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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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『週刊現代』事件 第44回
すみやかな進行

 矢野が東京地検の「不起訴処分」に関して創価学会代理人が提出した陳述書と訴状をめぐり同代理人らを提訴した裁判に話を戻そう。

 矢野は平成16年8月5日に提出した訴状で、「創価学会代理人は『東京地検発表』と『不起訴処分』の時系列を入れ替えることで、捜査の結論が変更された事実がなかったかのように主張して裁判所を欺罔するとともに、矢野の発言が『作り話』などと主張して矢野の名誉権を侵害した」などと主張していた(第42回参照)。

 これに対して創価学会代理人は同年10月22日付で答弁書を提出し、「東京地検発表」と「不起訴処分」の日付をそれぞれ明示しているから前後関係は明らかであること、また訴訟において相手方の主張した事実について当該事実を否認し、その理由を示して証拠を提出することは当然の訴訟活動であり、その表現等も相当なもので、矢野の主張自体が失当であるなどと主張した。

 裁判官の心証は明らかではないものの、この裁判が通常の裁判と異なるのは、訴訟対象が一般の出版物ではなく、訴訟中に裁判所に提出された陳述書と訴状に記載された内容であるという点だった。名誉毀損の成立要件である「不特定多数」の目に触れる可能性という点でいえば、陳述書も訴状も所要の手続きによって第三者が閲覧することはできるが、民間に流通する通常の出版物等に比べればその程度は低いとみるのが通常の判断と思われた。

 普通の名誉毀損訴訟とはやや趣を異にするこの裁判の進行は、意外にもきわめてすみやかだった。東京地裁は同年12月17日に開いた第2回口頭弁論で弁論を終結。平成17年2月18日、矢野の請求を棄却する判決を言い渡した。正月休みをはさむから、弁論終結から判決言い渡しまでの期間は実質的に1カ月という速さだった。

 判決文をみると、このすみやかな進行の理由が理解できた。東京地裁はまず、裁判で提出された陳述書等の内容をめぐり名誉毀損に基づき損害賠償を求めたケースに対する一般的認識を次のように示した。



(東京地裁が示した一般認識)

 ……民事訴訟における当事者の主張立証活動の内容が、たとえ相手方等の社会的評価を低下させる内容であったとしても、これをもって直ちに違法な名誉毀損行為ということはできず、当該主張立証活動が、当該訴訟と関連性・必要性を有せず、専ら相手方を誹謗中傷する目的で、著しく不適切な表現によりなされた等の……特段の事情があってはじめて、違法な名誉毀損行為に当たるということができると解するのが相当である。



 東京地裁はこう述べた上で、〈当該主張立証によって摘示された具体的事実が客観的真実に合致するか否かは、このような違法性を基礎付ける特段の事情そのものには該当しない。〉と付け加えた。つまり、裁判に提出された陳述書等の違法性を問うには、陳述書等が述べる事実とは関係なく、違法性を帯びた〈特段の事情〉がなければならないとしたのである。

あっけない終結

 ではこの基本認識に基づき、東京地裁は陳述書と訴状の記載内容に基づく矢野の請求をどう判断したのか。東京地裁はこう述べた。



(本件に対する東京地裁の判断)

(〈本件についても、原告は特段の事情について積極的に主張立証しなければならない〉とした上で)しかし、原告は、主張整理の機会を与えられたにもかかわらず、あくまでも、本件名誉毀損記述……は真実に反するもの(事実のねつ造)であることを問題視し、……特段の事情については、何ら主張しない。……

 したがって、原告の主張は、請求原因として主張すべき事実をすべて主張しているとはいえず、主張自体失当といわざるを得ない。



 判決によれば、東京地裁は陳述書等の違法性を問うには陳述書等の内容以前にそれらの提出にあたり違法性をともなう「特段の事情」があることが必要であると考えていた。したがって、代理人の答弁書を確認した裁判所は同年10月22日に開かれた第1回口頭弁論で原告である矢野に対し「特段の事情」があるかどうか、あるとすればその点について2カ月後の平成16年12月17日に指定した第2回口頭弁論までに主張、立証するよう求めたものとみられる。

 しかし矢野は第2回口頭弁論でも訴状と同じ主張を繰り返したのみで「特段の事情」を主張しなかった。このため東京地裁は2回で弁論を終結し、矢野の請求を棄却したということと理解できた。こうして東京地検の「不起訴処分」をめぐり矢野が創価学会の代理人等を提訴した裁判の一審はあっけなく終わったのである。

 東京地裁が双方の主張する「不起訴処分」の理由にいっさい踏み込まなかったことについては矢野ならずとも拍子抜けの感がないではない(むしろ矢野にとっては、この判決の方がよかったかもしれない)。ただ仮定の話だが、創価学会代理人の説明と答弁書で主張した内容に明らかな矛盾や不審点があったとすれば、東京地裁もこれほど簡単に弁論を終結させることはなかったのではないかという気もする。

 むしろ、「東京地検発表」の内容が変更された事実がいまだもって公表されてもいない事実からすれば、矢野が「『不起訴処分』によって『東京地検発表』が覆された」などと記載した陳述書を裁判所に提出したことこそ「裁判所を欺罔する」行為であるといえるのではあるまいか。

 あくまで陳述書の内容にこだわる主張を押し通した矢野は控訴した。

(つづく)
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