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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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りんごっこ保育園食中毒騒動退園事件 第1回
りんごっこ保育園食中毒騒動退園事件                     
                                                      
                                             宇留嶋瑞郎

矢野が保健所の立ち入りに難色

 平成18年11月13日、東京・東村山市にある個人立の認可保育園、「りんごっこ」保育園(高野博子施設長)で「保護者のみな様へ」――「にせ食中毒事件」のご報告――と題する印刷物が配布された。印刷物には次のように書かれていた。

〈11月10日午後、当園の2才児クラスの保護者の方が、昭和病院で園児の診察をうけた際、担当医師に、「りんごっこ保育園で、昼食後2、3時間して園児の半数が嘔吐した」と全く事実に反することを伝えたため、そのまま信じた医師が保健所に通報し、保健所から午後7時すぎに担当者が見えました。
 事実を確認し、食中毒で吐いた事実がないことがわかり、問題ないとして保健所はひきとりました。〉

 ここに書かれているのは、2日前の11月10日、「りんごっこ」保育園で食中毒が疑われる事件が起きたこと、しかし立ち入り調査した保健所が「問題ない」と判断した、ということである。この印刷物が配布されたのは月曜日。つまり、この印刷物は土日の間に作成されたもので、園側は休日返上で、きわめて迅速に対応しようとしていたことがわかる。

 11月10日午後、帰宅した1人の園児が嘔吐の症状を示していた。このため保護者は午後4時ころ、小平市にある公立昭和病院の小児科で診察を受けた。子供の症状と「昼食後2、3時間して園児の半数が嘔吐した」という保護者の説明から、医師は食中毒の疑いがあると判断、午後5時ころ、小平保健所に通報した。食品衛生法27条には〈食品、添加物、器具若しくは容器包装に起因して中毒した患者もしくはその疑のある者を診断した医師は、直ちに最寄の保健所長にその旨を届け出なければならない〉と規定されている。医師は法に従って通報したのである。

 通報を受けた保健所はただちに園に電話をしたが、すぐには連絡が取れなかった。3度目の電話でようやくつながり、午後6時50分ころ、保健所は食品衛生担当3名、感染症担当1名の計4名で園に立ち入り検査に入った。

 園で待っていたのは施設長の高野博子、看護士2名、栄養士2名、ほかに高野と同居する東村山市議(「草の根」市民クラブ)で園の「運営委員」を名乗る矢野穂積と、同じく「草の根」の朝木直子だった。保健所の立ち入り検査は法律に基づいた強制力のあるもので通常、その検査に立ち会い、対応するのは施設長である。ところがこの検査で主導的に対応したのは施設長ではなく、なぜか矢野だった。しかも矢野は当初、「園児の半数が嘔吐した事実はなく、なぜ立ち入りの必要があるのか」と立ち入り検査を拒否したという。

 保健所の立ち入り検査は、園児の症状が食中毒によるものかどうかを判断し、仮に食中毒だった場合には、何が原因で、どうすれば再発を防止できるかを明らかにするためのものである。検査の結果、食中毒でないことがはっきりすればそれに越したことはない。要は子供の安全を確保することが最大の目的なのだし、「疑いあり」とされた以上、園としても子供の安全を最優先し、検査が迅速に行われるよう協力すべきだろう。保健所の立ち入りに対して園長の高野ではなく矢野が対応したというのみならず、矢野が当初は検査を拒否したこともまた、通常の認可保育園ではあり得ないことだった。

 仮に検査の結果、食中毒であることが判明した場合には数日間の業務停止という事態も想定できる。そうなれば当然、「りんごっこ保育園で食中毒を出した」という事実が公表され、園の信用の低下につながることは避けられない。土地と園舎の建設代金1億3000万円を全額融資でまかない、約8000万円の補助金の中から年間1000万円近くを返済に充当(その半分は高野の給与分)しているという事情からしても、園の信用低下から、最悪の場合、認可取消という事態になれば、矢野にとっても重大な死活問題となる。矢野が最悪の事態を想定していたとしても不思議はなかった。

 もちろん保健所は、医師から「食中毒の疑いがある」と通報されれば、立ち入り検査をしなければならない。その検査は本来、サンプル分析や厨房付近を中心とした拭き取り調査分析を行う場合と事情聴取のみで終わる場合がある。りんごっこ保育園のケースでは、小平保健所は最終的に看護士などから事情を聴取したのみで引き上げ、「食中毒が発生している可能性は低い」と結論づけたのだった。

「意図的な虚偽」と断定

 冒頭に紹介した印刷物の記載は、この部分だけなら、2日前にあった食中毒の疑いによる保健所の検査とその結果を報告したもののようにもみえる。しかし、高野施設長が休日返上で作成したこの印刷物の目的は別のところにあった。印刷物は次のように結ばれていた。

〈園との信頼関係を根底から否定するあまりにも悪意のあるデタラメ情報を、当園の園児の保護者が行ったとは、信じられない思いです。……今後、このような事件が再発しないよう、必要な措置と対策を行うことにしております。〉

 ここまで読めば、この「保護者のみな様へ」と題する印刷物配布の目的が、食中毒騒ぎが実はそうではなかったとして保護者を安心させようとするものではなく、1人の保護者が意図的に「デタラメ情報を伝えた」結果(「悪意のあるデタラメ情報を、当園の園児の保護者が行った」)、「ニセ食中毒事件」が発生した、ということを伝えようとするものであることがわかる。最後の「このような事件」とは、保健所が立ち入り検査に入ったという事実ではなく、保護者が「悪意のあるデタラメ情報を流した」という「事件」のことなのである。すでに園の側からみれば、保健所の立ち入り検査という事実が、「悪意ある保護者」によって生み出された「捏造事件」へと変質していることになる。

 印刷物の最後に記載されている〈今後、このような事件が再発しないよう、必要な措置と対策を行うことにしております。〉という文言もまた、「園児が嘔吐するような事態が起きないよう園側も注意する」という趣旨ではもちろんない。「保護者が『デタラメ』情報を流すような事件が起きないような措置をとる」ということなのである。

 この印刷物は「事件」の翌日から翌々日にかけて作成された。すると金曜日、保健所の検査終了後から土日にかけて園はこの保護者を調査し、保護者が医師に、「意図的に嘘の情報を伝えた」という事実を確認したのだろうか。平成18年12月13日に開かれた「りんごっこ保育園設置者の資質と特定議員の関与に関する調査特別委員会」での東村山市保健福祉部による経過説明では、「保護者の側が嘘をついた」などという報告はいっさいなされていない。

 保育所というのは通常、共稼ぎであるなど家庭で子育てができない事情にある保護者がやむを得ず昼の時間帯、子供を預ける施設である。子育て支援事業として、とりわけ「りんごっこ」のような認可保育所には国や都、それに自治体が補助金を出している。保護者は自治体の窓口に保育所への入所を申請、自治体は保護者の年収などを審査して入所児童を決定する。つまり、自治体が子供を預かり、その保育を委託するというのが認可保育所制度なのである。

 しかも、東村山市においても認可保育所に入りたいが入れない、いわゆる待機児童は毎年数十人にのぼっている。「デタラメ情報を伝えた」と断定されたこの保護者も、市の審査を受けて入所を許されているのであり、そのような保護者がわざわざ医師に「デタラメ情報」を伝え、保育所を窮地に追い込むようなことを企てるだろうか。この保護者は、嘔吐する子供が心配という一心で病院に連れて行き、聞かれたことに答えたというにすぎず、仮にその内容に事実と異なる部分があったとしても、それが「意図的」だったとは普通では考えられないし、普通の施設長ならそのような発想もしない。

 しかし、「りんごっこ」保育園では、どんな根拠があってか、この保護者が意図的に「デタラメ情報を伝えた」と断定したということだった。この印刷物には当事者の実名は記されていない。しかし、園内に配布された印刷物なら、それが誰であるのかはすぐに判明し、またたく間に園内に噂は広まろう。もちろん、これを見せられた当事者の心中がどんなものだったかについては、もはや多言を要しまい。

(第2回へつづく)

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テーマ:社会 - ジャンル:政治・経済

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