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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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『聖教新聞』事件 第25回
変遷の可能性を予測

 矢野は取調官からリストを示された上で12時台にはもう『日替わりランチ』が売り切れていた事実を突きつけられた。ここまで事実を突きつけられれば、通常の人間ならそれまでの供述が虚偽だったことを素直に認めるのではあるまいか。ところが矢野はそうではなかった。今度は「そんなに早く(12時台に)行ったのかなあ」などと、当日の時系列としてはほぼ不可能な時間帯まで口走った。

 しかし、取調官もまた矢野が簡単に非を認めないことは予測の範囲だったのだろう。取調官は矢野の反応に驚くこともなく、重ねて事実を淡々と示した。

「だからそれは、普通はあり得ないと思ったんで、念押して聞いたの」

 取調官が「念押して聞いた」内容とは「本当に『日替わり』を食べたのか」ということである。明代が銀行で振込をした「午後2時12分」の時点で売り切れていたと聞かされても、矢野は「『日替わり』を食べた」とする主張が間違いだったとはけっして認めなかった。明代が最初に主張した「レギュラー」が間違いで、さらに「日替わり」も間違いだったということになれば、さすがに信用性の点でまずいということだけは矢野にはわかっていた。

 だから、「売り切れ」といわれるたびに矢野は次々に時間帯を早めた。しかし最終的に、「午後2時12分」より前の2組もまた「日替わり」をキャンセルしていたことをリストによって示されたのである。ここまで確かな事実を提示されたのでは、いかに矢野でも具体的な根拠を示さないかぎり反論は難しかろう。どうみても、「日替わり」の注文時刻と清算時刻の詳細を確認していなかった矢野の完敗だった。

開き直った矢野

 矢野はそのことをようやく悟ったらしかった。通常、ここまで主張してきたアリバイ主張(時間帯に関して)を放棄するということは、アリバイがないこと、すなわち明代が万引き現場にいたことを認めるか、あるいはそのことを否定できないことを認めるということと理解されるところである。しかし矢野にはそのような道理は通用しないようだった。

 矢野はアリバイ主張が否定されると、またしても「万引きの時間帯は明代と行動をともにしており、事務所にはいなかった」と論理的に成立し得ないアリバイを主張したのだった。それだけではなかった。矢野はさらに「『びっくりドンキー』のアリバイ」が立証できなかったことについて、取調官に対して次のように開き直ったのである。いいがかり、あるいは最近の言葉でいえば「逆ギレ」といってもよかろう。矢野は取調官に対してこういった。

矢野  それがアリバイ工作だってわけ?

 当時、明代のアリバイ主張が崩れたことについて、副署長の千葉がマスコミに向かって「アリバイ工作」という言葉を使ったことはない。「矢野と明代が主張するアリバイは信用できない」と述べただけである。ただマスコミは千葉の説明から、「矢野と明代はアリバイ工作を企んだ」と理解した。千葉は『聖教裁判』の尋問で、マスコミがそう書いたことについて特段に問題視する考えはないと供述し、その後の裁判では2人がアリバイ工作をしたものと断定している。

 マスコミの理解に間違いはなかった。そもそも矢野と明代がありもしない「アリバイ」を主張し、「証拠」なるものを提出しなければ「アリバイ工作をした」といわれることもなかったのである。

アリバイ主張を放棄した矢野

 取調官は開き直る矢野に対して、やんわりと諭すようにこういった。

取調官  ここ(「日替わり」を食べたとするアリバイ)を主張するんであれば、違いますよっていったの、アリバイが……。

「万引きの時間帯には『びっくりドンキー』で食事をしていた」とする主張が明代のアリバイを主張するものであることは誰がどうみても否定することは不可能である。現実的な経過を確認すれば、明代と矢野が一貫してアリバイを否定してきたことはより明らかだった。

 東村山署が明代に対する最初の取り調べを行った日の夕方、矢野は東村山署に電話し、万引きの時間帯には明代と自分は「びっくりドンキー」にいたと主張した。念のために付け加えれば、この主張は矢野が自ら率先して述べたもので、東村山署の側からそう聞いたわけではない。矢野が「びっくりドンキー」のアリバイを主張したがゆえに、取調官は矢野に対して「証拠か何か出してほしい」と伝えたのである。

 千葉によれば、明代は取調官からこういわれたため、「びっくりドンキー」に電話をかけ、〈「6月19日の午後2時から4時の間で『日替わりランチ』と飲み物を注文した2人組のレジ記録票をさがしてほしい」と依頼しました〉と上申書に記載している。なお、東村山署の捜査によって上申書に記載されたこの電話の内容は事実ではないことが明らかになっている。明代は「『レギュラー』ですか『日替わり』ですか」と聞かれ、「たぶん『レギュラー』」と曖昧に答えていた。

 明代が電話で「午後2時から4時の間で」と時間帯を明確に区切っていた点からも、明代がアリバイの証拠としてレシートの再発行を求めていたことは明らかだった。ところが、取調官から「『日替わり』を食べたとしてアリバイを主張するのなら、そのアリバイは成立しない」といわれた矢野は、ついにこんな言葉を口走った。

矢野  そんな話までしてないよ。

「万引きの時間帯には明代は自分と『びっくりドンキー』で『日替わりランチ』を食べていた」という主張が、しまいには「アリバイを主張するものでない」と矢野はいい出したのである。確かに「2時12分より前」に「日替わり」を食べたという主張はアリバイとは関係がない。しかしそれも、当初の「万引きの時間帯には『日替わりランチ』を食べていた」という主張が成立しない事実を突きつけられたために、アリバイとは無関係の時間帯にまで変遷してしまったにすぎない。

 いずれにしても矢野の上記の供述は、「『日替わりランチ』を食べた」とする主張は「アリバイを主張するものではない」とするもので、反論できなくなった矢野の言い逃れにほかならない。しかしこの言い逃れは、矢野がもう2度と「『日替わりランチ』を食べていたから万引き犯は明代ではない」という主張ができなくなることを意味した。矢野はこの言い逃れによって、明代が2回目の取り調べから繰り返してきたアリバイ主張のすべてを放棄したものと評価できよう。

(つづく)
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