ブログマガジン エアフォース
ブログで興味深い記事を公開していきます。
著書紹介

民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

最近の記事

カテゴリ

プロフィール

プールマン

Author:プールマン

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク

QRコード

QR

FC2カウンター

『聖教新聞」事件 第8回
「前」か「後」かを入念に確認

 平成7年7月4日に行われた第2回取り調べで明代は、万引き事件が発生した同年6月19日の行動について次のように供述した。



(第2回取り調べにおける明代の供述内容(万引き事件当日の行動))

「午後2時12分に銀行で振込をした」

「その後、午後2時30分ごろ、矢野と2人してレストランに行った」

「午後2時30分ごろから同3時21分ごろまで食事をした」



 第2回取り調べの前日である同年7月3日には、明代は矢野とともに東村山署を訪れ、「アリバイの証拠」として同年6月19日午後3時21分に支払ったことが記録されたレシートを提出していた。

 万引き事件が発生したのは同日午後3時15分ごろである。明代は当日、午後2時ごろまで矢野といっしょに議員控室にいたとし、午後2時12分の記録がある銀行振込依頼書を証拠として提出していた。明代の説明から、明代が「銀行で振込をしたあとでレストランに行った」と供述しているのは明らかだが、取調官は念を入れて銀行に立ち寄ったのがレストランに行く「前」なのか「後」なのかをあらためて確認した。すると、明代は「振込をしたのはレストランに行く『前』」であると明確に答えた。

 明代は「銀行で振込をすませたあとレストランに行った」と供述したということである。ここまでの説明自体には不自然な点も矛盾もない。

 明代がアリバイの証拠として提出したレシートには清算時刻が「午後3時21分」と記録されている。すると明代の主張によれば、明代は午後2時12分に銀行で振込をし、その後レストランで午後3時21分まで食事をしていたということである。したがって明代には強固なアリバイがあるということになり、万引き犯は明代ではないということになるはずだった。

もう1つの伝票

 しかし、東村山署が明代の供述に基づいてレストランで裏付け捜査を行うと、レストランの状況と明代の供述にはだいぶ食い違いのあることが明らかになった。まず、明代が提出したレシートの接客をした従業員は、そのテーブルに座ったのは女性の2人連れだったことを特別な事情があってよく記憶にとどめていた。その日、その従業員は体調が悪かった。ところが担当したテーブルの女性の2人連れはなかなか席を立ってくれなかった。だからよく覚えていた――というのだった。

 さらに東村山署はレストランでの捜査で、明代の供述を否定する確実な材料を入手していた。レストランには売上や食事の提供状況を記録したものとして、清算時に客に渡すレシート(明代がアリバイの証拠として提出したもの。清算時刻やメニュー、金額などが記録されている)のほかに、注文時刻やメニューを記録した注文伝票が存在していた。この2つを照合すれば、当該の客がレストランに滞在した時間がわかる。

 明代が提出したレシートとそれに対応する注文伝票を捜査員が照合すると、明代の主張とは完全に矛盾する事実が浮上した。明代が提出したレシートに対応する注文伝票は2枚あった。1枚は「人数2」のうち午後1時29分に1人が「日替わりランチ」を1食注文したことが記録され、もう1枚には午後1時32分に「人数2」のままで「レギュラー」と「コーヒー」がそれぞれ2人分注文されたこと、さらに最初に注文された「日替わりランチ」が「取消」になったことが記録されていたのである。

 すなわちこの時点で、明代が提出したレシートの内容が注文されたのは午後1時32分だったこと、2人の客のうち1人が先に着席し、午後1時29分に最初の注文をしていたこと等が判明したのだった。清算時刻はレシートどおりだが(レシートに記録されているので当然)、注文時刻には明代の供述とは1時間ものずれがあった。取調官が「レストランに行ったのは銀行振込の『前』か『後』か」を明代にしつこく聞いたのは、明代の供述と注文伝票に記録された時刻との間に大きな矛盾が存在することを確認し、そのことを取り調べの段階において確定させるためだったのである。

 明代は「レストランに行ったのは銀行振込の『後』」と供述した。これではいかに明代が、このレシートをもって「万引き犯ではない証拠」と言い張っても、その供述に信用性を認めるのは困難だった。

 明代が議員控室にいたとする時間の記憶に若干の誤差があったとしても、明代が自ら率先して提出した銀行振込記録に記載された時刻に誤りはない。すなわち、明代が自ら提出した証拠もまた、万引きがあった時間帯に明代と矢野が「レギュラー」ランチを食べたとする主張の信憑性を揺るがすものでしかなくなったのである。

 清算時刻を記録したレシートとは別に、注文時刻を記録した注文伝票があることにまで考えが及ばず、だから注文時刻までは確認していなかった矢野の痛恨のミスだった。たまたまうまい具合に条件が重なるレシートがあったことで安心してしまったのだろうか(いずれにしても、矢野が東村山署を甘く見ていたということで、それこそが矢野の最大のミスだった)。

 ただ東村山署はまだ、レストランに注文伝票が存在しており、そこに記録された注文時刻と朝木と矢野がレストランに行ったとする時刻に1時間もの食い違いがあることは朝木には伏せていた。そんなこととはみじんも思ってもいない朝木は、第3回目の取り調べで、取調官に対して矢野と食べたとする食事の内容をこと細かに説明したのである。まるで実際に食べてきたかのように。

 おそるべき記憶力だった。ただしその「記憶」とは、万引き当日に実際に食べたものではなく、第3回取り調べが行われる前に写真付きのメニューで暗記したものにすぎないものであることを取調官はとっくに察知していた。裏付け捜査で、明代と矢野が7月8日にレストランに現れ、メニューを確認していたことを聞いていたのである。

(つづく)
関連記事

TOP