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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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「議席取り戻し」事件 第5回
消された議席譲渡

 最高裁判決後、議会や選挙会に対してさまざまな要求や異議申し立てを行っていることを矢野と朝木が明らかにしたのは、彼らの政治宣伝ビラ『東村山市民新聞』(平成9年9月17日付第87号)によってである。最高裁は平成7年当時に朝木が主張していた住所移転の実体を認めず、矢野の繰り上げ当選を無効とした。通常なら、議会や市民を混乱させたことについて2人の口からなんらかの謝罪があってもおかしくない。しかし記事では、議席譲渡事件に関しても明代の万引き事件同様に、彼らが非を認めることはいっさいなかった。

 記事の見出しからして、相当の違和感があった。



〈被告は選管〉

〈最高裁「市議会が繰り上げ当選手続きをやり直せ」〉

〈ムラ議会、最高裁判決を拒否で大混乱〉



 議席譲渡裁判の被告が東村山市選管の決定を追認した東京都選管であることは事実だが、ことさら見出しで強調することはあるまい。平成7年に行われた市議選後、朝木は松戸に住民票を移し、矢野に当選を譲ると表明した。その行為が民主主義に反するとして市民が提訴したのが議席譲渡裁判である。裁判で問われたのは議席譲渡という行為そのものであり、法律的な争点となったのは朝木の住民票移動に実体があったかどうかだった。

 つまり裁判の実質的な当事者は矢野と朝木なのであり、したがって実質的な敗者は矢野と朝木にほかならなかった。そのことを自覚しているがゆえに、矢野は読者に対して敗者が東京都選管であると印象付けるためにあえて〈被告は選管〉という見出しを入れたのだろう。

 また最高裁が判決で〈「市議会が繰り上げ当選手続きをやり直せ」〉などと命じた事実はない。最高裁は選挙会が朝木の東村山市における被選挙権を失ったと判断した平成7年5月21日の決定について、〈(朝木が)被選挙権を失ったことを理由として議員の職を失うかどうかは、東村山市議会の決定にゆだねられるものと解さざるを得ない。〉と述べたのである。矢野は最高裁が繰り上げ手続きのやり直しを命じたように記載することで、市民に対して「やはり矢野は繰り上げ当選になるのか」と思わせようとしたのだろう。

 しかも、議会がそれを拒否している、と。これではあたかも、矢野と朝木にはいっさいの非がないように聞こえよう。恐ろしい情報操作というほかはない。

 本文では選管が行った繰り上げ当選手続きについても次のように書いている。

〈最高裁は判決で、選管が朝木直子編集長の住所移転(当選失格)を判断する権限がないのに勝手に、繰り上げ当選手続きをとったのは誤りで、市議会繰り上げ当選の手続きを始めからやり直しをすべきというもの。〉

 朝木の転居の実体が否定された事実を抜きにして、権限のない選管が「勝手に」行ったことになっていることがわかる。これでは、矢野が繰り上げ当選となったのは選管のミスであり、議席譲渡事件など存在しなかったかのようである。

虚偽の住民登録もなかったことに

 市選管を騙し、議席譲渡を実現させた朝木による虚偽の住民票移動についても、きわめて巧妙になかったことにしようとしていた。朝木が松戸に移転した状況とその時期について、最高裁の認定として矢野はこう説明している。

〈(議席譲渡裁判を提訴していた市民たちは)朝木直子編集長があたかも「当選を譲るために住民票だけを移した」とか矢野議員を繰り上げ当選させるために、不正にニセの住民登録をしたなどと刑事告発。

 が、最高裁は、95年4月に、朝木編集長の住所が移っていたとはいえないものの、1カ月後の5月29日には住所が移転。すでに5月1日から任期の始まった市議の身分を取得したと断定。〉

 平成7年当時、朝木は「4月26日に転入届を提出し、生活の本拠を千葉県松戸市に移したから、私は東村山市議の資格を失った」(趣旨)と説明していた。その後、朝木は同年5月9日、松戸市内で2度目の転居をしている。ここで矢野がいう「5月29日」とは3度目の転居先である。議席譲渡を批判、追及していた東村山市民(「『草の根グループ』の議席の私物化を許さない会」=以下、「許さない会」)は「朝木には松戸での生活実体がない」すなわち虚偽の住民登録をしたと主張していた。

 これに対する矢野の反論が後段ということになるが、ここには朝木が同年5月29日までに4月26日と5月9日の2度の転居をしていたことはいっさい記載していない。「許さない会」が問題にする虚偽の住民登録には最初の2回分も含まれる。

 しかし矢野は、最高裁が実際に生活の本拠を移したとは認めなかった2度の転居についてはいっさい触れずに最高裁が移転を認めた3度目の転居だけを記載することで、移転の実体が認められなかった最初の2度の住民票移動についてはなかったことになっているようにみえる。最初の2度の住民登録が存在しなければ、虚偽の住民登録の事実も消えてなくなるというまれにみる詭弁だった。

 こうして矢野は、当初の繰り上げ決定は選挙会の誤りであるとし、さらに朝木が市選管や市民を欺いた事実をなかったことにしたことになる。「草の根市民クラブ」には何の落ち度もないというわけだった。その上で矢野は次のように主張していた。

〈(朝木は)市議選から3カ月以内の5月29日に住所移転したので、次点の矢野氏の繰り上げ当選という結論は同じになる。〉

 ところが、議会が判決に従わず、朝木の議員資格を審査する議会を開かないと批判しているのだった。どこまでも議席譲渡の思いつきを正当化し、成就させようとする矢野の執念たるや、はるかに常識を超えたものというほかなかった。

(つづく)
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