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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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『聖教新聞』事件 第1回
やや異例の会見案内

 平成8年8月5日、新聞、週刊誌などマスコミ各社に記者会見を告知する1通のファックスが送信された。差出人は「朝木明代記念基金」。会見の趣旨は〈昨年発生の朝木明代・東村山市議謀殺事件等につき、民事提訴を行う〉というもので、8月7日に提訴したあと、東京弁護士会館で会見を開くという。出席者には「朝木直子東村山市民新聞編集長、矢野穂積東村山市議」のほかに2名の弁護士の名前が記載されていた。

 会見の案内としてここまでは普通だが、やや異例に思えたのは、この案内にはさらに〈当事者(被告)〉として創価学会会長や千葉英司東村山警察署副署長、朝木明代から万引きされた被害者の氏名が実名で記されていたことである。記者会見に来ないメディアに対しても、「朝木明代謀殺事件」をめぐって民事裁判が提起されること、創価学会会長と捜査指揮官である東村山警察署の副署長、「朝木明代から万引きされた」と訴えている女性店主らが訴えられたという情報だけは最低でも伝えようとする意図があったように思える。しかし被告名を明記する一方で、〈(原告)〉としては〈故朝木明代議員遺族及び同僚市議〉とあるだけで実名は記載されてはいなかった。

 8月7日、霞が関の東京弁護士会館5階の記者会見場に着くと、会場にはすでに多くの記者が集まっており、テレビカメラも数台入っていた。警視庁が「自殺」の結論を出していても、マスコミはいまだそれなりの関心を持っていることがうかがえた。記者の中にはすでに『怪死』を刊行していたジャーナリスト乙骨正生もいた。私は会場に入るのが少し遅れたせいか、主催者が用意した訴状のコピーはもうなくなっていた。

 会見席には左から「草の根」支持者の小坂渉孝(明代が万引きで被害届を出されたあと、明代とともに被害店を脅しに行った人物)、矢野穂積、弁護士、朝木直子ともう1人支持者と思しき人物の計5名が並んでいた。その日はよく晴れた暑い日で、彼らの後方の窓からは強い西日が射していた。

回答書を掲げた代理人

 会見では主催側から案内どおりの提訴をしたとする報告があったあと、記者からの質問を受け付けた。質問をしたのは女性記者と私の2名だったと記憶している。最初に手を挙げた女性記者はストレートにこう聞いた。

「矢野さん、(万引き事件の)アリバイの証拠はあったんですか?」

 女性記者に対して矢野は何やら一言嫌味をいったあと、こう答えた。

「アリバイを証明するレジ・ジャーナルが存在することは間違いないからファミレスの本部に弁護士を通じて照会したが、『照会には応じられない』旨の回答があった。このため、アリバイの証拠はまだ入手できていない」

 隣に座っていた代理人弁護士は、ファミレス側からの「回答書」を記者席に向けて仰々しく広げて見せた。まさか弁護士はこれで、ファミレス側が対応を断った事実をもってアリバイを証明できない言い訳になるとは考えなかっただろう。しかし、「回答書」を見せられたマスコミの中には、「何者かの力が働いてレジ・ジャーナルを隠匿している」と受け止めたところもあったのかもしれない。

『怪死』の内容を否定した矢野

 女性記者がアリバイに関する質問をしたので、私もアリバイについて聞いた。同年5月に発行されたばかりの『怪死』(教育史料出版会)には次のようなくだりがあった。

〈このレシート(筆者注=明代が東村山署の取り調べの際、アリバイの証拠として提出したもの)は、朝木さんのアリバイを証明するものではなかった。朝木さんと矢野氏は勘違いによって、他人のレシートを提出してしまっていたのである。

「10日以上も前のことだったので、食事の内容に若干、記憶違いがあり、結果的に間違ったレシートをもらって提出していたのです。しかし、よくよく考えてみると食事内容が少し違う。そこで、正しいレシートを提出すべく、店側に再度レシートをリクエストしましたが、警察がレシートの控えをすべて押収してしまっていたため、レシートを出してもらうことはできませんでした。そこで、警察にレシートの控えを見せてほしいと申し入れていますが、応じてくれません」(矢野氏)〉

 私は上記記載に基づいて、「『怪死』には朝木さんがレストランにレシートを出してもらうにあたって伝えた『食事内容を間違えていた』と書かれているが、それは事実か」と聞いた。すると矢野は私に対して、「名誉毀損記事を書いてる人ですね。いずれ提訴しますからね」と前置きし、こう答えた。

「その記載自体が誤りで、その部分も含めて、この著者には訂正を求めている」(趣旨)

『怪死』では現実に聞いた矢野のコメントとして〈食事の内容に若干、記憶違い〉があったと書かれているが、矢野によれば、この箇所も事実ではないということになる。

 のちに矢野は「店長が間違えて明代に『レギュラーランチ』のレシートを渡した」と主張している。(アリバイが本当にあったとすれば)「明代が間違えた」か「店が間違えたか」は大問題だが、乙骨は『怪死』を書くにあたってなぜこんな大きな事実誤認をしてしまったのだろうか。

 矢野が主張するように乙骨が間違えたのか、あるいは矢野が主張を変えたのか。いずれにしても、記者会見という公の場で、刊行したばかりの著作の中でも重要な部分について取材したはずの本人から否定されては、乙骨も内心穏やかではなかっただろう。しかし当時、私には矢野が乙骨の記載を否定した意味や、矢野から著書の内容を否定された乙骨の心理まで思い至ることはなかった。

 記者会見で矢野はこのように記者の質問に対してきわめて強気に反論し、創価学会と闘っていく姿勢を鮮明にした。矢野が記者の質問に答えている間、視線を落としぎみに座っているだけだった朝木もまた、「裁判を通して母の万引き犯の汚名を晴らしたい」と述べた。

 弁護士会館にやってきたマスコミは、この時点ではまだ、訴状で朝木が「『週刊現代』の取材は受けていない」などと主張しているとは誰も知らなかった。

浮かぬ顔のジャーナリスト

 記者会見が終わり、ロビーで知り合いのジャーナリストと話していると、目の前を乙骨が通り過ぎていった。その表情に私はやや違和感を覚えた。

 この日の会見は、すでに創価学会から提訴されている朝木と矢野の側からの反撃、宣戦布告ともいえるもので、「他殺」を主張する乙骨にとってもきわめて重要かつ意義あるものと思われた。しかしそんな重要な記者会見の直後にしては、乙骨の表情にいまひとつ積極性のようなものを感じることができなかったのである。むしろ私には、なにか乗り気がなさそうな感じさえしたのだった。

 そのとき私はまだ、矢野が『怪死』の一部を否定したこと、ほかにも乙骨に対して訂正を申し入れていると述べたことの重大性を認識できていなかった。しかしのちに、『怪死』出版後に前述の「レシートの誤り」の箇所だけでなく、他の記述(〈朝木さんに対しても、「万引き常習者」だの「家族揃って万引きをしている」などと、それこそ根も葉もない誹謗中傷が必要に加えられているが、そうした誹謗中傷の極めつけにあるのが、W不倫情報。〉)をめぐっても、乙骨は矢野と朝木から訴えられていたことが明らかになった。今から思えば、記者会見の時点ですでに、乙骨には矢野と朝木に対する不信感を感じ始めていたとしてもなんら不思議のない状況にあったということだった。

 さらに訴状で朝木が「『週刊現代』の取材を受けていない」と主張していることがわかり、乙骨も彼らの特異さを知ったのではあるまいか。平成8年8月7日は、「他殺」を主張する者たちの間で決して表には出したくない軋轢と深刻な対立が生じた日でもあったようである。

(つづく)
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