ブログマガジン エアフォース
ブログで興味深い記事を公開していきます。
著書紹介

民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

最近の記事

カテゴリ

プロフィール

プールマン

Author:プールマン

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク

QRコード

QR

FC2カウンター

「議席取り戻し」事件 第4回
2大事件を象徴

 矢野の繰り上げ当選を無効とする最高裁判決から2週間後の平成9年9月11日、東村山市議会9月定例会が開会となった。議場を見渡すと、議長に向かって最前列やや左寄りに2つの空席が並んでいた。

 1つは平成7年9月1日に万引きを苦に自殺した朝木明代が座っていた席であり、もう1つは8月25日まで「矢野穂積」の名札が立っていた席である。議席譲渡事件の経過を知る市民は、矢野の席が空席となっていることを確認し、東村山に民主主義が取り戻されたことにようやく安堵した。

 平成7年4月23日に行われた市議選以後、東村山は「議席譲渡事件」と「朝木明代の万引きと自殺」という2つの大事件に翻弄されてきた。2つの事件に共通するのは「草の根市民クラブ」(矢野穂積、朝木直子、朝木明代)による虚偽の主張である。2つの空席は、「草の根」による2つの途方もない虚偽が事実の前に敗北したことをも意味していた。

最高裁判決支持を表明

 この日、東村山市議会は冒頭で〈議席譲渡事件に関する最高裁判決を支持する決議〉を全会一致で可決した。決議では議会として最高裁判決への支持を表明するとともに、「政治への意欲を表明して選挙に臨んでおきながら、当選したとたん党派内の事情で仲間に議席を譲り渡すのは、有権者を裏切る行為だ」などの全国紙の論評を引用するかたちで「草の根市民クラブ」による議席譲渡を厳しく批判した。議会としては、民意を反映したものである議席が矢野、朝木という個人の胸先三寸によってやり取りされ、愚弄されたという思いを禁じることができなかったのだろう。

 続いて市長も所信表明の冒頭で議席譲渡事件に触れ、最高裁判決によって矢野が失職し、最高裁判決後、選挙会が「当選人を定めることができない」とする結論を出したことを報告。その上で、議席譲渡事件について「選挙制度の基本を揺るがすもので、公選法の盲点を突いたもの」と非難し、最終的に矢野らの企みが潰えたことは「常識にかなう結論」と述べた。

 平成7年当時、朝木は「矢野さんの方が議員としてより適格」とか「『草の根』の票は、グループとして投票していただいたものだから問題ない」、「私たちに投票してくれた人には理解していただいている」などと議席譲渡を正当化したものだった。議会と市長が内容に踏み込んだ批判を行ったことで市民も、議席譲渡がなぜ無効とされたのかを理解したのではあるまいか。

 ただ多くの市民はこのとき、水面下で矢野と朝木が失われた議席を取り戻そうと動き始めていることをまだ知らなかった。9月定例会の初日、それまで矢野が座っていた席が空席だったということは、議員手帳など一式を引き渡すよう求めていた朝木の要求を議長が拒否した結果でもあったのだった。

 ところで、朝木が議長に対して提出した催告書には、堂々と東村山の実家の住所が記載されていた。裁判で「父親の介護のため」に松戸で生活する必要があったと供述していたが、平成9年3月3日、朝木は松戸から東村山に住民票を移していた。その3カ月前の平成8年12月26日、議席譲渡裁判で東京高裁が「許さない会」の主張を棄却したことで、もう松戸で部屋を借りておく必要はないと判断したのかもしれない。

八王子に出向いた朝木 

 さて、議会が最高裁判決を支持する決議を行い、矢野と朝木を批判したこの日、議席譲渡事件の張本人である朝木直子は有権者を裏切ったことを少しでも詫びるどころか、むしろ朝木に対してはそんな期待を抱く方がそもそも間違っていると思わせる動きに出ていた。

 朝木は催告書で、「9月11日の前日までに」議員に支給される一式を引き渡さなければ「私の議員活動を妨害しているものと考え、必要な手続きを執ります」と一方的に予告していた。朝木の扱いについて「選挙会の決定のとおり」と回答した議長は当然、同日までに何の対応もしなかった。このため朝木は9月11日、東村山市と東村山市議会を債務者として、朝木に対する業務妨害等を禁止する仮処分を求める申立を東京地裁八王子支部に行ったのである。

 たんに法的手段に出たというのみならず、あえて9月議会の初日を選んだところに、矢野と朝木の東村山市および東村山市議会に対する敵愾心の強さがうかがえた。この動きの背景には、議席譲渡事件だけでなく明代の万引きと自殺をめぐって議会内外から大きな非難を浴びたことに対する恨みも重なっていたのかもしれなかった。

「催告書」を内容証明郵便で送付したのも、裁判所に持ち込むことを想定していたのだろう。いずれにしても、東村山市議会および東村山市行政に対して矢野と朝木が抱いていた敵意は並大抵ではないようにみえた。

選挙会に責任転嫁

 この仮処分申立で朝木が求めたのは以下の4点である。



①自分が東村山市議として活動することを妨害しないこと

②東村山市議会らは朝木に対して、議員活動を行うために必要な議員手帳、各種通行証、9月定例会議案書、自治六法、東村山市例規集及び議会運営マニュアル等関係書類または書籍をただちに引き渡すこと

③朝木が議員控室及び図書室等を使用することを妨害しないこと

④東村山市は平成9年8月26日以降、朝木に議員報酬を支払うこと



 申立の理由として朝木は、最高裁判決に基づき〈債権者(朝木)は、当選人の地位にある間その資格を失うことなく、議員の任期が開始する日である平成7年5月1日に至って、東村山市議会議員の地位を取得した。〉と述べ、矢野の繰り上げ当選が無効と判断された理由について次のように主張していた。

〈債権者は右5月1日にはすでに議員の身分を得ているから、その身分を失わせるには議会の議決を要し、それを経ていない選挙会による繰り上げ当選の手続きには瑕疵があり、その決定は無効であるとした。〉

 矢野が最高裁判決後の選挙会決定に対する異議申出において、平成7年に行われた矢野の繰り上げ決定は選挙会の瑕疵によるものと決めつけていたのと同様に、朝木もまた選挙会の瑕疵によって東村山市議の地位を奪われたかのように主張していた。もちろん、選挙会決定の前に朝木が矢野に当選を譲ると主張していたこと、最高裁は朝木の住民票移動には実体がないと認定した結果、矢野の繰り上げ決定を無効としたことなどの事実はいっさい記載されていない。

 したがって、申立書を見るかぎりにおいて、この申立に至る背景に議席譲渡事件があったことなどいっさいうかがい知ることはできなかった。「なかったことになっている」と言い換えてもいいかもしれない。

 その上で朝木は、議会が自分の身分についてなんらの議決もしていない以上、自分は東村山市議としての業務を遂行する権利があり、議員報酬を受け取る権利を有すると主張していた。かつては東村山市議としての業務を自ら放棄しておきながら、今度は「業務を遂行する権利がある」と主張しているのだった。

(つづく)
関連記事

TOP