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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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「議席取り戻し」事件 第9回
公選法の趣旨

 平成9年9月2日、東村山市選管は矢野の繰り上げ当選を無効とした最高裁判決に基づいて開催した選挙会で「当選人を定めることができない」とする決定を行った。これによって朝木の復活もなくなり、「草の根市民クラブ」は東村山市議会からすべての議席を失った。

 その後、矢野と朝木はビラで「市選管が朝木の被選挙権について判断を誤った」ために混乱が起きたなどと議席譲渡の事実をなかったことにする一方、東村山市選挙会の決定に対して異議申し立てを行った。同年10月3日、東村山市選管はこの申出を棄却。すると矢野らはさらに同年10月23日、東京都選管に対して東村山市選管の判断について審査を申し立てた。

 これは議席譲渡事件が起きた当時、東村山市選挙会が矢野の繰り上げ当選を決定したことに対して「許さない会」が行った異議申し立てと同じ経過である。しかし、「許さない会」が行った申し立てが民主主義を守るためだったのに対し、矢野らによる異議申し立ては事実上、民意を踏みにじった議席譲渡を復活させ、結果として正当化させようとするたくらみだった。

 審査申し立てにおいて矢野らはおおむね次のように主張していた。



1 最高裁判決は、朝木直子は平成7年4月30日現在東村山市の被選挙権を失っておらず、東村山市議の資格を得ていたとしており、選挙会で改めて当選人と決定する必要はなく、すでに当選人である。

2 最高裁判決は、朝木は平成7年5月29日に東村山市の被選挙権を喪失したと判断している。この時期は選挙期日から3カ月以内の繰り上げ補充期間内にあり、更生決定すべき当選人は次点者である矢野穂積である。



 この時点で朝木は東村山市議会に対し、朝木に対する業務妨害禁止の仮処分命令を東京地裁八王子支部に申し立てている。「東村山市議会は朝木を東村山市議として扱え」という趣旨である。東京都選管に対しては「矢野が議員である」と主張し、裁判所に対しては「朝木は東村山市議だ」と主張するのは矛盾しているようにみえるが、朝木がいったんは東村山市議として扱われなければ、東村山市議会が朝木の被選挙権喪失を議決できないという理屈のようだった。

 市民に2年間にわたって裁判闘争という精神的、経済的負担を負わせ、何よりまず東村山市民の民意を踏みにじったことを深く反省し、謝罪するというのが普通の考え方だろう。しかし矢野には、「公選法には自ら被選挙権を失うことによって合法的に議席を次点者に譲り渡すことができる穴がある」と(矢野なりに)気がついたことに対するこだわりが強かったのではあるまいか。

 公選法は1条に〈その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によって公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。〉と規定している。「公明正大なかたちで民意を尊重し、反映させる」という趣旨であり、民主主義を実現させるために維持しなければならない原則といってよかろう。

 仮に公選法に矢野が考えるようなスキがあったとしても、そこにつけ込もうとすること自体、公選法の理念に反する。しかし議席譲渡事件の発生から最高裁判決後の彼らの主張を見るかぎり、公選法の趣旨など彼らには何の意味を持たないのだとあらためて痛感させられる。

矢野からの「催告」

 東京都選管に対する審査申し立てを行った2週間後、矢野はしびれを切らせたのか、今度は東村山市議会議長に対して新たな内容の「催告書」を内容証明郵便で送付した。

〈最高裁判決により、1995年5月29日に朝木直子氏につき……被選挙権喪失の効力が発生した結果、次点者である私は改めて繰り上げ当選人及び市議会議員の身分を取得した。〉

〈貴殿は地方自治法所定の議決……をただちにとらなければならない。しかし、貴殿が右法定手続きを違法に怠っているため、私は市議会議員としての業務執行が3カ月に渡って妨害され、現実に損害が発生している。〉

「催告書」で矢野はこう主張した上で、〈ただちに必要な手続きをとるよう〉主張していた。しかし仮に平成7年5月29日に朝木の被選挙権が喪失したと認められ、朝木が議員資格を失ったとしても、それによってただちに矢野の繰り上げ当選が認められるかどうかは別の問題であり、議会にはそれを決定する権限がない。

 平成9年9月2日の選挙会決定には行政処分として一定の公定力がある。矢野はこの決定をめぐり東京都選管にその是非を問うている。ところが、議会が矢野の「催告」に従って矢野を議員として扱うことは、現実的に東京都選管の裁決を待たずに選挙会の決定を覆すことになる。

 議会にそのようなことができるはずがない。したがって矢野のこの「催告」は短絡のそしりをまぬがれまい。一方で朝木は、「自分は議員である」と主張して東京地裁八王子支部に「業務妨害禁止」を求めて仮処分命令を申し立てているから、この「催告」は議会と行政に対する揺さぶりだったように思えた。

被害者であるかのような宣伝

 その4日後、矢野は政治宣伝ビラ『東村山市民新聞』第89号(平成9年11月19日付)を発行し、同年9月2日の選挙会決定を〈メチャメチャな「決定」〉と非難するとともに、議会が「最高裁判決を公表しない」として、それが何か「都合が悪いから」であるかのように主張している。

 その理由と思われる主張を「編集長朝木直子」は次のように主張している。

〈最高裁は判決で、改めて繰り上げ当選の手続きを議会がやり直しなさいと明言してますから、結局は矢野議員を再び繰り上げ当選させる手続きのことが書かれている〉

 最高裁は平成7年に行った選挙会の繰り上げ決定が違法であると認定したにすぎず、上記のように「明言」している事実はない。矢野と朝木の中ではついに、矢野の繰り上げ当選を無効とした判決が、「繰り上げ決定のやり直し」を命じたものへと変質したようだった。彼らが最高裁判決をどう解釈しようと自由である。しかし、彼らの「解釈」が最高裁判決の中の一文であるかのように記載すれば、それは虚偽宣伝といわれても仕方があるまい。

 最高裁判決後の行政と議会の対応を非難する彼らの政治宣伝のみに接していると、経過をよく知らない読者はあたかも矢野と朝木が最高裁判決を無視する行政と議会の被害者であるかのような印象を持ってしまうのではないか――。論点を巧みにすり替えることで自己正当化をはかる彼らの宣伝手法は、朝木明代の万引きと自殺のときと同様、議席譲渡事件においても十分に発揮されているように思えた。

(つづく)
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