「了承」したとする部分も、被告宇留嶋の前記推測の当否はともかくとして、被害者である原告朝木の名誉にかかわるものとはいえず、「事件は終わった」との事実摘示も原告朝木の名誉にかかわるものとはいえない。

 東京地裁はこう述べて、タイトル部分以外の争点部分(筆者注=本連載第12回)について「原告らの社会的評価を低下させるものとはいえない」と判示したのである。また「矢野がそそのかした」との部分についても同様の判断を示した。

 一方、東京高裁はタイトル部分の争点部分について、〈それ自体としては(タイトル部分等)についての理解を覆すものでも補強するものでもないと認めることができる。〉と述べるにとどまった。争点となるべき重要な記述とは認定しなかったということと理解できよう。

調書には同意していた朝木

 ところで東京地裁は朝木が「釈放」を了承していたかどうかについて〈客観的な事実として明らかとはいえない。〉と述べた。この認定自体に異を唱えるものではない。ただ朝木は、少なくとも警察が朝木の言い分を十分に聞いてくれたかどうかに関して、裁判官の直接の質問に対して興味深い供述をしている。参考までにそのくだりを紹介しておこう。



裁判官  警察で調書を執られたというお話でしたね。

朝木  はい。

裁判官  先ほどのお話だと、事実をそのまま警察で話をしたということなんですが、調書の読み聞けというのはされましたか。調書を取ったときに、後で警察官なりが読み聞かせをしますよね。

朝木  はい、読んでくださったと思います。

裁判官  それを聞いて、自分が言っていることと違ったようなことを書かれているという印象を受けましたか。

朝木  いや、自分の言ったことと違うことは特に書いてなかったと思います。

裁判官  そうすると、調書は、まあ正確に取られているという認識だったということで伺っていいですか。

朝木  そうですね、まあ警察の方と、ちょっとやり取りというか、本人が、まあ酔っ払ったみたいなことを言っていたので、ちょっとその調書を取るときに若干のやり取りはありましたけれども、一応私の言ったことを調書にしていただいたと思います。

裁判官  特にその調書について異議を述べたりしたことはないんですね。

朝木  異議は述べていないです。



 東村山署が男を「釈放」するという方針を最終的に固めたのは朝木の事情聴取後であることは明らかだろう。警察は朝木が異議を述べていない事情聴取の内容に基づき「釈放」すると判断したということである。言い換えれば、朝木の事情聴取の内容は警察が「釈放」すべきと判断する程度のものだったということになるのではあるまいか。

東京高裁も事件性を否定

 一審の東京地裁は記事に違法性はないとして矢野と朝木の請求を棄却したが、東京高裁も記事全体としては違法性を否定している。東京高裁は次のように述べた。



(記事全体に対する東京高裁の認定)

 本件記事本文を通読した場合には、③及び④(筆者注=タイトル部分等)以外の記述部分も含めて本件記事の意図が些細な事件を大げさに宣伝している控訴人ら(筆者注=矢野、朝木)の行為を非難することにあると理解できるから、その上で記述部分③及び④(筆者注=同)を改めて読み直すと、「自作自演」や「ありもしない『襲撃』」との記載は、通常の用法とは異なり、本件事件が控訴人らの意思とは無関係に発生したこと自体を否定するものではなく、その内容が些細なものであって襲撃というほど重大なものではなかったにもかかわらず、重大な加害行為があったかのように事件を誇大なものとして作出しその被害者を演じているという意味に用いられていると理解することができる。

……

 本件記事全体の趣旨は、上記のとおり、控訴人らが酔っ払い騒動を利用して、控訴人朝木に対する襲撃事件又は殺人未遂事件があったと宣伝し、その被害者を演じていることを非難するものであり、これによって控訴人らの社会的評価が低下することは避けられないと認めることができる。

 しかし、前記認定のとおり本件事件は控訴人朝木に対する加害を目的としたものとは認め難く、控訴人朝木も男が酔っ払っているように見えたと発言しこれを報じた記事が本件雑誌に先立って敢行された雑誌に掲載され、……控訴人らが市会議員という公職に就いていることからすると、本件記事の執筆及び掲載には違法性がなく不法行為が成立するとは認められない。



 東京高裁は記事全体については違法性はないと認定した上で、タイトル部分しか読まない読者を想定し、タイトル部分について名誉毀損の成立を認めたのである。

 この裁判では判決だけでなく、事件の真相を明らかにすることが重要なテーマだった。この点については、一審が〈原告朝木は当日男からそのような言葉(筆者注=「てめぇ、ぶっ殺してやる」)を聞いていなかったとの可能性が考えられる〉、すなわち矢野と朝木が「殺人事件だ」と主張する根拠を実質的に否定したこと、さらに東京高裁が、

〈控訴人朝木に対して危害を加える目的によるものと認めるに足りる事情はなく〉

〈本件事件は控訴人朝木に対する加害を目的としたものとは認め難く〉

 と認定した事実は大きかろう。裁判所の判断は少なくとも「殺人未遂事件というようなものではない」というものだったのである。

(つづく)
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