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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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『聖教新聞』事件 第14回
手の内を明かした矢野

 千葉によれば、矢野と明代の上申書には、「びっくりドンキー」でアリバイの「証拠」としてレシートを入手した際、まず「レジ記録リスト」を見せられ、最終的にリストの中から午後3時21分に清算された記録を指定し、それに対応するレシートを入手したという経緯までは記載されていない。

 しかし東京地検には、目撃者の証言などとともに、明代が東村山署の取調室でアリバイの証拠としていったんは提出したレシートどおりの内容を主張したものの、それが他人のものであることを指摘され、最終的にそれまでの「レギュラーランチ」の主張をすべて撤回した経緯がつぶさに記録された調書が送致されている。「レギュラーランチ」のレシートが他人のものであることがばれ、工作の意図が露顕してしまったあとでは、上申書で「レジ記録リスト」と「レジ記録票」を正しく書き分けたことはむしろ、レシートを入手するまでの経過を具体的に見せてしまっただけだった。

 上申書で「リスト」と「レシート」が明確に区別されていたことによって、矢野と明代が「レシート」を入手するまでの経緯を検事はすぐに理解しただろう。明代と矢野は見せられた「リスト」の中から「自分たちのもの」を選定し、「レシート」をコピーさせたのだと。矢野が「リスト」を見た事実を自白したことは、明代が最初に提出した「レギュラーランチ」のレシートが彼ら自身が入念に検討した結果入手したものであることを雄弁に示していた。

「レジ記録リスト」と「レジ記録票」を区別して記載したことは、アリバイ工作に至った経緯を自ら明らかにしたものとしかみえない。にもかかわらず、矢野はなぜ上申書で「びっくりドンキー」で最初に渡されたのが東村山署に提出した「レジ記録票」ではなく「レジ記録リスト」であると明確に区別して記載したのだろう。

 その理由はよく理解できないが、わずかにその理由を推測させるのは、矢野が『聖教新聞』裁判で提出した陳述書では〈7月3日に提出した「レジ・ジャーナル」は(明代が「日替わりランチ」のレシートを要求したにもかかわらず)店長が間違えて渡して寄こしたもの〉と記載していることである。上申書でも同じ趣旨の主張がなされているという。

 矢野は直接的に本質に影響しない部分をことさらに具体的に主張することで、肝心な部分の曖昧な説明に説得力を持たせようとすることがある。たとえば、アリバイの時間帯とは重ならないにもかかわらず、事務所の留守番電話の録音時刻を詳細に主張したように。矢野の思惑としては、地検に対しては「リスト」と「記録票」を書き分けることで、「リストの中から『日替わりランチ』を選んだが、店長が間違えて渡した」というニュアンスをより強調しようとしたのかもしれない。

 明代は「レギュラー」ランチを主張した7月12日の調書に署名はしていないから、メニューを変更しても通用するとでも考えたのだろうか。しかし署名はしていなくても、明代が「レギュラーランチ」を主張していたことを裏付けるレシートが、署名・捺印の上で証拠提出されている事実は動かしようがない。

 また調書に署名を求める直前に明代は、それまで記録された供述内容を全面的に認める供述をしていた。したがって、明代が東村山署の取調室で「レギュラーランチ」を主張していた事実をなかったことにすることは不可能だった。

明代の供述を否定

 ただ、矢野と明代が東京地検に対する上申書で「店長がレシートを間違えて渡した」ことにしようとするには、当然ながら「リスト」のアリバイが成立する時間帯の中に、それが誰のものであれ2人連れで、「日替わりランチ」が清算された記録があることが前提である。「レギュラーランチ」を完膚なきまでに否定された明代と矢野は、「リスト」の中に「日替わりランチ」があることに一縷の望みを託したのか。

 明代が東京地検から呼び出しを受けた直後から様子がおかしくなり、取り調べの数日前に飛び降り自殺を遂げたことからすれば、少なくとも明代にはメニューを変更したことなどしょせんは気休めでしかなかったのだろう。すでに取調室で担当刑事から直接アリバイを崩された経験を持つ明代には、仮に運よくそれらしい記録が存在したとしても、再びアリバイを崩されることを自覚していたということである。

 その結果がただちに自殺に結びついたとは思わない。しかし東京地検から呼び出しが来た時点で、来るべき時が来たことを明代は感じたのではあるまいか。

 しかし矢野はそうではなかった。明代の自殺から約1カ月後の平成7年10月5日、矢野は東京地検で万引き事件のアリバイについて事情聴取を受けている。千葉によれば、「びっくりドンキー」でのメニューが「レギュラー」から「日替わり」に変更した点について矢野は検察官から「取り調べにおける明代の供述と食い違っている」と追及され、矢野はこう供述したという(趣旨)。

「私の記憶が正しい。明代が警察で供述したメニューは勘違い。カキフライの味についてしゃべったのを覚えている」

 と。3カ月前、明代は東村山署の取調室でランチの内容を「ハンバーグ、ポテト、ブロッコリー、野菜、コーンにライス」とスラスラ答えたが、「カキフライ」は出てきていない。あれほどの記憶力を持つ明代が、味について矢野と話し合ったにもかかわらず、「カキフライ」だけを思い出せなかったと考えるのはやや無理があるように思われた。

 確かに明代も上申書で「レギュラーランチ」ではなく「日替わりランチ」を食べたと供述している。それでは東村山署の取り調べで明代はなぜ「レギュラー」と記載されたレシートを提出し、またカキフライにだけはいっさい触れなかったのか。「日替わり」だったというのは本当なのか。しかしこれらの不審点について明代に直接確認しようにも、明代はもうこの世にはいないのだった。

(つづく)
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