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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

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「議席取り戻し」事件 第8回
抗議内容をビラでも宣伝

 東村山市議会は平成9年10月1日付で「市議会だより」臨時号を発行し、議席譲渡事件について最高裁が「議席譲渡は無効」とする判決を言い渡したこと、および市議会としてこの判決を支持する決議を行ったことを市民に伝えた。その2日後の10月3日、市選管は同年9月2日に行った決定(「当選者を定めることができない」)に対して矢野らが提出した異議申出を棄却した。

 一方、矢野らの支持者は「市議会だより」に対して同年10月6日付で議長と市長宛に抗議の文書を提出したが、追い打ちをかけるように矢野と朝木は政治宣伝ビラ『東村山市民新聞』第88号(平成9年10月15日付)を発行し、選挙会が朝木の市議資格を認めず、議会もそれに同調しているとして重ねて非難している。

 議長や市長に対する再三にわたる抗議や申し入れは直接市民の目に触れることはない。だから矢野らは市内にビラを配布することで、最高裁判決に対する彼らの主張を市民に訴えようとしていたことがわかる。

 しかし彼らが特異なのは、彼らにとって不都合な事実をなかったことにしようとしているフシがうかがえたことである。それが嘘であっても、繰り返し主張されれば、詳細な事情を知らない市民は「そうだったのか」と思い込んでしまうこともあろうし、たまたまその記事だけを目にしてそれを信用してしまう場合もあり得る。

 矢野が事実をすり替えようと意識していたのか、彼らの思い込みだったのかはわからない。しかし、事実が伝えられず、虚偽の事実のみが繰り返し宣伝される状況こそ、デマが事実として市民権を得ていくようになる原初的な一例なのかもしれない。

嘘を刷り込む手法

 議席譲渡事件の中でも矢野と朝木が事実をすり替えようとしていたことがうかがえるのは、選挙会が矢野の繰り上げを決定した経緯に関してである。矢野と朝木がビラによって事実を消し去り、虚偽の事実のみを宣伝することによって、新たな事実を捏造しようとする足跡をみよう。



(ビラ87号)

〈選管が朝木直子編集長の住所移転(当選失格)を判断する権限がないのに勝手に、繰り上げ当選の手続きをとった〉(矢野)

〈「草の根」側は、架空の住民登録をしたわけでありませんし、ニセの住所移転をしたわけでもないことは現に、最高裁もはっきり認めており、95年5月29日には、朝木直子編集長が松戸市に住所を移したことは間違いないと認定しています。〉(支持者K)

〈「選管が、権限がないのに、早まって、繰り上げ当選の手続きをとったのは誤り」〉(支持者K)

(ビラ88号)

〈選管が当選失格を判断する権限もないのに、繰り上げ当選の手続きをしたのは誤り〉(矢野)

〈すでに95年5月1日に当選人から議員になった朝木直子編集長〉(矢野)

〈権限がないのに、市選管が繰り上げ当選の手続きをとったのが誤り〉(支持者K)

〈すでに95年5月1日に市議会議員になっている朝木直子さん〉(支持者K)

〈勝手といえば、市選管が間違って、権限もないまま1カ月早く手続きをとったため、矢野議員には迷惑をかけながら……〉(朝木)



 最高裁判決の前まで朝木は「議員任期の始期である平成7年5月1日には松戸に生活の本拠を移しており、私はすでに東村山市議の被選挙権がない」と主張していた。あらためて紹介したのは、その主張を否定した最高裁判決後に矢野と朝木が発行したビラ2号分の繰り上げ決定に関する記載である。

 裁判で朝木は、矢野に当選を譲るためとしていた平成7年当時の主張を覆し、「父親の介護のため」に松戸に転居する必要があったと供述した。当時の説明とは大きく食い違っており、当然、原告(「『草の根グループ』の議席の私物化を許さない会」)代理人は「それならなぜ最初からそう説明しなかったのか」と追及した。しかし朝木は頑として「介護のため」と言い張った。東村山から松戸に住民票を移したことには現実的に切迫した理由があったと裁判官に訴えるためだったのだろう。

 ところが最高裁判決後に発行したビラには最高裁が「朝木は同年5月1日には議員になっていた」と認定したことのみを記載し、議員任期が始まる時点で住民票を松戸に移していたことなどいっさい触れていない。その事実に触れないまま「市選管が勝手に矢野を繰り上げ当選させた」と主張すれば、一般市民は「民主主義を否定する暴挙」として社会問題となった「議席譲渡事件」とは、実は市選管が独断専行によって誤った手続きをした結果ということだったのかと誤解しかねない。

 しかもこれほど「市選管の誤り」と繰り返されれば、読者が無意識にそう思い込まされたとしても不思議はない。これはもうたんなる情報操作というよりも刷り込みに近いのではあるまいか。

消えてなくなった議席譲渡事件

 しかもビラ88号で朝木は、市選管が「間違って、権限もないまま1カ月早く繰り上げ手続きをとった」と主張している。「間違って」とは、市選管が「朝木は議員任期の始期前に東村山の被選挙権を失った」と判断したことを指すとみられる。つまり朝木は、「市選管は朝木の生活の本拠が市外に移転していないのに移転したと『間違って』判断し、朝木の東村山の被選挙権もなくなったと判断した」といっているものと理解できる。

 当時、「松戸に生活の本拠を移したから東村山の被選挙権を失った」と主張していたのは朝木自身である。ところが最高裁判決後、朝木が住民票を松戸に移して東村山の被選挙権がなくなったと主張していた事実はどこかに消えてなくなり、市選管は朝木が住民票を移したことをもって「間違って」東村山の被選挙権もなくなったと判断したことになったということになる。

 朝木はその上、市選管が判断を「間違え」、さらに勝手に矢野の繰り上げ手続きをしてしまったために、最終的に最高裁で繰り上げ当選が無効とされたことにより「矢野さんに迷惑をかけた」とまでいっているのだった。これらの主張によれば、すべての責任は市選管にあったことになる。

 彼らの主張を通して気づかされるのは、ビラによる宣伝において「議席譲渡事件」など最初からいっさい存在しないことになっているということである。常識では、彼らはあれほど市民や議会、行政を混乱させたのだから、なんらかの謝罪の言葉があってしかるべきだと思うだろう。しかし「議席譲渡事件」などなかったことにしようとしている矢野と朝木からすれば、市民に対して謝罪する理由など最初からないということになる。出発点からして常識とはかけ離れた恐るべき発想である。

(つづく)
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